院長1人は限界 歯科の勤務医雇用の不安を解消

歯科医院をとりまく環境は年々厳しくなっていると言われています。

多額の初期投資によって開業したものの、さまざまな経営上の問題に直面して悩んでいる院長は多くいらっしゃいます。

この連載では、多くの歯科医院の経営コンサルティングを手掛けているユメオカの代表である丹羽 浩之が、歯科医院の院長が事業拡大を目指す中で直面したお悩み相談を受け、これまでの経験を踏まえて課題解決のヒントを提示していきます。

今回は、勤務医の雇用に関するご相談です。

勤務医を雇う際の注意点を教えてください

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(画像=pixta)

<相談内容>

「院長1人体制での経営に限界を感じています。今後、事業拡大することを想定し、勤務医を雇いたいと考えています。ただ、売上が増えても私だけ忙しくなってしまったりしないか。結果的に利益や院長収入が減ったりしないか不安が尽きません」

今回は勤務医の雇用がテーマです。

特に、初めて勤務医の雇用を検討される院長からは「経営への貢献度をどのように評価すればいいのか。基準があれば教えてください」という問い合わせも多くいただきます。

安定的な医院経営を阻害する一番の原因は「院長が抱える漠然とした経営への不安」です。

その中でも特に「スタッフ」と「お金」の問題が不安を増大させることが多いといえます。

勤務医に関する不安としては、

  • 成長してもらいたくて指導しているが、同じことを何度言っても伝わらない
  • ついつい口調が強くなってしまう
  • 歩合制を採用した場合、自身の売り上げにつながること以外には関心を示してくれない

といった声を聞くことがあります。

また、「雇用することで、運転資金が急速に足りなくなる恐れはないか」という不安を抱く院長もいらっしゃるようです。

加えて、勤務医のキャリアが浅い場合は教育する時間を確保する必要もあり、さらに当然ながら人件費も増加します。

「結局自分だけが忙しくなって、自身の収入にも悪影響が出て損するだけだ」と考え込むこともあるでしょう。

こうした考えが頭の中をグルグルと回り続けることは、院長の心の状態に非常に悪い影響を与えてしまいます。

自分1人で抱えるのではなく、客観的な意見やアドバイスをもらうことで解決できる問題もあります。

身近にいる相談相手として候補に上がるのは、つきあいのある税理士ではないでしょうか。

ただ、税務・財務面からの分析で改善策は提示できたとしても、実際に改善策の遂行や達成までを支援することは難しいのが現状です。

グルグル思考からの脱却に役立つ「数値の明確化」

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(画像=pixta)

これまで全国3,000以上の医院に教材を販売したり、経営改善の支援をしてきました。

ユメオカとは「夢とお金の作戦会議」の略です。

私たちが実践している「予防型経営ビジョナリー・コンサルティング」は、「ビジョン」と「お金(数値)」を両輪として医院の成長に必要な条件を明確にし、その到達までの道筋を逆算して描いていきます。

今回の相談の解決策としては、ビジョンと結びつけた「数値の明確化」で不安を排除することをお勧めしたいと思います。

「人件費が増える」「自分の時間が取られてしまう」と漠然とした不安が頭の中でグルグル巡るだけでは、解決策を見出すことはできません。

そこで私たちは、「医院の資金状況を可視化すること」が重要だと考えます。

どれくらいのコストや時間が必要になるのか、という見通しを具体的な数値に落とし込んで試算します。

数字の裏付けを基にした適正な判断こそが、不安を排除できるのです。

そのツールには、日本キャッシュフローコーチ協会が推奨する「お金のブロックパズル」がお勧めです。

院長の適切な経営判断を可能にする「お金のブロックパズル」

お金のブロックパズルとは、西 順一郎氏が著書『戦略会計STRACⅡ」で紹介したSTRAC表(現・MQ会計表)をベースに、日本キャッシュフローコーチ協会代表理事を務める和仁 達也氏が考案したものです。

資金の流れ全体が分かりやすく図解されており、理解しやすくなります。

会計知識を習得していない院長にとって、的確な経営判断を支援するツールとして注目を集めています。

たとえば、人件費の上限基準や売り上げ目標の根拠を定めることが可能となります。

お金のブロックパズルは、まず年間の売上高を「変動費」と「粗利」に分解します。

売上高から変動費を差し引いた残りが粗利となりますが、この粗利こそが、歯科医院の経営判断を決定づける重要な要素です。

次に粗利を「固定費」「利益」に分類した上で、固定費を「人件費」と「その他の固定費」に分けます。この段階で大まかな医療収支が割り出せます。

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(画像=株式会社ユメオカ)

そこに勤務医を入れた場合の人件費を加えて、粗利率や利益にどれくらいの影響が出るかを試算します。

人件費の基準を見る上では、粗利における人件費の割合を示す指標「労働分配率」に注目してください。

労働分配率が低い方が組織としての生産性が高くなり、少ない人件費で多くの粗利を生み出していると言えるのです。

こうしたシミュレーションによって先を見通すことで、医院の安定した経営に必要な利益の目安を把握でき、漠然とした不安の解消が可能になります。

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(画像=株式会社ユメオカ)

「歩合制、固定費」、どちらを選ぶべきなのか?

勤務医の給与に関しては「歩合制か、固定給のどちらにすべきか」という相談も多く受けます。

その際も、ブロックパズルを用いたシミュレーションに基づき、判断することをお勧めします。

ここで忘れてはいけないのが、自医院で勤務医にどのような役割を求めているかという観点です。

たとえば、高度な歯科治療を新しく習得してもらいたい場合は、当然講習などの育成にも時間をかけるべきです。

歩合制では納得してもらえない可能性もあるため、まずは固定給で安心して勤務してもらい、売り上げに貢献できるまで育てるといった方法も考えられます。

また、即戦力として採用した場合は、本人の希望を踏まえて「歩合制」を採用するケースもあります。

とはいうものの、グルグル思考に捉われて前に進めないことも多いのが現状です。

ビジョンに基づいた経営判断には、具体的な行動を後押ししてくれる“良き相談相手”が必要となります。

ユメオカには提携コンサルタントが全国に在籍しており、ビジョナリー・コーチングをベースにさまざまな経営に関するご相談に対応しています。

若い歯科医師との世代間ギャップに気づかない院長もいる

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(画像=pixta)

勤務医の採用においては「来てほしいと思える人材が求人に応募してくれない」という声を聞くことも多いです。

実際、歯学部への進学志望者の減少傾向や、資格はあっても歯科医という職業を選ばない人が増えているそうです。

しかし、求人募集をするとすぐに集まる歯科医院とそうでない医院との「人気の二極化」が進んでいると感じています。

「募集しても集まらない」と嘆く院長の中には、世代間のギャップやニーズを理解できていない方も見受けられるのです。

現在の20代後半から30代の歯科医師は、以前と比べて開業志向が薄れているという印象を受けます。

ライフワークバランスを重視した結果、長く歯科医師を続けるために「生涯勤務医」を選択する人も現れています。

そうした実状があることを理解しなければ、求めている人材の採用は困難だと思います。

採用時に注意すべき点としては、医院のビジョンに沿った人材を採用できるかが鍵になります。

「どんな人材を求めているか」「どういう役割を担ってほしいか」を明確にし、共感してくれる人材を採用するのが大事です。

ユメオカでは、医院の魅力をより分かりやすく発信したり、求める人材獲得の支援や教育カリキュラムの策定などもお手伝いしています。

もし、人材採用に関する支援が必要だとお考えなら、私どもの活用も選択肢の1つとして考えていただければと思います。

ユメオカ人気教材の7本

予防型歯科医院で「昇給・カリキュラム作成・空き時間活用」に悩む院長はこちらをご確認頂ければと思います。

予防型経営★実践アカデミー

予防型歯科医院づくりに邁進する全国の院長が集まっているのが、予防型経営★実践アカデミー。 会員制(月額5,500円)で「学び・交わり・相談できる」場となっていて、ユメオカ共通言語をもとに、他医院の事例を学び、zoomなどで交流し、個別相談も可能です。

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丹羽 浩之

株式会社ユメオカ 代表

大学時代に統計工学を専攻後、コンサルティング営業の世界へ(2004年に独立)。2008年に株式会社ユメオカを設立。

医院の想いが伝わらず、自費率やリコール率が低く苦難する多くの歯科医院の存在を知る。「単なるノウハウ提供、他医院の事例提供」ではない「考え方と豊富な具体例」により、院長の経営力育成と医院ビジョン実現に貢献するコンサルティングスタイルを確立。

「院長の考えを整理すること」「分かりやすく数字で裏付けること」「患者心理に沿った診療システムをつくること」を得意とする。2016年からは予防管理型歯科医院経営を業界横断的に推進する活動をはじめ、歯科界に新たな価値提供をし続けている。