歯科医院の院長の「空き時間」を生みだすための2つのコツ

年々、経営環境が厳しくなっていると言われる歯科医院。

多額の初期投資によって開業したものの、さまざまな経営上の問題に直面して悩んでいる院長は多くいらっしゃいます。

この連載では、多くの歯科医院の経営コンサルティングを手掛けるユメオカ代表の丹羽 浩之が、歯科医院が事業拡大を目指す中で出てきたお悩み相談を受け、これまでの経験を踏まえて課題解決のヒントを提示していきます。

今回は、多忙な院長先生からの「歯科医院スタッフへの権限移譲」に関するご相談です。

医院スタッフへの権限移譲に関する悩み

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(画像=polkadot/stock.adobe.com)

相談内容:
診療も経営マネジメントも、院長である私が中心です。

スタッフにも少しずつ役割を与えて、権限を委譲するように取り組んでいます。

しかし、最終的には私が確認・判断しなければいけない状況です。

「もし、自分が休んでしまったら、売り上げが大きくダウンしてしまわないか」といつも不安を抱えています。

どうすればいいでしょうか。

院長の「空き時間」を生み出せる医院運営を確立すること

院長自らが歯科医院運営の全てを切り盛りし、その忙しさから抜けられないというのは、よくある相談です。

こうした現状から抜け出すためには「院長の空き時間を作ること」が大切です。

多くの院長は、目の前の日々の業務に忙殺されがちだと思います。

まずは、ご自分が抱えている現在の業務を整理して、棚卸しを実施することをお勧めします。

次に、自院のスタッフへの権限移譲を適切に進めることで、院長の空き時間を作ることが可能です。

具体的には、院長の業務を「自分でやらなければいけないこと」「他のスタッフに任せられること」に分類してみましょう。

その際には「重要度」「緊急度」という観点で仕分けていくとよいと思います。

また、「診療面」「運営面」という2つの観点で、業務を切り分けることもお勧めしています。

診療面では、勤務医の採用や育成を実施したり、運営面では、運営の核となるチーフを選定して、役割を担ってもらうなどが考えられます。

大事なポイントは「すべてを一気に進めるのではなく、徐々に取り組むこと」です。

権限移譲のコツ(診療):勤務医の採用・育成方法

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(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

多くの医院が抱える課題とは、「院長の診療部分の負荷が高い」ことです。

権限移譲を進める際には、まず診療面の改善から始めるとよいでしょう。

その具体的な方法とは「勤務医の採用」です。

ただ、初めて勤務医を採用するとなると、なかなか決断がつかないこともありますよね。

顧問税理士に相談したとしても、埒が明かないことも少なくありません。

私のところに相談を持ちよる院長のお話を聞いていると、決断できない理由の多くが「勤務医を採用したことで売り上げはどうなるのか?」という不安から来ています。

たとえば、「勤務医を1人入れたことで、どれくらいの売り上げが必要になるか」を試算してみてはいかがでしょうか。

「これくらいの売り上げがあれば、勤務医を増やしても大丈夫だ」という基準を明確にすることから始めてみましょう。

その後、徐々に勤務医に慣れてもらったり、歯科医としてのスキルや経験を磨いてもらうことで育成を進めていきます。

ある程度簡単な保険治療から渡していくことで、徐々に院長の時間が空くようになるのです。

解決策としてのコンサルティング利用

経営拡大を実現する上では、スタッフ採用や設備投資などの支出がどうしても増えてしまいます。

多くの院長が、漠然とした不安を抱えていらっしゃいます。

それらの支出に対するキャッシュフロー(CF)を明確化することで、安心して医院の経営改善に踏み出すことができると思います。

「自院の経営を改善したいのなら、必ずキャッシュフローを確認するようにしましょう」と、私が院長に提案しても、実際にはキャッシュフローの確認ですら、一歩目を踏み出せないことも多いですね。

その解決策としての1つとして、「コンサルティングを利用してみる」ことをお勧めしています。

「売り上げがこれだけあれば、勤務医を採用しても医院経営は回る」というのが分かれば、院長が休診時間を設けても大丈夫になることも多いです。

キャッシュフローの確認は、忘れないでください。

診療面の改善の注意点

ただ、勤務医を採用しても、院長の診療時間が減らない医院もあります。

勤務医がある程度、診療を回るようになったら、「院長は、水曜日の午後を休診する」などの強制的に時間を創り出し、その余った時間をマネジメントなどの別の業務に充てることも大事です。

権限移譲のコツ(歯科医院の運営):役割・業務内容の明文化

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(画像=taka/stock.adobe.com)

次に、運営面での権限移譲の進め方をご紹介します。

運営面の業務の中には、他のスタッフに任せられる領域も多く含まれます。

たとえば、スタッフの採用や教育・育成、給与計算処理、HP(ホームページ)作成や各種業者などの外注管理といった付帯業務などが挙げられます。

しかし、ただ移譲すればいいというわけではありません。

注意しなければならない点もあるのです。

たとえば、「あなたはチーフになるから、皆をまとめて頑張ってね」と伝えるだけでは、ほぼ失敗してしまいます。

運営面での権限移譲を実施する際は、「期待する役割や業務内容を明文化して、スタッフ全員に理解してもらうこと」が非常に重要です。

また、慣れてもらうためには時間がかかることも多いので、院長の負荷がすぐには減らないと想定してください。

まずはスタッフの役割を明確化

どうすれば、運営面の権限移譲はスムーズに進められるのでしょうか。

そのシンプルな解決策は「権限移譲するスタッフの役割の明確化」です。

「どんな役割が求められているか」が明確に伝わっていないと、権限移譲はうまくいきません。

期待する役割や業務内容を明文化して、スタッフ全員に理解してもらうことが大切です。

そこで重要なのが「医院のビジョンを共有する」ことです。

院長が意識して、医院全体に根付かせることが大切になります。

また、大元になるビジョン、ミッションがないと、どんな改善策も付け焼刃にしかならないことを常に意識してください。

ビジョン共有のポイントは、「Why」「What」「How」のバランス

どんなに素晴らしいビジョンを考えても、スタッフが腹落ちしない限りは、そのビジョンの実現は難しいです。

私たちユメオカでは、「Why(なぜやるのか)」「What(なにをやるのか)」「How(どのようにやるか)」という3つの観点で、ビジョン共有や院内スタッフへの浸透を支援しています。

ビジョンの共有では、通常、Howの部分が注目されがちです。

しかし、それだけでは決してうまくいきません。

たとえば、経営改善に取り組まれる医院の多くがまず始めることとして、「成功した医院の取り組みを真似する」ことが挙げられます。

ただ、成功された医院が紆余曲折した経緯を知らずに「単にこのツールを使えばいい」と考えたり、具体的な方法を再現することに終始するだけの場合が多く見られます。

しかし、自院にはうまく適用できず結果的に行き詰まって、コンサルティングパートナーに支援を求める医院も多いのです。

私たちは、一つ一つが“点”である個別事象ではなく、ビジョンに沿った“Why(なぜやるのか)”“What(なにをやるのか)”“How(どのようにやるか)”という3つの観点からより広げていき、線や面を形作ることが重要だと考えています。

また、これら3つの観点のバランスが取れた改善こそが成功につながると確信しているのです。

まとめ:1人で思い悩むなら、第3者の支援も検討

権限移譲を含めた経営改善は、自院だけでやるのは、多くの時間や労力がかかってしまいます。

その場合、ユメオカのような第3者と協力した方が早く解決できることも多いです。

私たちは、まず院長の意識改革から始めていきます。

また、豊富な実績をベースに、単なるコーチングではなく、よりイメージしやすい手法で院長を支援してきました。

1人で考えているだけでは決まらなかったことが、私たちとの対話を通してわずか5分、10分でも進展した事例もあります。

成功した医院のやり方だけを真似る、表面的な改善策だけをやっても効果はありません。

自院だけでは明確なビジョンを作れなかったり、ビジョンはあるけれど具体的に何をすればいいか分からないケースも多く見てきました。

今の状態がゴールであれば、変える必要はありませんが、改善したいとお望みなら、まず何を目指すかを明確に設定することが大切です。

そのお手伝いを私たちは続けています。

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予防型歯科医院づくりに邁進する全国の院長が集まっているのが、予防型経営★実践アカデミー。 会員制(月額5,500円)で「学び・交わり・相談できる」場となっていて、ユメオカ共通言語をもとに、他医院の事例を学び、zoomなどで交流し、個別相談も可能です。

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丹羽 浩之

株式会社ユメオカ 代表

大学時代に統計工学を専攻後、コンサルティング営業の世界へ(2004年に独立)。2008年に株式会社ユメオカを設立。

医院の想いが伝わらず、自費率やリコール率が低く苦難する多くの歯科医院の存在を知る。「単なるノウハウ提供、他医院の事例提供」ではない「考え方と豊富な具体例」により、院長の経営力育成と医院ビジョン実現に貢献するコンサルティングスタイルを確立。

「院長の考えを整理すること」「分かりやすく数字で裏付けること」「患者心理に沿った診療システムをつくること」を得意とする。2016年からは予防管理型歯科医院経営を業界横断的に推進する活動をはじめ、歯科界に新たな価値提供をし続けている。