院長不在クリニックに重要な「勤務医」が働きたくなる条件

歯科医院の経営コンサルティングをしている渡部憲裕です。

私はこれまで多くのクリニックの年商1億円達成をサポートし、歯科医院経営を撤退する際の出口戦略の成功実績を重ねてきました。

その要因は、急用や病気などで院長が不在の時でも機能する歯科医院の仕組みづくりに成功したことにあります。

本連載では、その「院長不在クリニック」の仕組みづくりについて解説します。

そして昨今、新型コロナウイルスの蔓延により、世の中の価値観は大きく変化しました。

災害などのジャパンリスクに備えつつ、afterコロナのニューノーマルに対応していくために医院経営の見直しは急務です。

前回お伝えしたように、院長不在クリニックが実現すると、創業者である院長がいなくなっても医院の存続が可能となり、この先何十年も地域医療へ貢献することができます。

また、経済的な自由の獲得により、スタッフやご家族、院長先生ご自身も守られます。

しかし、いきなり院長先生がフェードアウトしては、クリニックが機能しなくなる可能性があります。

そこで今回は、院長不在クリニックに必要な勤務医の確保についてお伝えします。

院長不在クリニックづくりに欠かせない勤務医

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(画像=pixta)

リスクの少ない道を選ぶ歯科医師が増加

経営者でもありオーナーでもある院長が「不在」でも回るクリニックをつくるには、院長先生のポジションに代わる勤務医が必要です。

それも長く働いてくれる人材の確保が欠かせません。

実は、現在の歯科業界は勤務医が長く働いてくれる条件が揃っています。

連載1回目でもお伝えしたように、歯科業界は「患者数の減少」「廃院する医院の増加」「医業収入の低下」などの問題を抱えています。

クリニックの開設も減少傾向なので、開業を望む歯科医師には一見チャンスに見えるかもしれません。

しかしそこには大きなリスクがあり、若手歯科医師たちは独立をためらっています。

例として、全国の歯科の中央値である年商3,600万円となった場合の収入を計算してみます。

【年商3,600万円(月間300万円)の医院収支】
開業資金で5,000万円の借り入れ(年間2%の利率で返済)
→返済額は37万円の計算(返済37万円 >利益27万円)
→足りない分は院長収入の40万円、または個人の貯蓄から補填
→院長収入は 実質30万円

念願の歯科医院を開業し年商3,600万円となっても、ひと月の収入は実質30万円です。

勤務医時代より年収が低くなり、さらに仕事量まで増えてしまいます。

もし勤務医で月300万円の売り上げを出していれば、歩合給を売り上げの20%として、月60万円の収入です。

さらに、借金も責任もない気ままさがあります。これこそが「勤務医が長く働いてくれる環境」です。

この「リスクを取りたくないから勤務医でいる」、または「リスクはあるけど開業してみたい」勤務医の背中を押せる環境が、院長不在クリニックにはあるのです。