令和6年度 診療報酬改定

公的医療保険から医療機関に支払われる報酬の見直しである診療報酬改定は、医療機関にとって影響が少なくありません。

歯科の経営者においては、歯科診療報酬改定の動向は気になるところだと思います。

そこで、本記事では、中央社会保険医療協議会 総会(第581回) 議事次第の資料をもとに、診療報酬改定に向けた基本方針の具体的な内容についてご紹介します。

2024年度改定の柱は、以下の4つが示されています。

  1. 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】
  2. ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
  3. 安心・安全で質の高い医療の推進
  4. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

ぜひ最後までお読みいただき、歯科経営にお役立てください。

診療報酬改定とは?

pixta_40015714_M_診察券と領収証
(画像=pixta)

診療報酬改定は、医療における医療行為の価値を再評価し、点数を見直すプロセスです。

これは、医師代表、健康保険組合代表、そして学者から成る中央社会保険医療協議会(中医協)で行われています。

中医協は、次回の診療報酬改定に向けた提言をまとめ、厚生労働大臣に報告します。

その後、内閣で改定率が確定され、新しい診療報酬の内容が決まります。

通常、診療報酬改定は約2年ごとに行われ、次回の改定は初めにお伝えした通り、本年(2024年)に計画されています。

このプロセスは、医療提供者が高品質な医療を提供できる環境を整えるための非常に重要な取り組みであり、医療制度全体の質の向上に大きな役割を果たしています。

診療報酬改定のプロセスを要約すると以下の流れになります。

1. 中央社会保険医療協議会
 医師代表、健康保険組合代表、学者などが参加し、医療行為の見直しを議論。
2. 意見の取りまとめ
 中医協が改定に向けた提言をまとめ、厚生労働大臣に報告。
3. 内閣での確定
 内閣で改定率が確定し、新しい診療報酬の内容が決まる。
4. 質の向上
 診療報酬改定は医療提供者が高品質な医療を提供するために貢献。

次章では、診療報酬改定に関する情報の確認方法を紹介します。

診療報酬改定の情報を確認する方法

傍聴・参加が可能な審議会等の会議一覧_厚生労働省
(画像=出典:厚生労働省)

診療報酬改定に関する情報を正確に確認するためには、中央社会保険医療協議会(中医協)の公式ウェブサイトをチェックするのが最も確実です。

改定に関する重要な情報や決定事項は同サイトで随時更新され、公開されます。

従来の傾向として、年末から年始にかけて大きな変更が行われることが多いため、定期的にウェブサイトをチェックすることで、改定の概要をスムーズに把握できます。

歯科に関連する内容も多く含まれています。詳細は下記のウェブページでご確認ください。

中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省

令和6年度(2024年)の診療報酬改定のスケジュール

令和6年度診療報酬改定スケジュール_001129862
(画像=出典:厚生労働省中央社会保険医療協議会「医療DXについて(その2)」)
(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001129862.pdf)

上記は、2024年1月時点での改定スケジュールです。

2024年の診療報酬改定には薬価とそれ以外の項目に関して異なるスケジュールが適用されることに留意してください。

薬価については、従来通り2024年4月に施行されました。

※参照:厚生労働省  薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和6年4月1日適用)

薬価の改定には価格交渉などを含む約半年の期間が必要とされ、毎年の薬価調査が行われ、翌年の薬価改定に向けた準備が行われるサイクルが前提とされています。

一方、薬価以外の診療報酬改定については、2024年6月に施行される予定です。

この改定は、診療報酬改定DXの推進に向けた取り組みの一環として行われます。

診療報酬改定で歯科において注目すべき5つのポイント

pixta_58977549_M_歯科クリニック看板
(画像=pixta)

2024年度の診療報酬改定においては、いくつかの重要な要素が検討されています。

まず、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を考慮しています。

また、アフターコロナ時代における新しい基準に対する感染症対策、マイナ保険証の導入、電子処方箋の義務化、遠隔診療など、医療DXも推進されています。

したがって、今回の診療報酬改定では、これらの要素がどの程度反映されるかが注目されています。

本章では、厚生労働省が公表した2024年度の診療報酬改定の基本方針から、歯科において特に注目すべきポイントを抜粋して紹介します。

参照:厚生労働省  中央社会保険医療協議会 総会(第581回) 議事次第より

1)現行の「か強診」の廃止と基準の更新

pixta_59566461_M_歯科医師と高齢の男性患者
(画像=pixta)

地域における連携体制を確保しつつ、ライフコースを通じた継続的・定期的な口腔管理による歯科疾患の重症化予防の取組を推進する観点から、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)について、名称、要件及び評価を見直す。

これを踏まえつつ、小児期及び高齢期のライフステージに応じた口腔機能管理を推進する観点から、小児口腔機能管理料及び口腔機能管理料について、新たな評価を行う。

具体的な内容

  1. かかりつけ歯科医による歯科疾患の管理について、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所による実施を評価しているが、これを見直し、口腔機能管理に関する実績要件等も満たす診療所による実施を評価することとする。
  2. 小児口腔機能管理料及び口腔機能管理料にかかりつけ歯科医による口腔機能管理に関する評価を新設する。
  3. エナメル質初期う蝕管理加算を廃止する。

2)「う蝕(むし歯)の重症化予防」の推進

pixta_38433735_M_歯科医師と歯科衛生士_治療中
(画像=pixta)

う蝕(むし歯)の重症化予防を推進する観点から、フッ化物歯面塗布処置等の見直しを行う。

具体的な内容

  1. フッ化物歯面塗布処置について、う蝕多発傾向者に、歯科訪問診療を行う患者を追加する。
  2. フッ化物歯面塗布処置について、初期の根面う蝕に罹患している患者及びエナメル質初期う蝕に罹患している患者に対して実施する場合の評価を見直す。
  3. 65 歳以上の初期の根面う蝕に対する非接触による指導管理及びエナメル質初期う蝕の管理に対する評価を新設し、歯科疾患管理料のエナメル質初期う蝕管理加算を削除する。

(新) エナメル質初期う蝕管理料 ●●点
[算定要件]

  1. 区分番号B000-4に掲げる歯科疾患管理料又は区分番号B002に掲げる歯科特定疾患療養管理料を算定した患者であって、エナメル質初期う蝕に罹患しているものに対して、当該う蝕の評価に基づく管理計画を作成するとともに、その内容について説明を行い、当該う蝕の管理を行う場合に、月●●回に限り算定する。
  2. 区分番号B000-4-2に掲げる小児口腔機能管理料の注3に規定する施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た診療所である保険医療機関が当該管理を行う場合は、口腔管理体制強化加算として、●●点を所定点数に加算する。

(新) 根面う蝕管理料 ●●点
[算定要件]

  1. 区分番号B000-4に掲げる歯科疾患管理料又は区分番号B002に掲げる歯科特定疾患療養管理料を算定した患者であって、初期の根面う蝕に罹患している65 歳以上のものに対して、当該う蝕の評価に基づく管理計画を作成するとともに、その内容について説明を行い、非切削による当該う蝕の管理を行う場合に、月●●回に限り算定する。
  2. 区分番号B000-4-2に掲げる小児口腔機能管理料の注3に規定する施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た診療所である保険医療機関が当該管理を行う場合は、口腔管理体制強化加算として、●●点を所定点数に加算する。

3)「歯科矯正相談料」の新設

pixta_87441458_M_小児歯科_歯科医師_子供
(画像=pixta)

学校歯科健診で不正咬合の疑いがあると判断され、歯科医療機関を受診した患者に対して、歯科矯正治療の保険適用の可否を判断するために必要な検査・診断等を行う場合について、新たな評価を行う。

(新) 歯科矯正相談料
1 歯科矯正相談料1 ●●点
2 歯科矯正相談料2 ●●点

[算定要件]

  1. 第13部に掲げる歯科矯正の適応となる咬合異常又は顎変形症が疑われる患者に対し、歯・歯列の状態、咬合状態又は顎骨の形態等の分析及び診断を行い、当該患者に対し、診断結果等を文書により提供した場合に、年度に●●回に限り算定する。
  2. 区分番号E000の1に掲げる単純撮影若しくは2に掲げる特殊撮影又は区分番号E100の1に掲げる単純撮影若しくは2に掲げる特殊撮影は別に算定できる。
  3. 保険医療材料料は、所定点数に含まれる。

4)「口腔機能管理」の新設(特に小児領域の拡充、オンライン診療)

pixta_67216528_M_女性歯科医師
(画像=pixta)

これまでの情報通信機器を用いた歯科診療の実態も踏まえ、継続的な口腔機能管理を行う患者及び新興感染症等に罹患している患者で歯科疾患による急性症状等を有する者に対する情報通信機器を用いた歯科診療を行う場合について、新たな評価を行う。

初診料及び再診料等について、情報通信機器を用いて歯科診療を行った場合の評価を新設する。
(新) 初診料(情報通信機器を用いた場合) ●●点
(新) 再診料(情報通信機器を用いた場合) ●●点

[算定要件]

別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、特に情報通信機器を用いた歯科診療を行うことが必要と認められる者に対して、情報通信機器を用いた初診を行った場合は、院内感染防止対策に関する届出の有無にかかわらず、歯科初診料又は地域歯科診療支援病院歯科初診料について、所定点数に代えて、●●点を算定する。

(新) 歯科特定疾患療養管理料(情報通信機器を用いた場合) ●●点

[算定要件]

別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、特に情報通信機器を用いた歯科診療を行うことが必要と認められる者(過去に歯科特定疾患療養管理料を算定した患者に限る。)に対して、歯科特定疾患療養管理料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて●●点を算定する。

(新) 小児口腔機能管理料(情報通信機器を用いた場合) ●●点

[算定要件]

別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、特に情報通信機器を用いた歯科診療を行うことが必要と認められる者(過去に小児口腔機能管理料を算定した患者に限る。)に対して、小児口腔機能管理料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて●●点を算定する。

(新) 口腔機能管理料(情報通信機器を用いた場合)

[算定要件]

別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、特に情報通信機器を用いた歯科診療を行うことが必要と認められる者(過去に口腔機能管理料を算定した患者に限る。)に対して、口腔機能管理料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて●●点を算定する。

[施設基準]

※再診料、歯科特定疾患療養管理料、小児口腔機能管理料及び口腔機能管理料についても同様。情報通信機器を用いた歯科診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。

5)歯科衛生士による「実地指導」の改定

pixta_39510232_M_歯科衛生士2名とチェア
(画像=pixta)

歯科衛生士による実地指導を推進する観点から、歯科衛生士が口腔機能に関する指導を実施した場合について、新たに評価を行う。

具体的な内容

歯科衛生実地指導料について、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が口腔機能に係る指導を行った場合の評価を新設する。

医療機関全般で注目されている主な話題

pixta_69230518_M_歯科医師と歯科衛生士と小児患者
(画像=pixta)

本章では、診療報酬改定について中央社会保険医療協議会において議論されている主なトピック4つをご紹介します。

・人材確保・働き方改革等の推進

pixta_39510189_M_歯科医師と歯科衛生士2名とチェア
(画像=pixta)

2024年の診療報酬改定において、医師の働き方改革への対応が重要な焦点となります。

これには、従来から存在する医師の労働時間削減および健康確保に関する課題に対する対策が含まれます。

医療分野における賃上げや勤務環境改善、人材確保は急務であることが指摘されています。

中でも看護補助者については介護職員の平均よりも下回っているため、賃上げや勤務環境改善の際には、これらの職種への配慮が必要です。

医療従事者の働きやすさを向上させ、持続可能な医療提供体制の確保につなげることが重要です。

医療法の改定は、令和6年4月1日を目標として段階的に実施される予定であり、これによって医師の働き方が改善され、より健康的な労働環境が期待されています。

新しい制度の導入により、医療機関や医師個人がより効率的に運営できるようになれば、医療サービスの品質向上にも寄与するでしょう。

・医療DXの推進

pixta_101293538_M_マイナンバーカード
(画像=pixta)

主要なポイントは、電子処方箋の普及であり、2024年度中にその普及が目指されています。

これにより、医療の効率性向上と患者への迅速な対応が可能になります。同時に、電子カルテ情報共有サービスの構築と情報共有の範囲拡大も計画されており、電子カルテは医療機関の中核的なシステムとして注目されています。

さらに、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療などに関連する情報連携が、マイナンバーカードを活用して実現される予定です。

これにより、新型コロナウイルスを契機に、将来の感染症危機にも迅速で効果的な対応が可能となる基盤が整備される見通しです。

・地域包括ケアシステムの強化と推進に向けた取り組みの推進

pixta_82281896_M_医師と男性患者
(画像=pixta)

地域包括ケアシステムの強化と推進に向けた取り組みには、生活に配慮した医療の促進などが含まれます。

これには、医療機関間の連携、医療機関と薬局・訪問看護ステーションなどとの協力、医科と歯科、医歯薬連携、医療と介護の連携、医療と障害福祉サービスの連携、そして地域の保健・福祉・教育・行政などの関係機関との連携を含め、多職種連携と協働の取り組みが求められます。

・高品質な在宅医療と訪問看護の確保の推進

pixta_97135403_M_歯科衛生士と高齢の女性患者
(画像=pixta)

中長期的には在宅医療の需要が著しく増加する見込みです。

このため、在宅医療を提供する医療機関と市町村、医師会などとの連携を強化し、地域の特定のニーズに合わせた提供体制を構築することが推進されます。

在宅医療に関しては、訪問診療や往診の適切な評価が焦点となっています。

ICT(情報通信技術)の活用やデータ連携によって、在宅医療の質と効率を向上させる取り組みが模索されています。

加えて、薬剤師や栄養士、リハビリなどの専門職が在宅での医療に参画した場合の報酬体系にも注目が集まっています。

まとめ

2025年に団塊の世代が完全に後期高齢者になる前に行われる最後の改定となります。

さらに、介護報酬も同じタイミングで改定されます。2024年は医療報酬と介護報酬の両方が改定される年であり、これまで以上に大規模な変更が予想されます。

歯科分野では、かかりつけ歯科医の役割強化が強調されており、院内感染対策、口腔機能管理の推進、オンライン診療の評価、歯科特有の技術の評価も重要視されています。

診療報酬の改定は、歯科クリニックの経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

中央社会保険医療協議会のウェブサイトも定期的にチェックし、改定に向けた準備を進めましょう。