理由も告げず歯科医院を辞めたスタッフ 彼女は何に悩んでいたのか?

エイチ・エムズコレクションの濵田真理子です。

私は歯科衛生士としてスキルを積みながら24歳で起業し、以来27年に渡り歯科衛生士のスキル研修から人材マネジメント、衛生士の育成から集患の支援など実に様々な分野で歯科医院様にコンサルティングを行ってきました。

多くの先生方のお話を伺って共通しているのは、医院長のお悩みの多くは「スタッフ」に対するものであるということです。

数百という医院様の問題解決をしてきた私だからこそお伝えできるスタッフのトラブル回避法を、具体的な事例と合わせてご紹介していきます。

「講師を信頼しすぎてスタッフの気持ちを見逃しちゃった」編 

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(画像=pixta)

【今回ご相談に来た歯科医院の環境】
・院長 39 歳、開業9年目。
・ユニット11台
・スタッフ13名
・平均年齢32歳(最年少19歳・最年長28歳)

⬛︎2年で5名ものスタッフが、理由もわからないまま退職

(お悩みキーワード 歯科衛生士・外部講師・まかせっきりは危険・主導権は握る)

(以下、院長談)

当院では、技術研修はフリーランスの講師を呼んで定期的に行なっており、2020 年で4年目(相談当時)になります。

外部講師を呼んで研修を行うのは、スタッフへの投資と考えており、月に一度の研修もスタッフには良い刺激になっているようです。

また、講師の先生は私の話もしっかりと聞いてくれて、良き相談相手でもあります。

私の悩みは、この 2 年で歯科衛生士と助手が計5名退職したことです。

私としては、外部の研修も入れ、給与も十分なはずなのに、退職に歯止めがかからない理由がわかりません。

講師の先生からは、「最近の歯科衛生士は根気がないので気にしても仕方ない」「研修も入れているのに感謝がない人はいらない」と励ましてもらっていますが、やはり院長としてはどうにか原因究明をしたいと考えています。

今回歯科衛生士が2名続けて退職したため、私自身にいたらない点があるなら変えていきたいと思い、「スタッフ分野ならエムズさんに」と紹介されてたどり着きました。

【同じ取組みがダメなら、一度視点を変えてみる】
(お悩みキーワード 早期退職・退職の連鎖・人の定着の悩み)

⬛︎「本当の理由」は辞めた本人に聞いてみる
(お悩みキーワード 本音・面談・医院の外で会話)

早速、退職した歯科衛生士 1 人と「今後の改善のために色々教えて欲しい」という理由で、院長含めた3名でお会いする機会を設けました。

話しやすさを考えて医院に呼び出すのではなく、個室でフルコースが出る食事会にしました。

最初はお互いの近況報告をしていましたが、そのうち元スタッフご本人が話し始めました。

(元スタッフ談)
院長とはずっと仕事をしたいと思っていたけれど、今のスタッフさんとは仕事をしたいと思えなかったのが、退職の理由です。

私の入職後、少し経ってから退職した歯科衛生士の先輩からもネガティブな情報を色々聞いていたり、 1 年弱の間に 2 名の歯科助手が歯科衛生士ともめて退職しても、自分自身とは関係無いと感じていました。

ただ、私と入れ替えで退職した歯科衛生士の人は医院のこれからにとって私より絶対に必要な、人間的にも技術的にも素晴らしい方だったと思います。


このように「当初はスタッフの退職は自分自身と無関係」と感じていたのに、なぜ本人までも退職の決断をするに至ってしまったのでしょうか。

原因は「スタッフ間の関係性」にあったようです。

深く聞いていくと、意外なことが分かりました。なんとぎくしゃくしたきっかけの一つに、良かれと思って導入していた「技術研修」があったのです。

【連鎖退職では自分のことと感じると辞める傾向がある】
(お悩みキーワード 退職者・面談・定期的な関与)

月に1度いらっしゃる先生は情熱的な人で、最初のうちは楽しく参加しました。

しかし頻繁に問題をおこす先輩達と仲良くしているようで、時々先輩達の悪口を聞いても一緒に笑って注意をしないことが気になり始めました。

その後、その講師の先生から「日々相談に乗るからLINEを交換しよう」と言われてその夜から頻繁にLINEがくるようになりました。

これも最初は嬉しかったのですが、内容が常に一方的で私の不安を聞くというより「私が無事かどうか?」の確認連絡ばかりで、段々と「私が退職しないように院長が確認するように頼んでいるのでは?」と感じるようになったのです。

【外部講師とは育成の方向性は共有しておく】
(お悩みキーワード 誤解・問題あり・LINE・私生活)

先輩に相談したとこころ「院長が離職を予防でさせているのでは?」と言われたこともあり、「プライベートにまでそんな風に入り込まれるの怖い」と思ったものの、講師の先生に確認することもできませんでした。

【信頼関係がないうちはスタッフは院長に本音を言わない】
(お悩みキーワード 本音・誤解・ネガティブ・聴く)

また私から見ると院長先生は優しいのに、先輩たちは控室で文句を言っており、「文句を言うくらいなら先輩達が辞めればいいのに」と日々ネガティブな感情が生まれてしまい、そんな自分が嫌になったことが退職を申し出た理由です。

【掛け違ったボタンは在職中にかけなおす】
(お悩みキーワード 誤解・後悔・残念・コミュニケーション不足 )

実際のところ院長先生は、講師がスタッフとLINEのやりとりをしていることも知らなければ、退職しないよう確認したこともありませんでした。

しかし先輩スタッフの言葉や研修講師の行動に翻弄され、結果的には退職を選んでしまったのです。

最後は、事実を知った院長も元スタッフも泣いていました。

良かれと思ってお金を払って招いた外部講師も、先輩スタッフの問題行動によりこのように残念な結果となってしまうこともあるのです。

⬛︎解決策

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(画像=pixta)

今回は、「理念の作成」と「服務規程の評価制度を作成」することで、解決を図りました。

理念の作成により、院長の考えや想いを「見える化」し、スタッフと共有・評価することで歯科医院の経営方針が浸透していきました。

女性経営者視点での真理子流メソッド

退職の理由に【絶対】や【真実】はありませんが、しかし大切な事は本人から【聴く】ことです。

真実がわからないと改善も出来きず、何度も同じことを繰り返すことになります。

こちらの医院は院長の経営と医療に対する強い想いがあったものの、スタッフにしっかりと伝えられるほどまとまっていなかったため、オンラインで 3 か月かけて理念を整理しました。

コンサル視点での秘訣(ポイント整理)

【技術指導を入れているから教育は大丈夫!】ということはありません。

このように院長が知らないうちに毎日LINEを送ってスタッフを追い詰めていた、などというケースもあるのです。

日々、組織は変化しています。成長を続けるためには人の心が動く伝わる理念と理念浸透の定期的な【全体研修】が必須ですし、それを外部スタッフにもしっかり共有する必要があります。

「雇用しているはずの人に経営方針が支配される医療機関にしない」という確固たる意識が重要です。

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濵田真理子さんの最新書籍紹介

院長・スタッフに好評のコミュニケーションテキストの超ロングセラーを大改訂した新版。数百の歯科医院でチームワーク作りを個別指導してきた著者が、最も大切にしている基本をまとめました。新人教育、チームワークのシステム作りに最適。

医療現場で必要なコミュニケーションの理解・レベルアップのために。一般常識的な接遇方法から、患者さん・スタッフとの高度な意思疎通の方法までを学ぶ。(書籍帯書きより)

著者・濵田真理子さんからのコメント

成長評価シートは、組織における具体的な行動内容を整理し設定できます。
書籍で紹介されている「成長評価シート」を用いることで、組織の具体的な行動内容を整理し、設定しやすくなります。以下が新しい「成長評価シート」のポイントです。

・項目を最低限に絞ったことで達成も管理もしやすい
・シートを用いて職種別の評価項目を明文化することで、意識や労働レベルの標準を共有しやすくなる
・スタッフ教育や能力開発・成長のための目標管理が容易になる
・業績考課ではなくプラス考課されやすい短期的指標でシートのフレーム
・を作成。定期的にアップデートすることで、長期的視野を持つスタッフにも活用可能

今回のシートは「成長を支援する」ことを目的として作成したため、スタッフ一人ひとりが組織の中で必須の項目を日々問いかけ実践する機会が増えるでしょう。

個々にとっても自分の努力や成長が評価されたすいため、モチベーションを維持・向上しやすいのも特徴で、面談で水の泡とならないよう面談術も紹介しています。

コロナ禍でスタッフの評価項目も変化しています。
組織の方向性や目標が変化する時には、同時に人事の評価基準や項目も見直しが必要です。それを組織全体に浸透させるツールとしてお使い頂くことで、是非、成長を続ける医療機関の安心・安定経営にお役立てください。

濵田 真理子

有限会社エイチ・エムズコレクション 代表取締役
歯科衛生士
福祉用具選定員
歯科MG戦略インストラクター
全米NLP協会公認トレーナー
歯科メディカルサポートコーチングトレーナー

1991年に日本大学歯学部附属歯科衛生学校を卒業。 卒業後、財団法人日本歯科研究研修協会に入職。歯科衛生士教育機関を育成するトレーナーとしての教育と研修を受けながら臨床に携わる。

その後女性の起業への理解がまだ少なかった1994年に「歯科業界の中で、疾患を持たない患者が歯科医院に来院し続ける仕組みを作りたい」との思いから、エイチ・エムズコレクションを起業。

歯科医院に対して20年にわたる人材コンサルティングの実績を持ち、歯科医療スタッフ分野における人材育成の先駆者として活躍。スタッフが思い通りに成長しなかったとしても「数年後には変わるかもしれない」と決して諦めず、人材育成に尽力している。