せっかく採用したのに!事務長活用のよくある失敗事例と対策

前回の記事「いまさら聞けない事務長をうまく活用する「3つ」のポイント」を読んで、自院でも事務長活用のイメージが湧いてきた院長も多いのではないでしょうか。

しかし多くの院長にとって事務長は、歯科医師でも歯科衛生士でも、単なる受付でもない未知の職種。そのため「実際に採用したあと、スタッフ達とトラブルになったらどうしよう……」「本当にコストに見合った活躍をしてくれるのだろうか」と、まだ不安を感じている方もいるでしょう。

そこで今回は、実際に私が見聞した「よくある失敗事例」を、対策とセットで紹介します。事務長を雇用した場合に生じうるトラブルを、具体的な対策とともに把握しておけば、不安は解消できるはずです。事務長活用を具体的に検討している方は、ぜひ参考にしてください。

トラブルその1:事務長が労働組合のリーダー的存在になってしまう

事務長として仕事を始めてからしばらく経ち、特に「労務」に関わりだすと、診療スタッフとも打ち解け合い、なんでも気軽に話せる間柄になります。それ自体はもちろん歓迎すべきでしょう。ただ問題は、事務長が診療スタッフにとって不満のはけ口になってしまう場合です。

事務長は「労働組合のリーダー」になってはいけない

例えば、給料への不満や残業代への疑問、有給取得の厳しさ、上役や先生への愚痴、退職相談などです。これらの不満や愚痴は、事務長が就任する前は各人が胸の内に潜めつつ、家族や友人、同僚などにぶつけることが多かったことでしょう。

ところが、事務長がなんでも相談できるカジュアルな存在になると、診療スタッフはここぞとばかりに不満や愚痴をぶつけるでしょう。事務長も「相談事があれば自分に伝えて欲しい」と周知している手前、拒否することもできず、処理の仕方にとことん悩む羽目になります。

これではまるで、従業員と会社の間で板挟みになる労働組合のリーダーです。

特に怖いのは「院長に対する愚痴・文句」です。事務長自身もスタッフから一方的に相談されているうちに、「実は院長は悪い人間?」などと院長に対するマイナスの感情を抱き、スタッフに強い同情を示すこともあります。すると次第にスタッフも「頼りになるのは院長ではなく事務長だ」などと盲信してしまうのです。

こうなると非常に危険です。事務長とスタッフ同士がお互いに言葉を重ねて慰め合ううちに、共依存のような関係に陥る可能性があります。その結果、事務長が医院を辞めるときに、院長に不満のあるスタッフを数名引き抜いてしまう……というケースも実際にありました。

対策は?

具体的な対策としては、事務長に開示する情報や権限を一部制限することです。例えばある法人様では、タイムカードなどの基礎的な計算は事務長が行いますが、実際の給与計算は弊社や社労士事務所に委託し、スタッフ個々の給与は事務長にはタッチさせない、という対策を取っているケースもあります。

また、ある程度の規模の医院の場合は、診療スタッフの情報を、事務長からだけではなく、チーフなど別ルートからも入るようにマネジメントの体制を組んでおくことをお勧めします。

トラブルその2:期待した仕事ができない

「院長が期待したほど仕事ができない」というのが事務長活用で最も多い失敗例です。しかしこの原因は、院長の過剰な期待やそもそも採用時点でのミスマッチの可能性もあります。院長は経営パートナー型やマネージャー型として採用したつもりなのに、実際の事務長のスキルは事務兼秘書型のつもりだった……というケースが典型です。

このような場合、不満だからといって辞めてもらうわけにはいきません。「こちらに見る目が無かった」「欲しかったスキルをきちんと把握できていなかった」など反省点として捉え、雇用を継続したまま経験を重ねてもらい、院長の期待するような事務長として成長してもらう以外に策はありません。

対策は?

このような雇用後のミスマッチを感じないためには、院長が事務長に求める能力と業務の範囲を明確にしておくことが重要です。一言に「事務」と言っても内容は多岐に渡ります。まずは院長自身が「うちの医院はこの部分ができる人が欲しい」と、はっきり理解して採用に臨みましょう。

またそもそも「経営の右腕」というべき経営パートナーレベルの事務長は、私が知る限り数名しか存在しません。それも「元幼馴染」や「親族」という特殊な関係性です。やや逆説めいていますが、事務長活用を成功させるためには、事務長に期待をかけすぎないこともコツといえるでしょう。

事務長の採用と育成については、弊社で相談を受けることも多々あります。採用媒体の選定、求人作成、書類選考、面接など、業務としてお手伝いもしていますので、お気軽に「Mr.歯科事務長」までお問合せください。

トラブルその3:診療スタッフとのトラブル

採用した事務長がスキル的に問題がなかったとしても、事務長もスタッフも人間ですので、些細なことで関係に亀裂が生まれてトラブルに発展することもあります。 特に医院は女性スタッフが多いので、男性事務長だった場合「女性マネジメント」がうまくいかず、良い関係が築けないケースもあります。

例えば事務長が行った人事への不満や感情的なもつれ(好き嫌い)、もし従業員間に給与の差があった場合など、それが実は公正な判断の上でだったとしても「ひいきしている」など、感情的な問題に発展するリスクもあります。

さらには、事務長は経理関係も完全に任されているケースが多いことから横領などの金銭トラブル、さらにはスタッフとの不倫関係などの異性間トラブルも起こり得ます。院長は治療に当たっている時間が長いからこそ、なかなかこういったことが大きなトラブルになるまで気がつかない、目が行き届かない可能性もあります。

対策は?

こういったトラブルを起こさないためには「採用」の時点で、事前にスクリーニングできるのが理想でしょう。

なかなか書類や面接で見抜くのは難しい面がありますが、面接時に質問を多面的に行い、その回答に「無理」や「矛盾」がないかを見ることで、ある程度「信頼性」「誠実さ」をチェックすることが可能です。

誠実さが薄く、口先だけで受け答えをする方の場合には、先の質問と、後の質問の回答で矛盾が生じることが多くあります。

また一般的には、管理職として一定の経験がある方であれば、院内でのコミュニケーションで問題を起こすことは少ないと言えるでしょう。

トラブルその4:優秀な事務長ほど退職リスクが高い

「素晴らしい事務長だったが、辞められてしまった……」これも非常に多いケースです。事務方を一手に引き受けてくれていた信頼ある事務長が辞めてしまうのは、経営面でも運営面でも大きなダメージです。

歯科医院の事務長職では多くの場合、キャリアプランを提供することができません。医院の規模が、爆発的に大きくなることも少なく、部下を数多く持つことも、収入が上場企業のように高くなることもありません。

この点を院長がよく熟知して、その事務長が、他の業界に転職した場合よりも、よい処遇やその他の機会を提供してあげることをお勧めします。

また「人生を意気に感じる」という面もありますので、院長が事務長を一生のパートナーとして面倒を見るという責任感を持っていることを、相手に感じてもらうことも大切ではないでしょうか。

対策は?

もともと「上昇志向」の強い方ほど、次のステップを求めて転職を求めるものです。一生を共にできる事務長を選ぶ場合には、現在の優秀さではなく、一緒に成長していける(あまり上昇志向が強すぎない)人財を採用し、時間をかけて育てていく方が長い目で見て成功につながることもあります。

事務長活用の検討は、自院の将来を展望する貴重な機会となる

ここまで3回にわたって事務長活用の意義やポイント、トラブルシューティングなどを解説してきました。「事務長活用の疑問点が解消できた」「まだうちでは早いかな」など、事務長活用についてさまざまな感想をお持ちになったのではないでしょうか。

あらためて確認しておきたいポイントを2つ挙げます。

事務長活用のために必要な二つの視点

1つ目は、「歯科医院も今やサービス業。サービス業として成功するか否かの鍵は、経営的に適切な施策を行うこと、そしてそれを実現するカギを事務長が握る」ということ。2つ目は、「事務長活用は単なるスタッフの採用・活用の問題ではなく、歯科医院の経営戦略に影響を与える重要なテーマ」ということ。

事務長活用の検討は、自医院の未来を真剣に考えるチャンスです。労働集約型ビジネスである歯科医院において、顧客本位のサービスを十分に実践しながら、大きな組織として成長するためには、院長の補佐役としてマネジメントを代行する事務長の存在がどうしても欠かせないからです。

また事務長活用の是非を検討することは、自院の過去・現在・未来を鳥瞰しながら、将来どのような歯科医院にしたいのか、具体的な展望を描く貴重な機会となります。

これまで事務長活用について考えたことのない院長は、この記事を参考にしてぜひ一度検討してみるようおすすめいたします。

■事務長活用にご興味ある方へ

我々「Mr.歯科事務長」では、貴院のフェーズや課題にフィットした事務長活用を提案しております。「プロの事務長をアウトソーシングするとどんなメリットがあるのか」を具体的に知りたい方は、ぜひ一度「Mr.歯科事務長」にご相談ください。

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