コロナ禍を経験した私たちは、以前とはガラリと変わった経営環境のもとにいます。
かつては需要に対して供給が圧倒的に不足していたために、先行者利益でしのいでこられた歯科業界も、本格的に経営の知識が必要とされる時代に入りました。
未来を良くするためには、今から成功する仕組みを準備していくことが重要となります。
この連載では、集患施策で押さえるべき「急所」についてお伝えしていきます。
今回は、よく見られる間違った施策と集患の原理原則について解説します。
当たり前のその施策、実は間違っている!?
歯科医院経営をする上で、患者さんの数を増やすこと、レセプト枚数を増やすことに取り組まない院長先生はいません。
集患は、患者単価を上げること、患者さんの来院頻度を上げることと並び、医院の売上を伸ばす重要な施策の1つです。
ところが、その熱心な集患施策が間違っていたとしたらどうでしょうか。
今回は、よく見られる「間違った集患施策」について解説します。
間違った施策
集患施策として、次のような手を打ったことはないでしょうか。
ホームページにFacebookやInstagramのリンクを貼る
開設している医院のホームページに、院長先生個人のFacebookやInstagram、TwitterなどSNSへのリンクを貼って誘導している。
ホームページ作成はプロであるWeb制作会社主導で行う
「餅は餅屋に」ということで、Web制作会社主導でホームページを作成している。
とにかく検索順位を上げるために資金投下する
Google検索で上位に表示されるように、資金を投下して広告宣伝費を使う。
広告宣伝はインターネットに集中的・重点的に行う
広告宣伝費はインターネットを中心に使っている。
ここに列挙した方法だけで「集客に成功する」と思うのは、間違っていると言わざるをえません。
なぜ間違った施策をしてしまうのか?
集患のために、なぜ間違った施策を行ったのでしょうか。
Web制作会社の営業トークを聞いて「これなら!」と納得させられたとか、友人や知人の歯科医師に「コレがいいよ!」と紹介されたなどのケースが多いようです。
たいして考えていなくて、単純に良さそうと感じたから、ダメ元のつもりで期待せずにやってみたというケースもあります。
先ほど例に挙げた集患施策は、過去であれば有効だったかも知れませんが、現在は違います。
時代の変化を知らない人が、皆がやっている施策を単にやっていることに終始しています。
インターネットが普及する時代より前は、電話帳広告というものがあり、皆さん出稿していました。
あるいは、駅前に大きな看板を立てる、折込チラシの全戸配布などといった手法もありました。
それらも昔は有効だったわけですが、現在有効な集患方法だとは皆さん思わないでしょう。
コンサルタントなど教える側の、「たくさん露出しましょう」との指導が多いということもあります。
そうすると、結局「インターネットに広告をたくさん打ちましょう」という施策に落ち着きます。
こういう例もあります。一時期流行したのですが、他の歯科医院に見学に行くというものです。
成功している施策や医院の雰囲気を体感すること自体は、決して悪いことではないのですが、「落とし穴」があることも自覚しなければいけません。
施策が自分に合っていないと…
それは、見学した歯科医院が取り組んでいる施策が、ご自身の医院に合うのかどうかということです。
たしかに見学先の先生は、熱心にポイントを教えてくれます。
しかし、その先生が「素で行っていること」は自分で意識していないので、伝えることはできません。
「素で行っていること」に最大のポイントがあるのですが、そこが伝わらず、見学に行った先生はまったく変化しないということになります。
つまり、表面的に施策を真似したところで、効果は期待できないのです。
むしろ「あの先生にはできるのに、なぜ自分はできないのだろう」という失敗体験になってしまって、「自分には経営センスがない」と落ち込んでしまうことにもなりかねません。
歯科医師はエビデンスにもとづいて診療を行っているということもあり、人は理屈にあった行動をすると思い込みがちです。
しかし、人間は感情の生き物です。
気持ちで行動を決定するということへの感覚的な理解ができないと、患者さんの行動を操作していくことはできません。
成功している先生が「素で行っていること」、「そんなに意識しなくてもできていること」への感覚的な理解が必要になるのです。
これを習得するための方法は、次の章から解説します。
集患への第一歩は原理原則を知ること
正しい集患の施策とは、どういったものなのでしょうか。