年々、経営環境が厳しくなっていると言われる歯科医院。多額の初期投資によって開業したものの、さまざまな経営上の問題に直面して悩んでいる院長は多くいらっしゃいます。
この連載では、多くの歯科医院の経営に関するコンサルティングを手掛けているユメオカの代表である丹羽 浩之が、歯科医院が事業拡大を目指す中で出てきたお悩み相談を受け、これまでの経験を踏まえて課題の解決のヒントを提示していきます。
今回は、設備投資や人員補強、判断が難しい「投資」に関するご相談を取り上げます。
ユニットを増設したいが、収支が大丈夫なのか不安
■相談内容
「現在、個人で歯科医院を開業して月間650万円ほどの売り上げがあります。患者さんの予約待ちが長くなっているので、ユニットを4台から6台に増やしたいと考えています。ただ、収支的に大丈夫なのかと不安です。どうすればいいでしょうか」
医院経営におけるお金の不安を解消するには
多くの院長が、経営に関する漠然とした不安を抱えています。私たちは、その2大要因は「スタッフ」と「お金」だと考えています。
そのため、ユメオカでは「ビジョン」と「お金(数値)」を両輪として、医院の成長に必要な条件を明確にした上で、その到達までの道筋を逆算して描いています。どちらが欠けても医院の成長は困難だと考えます。特に「医院の資金状況を可視化すること」が重要だと考え、数字の裏付けを基にした適正な判断によって不安の解消を支援してきました。
相談者の院長にしてみれば、経営者としての意思決定を求められても、そもそも教わったわけでもないので決断に自信が持てないかもしれません。また、知り合いの業者に相談しても、その回答からは「導入してもらいたい」という気持ちが伝わってくることもあります。
先輩の開業医に相談した場合でも「悩むだけムダだ。とりあえず導入してみては」という精神論のような回答をもらうことも実際にはあるようです。 私たちユメオカでは、より効果的な投資判断を支援ツールとして、日本キャッシュフローコーチ協会の「お金のブロックパズル」の活用を推奨しています。
お金のブロックパズルとは、西 順一郎氏が著書『戦略会計STRACⅡ」で紹介したSTRAC表(現・MQ会計表)をベースに、日本キャッシュフローコーチ協会代表理事を務める和仁 達也氏が考案したものです。
資金の流れ全体が分かりやすく図解されており、理解しやすいのが特徴です。会計知識を習得していない院長にとって、的確な経営判断を支援するツールとして活用することが可能です。たとえば、人件費の上限基準や売り上げ目標の根拠を定めることにも役立ちます。
ここからは、お金のブロックパズルの仕組みを少し紹介していきましょう。 お金のブロックパズルでは、まず年間の売上高を「変動費」と「粗利」に分解します。粗利とは、売上高から変動費を差し引いた残りのことです。この粗利が歯科医院の経営判断を決定づける重要な要素だと考えています。
次に、粗利を「固定費」「利益」に分類し、その内の固定費を「人件費」と「その他の固定費」に分けていきます。ここまでで、大まかな医療収支を割り出すことが可能です。