患者様に選ばれる歯科医院マーケティング 3つのステップ

昨今、歯科医院経営に関する情報はインターネットやSNSで簡単に得ることができます。

まゆつばものの情報もありますが、専門家が発している正しい情報も数多く存在します。

しかし、その情報を活用できている歯科医院は多くありません。その原因は…

  • 「そもそも自院のポジションや今後のステップがわからない」
  • 「得た情報がどのポジションの医院に当てはまるのかがわからない」
  • 「情報が表面的で、具体的なアクションに結びつかない」

などが挙げられます。

自院の現状把握や将来的なビジョンを見失っているため、情報活用しようと思ってもできないのです。

そこで本連載では、歯科医院の経営方法と成長ステップを体系的に解説していきます。

今回は歯科医院のマーケティングについて解説します。

歯科医院が成長するマーケティングステップ

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(画像=pixta)

歯科医院の経営は、次のようなステップに分けて考えると分かりやすくなります。

  • マーケティング:「集患」「固定化」「単価アップ」
  • マネジメント :「採用」「教育」「評価」「定着」「組織化」

今回はマーケティングを解説し、マネジメントについては次回解説します。

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(画像=「歯科医院の成長戦略バイブル」(医歯薬出版株式会社)P14図1_マーケティングとマネジメントのステップより転載)

歯科医院のマーケティングとは

歯科医院のマーケティングは「集患」「固定化」「単価アップ」の3つのステップに分けられます。それぞれの施策の意味は下記の通りです。

  • 「集患」   …患者さまに選んでいただくための施策
  • 「固定化」  …キャンセルや通院中断の防止施策と予防に来院してもらう施策
  • 「単価アップ」…自費売上を向上させるための施策

    この3つをそれぞれ解説します。

1.集患

患者さまに選んでいただくための施策は色々あります。

Webマーケティング

  • 口コミ促進
  • 車の通りすがりを狙った看板
  • 人の通りすがりを狙うブラックボードやデジタルサイネージ
  • 他施設からの紹介

……など。

中でも基本的にはWebマーケティングの比率が高く、船井総研の解析では、

Webマーケティング:口コミ:その他=6:3:1

となっています。

この結果からまずは、Webマーケティングから取り組むのがよいでしょう。

いまは必ずと言っていいほどユーザーが口コミを確認する時代となり、歯科医院も例外ではありません。

米国で歯科医院の口コミは、1医院あたり100件を超えていることも珍しくありません。

日本はまだそこまで進んでいませんが、逆に言えば口コミが強化できれば患者さまを増やせる見込みがあるのです。

ただし、前提として商品や価格、接遇がよくなければ高評価の口コミは増えないので、院内の改善が必要不可欠です。

船井総研_P16図2_Webマーケティングの基本戦略
(画像=「歯科医院の成長戦略バイブル」(医歯薬出版株式会社)P16図2_Webマーケティングの基本戦略より転載)

■Webマーケティングとは
Webマーケティングには、導線戦略と受皿戦略があります。

導線戦略はホームページへの流入数を増やす戦略、受皿戦略は流入したユーザーの問い合わせや予約数を増やす戦略です。

どのような検索をかけたユーザーにホームページを表示させるのか、どのような検索キーワードに対して広告を出すのか、さらにホームページをいかに見やすくするかを考え、導線戦略と受皿戦略を駆使して集患するのがWebマーケティングです。

導線戦略とは

  1. SEO(Google/Yahoo!検索順位アップ)
  2. PPC(Google/Yahoo!広告運用)
  3. MEO(Google地図順位アップ、Google口コミ対策)
  4. ポータルサイトへの登録

受皿戦略とは

  1. サイトスピードの向上(ホームページが開くまでのスピード)
  2. コンテンツの質(ユーザーが求めている内容か)
  3. コンテンツ量(ユーザーが求める情報量が多いか)
  4. 更新頻度(鮮度の高い情報が多いか)
  5. UI/UX(ホームページ上のレイアウトやボタンなどがクリックしやすいか、見やすさ・わかりやすさ・使いやすさ)

導線戦略
動線戦略で優先順位が高いのは

  1. SEO(Google/Yahoo!検索順位アップ)
  2. PPC(Google/Yahoo!広告運用)

です。この二つは同時進行をお勧めします。

なぜならSEOは基本的にお金がかからず、すぐに始められる半面、ブログや記事などコンテンツを増やし、検索順位を上げていくのには時間がかかるからです。

記事の反響で翌日の流入数が増え、即新患に繋がるというわけではなく、ロングスパンで捉える中長期的な施策です。

そこで、同時にPPC広告で新患にアピールをすると効率が良くなります。

前回お伝えした「専門の総合化」の観点で言えば、SEOで新規の患者さまを呼べるようになったらPPCの割合を下げ、次の事業に投資していくと良いでしょう。

受皿戦略
受皿戦略は要するに、ユーザーが求めている新しい情報が多数あり、見やすくてわかりやすく、かつ使いやすいページをつくることがホームページへの流入を増やし、集患につながるというものです。

ユーザーが求めている情報を知るには、Googleアナリティクスが有効です。

ホームページに来た人が何を、どのくらいの時間見ているかが分かります。

傾向としては院長やスタッフ紹介コンテンツがよく見られており、ユーザーが「優しそうな先生やスタッフか」「腕のある先生か」を気にしていると推測できます。

さらにデザイン面では、予約・電話のアイコンが分かりやすい位置にあるかなどが重要視されています。

ただし、院長業・マネージャー業・プレイヤー業の3役をこなし、ただでさえ忙しい院長先生お一人で導線戦略と受皿戦略に取り組み続けられるかというと、難しいかもしれません。

そのような際には外部業者に任せる判断も必要です。

労働人口の減少に伴い、世間ではBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)化が進んでおり、歯科業界も同様であるからです。

2.固定化

患者さまの固定化とは、キャンセル率・中断率を減らすことを指します。

患者さまは一度キャンセルすると、歯科医院へ行きづらくなるものです。

そのまま治療を中断すれば治っていない歯を放置することになり、症状が悪化してしまう可能性もあります。

歯科医院側からすれば、総患者数の増加が見込めないため、早急に改善しなければなりません。

キャンセル率・中断率が高い歯科医院は、まるで栓をしていない浴槽のようなものです。

お湯を増やす前に、抜けていくお湯を留めるための栓をすることが先決です。

船井総研_P17図3_リコールが増える医院と増えない医院
(画像=「歯科医院の成長戦略バイブル」(医歯薬出版株式会社)P17図3_リコールが増える医院と増えない医院より転載)

キャンセル率・中断率を減らす肝は、歯科医院と患者さまのギャップを埋めることにあります。

例えば、当日の電話キャンセルの場合、

  • 患者さま:連絡した私って偉い
  • 歯科医院:診療枠は埋まらないので、当日キャンセルも無断キャンセルも似たようなもの

といったギャップがあります。

ギャップを埋めるために、例えば「他の患者さまのご迷惑になる」「痛みがなくても治療中であり、中断すればデメリットがある」などと患者さまに伝えなければなりません。

また、キャンセルの定義も明確にしましょう。

例えば、下記のような定義を作り、患者さまと認識を合わせることが大切です。

  • 予約変更は3日前までにしてもらう
  • 15分遅れた場合はキャンセルとみなす
  • 当日キャンセルであればいつまでに連絡する

3.単価アップ

単価アップは、患者さまに自費治療を理解してもらい、より良い治療として選んでもらう施策を指し、その方法は大きく分けて2つあります。

1)自費治療を受けたい患者さまをWebマーケティングにより集患する
2)来院した患者さまに治療情報などを提供し自費治療を選んでもらう

どちらにしても、自費治療を強引に勧めたり、営業をかけたりするのではなく、正しい情報を患者さまが理解し、デンタルIQを高めた上で、自ら選べる環境を整えることが重要です。

デンタルIQが高い人というと、歯科知識が豊富な人というイメージを浮かべがちですが、そうではなく「自分の口腔内に興味を持っている人」を指します。

歯科医師と患者さまでは、このデンタルIQに大きな開きがあります。つまり歯について考える時間が圧倒的に違うのです。

デンタルIQが高いとされている患者さまは、メンテナンスに定期的に通い、虫歯がなく、歯周病が落ち着いている方です。

その患者さまが3ヵ月に1回30分、1年間歯科医院へ通っていたとします。

この方が歯について考える時間は、1年間でせいぜい「2時間」です。

一方、歯科医療従事者は労働時間から計算すると、1,920時間も考えていることになり、天と地ほどの差があることが分かります。

したがって、患者さまのデンタルIQを高めるためのサポートは、想像以上に手厚くする必要があります。

例えばカウンセリングです。

ホームページに診療案内があったとしても、自分の症状がどれに当てはまるか分からない患者さまもいます。

そのような患者さまには、例えば「お悩み別メニュー」を配置します。

他にも「歯茎から血が出る」「口の中がねばねばする」など、検索ニーズを踏まえてコンテンツを用意するだけでも、患者さまのデンタルIQは高まります。

まとめ

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(画像=pixta)

ここまで「集患」「固定化」「単価アップ」について解説しました。

それぞれに「歯科医院側と患者さまで思っている以上にギャップがある」「そのギャップを埋めるために多くのコミュニケーションが必要である」という共通点があることを、お分かりいただけたでしょうか。

次回は、歯科医院のマネジメントについて解説します。

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内容紹介
●本書は
 1.自院の置かれているポジションや今後のステップを理解でき、
 2.そのポジションや今後のステップに必要な施策をインプットでき、
 3.明日からアクションできる
 ことを目的に「羅針盤・地図」として活用できる内容となっています。
●“自院の成長”に合わせて,何度でも読み返して活用できます。
● 本書を読んで明日から実行に移せば、「教育性」「社会性」「収益性」を兼ね備えたグレートクリニックに生まれ変われます。

目次
第1編 これからの歯科医院経営の方向性とは
第2編 歯科医院経営の実際ー成功事例にみる成長戦略
第3編 グレートクリニックに向けて

谷口 竜都

株式会社船井総合研究所 ヘルスケア支援部 医療事業開発G マネージャー

2016年中央大学法学部法律学科を卒業し、新卒で船井総合研究所入社。 歯科医院の経営コンサルティングを専門とする。

現在は、歯科、動物病院分野のコンサルティング部門の統括、および中国の歯科医院コンサルティングの立ち上げ、医療ビッグデータに関する新規事業開発のプロジェクトを行っている。