歯科医院の設備投資や人員補強、判断が難しい「投資」で失敗しない最善策とは?

年々、経営環境が厳しくなっていると言われる歯科医院。多額の初期投資によって開業したものの、さまざまな経営上の問題に直面して悩んでいる院長は多くいらっしゃいます。

この連載では、多くの歯科医院の経営に関するコンサルティングを手掛けているユメオカの代表である丹羽 浩之が、歯科医院が事業拡大を目指す中で出てきたお悩み相談を受け、これまでの経験を踏まえて課題の解決のヒントを提示していきます。

今回は、設備投資や人員補強、判断が難しい「投資」に関するご相談を取り上げます。

ユニットを増設したいが、収支が大丈夫なのか不安

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

■相談内容
「現在、個人で歯科医院を開業して月間650万円ほどの売り上げがあります。患者さんの予約待ちが長くなっているので、ユニットを4台から6台に増やしたいと考えています。ただ、収支的に大丈夫なのかと不安です。どうすればいいでしょうか」

医院経営におけるお金の不安を解消するには

多くの院長が、経営に関する漠然とした不安を抱えています。私たちは、その2大要因は「スタッフ」と「お金」だと考えています。

そのため、ユメオカでは「ビジョン」と「お金(数値)」を両輪として、医院の成長に必要な条件を明確にした上で、その到達までの道筋を逆算して描いています。どちらが欠けても医院の成長は困難だと考えます。特に「医院の資金状況を可視化すること」が重要だと考え、数字の裏付けを基にした適正な判断によって不安の解消を支援してきました。

相談者の院長にしてみれば、経営者としての意思決定を求められても、そもそも教わったわけでもないので決断に自信が持てないかもしれません。また、知り合いの業者に相談しても、その回答からは「導入してもらいたい」という気持ちが伝わってくることもあります。

先輩の開業医に相談した場合でも「悩むだけムダだ。とりあえず導入してみては」という精神論のような回答をもらうことも実際にはあるようです。 私たちユメオカでは、より効果的な投資判断を支援ツールとして、日本キャッシュフローコーチ協会の「お金のブロックパズル」の活用を推奨しています。

お金のブロックパズルとは、西 順一郎氏が著書『戦略会計STRACⅡ」で紹介したSTRAC表(現・MQ会計表)をベースに、日本キャッシュフローコーチ協会代表理事を務める和仁 達也氏が考案したものです。

資金の流れ全体が分かりやすく図解されており、理解しやすいのが特徴です。会計知識を習得していない院長にとって、的確な経営判断を支援するツールとして活用することが可能です。たとえば、人件費の上限基準や売り上げ目標の根拠を定めることにも役立ちます。

ここからは、お金のブロックパズルの仕組みを少し紹介していきましょう。 お金のブロックパズルでは、まず年間の売上高を「変動費」と「粗利」に分解します。粗利とは、売上高から変動費を差し引いた残りのことです。この粗利が歯科医院の経営判断を決定づける重要な要素だと考えています。

次に、粗利を「固定費」「利益」に分類し、その内の固定費を「人件費」と「その他の固定費」に分けていきます。ここまでで、大まかな医療収支を割り出すことが可能です。

増設の判断をどうつける? お金のブロックパズルで具体的に試算してみた

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(画像=kapinon/stock.adobe.com)

今回の相談内容について、お金のブロックパズルを活用した解決方法を紹介します。

まず、ユニットを増設すると、当然固定費が増えます。仮に1000万円の増加になると想定した場合、どれくらいで回収可能かを試算してみましょう。その際には「修理せずにどれだけ持つか」「どれだけ稼働すれば安心できるか」という観点で考えることが大切です。

たとえば、2台を増設してその資金を5年で回収すると仮定してみます。その場合、1000万円を5年で回収するためには、毎月17万円で60カ月かかると算出できます。

さらに、増設によって人員も増やすことも考慮する必要があります。上記に加えて、ドクター1人とDA1人を増員するケースを考えてみましょう。その場合は、月60万円の固定費が上乗せされます。

また、旅費・制服・水道光熱費など人件費以外の固定費も人員が増えることによって増えます。仮に、それらを人件費の半分の30万円の支出を見積もって考えると、合計で月間107万円(17+60+30)の支出増となることが割り出されます。

人件費の基準を見る上では、粗利における人件費の割合を示す指標「労働分配率」が重要となります。一般的に「労働分配率が低い方が組織としての生産性が高くなり、少ない人件費で多くの粗利を生み出している」と言えます。

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【図】お金のブロックパズルの例(画像=株式会社ユメオカ)

次に、その数値を基にして「どれくらいの売り上げがあれば大丈夫なのか」を逆算していきます。その際に注意すべきポイントは、

  • 「何年で回収できるか」
  • 「粗利ベースで月額どれくらい利益を上げる必要があるのか」
  • 「設備導入で得られる患者やスタッフのメリットは何か」

などを考慮することです。107万円月の固定費をつくろうとすれば、138万円月(粗利率80%で)の売上が必要と逆算できます。このように、ブロックパズルを活用して、具体的な数値を考慮してロジカルに試算し、それを可視化することで、漠然としたお金の悩みを解決できるのです。

こういう試算自体は、慣れれば5分でできることです。ただ、院長一人が頭に抱えたままで悩んでいるとより不安は膨らんできます。実際、思考だけがグルグルしてしまう院長を多くお見掛けします。

その解決先としては、客観的な判断を支援するパートナー、特に経営のプロに協力してもらうことをお勧めしています。プロの目線で改善すべき点を提案してもらえると、不安から解消され、改善に向けた一歩を踏み出せるのです。

数値では見えない投資判断はどうすればいいのか?

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(画像=Ксения Левашова/stock.adobe.com)

ブロックパズルを活用すると、コストに関するさまざまな投資判断が可能になります。たとえば、「日曜診療を辞めたい」「事務長を入れたい」「設備投資を増やしたい」という判断にも役立ちます。

ただ、経営の現場では「数値では見えない条件について、判断が迫られる」ことも多く存在します。私たちがこれまで支援してきた院長の中には、何でも勢いで進めていける人もいましたが、それはごく一部です。

多くの方が、ずっと頭名の中でグルグルと考え悩んでいらっしゃいます。こうしたグルグル思考は、他からは見えづらいこともあり、スタッフへの当たりが強くなるなど思わぬ悪影響にもつながりかねません。ぜひご注意ください。

大規模な設備投資のように今後の経営にも影響を与える重要な意思決定では、根拠に基づいた判断をすることが重要です。そのためにも、できる限り投資の構成要素を分解して、判断しやすい粒度まで落とし込むことを心掛けてください。

また、自分はグルグル思考になりがちだと思われる院長は、ぜひ外部の力を借りながら経営改善に取り組むことをお勧めします。一歩目を踏み出すだけで、あらゆることが前進していくのです。「もんもんと悩んでいた今までは一体、何だったのか」と感じて、気分がすっきりすることになるでしょう。

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