歯科医院のレイアウト

「歯科医院のレイアウトを設計する時に意識すべきポイントが知りたい」「レイアウトを決める流れを理解したい」と考えている歯科医院の院長先生も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、歯科医院がレイアウトにこだわるメリットや費用の相場、エントランスや診療室など要素ごとのポイント、レイアウト決めで意識すべき点や流れについて解説します。

新築時と改装時の両方を対象に説明します。ぜひ参考にしてください。

歯科医院のレイアウトにこだわるメリット・重要性

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(画像=pixta)

歯科医院がレイアウトにこだわる主なメリット・重要性は以下の通りです。

  • 患者満足度アップに貢献する
  • 歯科医院のイメージを左右する
  • オペレーション効率を高める

それぞれ説明していきます。

患者満足度アップに貢献する

1つ目は患者満足度の向上です。歯科医院がレイアウトにこだわり、バリアフリーやプライバシー確保といった機能まで意識することで、患者にとって快適な空間を提供できるでしょう。

近年、新型コロナウイルス感染症の影響によって、アクリル板などの整備を行う歯科医院も増えました。

レイアウトによってゾーニングを行えば、患者の安心感につながる可能性があります。

このように、歯科医院のレイアウトを意識することで、患者にとっての機能性や安心感につながり、満足度向上に役立ちます。

歯科医院のイメージを左右する

レイアウトやデザインの印象は、歯科医院そのものへのイメージに直結します。

優れたレイアウトは歯科医院のブランドイメージ向上にも貢献するでしょう。

例えば、ファミリー向けの歯科医院であれば、レイアウトにキッズスペースを組み込む。

オフィス街にある歯科医院であれば、会社員向けにプライバシーを確保できるようゾーニングを意識したレイアウトにしてみる、などが考えられます。

オペレーション効率を高める

院長・スタッフの動線が練られたレイアウトであれば、日々のオペレーションもスムーズになります。

治療ユニットや待合室など、移動が多い場所は特にレイアウトにこだわるとよいでしょう。

オペレーション効率を高めるには、通路の幅も大切です。

スムーズな動線を確保するためにメイン通路を1.2メートル以上にする、その他の通路は60センチ以上にするなど、自院スタッフや患者が移動しやすいように設計しましょう。

歯科医院のレイアウトの費用の相場

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(画像=pixta)

レイアウト費用の目安は、坪単価40万~100万円が相場です。

歯科医院の特性として、電気・水道、治療ユニットなどさまざまな設備が必要ですし、医療機器用のスペースや電気回路も考えなければなりません。

そのため、飲食店・小売店と比べて坪単価は高めになる傾向があります。

例えば、治療に必要な最低限の機能性・快適性を求める一方、家具などは自分で調達して安く費用を抑えたい場合は坪単価50万円程度。

ある程度費用がかかってもよいので、治療設備などはもちろん、床・壁・家具など内装全体にもこだわりたい場合は、坪単価100万円程度を見ておきましょう。

ただし費用は業者によっても異なるため、複数の業者から見積りを取って比較検討することが大切です。

歯科医院のレイアウトで考えるべき8つの要素

歯科医院のレイアウトで考えるべき8つの要素について、それぞれ「スペースの役割」「レイアウト設計にあたっての留意点」を解説していきます。

歯科医院レイアウトの要素1.エントランス

エントランス(玄関口)には「おもてなしの第一歩」という役割があります。

レイアウト設計にあたっては、既存患者に愛着を感じてもらえるようにすると同時に、新規患者が訪れやすいように設計することが大切です。

また階段に手すりを付けたり、スロープを設置したりなどのバリアフリー構造も取り入れることで、身体が不自由な人にも対応しやすくなります。

他にも、潜在的な患者である通行人に歯科医院の雰囲気を知ってもらうため、クリアな窓ガラスや照明にこだわるという選択肢もあります。

歯科医院レイアウトの要素2.受付・待合室

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(画像=pixta)

受付のレイアウトのポイントに「機能性」や「安心感」があります。

レイアウト設計にあたっては、コンパクトで機能的な受付まわりや、シンプルなカラーコーディネートが大切です。

また、待合室の主な役割に「居心地のよさ」があります。

リラックスして過ごせるスペースの確保や、採光が行き届いた空間演出、温かみのある色合いなどがポイントになるでしょう。

歯科医院によっては、待合室にキッズスペースを設けたり、ドリンクコーナーやパウダーコーナーを設置したりしているところもあります。

受付と待合室は歯科医院の印象につながる場所なので、自院のコンセプトに合ったカラーコーディネートも重要です。

歯科医院レイアウトの要素3.診療室・オペ室

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(画像=pixta)

診療室・オペ室のレイアウト設計で意識したいのは「機能性」と「信頼感」です。

院長や自院スタッフがスムーズに動けるユニット配置が重要になります。

他にも、患者との信頼感を構築するために、コミュニケーションを取りやすい構造にすると共に、清潔さやインフェクションコントロール(感染管理)への気配りもポイントになるでしょう。

歯科医院によっては、光沢ある美しいカラーで統一しているケースや、オーダーメイド家具で構成された消毒・簡易技工コーナーやオペ室クリーン・エアカーテンを装備していることもあります。

歯科医院レイアウトの要素4.X線・CT室

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(画像=pixta)

X線・CT室のレイアウトのポイントは「機能性」です。

院長や自院スタッフがスムーズに仕事できるレイアウトを心がける必要があるでしょう。

歯科医院によっては、X線室に3D・パノラマX線装置を設置したり、的確かつ迅速に使用できるX線室とPCコーナーを設けたりしているところがあります。

患者本位の治療につなげるためのレイアウトという意識が大切です。

色合いに関しては、エントランスや受付・待合室のようなこだわりは不要かもしれませんが、自院のコンセプトに沿ったカラーに統一することで、スタッフも快適に働きやすくなるのではないでしょうか。

歯科医院レイアウトの要素5.事務室・カルテ室

事務室・カルテ室のレイアウトのポイントは「機能性」です。

レイアウト設計にあたっては、自院スタッフによるスムーズな動線の確保を重視した設計が大切です。

基本的に事務室とカルテ室は隣接しているケースが多く、受付コーナーやX線室横に設置している歯科医院も見られます。

色合いとしてはシンプルなホワイトカラーが多いようです。

事務室・カルテ室は来院患者の目に届きにくいので、歯科医院のなかでも、特に機能性を重視したレイアウトが必要といえるでしょう。

歯科医院レイアウトの要素6.化粧室

化粧室は患者向けと自院スタッフ向けの両方のレイアウトが必要になります。

患者向けの化粧室では、「使い勝手のよさ」「清潔感」などが大切です。

レイアウト設計にあたっては、待合室から直結した場所にトイレ、パウダールームを設置したり、患者通路から入りやすい設計にするとよいかもしれません。

清潔感を保つために、「掃除をしやすい場所にあるかどうか?」も考慮しましょう。

自院スタッフ向けの化粧室に関しても、「利用しやすさ」を考えたレイアウトにすることで、従業員満足度の向上が期待できます。

歯科医院レイアウトの要素7.カウンセリングルーム

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(画像=pixta)

カウンセリングルームのレイアウト設計のポイントは「安心感」です。

患者のプライバシー優先のコンサルテーションルームにするために、待合室や受付から離れた場所のレイアウトにする歯科医院が多いようです。

他にも歯科医院によっては、デジタル診療との関連を重視したカウンセリングコーナーを設置していたり、オールホワイトの清楚なカウンセリングルームや、グリーンとピンクのチェアーにウッド調のテーブルを配置したレイアウトも見られました。

カウンセリングルームは患者と1対1で接する場所なので、落ち着きや居心地のよさもポイントになるでしょう。

歯科医院レイアウトの要素8.院長室

院長室の主な役割は「院長自身が落ち着ける空間かどうか」ではないでしょうか。

ドクタールームと院長室を兼ねていたり、もしくは独立した院長室を設置している歯科医院もあります。

独立した院長室がある歯科医院の場合、1階は受付や治療室、2階に院長室など、階を分けたレイアウトが多いようです。

院長室を設置するかどうかは、建物の構造や院長自身の方針によります。

レイアウトに関しても、例えば「落ち着いたブラウンカラーによるシンプルな空間」といったように、院長の趣向を色濃く反映できる場所といえるでしょう。

歯科医院のレイアウト決めで意識すべきポイント

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(画像=pixta)

歯科医院のレイアウト決めで意識すべきポイントには以下があります。

  • 治療方針・経営コンセプト
  • 来院患者・ターゲット患者層
  • 院長・スタッフの動線

それぞれ解説していきます。

治療方針・経営コンセプト

治療方針・経営コンセプトに基づいたレイアウトという考え方が大切です。

例えば自院が「自費治療や高度・専門治療にも注力したい」という診療方針であれば、通常の診療室を削り、特別な治療に特化したスペースを設けてもよいでしょう。

「地域密着型」がコンセプトであれば、外観・レイアウトともに解放感を意識し、地域の特徴を取り入れるという選択肢があります。

子どもからお年寄りまで、幅広い患者を意識したレイアウトやカラーコーディネートもポイントです。

近年の虫歯数減少に伴って、「虫歯治療だけでなく予防歯科にも力を入れる」という方針であれば、治療スペース以外に指導スペースを確保するなども考えられます。

来院患者・ターゲット患者層

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(画像=pixta)

ターゲットとしている患者層を念頭にレイアウトを検討しましょう。

例えば改装にあたって、現在は高齢患者が中心でも、将来的にファミリー層にアピールしたい場合、バリアフリーに加えてキッズスペースを確保するなど、子ども連れ患者にも快適なレイアウトがポイントになります。

逆に、現在はファミリー層が中心でも、将来的に高齢患者をターゲットにしたい場合は、キッズスペースに加えて、トイレや階段に手すりを付けるなどのバリアフリー構造を意識したレイアウトが必要になるでしょう。

このように来院患者・ターゲット患者に沿った考え方が大切です。

院長・スタッフの動線

院長・自院スタッフが動きやすいレイアウトが重要になります。

受付~事務室~カルテ室~診察室が動線でつながっていればスムーズにスタッフが移動できるでしょう。

そのためには通路の広さも考慮する必要があります。

一見、機能的に動線がつながっているように見えても、「実際に業務を行ってみると移動しにくい」というケースもあるので注意してください。

そのような事態を避けるには、院長本人の判断だけでなく、事前にレイアウトを自院スタッフと共有して意見交換する必要があるかもしれません。

歯科医院のレイアウトを決める流れ

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(画像=pixta)

レイアウトを決める際は、設計会社・施工会社と相談しながら詰めることになります。

ここでは、レイアウト決めをスムーズに進めるために、基本的な流れとポイントについて解説していきます。

歯科医院コンセプト・イメージの整理

まずは「地域密着」「ファミリーに親近感」「信頼性」など、歯科医院の構想を決めましょう。

その場合は5W1Hで考えるとよいかもしれません。

  • Who…誰に
  • When…いつ
  • Where…どこで
  • What…何を
  • Why…なぜ
  • How…どのように

「地域密着」「ファミリーに親近感」というコンセプトは「Who(誰に)」に該当しますし、「信頼性」は「What(何を)」に当てはまります。

他にも自院の特徴を定めたり、すでにある特徴を深めながら、イメージを整理することが大切です。

土地・物件の選定

歯科医院の開業・移転の場合は、まず土地・物件から選定する必要があります。

歯科医院のコンセプトや治療方針などのイメージが構築されていれば、それをもとに選定しましょう。

物件は大きく「居抜き物件」と「スケルトン物件」に分かれます。

居抜き物件とは、従前の歯科医院の医療機器などがそのまま残っている物件。

スケルトン物件とは、内装設備がない状態の物件です。

居抜き物件のほうが、素早く開業・移転しやすくコストも抑えやすいものの、従前の歯科医院のコンセプトを引きずる可能性がある点には注意が必要です。

一方、スケルトン物件はゼロからレイアウトしやすいものの、その分、開業・移転のスピードは遅くなるのに加え、コストも高くなるというデメリットがあります。

設計・施工会社選び

設計会社、あるいは設計〜施工まで担当してもらえる施工会社を選びましょう。

基本的には面積などの物件情報をもとに複数の会社から相見積りを取り、費用感や実績、対応範囲などを考慮して選定します。

歯科医院などの病院・クリニックは特殊な作りなので、「今までに医療機関の設計や施工を手がけたことがあるかどうか」の実績チェックも重要です。

設計会社や施工会社との意思のすれ違いを防ぐために、事前に流れを確認し、納得したうえで契約を結ぶことも大切といえます。

基本設計案の相談・レイアウト確定

レイアウト決めは、「患者のプライバシーに配慮したい」「ファミリー対応したい」など、院長の要望を伝えることで図面・CGなどでの提案があるので、それをもとに徐々に細かくすり合わせし、レイアウトを確定させましょう。

一度レイアウトが固まって施工が始まれば、その後の変更は難しいので、事前に納得いくまで何度でもすり合わせを重ねることをおすすめします。

前述したように、レイアウトの図面・CGを自院スタッフと共有することで、スタッフ目線の意見を得られるので、新規開業ではなく移転の場合は検討してみてはどうでしょうか。

まとめ

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(画像=pixta)

歯科医院がレイアウトにこだわることで、「患者満足度アップ」「歯科医院のイメージ向上」「オペレーション効率の向上」という3つの効果が得られます。

レイアウトを決める際は、「各スペースの役割」と「レイアウト設計にあたっての留意点」を踏まえたうえで、診療室やX線室、カルテ室など要素ごとに考えるとよいでしょう。

実際にレイアウトを決める際は、「治療方針・経営コンセプト」「来院患者・ターゲット患者層」「院長・スタッフの動線」を意識することが大切です。

設計会社・施工会社に相談すると、図面・CGなどでレイアウトの提案を受けられるので、それをもとに意見のすり合わせを行いましょう。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。