なぜ、歯科衛生士の評価制度・キャリアパスが必要なのか?

業種を問わず「働き方改革」が推進される中、歯科業界でも歯科医衛生士など従業員の働き方が見直されています。また、慢性的な人材不足が続いている状況にあり、「いかに優秀な人材を確保したり、育成していけばいいのか」が、多くの歯科医院で経営課題になっています。

また歯科衛生士に関しては、「歯科予防処置」だけでなく「歯周基本治療」など、本来個々の能力に合わせて歯科医師より指示を受け行う業務がありますが、その際の指標にもなり、今後さらに必要になってくるのではと思います。

そうした課題の解決方法のひとつとして、自院に最適な「評価制度」や「キャリアパス」を取り入れる動きが見られます。この連載では、歯科人材育成事業や歯科コンサルティングで多くの実績を持つTomorrowLinkの濱田智恵子が「最適な歯科衛生士の評価制度・キャリアパスを導入するためのポイント」を解説したいと思います。

今回は、そもそも「なぜ歯科衛生士の評価制度やキャリアパスを取り入れる必要があるのか」を、実際のエピソードを交えて説明いたします。

評価制度・キャリアパス導入の最終目標とは?

そもそも、歯科衛生士の評価制度やキャリアパスは、どれくらいの医院が取り入れているのでしょうか。TomorrowLinkでは、歯科衛生士の育成プログラムを手掛けており、その一環として評価制度やキャリアパスの導入を相談されたり、実際に支援もしています。しかし、自院に最適な制度を導入できている医院は多くないと感じています。

開業したばかりの院長や開業を視野に入れている勤務医の先生方は、歯科医院の経営や人材育成に高い関心を持たれています。しかし、評価制度やキャリアパスの策定・運営を支援する際には、ちょっとした現場の違和感を覚えることがあります。

いきなり「自院でも評価制度・キャリアパスを取り入れます」と言われた現場のスタッフの中には、心のどこかで「人から評価されるのは嫌だな。できれば楽してお給料が上がればいいのに」と感じている人も少なからずいるでしょう。

私たちは、人材育成研修を通じて「皆さんがスキルアップを目指すことは、ご自身の成長や勤務先の医院の経営に貢献するだけでなく、患者さんのためになります。去年よりも少しでもスキルが向上していると、患者さんも喜びますよね」と伝えています。そして、それぞれの能力にあった患者さんを見てもらうようにすることで、自分に対応できない患者さんを担当し途方にくれる可能性を下げることができます。それに対しては、「確かに言われている通りだ」と感じてもらえている手応えを感じます。

一方、医院側にとっては、評価項目・キャリアパス導入の最終目的は「報酬に反映させ、歯科衛生士のモチベーションを上げること」にもあると思います。特に能力に合わせて、患者さんの担当を振り分けるのであれば尚更です。

また、評価制度が確立されていると、歯科衛生士の公平な評価にもつながります。結果として頑張った成果がお給料に反映されると嬉しいものですよね。「できない従業員を低く見たり、安く雇うため」ではなく、「できる従業員をちゃんと認めてあげる」ことで、歯科衛生士のモチベーションは大きく向上するはずです。

最近の新人歯科衛生士の傾向として感じているのは「教えてもらえると思っていたけど、教えてもらえなかった」という不満を持つ人が多いことです。

歯科医師や先輩の歯科衛生士も忙しい業務の合間に新人歯科衛生士を指導する立場からすると、「これくらいは、普通に考えると言わなくても理解してもらえる」と考えることも多くあります。しかし、新人や若い歯科衛生士にしてみれば、「先輩が普通と思っていることでも理解できていない」ことは多く、「見るべき大切なポイントも分からず、ただ見ているだけ」という光景を見かけます。

そうした観点を踏まえると、キャリアパスは歯科衛生士の「現在地(今できることはどこまでか)」を測る目安にもなります。勤務年数などによって「最低でもここまでの業務ができてほしい」という明確な基準が設定されていると「この医院(院長)が、何を歯科衛生士に求めているか」を共有できます。指導する側にとっても「現状は何ができていて、どの部分が足りない」ということが分かれば、より教えやすくなるのではないでしょうか。

歯科医院を経営する立場からすると、新人や経験の浅い歯科衛生士に対して「早く一人前の歯科衛生士になってほしい」と思うのは当然のことです。しかし、「この医院で頑張っていこう」と思ってもらえなければ、歯科衛生士として成長する前に離職する可能性が高まります。既に評価制度や育成プログラムをお持ちの医院もあると思いますが、歯科衛生士に安心して長く働いてもらうためにも、キャリアパスを上手に活用いただきたいと思います。

キャリアパスと連動する評価制度を早い段階で取り入れるべきか

「評価制度は全ての医院に必要なものではないが、キャリアパスは全ての医院に必要だ」と私は考えます。

そのため、「キャリアパスと連動した評価制度作り」を推奨しています。キャリアパスの目標を設定したうえで従業員を評価し、その結果を報酬に反映できる制度の確立こそが、歯科衛生士の能力を引き出すことにつながると考えます。特に、従業員を増やし、事業の拡大を考えている場合は、きちんとした評価制度とキャリアパスの策定・運用をできるだけ早い段階で取り入れた方がよいと思います。

「残念な院長」と言われることも

ときどき勤務医の先生が開業される際、同じ職場にいた歯科衛生士と一緒に医院を開業されるという話を耳にします。気心の知れた間柄であることから、上手くいくと考える先生も多いことでしょう。しかし、こうしたケースでも、歯科衛生士やスタッフから「○○先生は、院長になってから変わってしまった」という声が上がり始めるという話もよく聞きます。

その多くは「残念な院長になってしまった」というものです。「勤務医時代から従業員とは上手くやってきたから大丈夫」と自負されていた先生であっても、実際にはこう評価されることがあります。「経営者」という立場と、「雇用される」立場では、全く関係性が異なります。開業される場合は、「勤務医」と「院長(経営者)」は違うことを意識して、組織マネジメントを考えた方がいいかもしれません。

歯科衛生士から選ばれる医院になるためにも

日進月歩で医療技術が発展する医療業界では、歯科医師と同様、歯科衛生士も常に最新の知識と技術の習得を目指す「生涯教育」が求められます。しかし、多くの医院では新人時代に育成プログラムを取り入れていたとしても、その後の成長を支援する取り組みがなければ、歯科衛生士としての新たな学びを得られず、成長が止まってしまいかねません。

今後、若い世代の従業員の多くが勤続年数を軸とした年功序列による報酬制度に違和感を覚えることも大いに考えられます。従業員がキャリアを考える上で指標となるキャリアパスを作成し、それに即した評価がされて「頑張った成果がちゃんと評価された」と感じてもらえれば、医院にとっても患者さんに素晴らしいことではないでしょうか。

TomorrowLinkでは、自院に適した「評価制度」や「キャリアパス」を取り入れたい院長先生からのご相談や、制度策定・運用などをお手伝いしています。

歯科医院経営が厳しくなる中、「この医院で働きたい」と歯科衛生士から選ばれる医院になるためにも、適切な評価制度やキャリアパスを整備しておきたいものです。次回は、歯科衛生士の評価制度・キャリアパスの失敗しない導入方法のコツを解説します。

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