スタッフ管理の失敗例 良いプレイヤーが、良いリーダーとは限らない

エイチ・エムズコレクションの濵田真理子です。

私は歯科衛生士としてスキルを積みながら24歳で起業し、以来27年に渡り歯科衛生士のスキル研修から人材マネジメント、衛生士の育成から集患の支援など実に様々な分野で歯科医院様にコンサルティングを行ってきました。

多くの先生方のお話を伺って共通しているのは、医院長のお悩みの多くは「スタッフ」に対するものであるということです。

数百という医院様の問題解決をしてきた私だからこそお伝えできるスタッフのトラブル回避法を、具体的な事例と合わせてご紹介していきます。

スタッフ管理を院長一人でやろうとして失敗しちゃった編

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

【今回ご相談に来た医院の環境】

  • 院長 51 歳、開業13年目
  • ユニット7台
  • スタッフ19名
  • 平均年齢31歳(最年少19歳・最年長37歳)

人柄も良く優秀な歯科衛生士をチーフにしたが、「上司として」の仲間の評価が低い

歯科医院には34歳子育て復帰ママの歯科衛生士チーフがいました。

人柄も良く働き者で手を抜かない事から同僚の信頼も厚かったため、チーフにしたのですが院長と仲間からは下記の評価でした。

  • 組織の課題に気付いても、トラブルが発生するまで取り組まない
  • 歯科衛生士の技術に問題があっても、それを指摘・解消しようとしない
  • 患者から痛いとクレームがあるスタッフへも、技術向上のフォローをしない
  • 予約管理に問題やミスが あっても、自分で解決してしまい院長に報告しない
  • 一人で解決するので、他に誰も解決手法がわからない
  • 上記のことから、働き方が参考にならない

つまり、多くの問題を一人で解決してしまい、周囲のスタッフが次回以降のミス防止の参考にできません。

その上、まだ技術が足りないスタッフのスキルアップにまで、目配りができていないのです。

良いプレイヤーが良いリーダーとは限らない、そもそも意識が全く違う

組織や周囲から高い評価を得るほど働いてくれるのであれば、その人は素晴らしいプレーヤーであることは間違いありません。

しかしそれと、「人材のマネジメントをする人」として優秀かどうかは全く別のものです。

多くの院長は【経営者脳を使い経営者の立場で過ごす+医者脳を使い歯科医師の立場で過ごす】という2つの立場があります。

一方、歯科医院スタッフの多くは【医療人の脳と立場】で過ごしています。

つまり、経営者脳としての考え方、具体的に言うと「欠けたピースを埋めて(この場合が歯科衛生士の技術不足)、少しでも売り上げや効率をアップさせよう」という視点はありません。

それよりもむしろ、関心は自分への報酬であり「他のスタッフと円満でいたい」という気持ちなのです。

【経営者と医療人の役割を持つ歯科医師という立場】

「できない部分を指導する」ということによって、スタッフとの関係にヒビが入りかねません。

そんなリスクをおかしてまで、経営効率を上げようとはスタッフ(従業員)は考えないのです。

【スタッフとは円満でいたいチーフ】

組織に足りないピースを埋めるのは院長の仕事

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(画像=pixta)

上述の通り、院長は歯科技術を提供する医療人であるとともに、経営のトップでもあります。

経営者のオシゴトは、組織を成長させ続ける事、その上で働く人や関わる患者を幸せにすること。

そして パズルでいえば【得たい結果】という絵のパズルを作り上げていくことです。

足りないピース(人)を埋めていくこと(=採用)。

自分でやる時間がないのであれば、それを埋めてくれる人に報酬を支払ってでも埋めることが求められます。

【自分はどんな組織を経営したいかを決断するのは最高責任者】

例外もあります。

私の幼馴染は開業当初からユニットは2台と決め自費専門の歯科医院を20年以上円満に経営しています。

受付と歯科衛生士と3人という人数で医療に取組んでいます。

スタッフの心もお財布 も満足度が常に高いです。

これも1つの経営スタイルと人材マネジメントの方法です。

【歯科医院の規模が大きくなったら人材マネジメントの人を1人は確保】

多くの医院は3台以上のユニットがあります。

人が増えたら、そのチームの【人】をまとめる【人】が必要 になります。

キャプテンや部長が不在の強いチームがないように、人が増えたら必ず人をマネジメントする人が必要になります。

だからこそ、人材をマネジメントしてくれる人を意識的に設けるようにしてください。

そして、経営者である歯科院長は「経営」と「医療」という自分のオシゴトに専念してください。

この仕組みをつくるのもやはり歯科医院の最高責任者である院長自身です。

解決策

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(画像=naka/stock.adobe.com)

女性経営者視点での真理子流メソッド

歯科医院の規模が大きくなってきたら、院長自身で診察も行い経営プランも考え、なおかつ人材マネジメントも一人で行う、というのは不可能です。

人材をマネジメントしてくれる人を院内で育てる事が難しければ、事務長などを活用しましょう。

実際に私の クライアントでは男性や女性を採用して半年程度で医院の事務長やマネジメント&秘書を誕生させています。

この立場の人はプレーヤーとは違いすぐにかけつけることが出来る・俯瞰して全体を見ることが出来る存在なのでメリットがたくさんあります。

院長から「そんな人が思いつかない」と相談された時には、事務長専門の企業や人を紹介しています。

お金を支払って外注に出したとしても、組織に必要な人は雇用する。

これも経営者の立派な判断です。

自分で全てやる人には、大きな事はできません。
※当社は仕組づくりと教育の専門企業なので事務長職は全て委託しています。

コンサル視点での秘訣(ポイント整理)

治療だけではなく、経営から人材教育、様々な仕入れなど自分で全てやらないと気が済まない院長がいます。

しかし院長は組織の頭脳です。

虫の目ではなく鳥の目で組織を眺め成長支援していくことがオシゴトです。

「人材マネジメントできる人がいない」と嘆くのではなく、人材マネジメントできる人を是非採用してみてください。

それができればきっと、「気持ちに余裕ができた!」と精神的に楽になることが増えてくるはずです。

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濵田真理子さんの最新書籍紹介

院長・スタッフに好評のコミュニケーションテキストの超ロングセラーを大改訂した新版。数百の歯科医院でチームワーク作りを個別指導してきた著者が、最も大切にしている基本をまとめました。新人教育、チームワークのシステム作りに最適。

医療現場で必要なコミュニケーションの理解・レベルアップのために。一般常識的な接遇方法から、患者さん・スタッフとの高度な意思疎通の方法までを学ぶ。(書籍帯書きより)

著者・濵田真理子さんからのコメント

成長評価シートは、組織における具体的な行動内容を整理し設定できます。
書籍で紹介されている「成長評価シート」を用いることで、組織の具体的な行動内容を整理し、設定しやすくなります。

以下が新しい「成長評価シート」のポイントです。

・項目を最低限に絞ったことで達成も管理もしやすい
・シートを用いて職種別の評価項目を明文化することで、意識や労働レベルの標準を共有しやすくなる
・スタッフ教育や能力開発・成長のための目標管理が容易になる
・業績考課ではなくプラス考課されやすい短期的指標でシートのフレーム
・を作成。定期的にアップデートすることで、長期的視野を持つスタッフにも活用可能

今回のシートは「成長を支援する」ことを目的として作成したため、スタッフ一人ひとりが組織の中で必須の項目を日々問いかけ実践する機会が増えるでしょう。

個々にとっても自分の努力や成長が評価されたすいため、モチベーションを維持・向上しやすいのも特徴で、面談で水の泡とならないよう面談術も紹介しています。

コロナ禍でスタッフの評価項目も変化しています。

組織の方向性や目標が変化する時には、同時に人事の評価基準や項目も見直しが必要です。それを組織全体に浸透させるツールとしてお使い頂くことで、是非、成長を続ける医療機関の安心・安定経営にお役立てください。

濵田 真理子

有限会社エイチ・エムズコレクション 代表取締役
歯科衛生士
福祉用具選定員
歯科MG戦略インストラクター
全米NLP協会公認トレーナー
歯科メディカルサポートコーチングトレーナー

1991年に日本大学歯学部附属歯科衛生学校を卒業。 卒業後、財団法人日本歯科研究研修協会に入職。歯科衛生士教育機関を育成するトレーナーとしての教育と研修を受けながら臨床に携わる。

その後女性の起業への理解がまだ少なかった1994年に「歯科業界の中で、疾患を持たない患者が歯科医院に来院し続ける仕組みを作りたい」との思いから、エイチ・エムズコレクションを起業。

歯科医院に対して20年にわたる人材コンサルティングの実績を持ち、歯科医療スタッフ分野における人材育成の先駆者として活躍。スタッフが思い通りに成長しなかったとしても「数年後には変わるかもしれない」と決して諦めず、人材育成に尽力している。