本記事では、歯科医師の平均年収について、勤務している歯科医師・歯科開業医・歯科診療所の院長ごとに詳しく紹介した後、近年の歯科医師年収の傾向と今後についてお伝えします。
なお、勤務している歯科医師に関しては、全体の年収相場だけでなく、診療所規模別、勤務先形態別、男女別の平均年収についても解説します。
勤務している歯科医師の平均年収
勤務歯科医師の平均年収について、厚生労働省の「第22回医療経済実態調査(2019年実施)」と「令和元年賃金構造基本統計調査」のデータを参照しながら、全体の年収相場、診療所規模別、勤務先形態別、男女別に解説していきます。
勤務歯科医師全体の年収の相場
「第22回医療経済実態調査」によると、歯科診療所(医療法人)に勤務する歯科医師の平均収入は、以下の通りでした。
・2018年度:564万円
個人立の歯科診療所で、代表ではなく従事者として勤務する歯科医師の平均収入は、以下の通りとなっています。
・2018年度:632万円
また、「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、2019年時点で企業規模10人以上の歯科医院で働く歯科医師の平均年収は570万円でした。
以上のデータにより、勤務歯科医師全体の年収は、500万円台〜600万円台が相場といえるでしょう。
診療所規模別の平均年収
前掲の「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上の歯科医院で働く歯科医師の平均年収は570万円ですが、企業規模別に数字は異なります。
・企業規模 100~999人:平均年収 299万円
・企業規模 10~99人:平均年収 847万円
一般論として、企業規模が大きくなるほど給与水準は高くなりますが、このデータを参照する限り、歯科医師の平均年収はその傾向の通りではありません。
勤務先形態別の平均年収
同じ勤務歯科医師でも、どこに勤務するかによって平均年収は異なります。
「第22回医療経済実態調査」では、2018年度の平均歯科診療所(医療法人)年収は564万円、一般診療所(医療法人)の場合は572万円、一般病院の平均年収は1,210万円となっています。
他にも、歯科医師の勤務先として大学病院がありますが、大学病院は教授・准教授・講師・大学院生といった立場によって給料は異なり、一般的に大学病院の給料は勤務医や開業医に比べると低いとされています。
年代別の平均年収
前掲の「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、歯科医師の年代別の平均年収は以下の通りです。
区分 | きまって支給する 現金給与額 |
---|---|
25 ~ 29歳 | 578万円 |
30 ~ 34歳 | 692万円 |
35 ~ 39歳 | 531万円 |
40 ~ 44歳 | 1,020万円 |
45 ~ 49歳 | 997万円 |
50 ~ 54歳 | 1,151万円 |
55 ~ 59歳 | 1,156万円 |
60 ~ 64歳 | 1,016万円 |
65 ~ 69歳 | 883万円 |
年代別の平均年収では、35~39歳と40~44歳で、2倍近い開きがあります。45~49歳で一旦1,000万円を割っていますが、それ以降は64歳まで平均年収が1,000万円を超えています。
65~69歳でも883万円と、39歳以下の平均年収よりも高い水準なので、歯科医師の平均年収は「一度上昇すると下がりづらい」と考えられるでしょう。
男女別の平均収入
「令和元年賃金構造基本統計調査」に基づく勤務歯科医師の平均年収(男女計)は570万円ですが、男性は652万円、女性は472万円と、双方の平均年収には差がある状況となっています。
地域別の平均収入
同じ「歯科医師」という職業でも、地域によって年収には開きがあります。一体どのエリアが高収入なのでしょうか。早速調査を見てみましょう。
最も平均年収が高いのは大分県で10,725,600円。もう一つ平均収入が1,000万円を超えているのは北海道の10,136,400円です。
三番目が静岡県で9,415,200円、東京は四番目で9,040,800円。そして大阪府の8,878,800円と続きます。
このデータから、一般企業のように都市部に高収入が集中しているわけではないことが分かりますね。
※これは賃金構造基本統計調査をもとに歯科医師の平均年収を計算したもので、一定数のデータが取得できなかった都道府県は調査の対象外になっていることをごご了承ください。
歯科開業医の平均年収
「第22回医療経済実態調査」によると個人開業の歯科診療所の院長の平均収入は、2017年度で1,176万円、2018年度は1,201万円となっており、2017年度から2018年度にかけて約2%増加しています。
また、日本歯科総合研究機構「現在を読む」(2015年度版)によると、2007年から2014年にかけての開業歯科医師の平均収入は、1,000万円台から1,400万円台の間を推移していました。
このことから、歯科診療所の院長の収入は10年以上にわたって同じような水準を保っていることが分かります。
開業に必要な金額
一口に「開業資金」と言っても、「土地はすでにある」「居抜きを借りる」「小規模にスタートする」など人によって条件が異なるためかかる資金もまるで違います。
また地域によっても、物件にかかるお金は大き変わります。
一般的な新規の開業例でいくと5,000万円以上と言われているケースが多く、以下のような内訳です。
- 医院の敷金・礼金・家賃などで600万円
- 医院の内装・外装に1,600万円
- 医療機器に1,500万円
- その他当面の運転資金も含め1,300万円
- 広告関連費用が月額10万円〜
など。
上記のケースは広告費を入れなくてちょうど5千万円です。
「全部の自己資金がたまってから開業」と考えていると、あっという間に年数を重ねてしまいます。
「自己資金1,500万円が貯まったらあとはローン」など、様々なローンも組み合わせながら開業計画を進めていきましょう。
歯科診療所院長の平均年収
「第22回医療経済実態調査」における医療法人である歯科診療所の院長の平均収入は、2017年度で1,416万円、2018年度は1,429万円となっており、2017年度から2018年度にかけて1%増加しています。
この増加率は、歯科開業医と同水準です。
また、前掲の「現在を読む」によると、2007年から2014年にかけての同数値は、1,200万円台から1,400万円台の間を推移しており、ここ15年ほどは同じような水準をキープしています。
同データによると、医療法人の歯科開業医の平均年収が、個人開業の歯科開業医の平均年収を上回る年度が多くなりますが、前述したように単純比較は難しいため、参考上の数値と考えると良いでしょう。
平均年収データから見る歯科医師の年収の特徴
先の平均年収
比較対象は勤務医と開業医、歯科診療所と一般病院の勤務医、40代以前と以降です。
それぞれ解説します。
勤務医より開業医の方が年収は高い
勤務医と開業医を比較すると、開業医の方が平均年収は高い傾向にあります。
先述したように、勤務歯科医師全体の平均年収は500万円から600万円台が相場です。
一方、歯科開業医の平均年収は、個人開業の場合で2017年度1,176万円、2018年度1,201万円。
医療法人の院長は2017年度で1,416万円、2018年度で1,429万円でした。
このように勤務歯科医師と歯科開業医では、平均年収に2倍ほどの差があります。
歯科診療所よりも一般病院の方が勤務医は高収入
歯科診療所と一般病院の勤務歯科医師の比較では、一般病院の平均年収の方が高い水準となっています。
先述したように、2018年度の歯科診療所(医療法人)の平均年収は564万円、一般診療所(医療法人)で572万円です。それに対して一般病院の平均年収は1,210万円ですから、2倍以上違います。
そのため同じ勤務歯科医師という立場でも、一般病院の方が高年収といえるでしょう。
40代から年収は大幅上昇
歯科医師の平均年収は40代から大幅に上昇します。
5~39歳までの平均年収は500万円から600万円台ですが、40~49歳で約1,000万円にアップし、50~59歳では約1150万円とさら上昇しています。
年収モデルのご紹介
歯科医師の平均年収は787万5,100円で、調査した年によってもかなりばらつきがあります。
しかし全体的には、従業員が100名を超えるような規模の大きな事業所の方が編集が高くなっています。
また、歯科医師全体の平均年収が約787万円であるのに対し、開業医の平均年収が約1200万円で勤務医の平均年収は約564万円と、大きな差が開いているのが分かります。
近年の歯科医師年収の傾向と今後
ここまで見てきた通り、歯科医師の平均年収は、個人開業、医療法人の院長のケースともに、ここ10年程度は同じような水準を保っています。
また「平成30年版厚生労働白書」によると、歯科医師数はここ数十年、増加傾向にあり、現在の登録者数は約10万人で、「人口10万対歯科医師数」は80.5人(2018年)と増えつつあります。
歯科診療所の数も6万8,500(2019年時点)と20年近く横ばい傾向にありますが、その一方で、今後日本国内は人口減少に向かっていくため、他の診療所との差別化や集客などが課題になっていくでしょう。
歯科医師になるまでの手順
歯科医師になるまでのプロセスには次の3段階があります。
- 大学の歯学部を卒業する
- 国家試験に合格する
- 臨床研修を修了する
歯科医師試験に合格するだけでなく、臨床研修も修了しなければなりません。それぞれについて解説します。
1.大学の歯学部を卒業する
まずは大学の歯学部、あるいは歯科大学で6年間のカリキュラムを修了する必要があります。カリキュラムの修了後に国家試験の受験資格を得られます。
文部科学省によると、2019年時点での国公私立大学・歯学部歯学科の入学定員一覧は、全国合計で2,720人と狭き門となっています。
全国11大学の国立大学における入学定員の合計は562人、同じく公立大学(九州歯科大学のみ)で95人、私立大学は15大学17学部で合計2,063人です。
定員募集している大学も全国27大学と限られていますし、学部数も29学部と決して多くはありません。
そのような大学の歯学部、歯科大学へ入学し、6年間のカリキュラム修了が最初のステップです。
2.国家試験に合格する
次のステップは歯科医師国家試験の合格です。
歯科医師の国家試験は年々、難化傾向にあります。その背景として歯科医師数の増加があるようですが、実際に合格率はダウンしています。
旺文社教育情報センターの「歯科医師国家試験の過去10年間の推移」によると、2011年時点における歯科医師試験の合格率は71.0%でしたが、2021年時点で64.6%に下がっています。
合格者数を比較しても、2011年は2,400名だった合格者が、2021年には2,123名と277名減っています。受験者総数も2011年と2021年を比較すると94名減少しています。
このように歯科医師の国家試験は難化傾向となっており、合格者数・受験者総数ともに、10年前よりも低い数値となっています。
3.臨床研修を修了する
大学のカリキュラムを修了し、歯科医師国家試験に合格後、1年以上、指定の医療機関にて臨床研修を経る必要があります。臨床研修の実施機関には以下があります。
大学病院:歯学若しくは医学を履修する課程を置く大学に附属する病院(歯科医業を行わないものを除く) 臨床研修施設:厚生労働大臣の指定する病院若しくは診療所「臨床研修施設」
臨床研修は基本理念にのっとった研修プログラムに基づいて実施され、修了後は申請によって臨床研修修了登録証が交付されます。
歯科診療所の開業資金の目安
歯科診療所の開業には平均4,000万~5,000万円ほどの費用がかかります。内訳とそれぞれの目安金額は下記の通りです。
- 土地や場所代:約500万円
- 工事費用:約1,000万~1,500万円
- 医療機器の購入費:約1,500万~2,500万円
- 広告費:約200万~500万円
- 運転資金(ランニングコスト):約800万~1,000万円
上記のうち、広告費に関しては、「どこに、どれだけの予算を投入するか」で変わってきます。
例えばフリーペーパーや雑誌のようなオフライン広告ではなく、効果測定が可能なWEB広告をメインにすれば、最低限の広告費で済むかもしれません。
運転資金に関しても、歯科診療所の経営が早期に安定すれば抑えられる可能性があります。
しかし土地や場所代、内装や外装などの工事費用、医療機器の購入費は必ずと言ってよいほど必要になるので、予測よりも高めの数字で考えましょう。
なお、大抵の場合は開業時にローンを組む必要があるため、ローンの返済費も計算に入れなければなりません。
このように「勤務医よりも開業医の方が高年収」という傾向はあるものの、実際に開業する場合は年収以外の各費用を考慮したうえで、現実的なプランを立てる必要があります。
まとめ
勤務歯科医師の平均年収は500万円台~600万円台といえます。
また、開業歯科医師の平均年収は、ここ10年ほど1,000万円台から1,400万円台の間を推移し、歯科診療所院長の平均年収は1,200万円台から1,400万円台の間を推移しています。
歯科診療所数は横ばい傾向ですが、今後日本は人口が減少していくので差別化や集客などが課題となるでしょう。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。