私はこれまでに医院を経営する多くの歯科医師にお会いしてきましたが、話をしていて気になることがよくあります。
それは先生方の抱えている「お金に対しての誤解」です。
ここで言う誤解とは、お金に対する捉え方や使い方を指しますが、なぜ誤解は生まれるのでしょうか?
それはお金に対する知識不足や、お金のことを真剣に考えていないから。つまり多くの方が、なんとなくお金と付き合っているからです。
今回は、お金に無関心な先生について紹介します。
ある意味羨ましい気がしますが、お金に関心がないことで起こりうる弊害も多くあります。
お金に関心のない人が正しくお金を使えるようになるにはどうすれば良いのか解説します。
今回のご相談:親からもらったお金に税金なんてかかるの?
お金への無関心でリスクが増す
世の中にはお金に対して無関心・無頓着な人がいます。
お金に強い執着があるよりは良いのかもしれませんが、無関心過ぎるのは同じように危険です。
お金に関する仕組みを知り、正しく理解しなければ、損をするリスクも増えますし、ときには騙し取られてしまうこともあるからです。
ではなぜお金に無関心な人が減らないのでしょうか。
わたしは日本の金銭教育に原因があると考えます。質素や慎ましさを美徳とする傾向がある日本では、お金に関する話は卑しい行為と捉えられがちです。
そのため義務教育下では、「使う」「貯める」「運用する」「稼ぐ」などお金の仕組みについてあまり教えていないのです。
これではお金の本質を捉えることができず、いつまで経ってもお金の有効な使い方はできません。
お金の専門家に任せるのも一手
自らお金の機能や役割など仕組みについて学ぶことが一番ですが、そもそも関心のない人に「勉強してください」と言ったところであまり効果はないでしょう。
そのような方は、専門家にお金を管理してもらいながら学ぶのが最も現実的だと思います。
相談先の第一の候補は、信頼できる税理士や会計士です。
納税や経理、財務のスペシャリストにブレーンとして入ってもらうことで、相談もできますし、誤ったお金の使い方も防げます。
また、金銭面についてあれこれと気にかけてくれる人に協力を仰ぐのも1つの手です。
「車の税金は払った?」「〇〇はもう申し込んだ?」といった感じの、お節介焼きぐらいの方がちょうどいいかもしれません。
次からは具体的な相談者の例をご紹介します。
今回の相談者:無関心と無知でお金の管理ができないY先生
相談者のプロフィール
親が経営する総合病院の歯科部門院長。30代のY先生とはご自宅でお会いしました。
地方都市の田んぼのど真ん中に大きな新居を構えていました。真っ赤な高級外車マセラティがなんとも周囲の風景と馴染んでいなかったことを記憶しております。
奥さまも歯科医師ですが、小さなお子さんがいるので現在は専業主婦をしています。
Y先生はお金にあまり関心がなく、そのせいでお金に関する知識もほとんどありません。
ライフプランニングを提案する際、年収をお聞きしたところ500万円とのことでした。
しかし、預金通帳を見てびっくり。残高は5,000万円でした。奥さまも同じ金額でしたので2人合わせて1億円です。
年収500万円にもかかわらず30代前半で5,000万円の預金があるのは不自然だと思い、なぜかとたずねてみました。
すると「親が毎年1,000万円を勝手に振り込んでくるんです。それが貯まっているだけ」と説明され納得しました。
そこで「贈与税のお支払いはしましたか?」と質問すると、「親からもらったお金で、どうして税金を払わなくてはならないのですか?私はお金が欲しいなんて一言も言ってないのに」とキョトンとしているのです。奥さまも同じ見解でした。
あくまでもわたしの考えですが、このご夫妻は実家が裕福なため、お金で苦心した経験がないのでしょう。
それにオーナーが親とはいえ雇われ院長です。経営について考える必要もなかったと思います。
このような生い立ちが、お金について考える機会を奪っていたのではないでしょうか。
ある意味幸せな人生とも言えますが、ひとりの歯科医師として、父親として、不幸なことでもあると思います。
Y先生へのアドバイス
お金への無関心が、幸せを遠ざけている旨を説明しました。金融や税金についてのリテラシーが低いと、詐欺行為に遭いやすいといった注意喚起もさせていただきました。
しかし、どこまでいってもY先生がお金に関心を持つようなイメージがわきませんでしたので、具体的には信頼できるブレーンをそばに置くことをおすすめしました。
わたしの助言を少しでも生かし、ライフプランに役立てていただけているなら嬉しい限りです。
今回のまとめ
お金に関心がない歯科医師は、裕福な家庭で育った人が多い印象があります。
お金のことで争ったり、人を憎んだりしないため、とても「いい人」といえます。
Y先生の例は極端ではありますが、お金を等身大に扱えておらず、幸せを遠ざけてしまっています。
歯科医師に限ったことではありませんが、日本の金銭教育の至らなさが原因の一つであることはいうまでもありません。
先生のお子様たちには、「お金を等身大に扱うこと」をしっかりと学んでいただきたいと望むばかりです。
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キャッシュフローの試算を基に、まずは単年度予算を作成し、歯科医院経営を見える化。ここをスタートに目標と実績のギャップを示し、ギャップの改善をPlan-Do-Check-Actionサイクルを通じて実行。
これまで数々の支援を通じて「資産運用の悩みは、それぞれの家庭で違う」ことを強く実感したうえで、歯科医院の院長先生ごとのライフプランナーとして寄り添う。