新人歯科衛生士は、知らないし、できない!

新人歯科衛生士のこと、どれだけ知ってますか?

毎年、新年度を迎えると歯科医院にも新人スタッフが入ってきます。

その時期に多くの医院長を悩ませるのが「新人教育」ではないでしょうか。

新人歯科衛生士の多くが、歯科衛生士学校を卒業して国家試験に合格したばかりの若い世代です。

院長先生と年齢が離れているだけでなく、仕事に対する知識や経験、意識や価値観なども異なるため、コミュニケーションの面などでさまざまなギャップが生じやすくなっています。

歯科医院を経営する立場からすると、「早く一人前の歯科衛生士になってほしい」と思うのは当然のこと。

しかし、最初の新人研修が失敗してしまうと、歯科衛生士として成長する前に離職する可能性が高まります。

この連載では、歯科人材育成事業や歯科コンサルティングで多くの実績を持つ経験から、「医院の業績や成長に貢献できる歯科衛生士を育てるためのコツ」を解説していきます。

第1回目は、新人歯科衛生士をとりまく現状から、新人歯科衛生士の本音や悩みを紹介します。

新人歯科衛生士への理解を深めることが、上手に育成するための第一歩となります。自信を持って新人育成に臨めるヒントになれば幸いです。

歯科衛生士の育成がより困難な時代に

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(画像=pixta)

2020(令和3)年の歯科衛生士の国家試験合格者数は、6,624人(合格率 93.3%)でした。

ここ数年間は、毎年約6500人~7000人の合格者が出ています(参照元「厚生労働省 第30回歯科衛生士国家試験の正答・合格発表の訂正とお詫び 」 )。

昨今では、生活習慣病などの発症に歯周病が深く関わっていることから、口腔保健のスペシャリストとしての歯科衛生士に対する社会的なニーズが高まっています。

しかし、歯科衛生士学校は増えているものの入学者数は減少傾向にあり、学生募集を停止する専門学校も出るなど定員割れも常態化しています。

私は歯科衛生士学校の非常勤講師も務めていますが、学校教育の現場は厳しい状況にあると実感しています。

高い志を持って入学する学生もいれば、「国家資格がほしい」「就職に困らないから」という理由だけでなく、「何となく親に勧められたから」など目的があいまいな学生もいます。

このことから、学生生活での学びのモチベーションも様々です。

歯科衛生士の育成を学校教育だけに任せるのは不十分で、歯科医院へ入職後も現場で育てることが求められるようになっています。

また、歯科衛生士の業務内容は多様化・高度化したことも、歯科衛生士の育成を困難にしています。

「歯周治療」「う蝕予防」「SPT」などに加えて「インプラント治療」「矯正歯科」「訪問歯科」「ホワイトニング」といったより高度な知識や技能も求められている歯科医院が増えました。

「日々の業務に精一杯でポテンシャル以上のものが要求されることに苦労している」という現場からの声も上がっています。

ますます重要になる「新人育成」

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(画像=pixta)

3〜4年間の座学や実習を経てようやく国家試験を突破したことで、多くの新人歯科衛生士が、不安な気持ちを持ちながらも達成感に満ち溢れた状態で入職してきます。

「国家試験に合格したということは、歯科衛生士になる権利を与えられただけに過ぎません。本当の歯科衛生士になるのは、まさにここからスタートです。」

新人歯科衛生士の研修時、私は必ずこのことを伝えています。

また、歯科衛生士の育成について相談される院長先生には、冗談交じりで「新人歯科衛生士は、いわば免許証を取ったばかりのペーパードライバーです。まずは事故を起こさないようにちゃんと運転できるように育てることが大切です」と話しています。

実際、新人歯科衛生士は、専門業務を行える資格を持っているだけに過ぎません。

学校での成績が良くても、実際の業務ではつまずくことも多く見られます。

資格を取って終わりではなく、日々の業務の中でも「学ぶ姿勢」を持たなければ、歯科衛生士としての自身の成長も医院経営への貢献も実現することは困難です。

日進月歩で医療技術が発展する医療業界では、歯科医師と同様、歯科衛生士にも、常に最新の知識と技術の習得を目指す「生涯教育」が求められます。

そのため、生涯教育の第一歩となる「新人研修」は、医院にとっても、歯科衛生士にとっても非常に大切な意味を持つことになるといえます。

今どきの新人歯科衛生士はこんな感じ

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(画像=taka/stock.adobe.com)

これまでに多くの新人歯科衛生士の教育に携わってきました。

最近特に感じているのは、「働くことに対する意識や価値観がだいぶ変化してきた」ということです。