歯科医院の評価制度・キャリアパス導入、現場の抵抗勢力との正しい向き合い方

慢性的な人材不足が続いている歯科業界では「いかに優秀な人材を確保したり、育成していけばいいのか」が、多くの歯科医院の経営課題にもなっています。そうした課題を解決する方法として、自医院に最適な「評価制度」や「キャリアパス」を取り入れる動きが見られています。 この連載では、歯科人材育成事業や歯科コンサルティングで多くの実績を持つ筆者が「最適な歯科衛生士の評価制度・キャリアパスを導入するためのポイント」を解説していきます。今回は、評価制度・キャリアパスを導入する上での注意点とその解決策を解説します。

制度導入への抵抗勢力が出る、その背景にあるものとは?

今まで評価制度を導入していない歯科医院では、評価制度やキャリアパスの導入に対して現場からの反発が出る可能性があります。実際、制度に対する従業員の反応は様々です。例えば、日ごろから頑張っている歯科衛生士は「キャリアパスがあるのは嬉しい。どうやって評価されているかという疑問がなくなる」と感じるでしょう。しかし、「何となく勤務したいのにキャリアパスとか面倒だし、評価が低くなってお給料が上がらなかったら困る」と考える歯科衛生士も少なからず存在します。

歯科衛生士のキャリア志向タイプは主に4分類できる

これまで多くの歯科衛生士の育成に携わってきた中で、様々な歯科衛生士に会ってきました。その経験の中で、業務に対する歯科衛生士たちの意識は大きく4つのタイプに分類できると考えています。

歯科衛生士4つの意識

例えば、「歯科衛生士として長く患者とかかわりたい」「常に成長しながらキャリアアップしていきたい」「(将来的には)子育てしながら続けたい」「普通に無理なく仕事をして給料をもらえればいい」など、仕事に対する意識は人それぞれです。

基本的に、歯科衛生士のキャリア志向は「組織志向」「仕事志向」「変化志向」「安定志向」の4象限に分類できます(まれに、どのタイプにも当てはまらない歯科医衛生士も存在しますし、「特にやりたいことが見当たらない」という歯科衛生士も存在します)。

経営者の立場からすると「組織志向&変化志向」や「組織志向&安定志向」の歯科衛生士が望ましいでしょう。しかし、全ての人をここに当てはめることは、現実的ではありません。また、「全ての能力を高いレベルか、もしくは一定以上のレベルを持ってもらいたい」と願う方も多いでしょう。ただ、自医院の歯科衛生士全員を同じステージまで育成するのは、難しいのが現実です。

最適な解決策は、個々の歯科衛生士が持つキャラクターを、どのように自医院の経営と結びつけるかです。異なる志向を持つ歯科衛生士たちを同じ物差しで育成したり、評価することは困難です。そのため、それぞれのタイプを「どのように育てればいいのか?」「どのように評価したらいいのか?」について、分けて考えることで、それぞれの育成軸や評価軸を考慮する必要があります。

評価制度導入時に見られる共通の課題

評価制度・キャリアパスが受け入れられない現場の課題には、いくつかの共通点があります。以下で解説していきましょう。

(1)客観的評価のみでの評価は絶対にしない

歯科衛生士を評価する場合、歯科衛生士による「自己評価」、所属する部署の上司や継続的に研修などを行う外部講師による「客観的評価」という2つの評価視点があります。注意すべき点として、歯科衛生士の評価を行う際、客観的評価だけで決定するのは絶対に避けていただきたいと思います。

客観的評価が低い場合、その歯科衛生士は「自分はできているはずなのに、できていないと評価された」と不満に感じることもあります。自己評価と客観的評価をすり合わせることが重要です。

評価への不満の問題点を解消するためには「実技テスト」や「筆記テスト」、「症例検討会」などでスキルの習熟度、知性を測ることが有効です。テストの実施によって、歯科衛生士業務に関する価値観や成長軸を院内で統一することができるでしょう。

また、評価する際には「先生に気に入られると評価が高くなる」「先生の感情で評価されている」と思われないよう注意することも必要です。

(2)数字だけの評価では、歯科衛生士自身が疲弊する

歯科衛生士の報酬を決める際、歩合制を取り入れる歯科医院もあると思いますが、それが実態を反映していない歩合制だと、歯科衛生士が業務に対するやりがいや目標を失う可能性もあります。メインテナンス数など、数字を含めた評価ももちろん必要です。しかし、数字だけで評価するのは、歯科衛生士が疲弊する可能性があるのでご注意ください。

また、メインテナンス数や売り上げが上がったからといって、すぐに報酬を上げてほしいという発想のスタッフばかりではありません。仕事に充実感があれば報酬面をそれほど気にしないという人も少なくありません。もちろん売り上げが上がることで自身の昇給や賞与などに反映されれば喜ぶことでしょう。私が評価制度とキャリアパスの連動を推奨するのは、自身の目標を設定しながら評価を上げることで報酬に反映できる仕組みを構築できることが理由です。

(3)「頑張っているのに認めてもらえない」と不満の温床に

スタッフが多い場合、院長が全員の仕事を見ることはできません。そのため院長は、自分の前で明るく元気な人を高く評価してしまうことがあります。歯科衛生士の中には、「院長が見ていないところで頑張っているのに」と自分の評価に対する不満を抱くこともあるので、十分な注意が必要です。

また、業務の負担が偏っている場合も、不満を助長します。「同じ給与水準なのに、自分だけ重症患者を任された」「先輩よりも業務が多いにもかかわらず、先輩の方が待遇が良い」など、院長が気づかないところに不満の原因は多く存在するものです。

それらの最適な解決策は、歯科衛生士一人ひとりが持つキャラクターを、どのように自医院の経営に結びつけるかにかかっています。

ゼネラリストもスペシャリストも必要な時代に

昨今は「障害者歯科」「老年歯科」「在宅療養」といった専門的な口腔健康管理の重要性が高まっています。今後、歯科衛生士も専門性の高いスキルが求められると予想されます。先生方にも得意分野があるのと同様、「この分野では負けない」という長所を持った歯科衛生士が求められると思います。

すると、歯科衛生士にも育成貢献ができる「ゼネラリスト」だけではなく、専門領域を持つ「スペシャリスト」としての価値が注目されてきます。評価制度やキャリアパスは、「歯科衛生士のダメな部分を見るのではなく、個々人の得意分野をどう伸ばしていくか」という観点で運用されるのが望ましいと考えます。

評価制度やキャリアパスの導入をスタッフがどう受け止めるかは様々です。しかし、それらの反応を受け止めたうえで、「個々の働き方を含めて従業員の成長をサポートしたい」としっかりと伝え理解されることが、成長する歯科医院の院長に求められているのではないでしょうか。

抵抗勢力があるとすれば、まずはスタッフとの信頼関係を構築できていない可能性があります。評価制度を導入するには、事前に院長とスタッフとの信頼関係が関わるということです。

成長する歯科医院の院長に求められること

自分の得意分野を認めてもらい、それが評価につながり、報酬にも反映される。このような気持ちよく働ける場所であれば、歯科衛生士の退職も食い止められると思いませんか?

繰り返しになりますが、人材不足の歯科業界では、歯科衛生士だけではなくアシスタントや受付の育成も必要です。作成する場合は、全てのスタッフに対するキャリアパスや評価項目を作成することを推奨します。

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