「スタッフが辞めない医院づくり」に欠かせないコミュニケーション術
「スタッフの離職率が高くて悩んでいる……」
そんな悩みを抱えている院長先生に真っ先に学んで欲しいのが、「対女性」のコミュニケーション術です。
「スタッフが辞めない医院づくり」にとって、なぜコミュニケーションが欠かせないスキルなのでしょうか。
そこには年代や性別の違いも大きく関わってきます。
早速詳しく解説しましょう。
貴院のスタッフは「指示待ちスタッフ」ではありませんか?
院長として経営や治療に日々の仕事が忙しくなると、スタッフに対して「いちいち私の指示を聞かなくても自発的に動いてくれないか」という気持ちを持つ場合もあるのではないでしょうか。
確かに、それぞれのスタッフが自発的に正しい行動を取ってくれたら、最高です。
しかしまずご自分の医院のスタッフをイメージしてください。
20代の若い女性が多いのではないでしょうか?この世代は、「新しいことや変化をあまり好まない」という特徴があります。
歯科医師として熟練になりつつある30代から40代以降になると、「見て学ぶことの大切さ」を十分理解し、ご自身もそのように様々な技術を磨いてこられたことでしょう。
ましてや院長という立場であれば、常にご自分で問題を発見し解決法を考えて、提案したり自ら行動し続けたりしているのではないでしょうか。
そのような対応をスタッフにも期待してしまったとしたら、それは仕事歴の浅い20代スタッフには難しいことです。
経験も少なければ、年齢やキャリア的にも自分の主張をしにくいので、その結果、どうしても「指示待ち」になってしまうのです。
まずはこのような「違い」があることをしっかりと認識しましょう。
コミュニケーションの食い違いは離職につながる
それではそのようなスタッフたちにとって「満足のいくコミュニケーション」とはどのようなものなのでしょうか?
相手が情報を自ら取りに行くスタッフか、指示待ちタイプなのかによって、必要となるコミュニケーションの濃度も異なります。
院長がこの点を理解していないと、スタッフとの間にコミュニケーションの食い違いが起き、その結果「なぜ彼女たちは自発的に動かないのだろう?」とフラストレーションばかり溜まってしまいます。
しかしそれはスタッフが悪いわけではなく、コミュニケーションが足りない、あるいは方法を間違えているからかもしれません。
院長が「なぜ自発的に動かないんだ」と感じていると、どうしてもそういったネガティブな感情は伝わってしまいます。
女性は相手の感情に敏感です。そうすると「なぜ機嫌が悪いんだろう?」「余計なことをやって怒られないように、言われたことだけやろう」と負の感情が連鎖してしまいます。
スタッフと院長のあいだにコミュニケーション不全が生じると、お互いに不満を抱きながら仕事を続けることになり、ストレスは高まる一方ですから、院長が感情的に叱る場面も増えるでしょう。
こうなるともう完全な悪循環です。この結果、双方の関係が改善する前に、スタッフが辛抱できず辞めてしまうのです。
患者様とのコミュニケーションに欠かせない「利き感覚」「傾聴」「話し方」
それではこういった「コミュニケーション不全」を起こさないためには、どうしたら良いでしょうか?
コミュニケーション術の内容は多岐に渡りますが、ここでは歯科医院のスタッフや院長ならぜひ身に付けておきたい「利き感覚」「傾聴」「話し方」を紹介します。
利き感覚の見分け方を鍛える
コミュニケーションを円滑に行うためには、相手の「利き感覚」を見分けるスキルを身につけるのがおすすめです。
利き感覚とは、右利き・左利きと同じように誰にでもあるもの。
視覚優位、聴覚優位、身体感覚優位の3つに分類できます。
・視覚優位 目で見た情報を優先的に取る傾向が強い方が視覚優位です。
このタイプは映像を思い浮かべながら話します。映像は言葉よりも情報量が多いため、早口になったり話が飛んだりするのが特徴です。
・聴覚優位 声の調子や話し方で情報を取る傾向の強いのが聴覚優位の方です。
視覚優位ほどではありませんが、テンポ良くリズミカルに話す人が多く、論理立てて話すことを好みます。
・身体感覚優位 身体感覚優位の方は、触覚や嗅覚、味覚が優れています。
場の雰囲気を敏感に感じ取るためか、感情豊かにゆっくり話す方が多い傾向にあります。
言語優位タイプの存在にも注意
上記3つのタイプに加えて、「言語優位」といういずれにも該当しないケースもあります。
言語優位の方は、相手の話す言葉から得られる情報に固執します。
言葉の裏にある背景やプロセスを軽視し、結果や答えだけに強く影響されやすいタイプです。
そのため、自分と相手の気持ちの食い違いに気づかず、感情的になりやすいため、人間関係を困難にするケースが多く見られます。
日々のコミュニケーションの過程で、ちょっとした意思疎通のズレなどが起きたときは、以上の利き感覚+言語優位の合計4つのタイプのどれに当たるのだろう、と少し意識してみましょう。
タイプによってそれぞれ「適切な伝え方」がありますが、タイプに合った方法を使っていないと、せっかく情報を発信しても正しく届かない可能性があります。
これが「コミュニケーション不全」の原因の一つです。
コミュニケーションは「傾聴」なくして成立しない
ここまでは4つの傾向をご紹介しましたが、全てのタイプのコミュニケーションにおいて最も重要となるものがあります。
それは「相手の話をしっかりとよく聴くこと」です。
「傾聴」という言葉をご存知かと思いますが、相手の言葉をただの音として認識するのは「聞く」。
それに対して、個性ある一人の人間の言葉と捉え、耳だけでなく目や心でも聞くのが「聴く」。
コミュニケーションの視点から「聴く」をさらに進化させたものが「傾聴」です。
スタッフとの会話の際も、この「傾聴」を心がけてください。
ただし、傾聴にも悪い傾聴と良い傾聴があるので注意しましょう。
悪い傾聴は自分が主役になり、会話泥棒になってしまうケースです。相手の言葉を丁寧に聴いている点は良いのですが、得られた情報を勝手な解釈・評価して、一方的にアドバイスをしたり、ひどい時は自分の話に持って行ってしまいます。
そのため相手は、話を聴いてもらったはずなのに、なぜか不満が募ることになります。
他方、良い傾聴は相手が主役です。
得られた情報から相手が求める情報を抽出して言葉を返します。
しかも言葉だけでなく、表情や仕草といった非言語(ノンバーバル)の手段も活用するのです。
そのため相手も「自分の考えをしっかり聴いてもらった」と満足します。
「聴く」だけでなく「話し方」も重要
言葉によるコミュニケーションは「聴く」と「話す」がセットで成立します。
話し方は優しさにも武器にもなる諸刃の剣です。
ほんの小さな語りかけひとつで、相手を幸せな気持ちにすることも、反対に人間不信に陥らせることもできます。
コミュニケーション術において、話し方とは「接し方」と同義です。
接し方には次の2つの「つかむ」があることを押さえてください。
・心をつかむ 相手の要望を確実に把握し、核心を外さないように話すことで、相手の心をつかめます。
・コツをつかむ 物事の要点を捉え、要領良く話すことで、会話の行き違いを避ける(=コツをつかむ)ことができます。
心とコツの両方をつかむ話し方を心がければ、相手を幸せな気持ちにすることも可能なのです。
コミュニケーション術の習得は仕事のやりがいを生む
コミュニケーション術に欠かせない「利き感覚」「傾聴」「話し方」を習得すると、スタッフ間だけではなくあらゆる人間関係で大きなメリットを享受できます。
患者様の利き感覚を把握したうえで、タイプに応じた傾聴でお口の悩みを的確に確認し、相手の要望と治療の要点をきちんと届くように解説する。
そんな院長のいる歯科医院なら、患者様はたちまちファンになってしまうでしょう。
スタッフとの良い関係の構築も患者様から信頼を得るためにも、コミュニケーションの全ての基本は「傾聴」になります。
特に男性はすぐに結論を出したがったり合理的にものごとを考えたりしますが、女性は相談したり共感を得てもらったりしながら自分の考えをまとめる傾向がありますので、そこを理解してしっかり「傾聴」することを心がけましょう。
スタッフも「しっかり聞いてもらっている」と感じると自己肯定感も上がり、理解してくれる上司への信頼度も上がります。
その結果、人間関係や仕事のやりがいに満足し、離職率の低下へとつながります。
スタッフが心から仕事を楽しみながら患者様に接したら、さらにプラスの相乗効果が生まれていきます。
患者様もスタッフも幸せになれる歯科医院は、適切なコミュニケーション術によって支えられているのです。
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Kuriere 代表 / 歯科衛生士
日本大学歯学部付属歯科衛生士専門学校卒業。歯科医療コンサルタントとして全国の歯科医院を訪問。資格を持つ医療スタッフが将来にわたり職務経験や計画的な能力開発を行い、自分の人生(=キャリア)を形成していく「キャリア育て」としても活動。
1994年4月 国家資格歯科衛生士取得後、都内歯科医院勤務。
1996年 人材育成と企画サービスを行う有限会社エイチ・エムズコレクション入社。セミナー講師、企業マーケティング・啓発活動、テレビ、ネット、メディア、雑誌などにも出演・執筆多数。全国の歯科衛生士学校で講義も行う。
2018年 同社退社後にフリーランスとなり、2019年4月より「Kuriere」を創業。