産休でリーダーが交代 歯科医院の規律が乱れ、困った私がやったこと

私、小塚義夫は、名古屋に『つゆくさ歯科医院』を開業して10年が経ちます。

開業以来売り上げもメインテナンス数も右肩上がりで、自費率約30%以上の安定経営を行なっています。

「歯科開業医として成功を収めるために、勤務医時代に何ができるのか?」「将来のビジョンをどのように立てるべきか?」など、私の開業から今日までの軌跡を振り返りつつ、歯科医院開業のメソッドを解説していきます。

4回目の今回は、「マネジメント編」です。

医院経営の成功には「マーケティング力」と「マネジメント力」の2つが必要

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(画像=pixta)

院長は歯科医師であると同時に経営者です。

経営者には、利益を上げ続ける仕組みをつくる「マーケティング力」と、スタッフを上手に活かす「マネジメント力」が求められます。

特に、歯科医院は女性が多い職場です。女性スタッフを上手に活かすことが、医院経営を成功に導くポイントになります。

当医院には、素晴らしい出会いに恵まれたおかげで、現在は、驚くほど優れたスタッフが揃っています。

私が何も言わなくても、スタッフ自らが率先して業務を進めるという、まさに理想的な医院の雰囲気ができあがっているのです。

しかし開業当初からこのような最高の医院だったわけではありません。

マネジメントの最大のピンチを、どう乗り越えたのか?

今では非常に素晴らしい職場環境ですが、かつて、マネジメントに関する思わぬ失敗をしてしまった経験があります。

一度は「医院を閉めて、出直した方がいいのでは」とまで思いつめたこともあったのです。

歯科医院は組織ですから、正しく運営していくためにはルールをしっかり守ることが鉄則です。

方向性の違いやスキルの遅れを指摘したり、規則を破ったら叱ったりすることも必要なのです。

それは分かっているものの、もともと女性を叱ることができないんですね。

姉妹がいなかったから女性の気持ちが分からず、スタッフには、いつも良い顔をしがちでした。

もう5年以上前の話ですが、医院が成長して無意識のうちに自信満々だった時期があり、そんなタイミングに綻びが出てきました。

優秀なリーダーの産休がきっかけだった

最初のスタッフリーダーは非常に優秀だったのですが、産休に入ったため、別のスタッフにバトンタッチしました。

それが結果的には、リーダーにしてはいけないタイプだったんですね。

そのスタッフは、実は感情的で、組織のルールを守れないタイプでした。

ところが診療に関しては基本的に一所懸命。隠された問題の本質に、私はなかなか気付けなかったのです。

良くないタイミングは重なるもので、その頃ちょうど報酬に関するルールの改定を実施したことがスタッフに不評で、医院の雰囲気がおかしくなり始めました。

その中で、信頼していた真面目な他のスタッフが反旗を翻し、それはまさに晴天の霹靂。「医院を閉めてやり直そうか…」と真剣に考えるほど大きなショックを受けました。

ちょうどその頃、採用したスタッフが、ズル休みをして遊びに行った様子を平気でSNSにアップするようなタイプだったため、さらに組織の規律が乱れきってしまいました。

もう何もかもが悪い方へと転び、困り果てた私は、外部のコンサルタントに依頼し、環境の整備を進めることに。

それが好転となったのです。

自分が苦手な分野は積極的に外部人材の登用を

院長が女性スタッフをまとめるリーダーを育てられるのならいいのですが、何事にも得手不得手があります。

院長がすべての業務を自分でやるのではなく、時には外部スタッフに頼る判断をすることも、医院経営の上では必要です。

外部スタッフに任せる際の秘訣は、頼るからにはその人を信じること。

その人と院長が言うことが違うと、他のスタッフが混乱する元になります。幹部間の意見を徹底して一致させておくことが大切ですね。

医院経営・マネジメントを学ぶ成長プロセスの「守・破・離」

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(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

「守・破・離」とは、芸事の修業における段階です。

この考え方に倣い、自分が今どの段階にいるのかを意識しながらスキルを獲得していけば、効率よく着実に成長することができます。

今回は、医院経営・マネジメント力を身につける上での「守・破・離」について解説します。

●守:1~3年目 

勤務医時代の3年目までは、マネジメントの基本を習得する段階です。

まずは、院長や先輩歯科医の真似をし、医院の考えに自分を染めることで、効率よく成功している医院の経営・マネジメントのやり方を学びとります。

●破:4~6年目 

4年目からの3年間は、リーダーとして積極的に意見を言い、実践する段階です。

●離:7年目~ 

勤務医7年目以降は、院長の代わりにマネジメントを行えるようになる段階です。

こうした段階を踏まえてマネジメント力を身につけていけば、開業歯科医として必要なスキルを確実に習得できます。

勤務医1~3年目はマネジメントの初めの一歩

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(画像=pixta)

勤務医時代の最初の3年間は、マネジメント力を身につけるため基礎を学ぶ時期です。

勤務医に課された日々の業務は忙しいと思いますが、慌ただしく過ごすだけで終わらないよう注意し、しっかりとマネジメントの基礎を身につけましょう。

そのためには、次のようなことを意識しながら勤務するのがおすすめです。

  • スタッフと良好な関係を築き、スタッフの意見を取り入れる。
  • オン・オフともに、尊敬される人物になる。
  • 医院の取り組みには、積極的に参加する。
  • 後輩の指導をする。
  • 叱ること、褒めること、両方できるようになる。

医院経営を成功させる「マネジメント力」は勤務医のうちに習得

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(画像=pixta)

勤務医時代の3年間で、マネジメント力の基礎を築いたら、4年目からはマネジメント力を磨く第2段階に進みます。

歯科医院はチームプレーで成り立つ組織です。うまく回すコツは、女性スタッフを上手に活かせるようになること。

「そのために大事にしたいのは、『規律』です。

組織としてのルールを決めて、小さなことでも必ず守ってもらいます。

次に『愛情』ですね。スタッフ一人ひとりと向き合うことを大事にします」

女性スタッフは、ドクターの人間性を冷静に見ています。表面上のごまかしは通用しません。

開業してからスタッフと良好な関係を築くためのトレーニングのつもりで、真心を持ってスタッフとの信頼関係を構築しましょう。

「褒めるだけではなく、上手く叱ることができるドクターにならなくてはなりません。

叱るといっても怒鳴りつけるのではなく、諭す。

そして、褒めるというよりも、スタッフ個人を尊重して向き合う。この姿勢が大事です。

言わなければいけないことをビシッと伝える時のために、日頃から人間関係をつくっておくといいでしょう。

面倒に感じるかもしれませんが、チームプレーを上手く機能させることは、歯科医院という組織を維持・発展させるために非常に重要です。

開業してから慌てることがないよう、勤務医時代にマネジメント力をしっかり身につけておきましょう。

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小塚 義夫

医療法人つゆくさ歯科医院 院長 / 歯科医師

平成23年5月に名古屋にて、つゆくさ歯科医院を開業。専門は歯周病・入れ歯全般。歯周病治療に力を入れており、ターゲットを具体化した歯科医院経営の成功事例として多数の講演実績あり。

元々は教職志望だったこともあり、後輩歯科医師の育成にも注力。開業を志す若き歯科医師のよき相談相手としても活動中であり、開業にまつわるエピソードや知見を基に、あきばれ歯科経営 onlineにも寄稿頂く。