歯科医院の売り上げに一喜一憂しなくなる お金の不安の解消法

皆さんは、世界的なベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター 共著)を読んだことはありますか? 

この本では「お金のために自分が働くのではなく、自分のためにお金に働かせなさい」というメッセージが込められていて、投資・資産運用によって不労所得の源泉を築くことが推奨されています。

また、いつまでたってもしんどい状態が続く「ラットレース」から抜け出すヒントが書かれているとも評価されています。

ラットレースとは、収入が増えたにもかかわらず、自分の使うお金も増えてしまったため、常に支払いに追われ続ける様子を指しています。

私は「歯科医師の方を専門とするファイナンシャルプランナー」として、これまで何百世帯という歯科医師の方の家計相談を受けてきました。

その経験を踏まえて感じているのは「歯科医師の中には、ラットレースにはまる“損する生き方”をしている人が多い」ということです。

この連載では、私に寄せられてきた歯科医師からの資産運用のご相談を基に、ラットレースにはまりやすい理由などを紹介していきます。

今回は「収入こそが、その人の価値を決めている」と信じたことで悩み続ける歯科医師のお悩みを取り上げます。

今回のご相談:医院経営の売り上げで一喜一憂して疲れている歯科医師

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

相談者:医院の収入の数字が自分の価値だと信じ込んでいるB先生(45歳)

【相談者のプロフィール】
大学3年生のころ、中小企業の経営者だった父親が不渡りを出して会社を倒産させた場面に遭遇。

父親の落胆ぶりは根強く記憶に残っており、決して事業で失敗してはならないという意識が人一倍強い。

「家族が大変な時に、歯科大学に通っている場合ではないのでは? 大学を辞めて働いた方が良いのか」と当時葛藤した。

失敗の恐怖と言うものが身体感覚として残っており、それが闇雲に忙しく慌ただしく人生を送る原因にもなっている。

「お金 = 人生のスコアカード」に捉われるとどうなる?

多くの個人事業主にとって、どれだけ収入を得るかは「その人がどのぐらい優秀であるかを意味する」ことと捉えることができます。

実際、「自分の収入は即、その人自身のプライドにつながる」という方もいらっしゃいます。

また、「収入が上がれば大喜びし、下がれば気分が落ち込む」というサイクルを繰り返します。

まるで「収入の数字こそが、その人の価値」と感じて、より多くの収入を得ようと躍起になるのです。

そうなってしまうと、自分らしさや心のやすらぎを保つ余裕はなくなるのは当然でしょう。

勝ち負けの指標としてお金を捉えて「とにかくお金を増やすことで競争に勝ちたい」と考えてしまうのです。

行き過ぎた結果、「競争している」ことすら忘れてしまい、ただ闇雲にレースを続ける人も多くいらっしゃいます。

収入・支出の把握に役立つ「キャッシュフロー表」作成

B先生からお話を伺った私は、現在はまっている考え方を見直す必要があると考えました。

また、仕事やお金を失う恐怖を恐れて、ただ闇雲に忙しく働き、慌ただしく人生を送らないようにするための取り組みを一緒に始めることにしました。

歯科医師だけでなく、内科・外科等の開業医、税理士・弁護士・司法書士などの専門家、いわゆる個人事業主として社会に貢献している方々はラットレースにはまりがちだと思います。

お金に対する漠然とした不安を解消することを目指し、「いくら稼いでおけば、どれくらい使っても大丈夫か」「将来のためにどれくらい資産を作れば安心できるのか」など具体的に数値化して把握し、その実現に向けた資産運用のお手伝いをしました。

資産形成では「貯金」と「運用」が重要な要素となります。まずは貯める習慣を作り、次にその貯蓄を増やせる資産を形成、運用する仕組みを作っていくのです。

私とB先生は、まず「資産管理表」を作成して、現在の資産状況を把握することから始めました。また、「実際に毎月の収入と支出がどれくらいあるのか」というお金の流れ(キャッシュフロー)を把握することも大切です。

そこで毎年の支出と収入、資産の推移を記入した予定表である「キャッシュフロー表」を作成しました。キャッシュフロー表は「現在から将来にわたる収支がどれくらいになるか」という見通しを立てることに役立ちます。

その結果、出産や住宅購入、子どもの教育費、退職後の老後資金などの家族全体のライフイベントとキャッシュフローを紐づけることで、将来必要となる具体的な金額を予測可能になりました。続いて、具体的な目標金額を設定した資産形成に着手しました。

資産形成では、B先生の投資額などを考慮して、最適な金融商品を選んで投資を始めたのです。

こうした取り組みを通じて、B先生の中でもさまざまな変化が生まれ始めました。ただ闇雲に売り上げを追いかけなくなったのです。

また、自分のためだけに使える時間が増えました。

これまで医院で仕事に忙殺されてきた夜の時間帯でも、自宅のソファで過ごすことができ、以前から興味があったジャズを聴いて楽しむ余裕も生まれたということです。

まとめ

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(画像=moonrise/stock.adobe.com)

歯科医院の経営では、開業時に多くの借入をして、その後はローン返済に追われることもあります。

また、家庭においては、出産や住宅購入、子どもの教育費、退職後の老後資金子供の教育資金などを考慮する必要があります。

そのため、仕事やお金を失うという考えに捉われ、闇雲に忙しくして、慌ただしく人生になりやすい職種かもしれません。

そうならないためにも、漠然としたお金の不安を解消することが重要です。将来の問題点を早めに発見したり、着実な対策を打つことが望ましいでしょう。

しかし、キャッシュフローの作成には、手間や時間がかかることもあります。

そこでお勧めしたいのが、ファイナンシャルプランナーなど“資産運用のプロ”にご相談されることです。興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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本間 博史

歯科専門ファイナンシャルプランナー

歯科医院の経営サポートの「攻め(マーケティング)」と「守り(お金の対策)」をバランス良く提供。歯科医院の院長先生の「夢」を設定し、将来を明確に思い描く。

キャッシュフローの試算を基に、まずは単年度予算を作成し、歯科医院経営を見える化。ここをスタートに目標と実績のギャップを示し、ギャップの改善をPlan-Do-Check-Actionサイクルを通じて実行。

これまで数々の支援を通じて「資産運用の悩みは、それぞれの家庭で違う」ことを強く実感したうえで、歯科医院の院長先生ごとのファイナンシャルプランナーとして寄り添う。