歯科衛生士の評価制度・キャリアパスは患者、歯科衛生士、歯科医院院長の3者にメリット

私、濱田智恵子が運営するTomorrowLinkで手掛ける「歯科衛生士の評価制度とキャリアパスの設計」は、正当な評価の仕組みを構築し、各々の歯科衛生士にキャリアプランを提示できることを目指しています。その目的は、歯科衛生士のモチベーションを向上させ、スキルアップに結び付けることです。

ただしパッケージ化された既製品のように、買ってきて組み込めば終わり、というわけにはいきません。導入の際には「歯科衛生士の評価制度入門 #02」で解説した通り、「目的の明確化」「評価制度の説明」「キャリアパスを共有できる環境の構築」「報酬に反映させるタイミング」といった4つのステップが必要で、事前準備が大切です。

そして今回からは、いよいよ実践編です。本記事では導入の障壁となりうる歯科衛生士の悩みの解決方法から、仕事の割り当てまで、運用の中心となる項目を解説していきます。

正当な評価が歯科衛生士の悩みを解消する

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(画像=naka/stock.adobe.com)

院長と歯科衛生士それぞれの気持ち

評価制度には、個人の立ち位置が明確化するというメリットがあります。また、院長も歯科衛生士を正当に評価してあげたいという考えで評価制度を導入します。しかし、それが必ずしも歓迎されるわけではありません。なぜなら歯科衛生士のなかには「自分の実力がバレてしまう」あるいは「お給料が下がってしまうかも」と捉えてしまう人が少なからずいるからです。

このように評価制度にネガティブな印象を持つ歯科衛生士がいる歯科医院では、「来月から評価制度をいれます」と、さも良い取り組みを行うかのように伝えたとしても、反発を生むだけです。

そこで、重要なのが事前の説明です。以下のような導入の目的を明確に伝えましょう。

  • 評価によって給料が下がることはない
  • 患者さんために最適な仕事の振り分けをしたい
  • 頑張っている人を継続的に評価してあげたい
  • 今の実力を知ることであなたの成長の助けにもなる

しかし、真摯な説明を重ねても、納得しない人は出るかもしれません。強引に推し進めると、辞めしまうかもしれません。まずは、導入前にスタッフとの信頼関係を構築することが重要です。この信頼会計がなく、推し進めるのは危険です。取り入れると決めたのであれば、覚悟を決めて導入に向けて準備し進めていきましょう。

実践1.研修のチーム分け

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(画像=taka/stock.adobe.com

能力別のチーム分けで教育の効率化を図る

評価制度・キャリアパスの導入にあたり、がわ(表面の仕組み)だけを採用しても恐らく上手く運用できません。ノウハウを持つ専門家のサポートを必要とするケースが多々あるからです。

そこでTomorrowLinkでは、歯科衛生士育成メンバーが講師として入り、スタートで基礎研修を行っています。このスタート研修は全員同時に受講していただき、全員同じ学びを行います。

ある一定期間の研修が終了する頃には、チーム分けも行うケースがあります。新人と歯科衛生士歴10年のスタッフが同じ研修では、どちらにとっても研修目標がブレてしまうためです。ここで重要となるのがチーム分けですが、学習塾のように単純に実力別での編成はしません。歯科衛生士のモチベーションの度合いを参考に、チーム分けをするのです。

たとえば今、私が担当させてもらっている歯科医院では、
‐A:結果が出せる人を育てるチーム
‐B:臨床の基礎知識やスキルを身に付けるチーム
に分けて研修を行っています。

もちろんAチームが上位クラスなのですが、内容的には課題などもあり、ある程度知識と経験があっても自ら学ぼうという気持ちがないとついていけません。

そのため事前に面談をして基礎知識&技術の確認やモチベーションの高さを再確認してから、最終的にはスタッフが決めます。

医院の方針などを踏まえて目標を設定

また、研修においては各々のキャリアパスについても決めますが、必ず到達目標を設定しています。たとえば、まず最初に「医院理念を理解し、医院のルールを守り、患者さんの健康に貢献する」といった全体の目標を設定します。

その後、さらに細かく「歯周検査では痛みを感じさせず、声掛けしながらの1点法が10分ででき、結果を説明できる」などといった部分目標を立てていきます。

このようにして、医院の方針や歯科衛生士の意向などを踏まえて、数年後の目標まで決めるのです。

ちなみにこれらの目標は「技能評価表」として1枚のシートにまとめ、面談にも使用します。次の章では面談について詳しく解説します。

実践2.面談

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(画像=naka/stock.adobe.com)

院長の評価に対する歯科衛生士の不満を回避するために

※具体的な評価項目については「歯科衛生士の評価制度入門 #02」を参照

評価制度を導入するうえで、欠かせない工程があります。それが面談です。一方的な評価や評価項目の策定は、歯科衛生士が不満を覚えるからです。事前に院長と歯科衛生士の意見をすり合わせ、お互いに納得のいく状態で評価制度を運営しなければなりません。

歯科衛生士の自己評価をもとにすり合わせる

ただし、ただ面談を行えば良いのかと言えば、そうではありません。本音で話せるかどうかは、お互いの関係性に関わってくるため、場合によっては何も聞き出せないこともあります。そのようなケースでは、私(コンサルタント)が、橋渡し役となってコミュニケーションを取っていきます。

面談は、積極性や協調性、責任感などを評価する「行動指針評価シート」と先述の「技能評価表」(歯科衛生士キャリアパスシート)を使っておこないます。これらの評価項目を歯科衛生士が事前に自己評価し、面談ですり合わせをしていくイメージです。

歯科衛生士の行動指針評価表
(画像=あきばれ歯科経営 online編集部)
歯科衛生士のキャリアパスシート(技能評価表)
(画像=あきばれ歯科経営 online編集部)

面談は評価内容のことだけではなく、普段のお互いの悩みや要望なども伝え合う時間にもなる大切な時間にもなりますので、十分な時間を取り進めていただければと思います。

実践3.仕事の割当システムを作成

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

評価に合わせた担当制で患者のリスクを低減

どのような仕事にも通ずることですが、患者さんに不利益を与えるような状態は経営を揺るがしかねません。そのため、仕事の割り振りは慎重に行なうことをお勧めします。

例えば、新人に重度歯周病患者を担当させてしまうということは、患者さんだけでなく歯科衛生士にも不安が付きまといます。歯科衛生士としても、評価(実力)に合わせた仕事を割り当ててもらえなければ不安や不満が生じますので、担当の歯科衛生士を振り分ける際には、是非意識してほしいと思います。

仕事のレベル定義により適材適所を実現

ではどのように適材適所を実現するのか? それは仕事内容のレベル定義を行うことです。「患者説明・医療面接」「口腔内写真」「プロ―ピング」「PCR」「細菌検査」「PMTC」「縁上SC」「(まずは)4㎜未満SRP」などの主要業務にレベルを設け、誰がどこまでの業務に携われるのかを明確にすると良いでしょう。

こうすればスキルが無い歯科衛生士が歯周病患者さんの症状を悪化させてしまう、といったリスクは防げますし、実力にマッチした仕事により順当なレベルアップも図れます。

まとめ

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(画像=Ксения Левашова/stock.adobe.com)

今回は評価制度・キャリアパスの導入・運用における実践編として、具体的な施策について解説しました。

  • 育成を促すために研修では、本人のモチベーションを判断材料にチーム分けを行う。
  • 歯科衛生士の不満を回避するために、「行動指針評価」と「技能評価表」をもとに事前面談を行う。
  • 患者さんに不利益を与えないよう、主要業務のレベルを定義し、仕事の割当システムを導入する。

次回は評価制度のメリットをより鮮明にイメージしていただくために、「育成や仕事の割り振りに役立つ4つの志向タイプ」「中途採用活動における評価制度の役割」について解説します。

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院長も知らない“スタッフの本音”から逆算した、お互いを理解するための医院運営の秘訣

歯科衛生士歴30年・歯科臨床コンサルタント歴20年の著者が、歯科衛生士の雇用・教育や医院運営に悩む院長に向けて、歯科衛生士から院長や医院に対する本音を引き出して分析した書籍。図説やイラストの例示などもあり、分かりやすく解説されています。

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また、就職時に「1、2年で転職しよう」「数年で違う仕事をしよう」と考えている人は少なく、「居心地の良い歯科医院なら、長く働きたい」と思う歯科衛生士がいる一方で、「歯科衛生士が集まらない」「入ってもすぐに辞めてしまう」と院長が感じるのは、両者の間で「働く」「働いてもらう」という認識にギャップがあるからです。

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