近年、よく耳にする「働き方改革」。それ以前にも「ワークライフバランス」という言葉も広まっていました。
「働き蜂」とも言われた日本人は、その国民性から「勤勉」「働きすぎる」と見られてきました。
また、単に働きすぎるという課題とは別に、すぐに解決するのが難しい問題を多く抱えているのが日本社会の現状です。
それら課題の解決策として日本政府が掲げた方針が、働き方改革でした。
平成30(2018)年7月には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)が公布されています。
その中には、従来の「パートタイム労働法」に有期雇用労働者を追加した「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)が含まれ、同法は2020年4月に施行されました。
この法律によって、同一企業内における正社員と非正規社員の間の不合理な待遇の差を廃止する取り組みが進んでいます。
たとえば、「パートだから」という理由だけで待遇差があると違法とみなされてしまうのです。
待遇の格差という点で、特に重要なものとしては「賃金」関連の制度変更が挙げられます。
同一の業務内容であれば、雇用形態に関わらず同一の賃金を支払うという「同一労働・同一賃金」が法制化されました。
2020年4月に大企業では既に適用され、中小企業もこの2021年4月から適用が開始されました。
これによって、歯科医院の従業員雇用も大きな影響を受けると予想されます。具体的にどのような影響があるのでしょうか。
この連載では、多くの中小企業の人事労務・採用に関するお悩みを解決し、歯科医院に対する豊富な支援実績を持つ「社会保険労務士法人とうかい」の代表 久野 勝也が、歯科医院における「同一労働・同一賃金」対応で失敗しないポイントを分かりやすく解説していきます。
第1回となる本記事は、働き方改革の必要性を踏まえつつ、同一労働・同一賃金の法制度が作られた背景を説明します。
そもそも、なぜ「働き方改革」は必要なのか?
なぜ、働き方改革が求められているのでしょうか。
日本の労働環境を取り巻くさまざまな課題が、その背景にあるのです。
中でも深刻な課題が「低い国際競争力」「人手不足」「社会保障制度の崩壊」の3点です。