人生100年時代と言われるようになった現代においては、健康寿命を伸ばすためにも未病管理が大切だと言われています。
未病とは、健康と病気の間。つまり、自覚症状の有無に関わらず段々と健康から病気へと向かう過程のことで、歯科領域では「健康な歯から虫歯に向かう段階」と言い換える事ができます。
予防歯科と呼ばれる「虫歯にならないように」「一本でも多く自分の歯を残せるように」という分野はそのまま未病管理でもあり、ここに歯科医院経営の大きなマーケットも存在します。
日本のオーラルケア関連の市場規模は4,000億円!
皆さんは日本のオーラルケアマーケット関連製品の市場規模がどれくらいか、ご存知ですか?
年々増加を続け、なんと今では4,000億円以上もの市場規模となっています。
しかし残念なことに、その大半がドラッグストアーやスーパー、コンビニなどの購入であり、歯科医院での購入は全体の10%ほどしかありません。
せっかく歯科医院のスタッフは歯科の専門集団で、あらゆる質問や悩みに対して適切に回答できるのに、90%の人はほとんど誰にも相談せず自分の感覚でオーラルケア関連商品を購入しているのです。
口腔の専門である我々はグッズの良し悪しはもちろん、正しい使い方や症状別の対策まで正しく理解しているのに、それを伝えずに果たして「予防歯科を行なっている」と言えるのでしょうか?
既存客にとらわれず新しいマーケットを創造
基本的に歯科医院は「虫歯になったら行くところ」と認知されているのが一般的です。
逆に言うと、虫歯になっていない人を「定期検診」以外で足を運ばせることは、なかなか難しいのが現実です。
しかし最近話題の他業界の例を見てみると、メガネ屋さんは本来「目が悪い人が行く場所」であったにも関わらず、メガネ屋のJINZはブルーライトカットのメガネを作り出しました。
その結果、「目の悪い人」から「PCを使う全ての人」へとターゲットを大きく拡大することに成功し、商品は大ヒット。メガネユーザーのあらたな市場が生まれたのです。
このように固定観念に縛られず、今までにないところへマーケットを広げていくことが歯科医院経営にも求められています。
「未病対策」は、その大きな手段と言えるのではないでしょうか。
私が2017年に全国の歯科医院を約40軒、一年間の物販売り上げを調査したところ、平均売り上げは約14万円でしたが、中には60万前後になっている医院もありました。
また「物販売上が増えることでデンタルIQが上がり、自費診療の売り上げも上がるというデータもある事から、物販の金額以上の売り上げ貢献も考えられます。
このように待合室をうまく活用して患者様のニーズに合わせて販売を行なっていく事が、私の考える「医療物販学」です。
それでは具体的に歯科医院でできることを見ていきましょう。
院内でできる患者様への定期メインテナンス
自分自身の歯の健康に関心のある人は、定期的なメインテナンスに通う人が増えています。
歯科医師が提唱するメインテナンスは3ヶ月に一度ですが、仮にきちんと3ヶ月に1度、1時間程度のメインテナンスに通った場合、一年間で240分プロの手により口腔ケアが行われることになります。
私が経営する戸塚駅前トリコ歯科では一人一人の患者様の口の中の状態、例えば菌が多いのか歯の質が弱いかなどに合わせて、10年以上の経験を持つベテラン歯科衛生士が歯のクリーニングを行い、自身の歯磨きでは落としきれない汚れを除去します。
この時間が、必ず3ヶ月に一度の定期検診を受けた場合、年間240分程度になります。
患者様は院内でのプロケアの14倍もセルフケアに時間をかける
患者様が定期検診で口内ケアを行う時間が年間240分(1回60分×年間4回)程度であるのに対し、もし毎食後1日3回3分のブラッシングを365日続けたとすると、年間約3,300分もの時間をセルフケアにあてていることになります。
この時間は歯科医師や衛生士が行うプロケアの、実に14倍!
自宅でのケア方法が正しくなければ、どんなにきちんと定期検診に通っていたとしても効果は半減してしまいます。
だからこそ専門家である私たちは、患者様に正しい口腔ケアの方法をしっかり教えることが必要であり、それが「未病管理」へとつながります。
待合室で伝えられるメインテナンス情報=未病管理
今までは歯科衛生士や歯科助手などが「正しいブラッシングの仕方」「口の中の様子に合わせた歯ブラシの選び方」などを細かく説明できていたかもしれません。
しかし新型コロナ時代の今は、なかなか対面での説明が難しい。だからこそ、活用すべきは待合室での情報発信=医療物販学です。
多くの商品を取り扱えば良いという訳ではなく、見やすい陳列や分かりやすいPOP、また「お悩み別」に並べるなど、患者様が興味をひくような「魅せ方」がとても重要になります。
汚れが残っている人にはデンタルフロスや歯間ブラシ、マウスウォッシュが紹介しやすいですし、口臭を気にしている患者さんは口臭対策グッズに興味を持つでしょう。
また虫歯予防には、POs-Ca成分を配合したガムを子供から大人まで勧めることができます。
このように、患者様の悩みや関心に合わせてプロの視点から適した商品を紹介し、患者様の「買ってよかった」「教えてもらえて助かった」を増やすことで、結果的に医院の売り上げに貢献していくこと。
これが私の提唱する「医療物販学」なのです。
まとめ
この記事では、今のコロナ渦だからこそ効果を発揮する「待合室での医療物販学」について説明をしました。
物販に苦手意識がある方は「一方的に商品紹介をする」のではなく「悩みに合ったケアの方法を丁寧に教えること」をぜひ意識してみてください。
そして購入後のフォローも忘れず、次回来院時に「購入いただいた歯磨き粉、いかがでしたか?」と気にかけたり、効果が見えた場合には「以前に比べて歯の状態が良くなっていますよ」といったフォローも忘れないようにしましょう。
こういった待合室でのささいなやりとりが患者様の満足度を上げて、次の来院・購入へと繋がっていきます。
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医療法人社団栄昂会(細田歯科医院・戸塚駅前トリコ歯科 )理事長
DECT株式会社 代表取締役社長
2016年に実家の細田歯科医院を継承。理想とする「全身から診る口腔咬合医療」を提供するために勤務。2016年10月にリニューアルオープン。
その後、2017年に医院経営の包括サービスを提供するDECT株式会社を設立。2018年には、戸塚駅前トリコ歯科を新規開業。
医院の待合室でセルフケアグッズを販売することがどのように医院経営を変えていくのかをテーマに「医療物販学」という待合室におけるマーケティング理論を提唱し、年間100回を超える講演で全国を飛び回る。