歯科開業医に向けた経営セミナーなどで「年収1億円を目指す」というテーマが出ることがありますが、年収が1億円を超える歯科医師はわずかとされています。
開業した歯科医院の院長が年収1億円を達成することは果たして可能なのでしょうか。
先に結論をお伝えすると、開業医でも年収1億円達成は不可能ではありません。
しかし、そのためには積極的な拡大戦略や歯科医療に限定されない幅広いスキルが必要です。
本記事では、個人開業の歯科医師が年収1億円を目指すために必要な戦略やスキルについて解説します。
歯科開業医で年収1億円以上は妥当? 年収傾向を確認
厚生労働省が2019年に実施した調査「第22回医療経済実態調査」 によると、2018年度における個人開業の歯科医院の損益(税引き前)は平均1,201.8万円です。
これが個人開業している歯科医師の年収に当たります。
個人開業の歯科医師が年収1億円を目指すとしたら、平均年収の8倍超を目指すことになります。
その実現はかなり難しいものの、後述する工夫を行えば可能性を高めることはできます。
それでは、開業した歯科医師の個人年収として1億円を達成するには、歯科医院の売上がどのくらい必要なのでしょうか。
2021年の調査によると、医業収入が1億円以上ある歯科医院の医業利益平均額は4,056.7万円です(個人開業・医療法人どちらも含む)。
税金を考慮する必要はあるものの、歯科医院の院長が個人年収1億円を達成するには、この約2.5倍の事業規模を目指す必要があるということになります。
歯科開業医で年収1億円を目指すために必要な5つの基本戦略
個人開業の歯科医師が、年収1億円を目指すために必要な基本戦略は、以下の5つです。
- 立地条件の良い場所で開業する
- 業務効率化を徹底する
- 人材確保と研修制度に力を入れる
- 売上アップの工夫をする
- 経営規模の拡大を目指す
各戦略を実行するには、それなりの金銭的・労力的・時間的な先行投資・継続投資がかかるのも事実です。
そのため、特に開業当初は負担が大きく感じられるものですが、開業歯科医師として年収1億円を目指すには大胆な経営方針が必要といえます。
また、これら個別の戦略に取り組むというよりも、むしろ複数の戦略を組み合わせて総合的な方針を決めることも必要でしょう。
以下では各戦略と投資の重要性について順番に解説します。
開業歯科医年収1億円の戦略1.立地条件の良い場所で開業する
売上を増やすには集客(集患)アップが必要であり、歯科医院の立地条件は集客に重要な影響を及ぼします。
歯科医院の良い立地条件とは、診療圏内に自院が注力する治療内容対象の患者が多いか、そのような患者が来院しやすいかによります。
例えば、インプラント治療を推進したいなら、中高年世帯が多く住むエリアやよく訪れる施設のあるエリアに歯科医院を構えるのがよいでしょう。
かつ、ターゲットとなる患者の移動するルート上に歯科医院があれば、日常生活のなかで自院が認知され、気軽に来院してもらえます。
また、患者の動線から自院がよく見えるか、都市計画などの影響で将来的に人口の変化があるかなども配慮すべき点です。
立地条件の良い物件で開業するにはその分の費用がかかりますが、「集客を確保するために必要な投資」という視点も持ちながら、費用対効果を計算することがおすすめです。
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開業歯科医年収1億円の戦略2.業務効率化を徹底する
歯科医院の売上をアップするには業務効率化の徹底が重要です。
業務効率化を実現するために重要な投資の1つに「機材・器材投資」があります。
例えば、効率的なオンライン予約システムを導入すれば、患者は24時間365日いつでも、空いている診療枠から来院可能な日時を自分自身で予約できます。
それは患者の利便性を向上させると同時に、電話応対に割かれるスタッフの業務軽減となり、業務効率化につながるのです。
また、院内レイアウトの工夫も業務効率化につながります。
スタッフの動線を考慮して配置や通路の幅を設計したレイアウトにすれば作業効率アップが可能です。
かつ、院内レイアウトは来院する患者に与える自院のイメージや患者の快適性にも大きく影響します。
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開業歯科医年収1億円の戦略3.人材確保と研修制度に力を入れる
人への投資も、年収1億円を達成するためには欠かせません。
特に歯科医院の開業当初は、人への投資負担が重く感じられることも多いものですが、不確実な経営環境で売上を確保するには、優秀なスタッフ体制の拡充や教育の整備などに先行投資を行う必要があります。
院長1人で患者に対応できる範囲には限りがあります。
個人開業の歯科医師が年収1億円を目指すなら、多くの患者に対応できるだけのスタッフ数が不可欠です。
しかし、歯科業界では深刻な人材不足が起きており、優秀な人材確保が歯科医院を経営する院長の悩みとなっています。
魅力的な求人条件には、労働時間や給与、職場の雰囲気などに加えて、福利厚生制度の有無も含まれます。
必要な人材を確保するためにも、適切な条件・制度を整備しましょう。
また、多人数のスタッフを教育するには、研修制度の仕組み整備も必要です。
スタッフのスキルやサービスの質は売上を伸ばすために欠かせません。
勉強会による新技術・知識の共有や、先輩スタッフによるOJTを充実させるなど、スタッフの成長につながる取り組みを導入しましょう。
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開業歯科医年収1億円の戦略4.売上アップの工夫をする
個人開業の歯科医師が年収1億円を目指すなら、積極的に売上アップの施策をする必要があります。
歯科医院の売上をアップするには、患者数アップや客単価アップが重要です。
患者数を増やすには、集客への投資が欠かせません。
集客に向けた施策とは、外観・看板や、チラシ・パンフレット、媒体への広告掲載が挙げられます。
同時にインターネットでの集客対策も重要です。
新規の患者の多くは歯科医院を選ぶ際にインターネットで検索し、公式ホームページや口コミサイトなども参考にしています。
これらを含めたWebマーケティング施策にも注力しましょう。
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また、自由診療の推進は売上アップを目指すうえで避けて通れません。
患者の負担額が上がるため自由診療を勧めにくいと思う歯科医院の院長もいらっしゃいますが、患者にとってよい選択肢を提供する機会でもあるため、自由診療の提案にも取り組んでみましょう。
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開業歯科医年収1億円の戦略5.経営規模の拡大を目指す
開業した歯科医師が年収1億円を達成するには、規模の拡大を目指す必要があります。
開業時に検討しておきたいのがユニット数(チェア数)です。
効率的に売上を確保するには集客数を増やすことが重要で、それには受け入れ態勢を整える必要があります。
スモールスタートして経営が軌道に乗ってからユニット数を拡大するという場合でも、初めから年収1億円という目標が明確なら、ユニット数を増やせるようにしておくことは不可欠です。
事業計画作成時には、ユニットを追加設置できるよう余裕を持ったフロアレイアウトにしておく、事前に水回りの配管工事を済ませておく、といった施策も選択肢として考慮しておくとよいでしょう。
また、開業した歯科医師が年収1億円を達成するためには、勤務医を雇用するなど、体制を拡充する必要があります。
開業してからある程度の年収を得られるようになるまでは1人体制で経営基盤を作ることが重要ですが、経営が軌道に乗った後は勤務医を雇用し、より多くの患者に対応できるようにする方がよいでしょう。
また、歯科医院1軒の運営だけでは売上に限りがあるため、分院を増やすなど、複数の歯科医院を展開するのも売上をアップする1つの方法です。
そのためには、医療法人化したうえで、分院ごとに管理責任者を置く必要があります。
ただし、分院が増えるとマネジメントの範囲も増えるため、経営オペレーションについては事前に練っておくことが大切です。
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歯科開業医として年収1億円を目指せる院長に必要な3つの心構え・スキル
個人開業の歯科医師が年収1億円を目指す場合、歯科医師としてのスキルに加えて以下の心構え・スキルが必要です。
- 経営者としての心構え・スキル
- 高いコミュニケーションスキル
- 円滑なマネジメントスキル
各スキルについて以下で解説します。
1.経営者としての心構え・スキル
個人開業の歯科医師の平均年収が約1,200万円というなかで、年収1億円を達成するだけの売上を確保するためには、経営者としての心構え・スキルが求められます。
心構えという点では、規模の拡大や経営リソースへの大胆な投資も選択肢に入れながら、費用対効果を冷静に分析し、時には果敢な決断をしなければならないこともあるでしょう。このような考え方を意識的に持つ必要があります。
スキルという点では、歯科医療のスキルだけでなく、幅広い分野のスキルも必要です。例えば、患者ニーズを把握して新規患者やリピーターを獲得するための広告マーケティングや、キャッシュフローを計画して適切な資金繰りをするなどのスキル・知識を養う必要があります。
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2.高いコミュニケーションスキル
個人開業の歯科医師が年収1億円を目指すには、高いコミュニケーションスキルも求められます。
患者に治療内容を説明して理解してもらったり、自由診療を勧めて同意してもらったりするためには、専門知識のない人にも伝わる説明ができなければなりません。また、患者の信頼を獲得してスムーズに治療を進めたりリピーターになってもらったりするためにも、歯科医師のコミュニケーションスキルは重要です。
加えて、人材マネジメントにもコミュニケーションスキルが欠かせません。スタッフと良い関係を築き、職場に定着させるためにも、コミュニケーションを大切にしましょう。
3.円滑なマネジメントスキル
人材をマネジメントするスキルも年収1億円を達成するために必要です。歯科医院を経営する院長が経営に関することを1人でなんでもやろうとしても限界があります。年収1億円を目指すなら、信頼できるスタッフを育成して組織化し、経営面においても自分の不得意なところを任せられるスキルも必要です。
スタッフに経営の一部を任せることには、スタッフのモチベーションを引き上げる効果もあります。また、長期的な安定経営のためにも、経営の一部を担えるスタッフを育成しておくことは有意義です。
まとめ
個人開業の歯科医師が年収1億円を目指すなら、歯科医療分野を超えた幅広い戦略やスキルが必要です。
戦略としては、自院の立地条件を吟味し、業務効率化や人材確保、売上アップ、経営規模の拡大などがあります。
さらに、歯科医院を経営する院長がマーケティングや資金繰りなどの経営スキル、患者やスタッフと良好な関係を築くためのコミュニケーションスキル、人材を有効活用するマネジメントスキルを身につけることも欠かせません。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。