歯科医院の集患・増患 守るべき5つの鉄則

自分が経営する歯科医院の集患・増患に取り組みたいと思っていても、まずどんなことから始めればよいか分からない…とお悩みの先生は多いのではないでしょうか。

ただホームページを作ったり広告を出したりするだけでは、思うような成果が得られません。

患者さまに自医院のことを知ってもらい、来院・集患につなげるためには、おさえておくべきポイントがあります。

この記事では、患者さまの情報収集の方法や治療ニーズの変化を踏まえながら、現代の歯科医院における集患・増患のヒントを解説します。

歯科医院が集患・増患に取り組む重要性とは

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(画像=pixta)

厚生労働省の「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、歯科医院の数は2019年時点で68,500で、コンビニより1万軒以上も多くなっています。

一方で日本の人口は減少トレンドに入ってきているため、歯科医院同士の競争はより一層激しくなることが予測されます。

生き残り戦略として、一つの会社として採用に力を入れるとの同じように、マーケティングに注力して、集患・増患に取り組むことが重要と理解しましょう。

引用元:
令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況

患者さまはどうやって歯科医院を選んでいるのか?

情報収集先は「口コミ」と「インターネット」

厚生労働省が行った平成29年度受療行動調査によると、外来で医療機関にかかる患者さまの多くが、来院前に何らかの手段で情報収集することが分かっています。

その中で最も多いのが「家族・知人・友人の口コミ」、次いで多いのが「医療機関が発信するインターネットの情報」でした。

厚生労働省「平成29年度受療行動調査」(結果の概要「ふだん医療機関にかかるときの情報の入手先」)
(画像=厚生労働省「平成29年度受療行動調査」(結果の概要「ふだん医療機関にかかるときの情報の入手先」))

また、歯科医院検索ポータルサイト「歯科タウン」が実施したユーザーへアンケートでは、来院のきっかけとして使ったものは、

1位:ホームページ(47%)
2位:口コミ(22%)
3位:情報サイト(22%)
4位:看板・電柱(4%)
5位:SNS(2%)
(歯科タウン調べ)

となっています。

来院のきっかけに使ったものは?(歯科タウン調べ)
(画像=来院のきっかけに使ったものは?(歯科タウン調べ)2019/6/20)

つまり集患・増患のためには、医院の情報をホームページやSNSで情報発信することが、今や必須手段といえます。

歯科医院の紹介だけではなく、会社情報もしっかり見ているのでご注意ください。

歯科医院を選ぶ理由のトップは「場所」

日本歯科医師会が行った調査では、かかりつけの歯科医院を決める理由として「自宅の近所や通勤・通学の途中など、通院に便利な場所にあるから」がトップに上がりました。

自分の生活圏や行動範囲内で歯科医院にかかりたいと考えたとき、患者さまの多くは近所の人におすすめの歯科医院を聞いたり、住んでいる地域にどんな歯科医院があるのかインターネットで調べたりします。

そのためホームページを制作したり、広告を掲載したりする際にも、まずは周辺地域の集患を意識することが重要です。

歯科医院の集患・増患のための5つの鉄則

1.広告・宣伝は「誰に何を伝えるか?」が重要

広告や宣伝で意識すべきは「誰に」「何を」伝えたいのかはっきりさせておくことです。

例えば、街のかかりつけ医として地域の方に来てほしいのか、得意とするインプラント治療の患者さまを全国から集めたいのか、では広告や宣伝の手法は大きく異なります。

歯科医院が供給過剰な状況にある昨今、どの医院も集患に力を入れており、さまざまな方法で自院を宣伝しています。

そんな中で闇雲に広告を打っても埋もれてしまいます。

まずは、広告・宣伝のターゲットと自院のアピールポイントを明確にすることから始めてみましょう。

2.費用対効果を検証してPDCAを回す

集患・増患のための施策は費用がかかるものがほとんどです。

効果の出ていない施策を続けていても無駄になってしまうため、きちんと定期的に成果を検証して改善する意識が必要です。

例えば、新たに看板や広告などを出した後、それ以前と比べてどのくらい新患が増えたか分析し、患者一人集めるのにかかった費用(CPA:顧客獲得単価)を計算します。

この際、初診表に「何を見て来院したか」という項目を設けて調査するのがおすすめです。

WEBマーケティングでは分析に必要なデータを収集しやすいため費用対効果を検証しやすく、そこで得られた課題をもとに広告の内容や出し方を迅速に改善できるメリットがあります。

3.院内マーケティングにも注力する

集患を考えるときは新規の患者さまを集めることのみに注目しがちですが、既存の患者さまに向けた院内マーケティングも大切です。

既存の患者さまのかかりつけ歯科医への信頼は高く、コストを惜しまず、口腔ケアや質の高い仕上がりを希望する方も増えています。

一方で、「提案がなかった」「自費治療のメリットを知らなかった」といった理由で保険診療を選択する方も少なくありません。

治療やカウンセリングの際には患者さまの利になる選択肢や、症状に合った商品などを積極的に提案することをおすすめします。

4.新規集患だけではダメ!リコール率アップも重要

基本的に新患獲得のための施策には広告・宣伝費がかかります。

しかし、せっかくご来院頂いても、1度きりの治療で終わってしまってはコストに見合わない結果となってしまいます。

獲得した患者さまには継続的に来院して頂く工夫をし、一人当たりのLTV(生涯顧客価値)を高めて利益率を上げることが重要です。

また中医協の調査によると、近年では口腔ケアへの意識の高まりからう蝕有病率が減少し、歯周病治療や予防のための定期検診に通う患者さまが増えています。

リコール率アップに向けた施策の実施は、変化する患者さまのニーズにも沿ったものといえるでしょう。

5.最も重要なのは患者さまの信頼を得ること

ここまで集患・増患のためのさまざまな施策をご紹介しましたが、何より重要なことはしっかりと実践して患者さまの信頼を獲得することです。

受付対応や院内の清潔感、丁寧なカウンセリング、治療に至るまで質の高い医療サービスを提供できるよう気を配り、患者さまの満足度を高めることができれば、自然とリピート率が向上し、口コミや紹介での新患の増加も期待できます。

患者さまの視点に立ち、重視されるポイントをおさえて「また来たくなる歯科医院」「人に勧めたくなる歯科医院」を目指しましょう。

歯科医院の集患に最も効果的なホームページ作成のコツ

SEO対策「どうやってホームページを見つけてもらうか」を意識する

自院の魅力が伝わるホームページを作っても、インターネットで情報収集する患者さまの目にとまらなければ、せっかくの努力も実を結びません。

広告や宣伝内容を考えるだけでなく、どうやってホームページを見つけてもらい、集患に結びつけるかを考えることも大切です。

日本では、ほとんどの人がGoogle、Yahooの2つの検索エンジンを使っています。

この2つの検索エンジンで、「●●(地域名) 歯科医院」といったキーワードで検索結果の上位に表示されるように対策を立てましょう。

こうした取り組みは「SEO(Search Engine Optimization)対策」と呼ばれており、集患のためのWebマーケティングには欠かせない要素です。

また、同じキーワードの検索結果に競合サイトが多ければ、自院のホームページを目にとまりやすい場所に表示させることができるリスティング広告の出稿を検討するなど、ターゲットとなる患者層が自院のホームページに辿り着けるような動線を作る必要があります。

ホームページを通じて医院のコンセプト・治療方針等が患者に伝わるようにする

そもそも、歯科医院のホームページの役割とは、一体何なのでしょう?

一番重要なことは、平日の休みや住所といった基本情報の他に、先生の理想とする医院のコンセプトを伝えるページがあること。

そして、先生が伝えたいことが適切な文章やデザインを通じてしっかり表現できていることです。

したがって、医院のコンセプトや院長先生の考える理念、および治療方針が明確で、言語化できていることが不可欠です。

また、当たり前ですが医院のホームページは、治療希望の患者さんだけでなく、求職中の医療関係者が見る可能性もあります。

そのため、治療の説明以外にも医院のページを増やして、医院の概要や採用に関する募集情報、平日・週末の勤務時間などを載せることも大切です。

ニーズの高い治療への対応をアピールする

自費治療など自院の強みを意識して、ターゲットとなる患者さまにアピールする施策も重要です。

患者さまの歯科予防意識が拡大している昨今、治療ニーズは日々変化しています。

現在では「できるだけ自分の歯を残す治療」や「予防歯科」、「マウスピース矯正」、「セラミック治療」など、口腔ケアへの積極的なアプローチや、見た目を美しくする治療を求める方も増えており、集患の方法もさまざまです。

自分で手軽に使えるオーラルケアの商品などがある場合には、それらもしっかりとアピールしましょう。

こうしたニーズを踏まえて、SEO・MEOにおける対策キーワードを「●●(治療名) 歯科医院」と設定してもよいでしょう。

また、高額な自費治療については、じっくりと下調べする方も多いので、専用のホームページを別に作っておくことをおすすめします。

■ホームページ作成の具体的なポイント
ホームページを作成する際は、メインとなる患者層やアピールしたい専門分野に応じて、適切な内容とデザインを意識することが重要です。

さらに、患者さまの気持ちになって「歯科医院を選ぶに当たって何を知りたいか?何を重視するか?」を考えて、記載する情報を検討しましょう。

例えば、地域のかかりつけ医を目指すなら、暖色を中心にした温かみのある配色にして、カウンセリングやコミュケーションを重視していることを伝えます。

治療中の痛みに対する配慮や、近年ニーズの高まっている予防歯科への取り組みなどもアピールできるとよいでしょう。

自費診療を訴求したいなら、シンプルなデザインで信頼感を演出し、治療へのこだわりや得意とする治療方法について詳しく記載。

より良い治療を実現するために導入している設備や自費診療の料金表などもあるとベターです。

小児歯科専門なら、パステルカラーを使ってポップなデザインを意識します。

キッズスペースの有無や、お子さまに嫌がらずスムーズに治療を受けてもらう工夫など、ホームページを見る親御さんが気にする点を考慮した内容を盛り込みましょう。

リスティング広告やSNS広告を活用する

ホームページへのアクセスを増やすためにはSEO対策だけでなく、広告出稿も検討しましょう。

代表的なのは検索エンジンでの検索キーワードに応じて検索結果の目立つ部分に広告が表示されるリスティング広告です。

「地域名+歯科医院」「地域名+治療名」などで検索された際に表示されるように設定でき、クリック課金型なので低コストで導入できるのが特徴です。

また、ホームページへの流入経路はGoogleなどでの検索だけではありません。

TwitterやInstagram、FacebookなどSNS利用が広がる昨今では、ターゲットとなるユーザーの地域や属性を絞って広告を打てるSNS広告もおすすめです。

医療広告ガイドライン違反に注意!

看板やWEB広告などは医療広告ガイドラインへの順守が求められ、掲載する文言や写真、表現の方法などに関して制限があります。

さらに、近年の法改正で広告出稿していないホームページも規制の対象となったので注意が必要です。

医療広告ガイドラインにおける主な禁止事項は、

  • 比較優良広告
  • 誇大広告
  • 公序良俗に反する内容の広告
  • 患者さまによる治療の体験談の広告
  • 説明が不十分な治療のビフォーアフター写真

などですが、厚労省が公開している資料だけでは「何が良くて何がダメか」判断できないケースが多いため、専門知識と実績豊富なプロに相談するのが無難です。

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患者さまに好印象を与える

患者さまが歯科医院を選ぶ際は、診療内容や歯科医師の技術はもちろん、院内環境や雰囲気を重視する傾向にあります。

ホームページでは文章で説明するだけでなく、写真を積極的に使って、清潔で雰囲気のよい医院であることを伝えましょう。特に最近では、院内感染対策も患者さまが気にするポイントです。

また、歯科医師の人柄や対応の丁寧さも歯科医院の満足度を左右する重要な要素。

院長およびスタッフのプロフィールや患者さまへのメッセージを記載したり、また気軽に院内に入れるようなイベントを開催するなどして、親しみやすさや安心感を演出するのも効果的です。

歯科医院の集患・増患の具体策

看板を出して近隣の患者さまにアプローチする

歯科医院に来院する患者さまは近隣に住んでいる人、勤務している人が大半です。

WEBマーケティングの重要度が増している現在でも、エリア内で人が集まりやすい場所や、最寄り駅に看板を出すのは一定の効果が見込めます。

ただし、看板では伝えられる情報量が少ないため、歯科医院の存在や場所を認知してもらう、インプラントや矯正など分野に特化して伝えるといった使い方が基本です。

また、歯科医院の入り口の前にスペースがあれば、スタンド型のブラックボードを設置してアピールするのもおすすめです。

歯科医院や治療内容を紹介するパンフレット

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(画像=pixta)

パンフレットは院内に置いて既存の患者さまに自費治療などを訴求する以外にも、患者さまが家族や知人に自院を紹介してくれるツールとしても活躍します。

院外に設置した看板やポスターなどにボックスを作ってパンフレットを置くといった使い方もできます。

近隣を運行するバスのアナウンス広告

歯科医院の最寄りにバスの停留所があるならバスのアナウンス広告も効果的です。

当該停留所に近づくと音声ガイドで広告してくれるため、歯科医院周辺を生活圏としている人にアプローチしやすい手段です。

意識しなくとも乗客の耳に自然に入り、公共交通機関による広告であるため、知名度・信用度を高める効果が期待できます。バスを使って通勤・通学している人、ファミリー層、高齢者などに訴求しやすい広告です。

ポータルサイトへの登録

地域の店舗や歯科医院・クリニックなどをまとめて掲載しているポータルサイトは新患獲得に活用できます。

無料でも診療時間や診療科目、電話番号、写真など基本情報を掲載できるケースが多く、自院のホームページへのリンクを貼ればさらに効果的です。

また、患者さまにとって重要な指標となる「口コミ」を掲載できるサイトが多く、歯科医院としても経営判断の材料となるのもポイントです。

SNSでの情報発信

SNSでは広告を出稿する以外に、歯科医院や院長のアカウントを作成して情報発信することで、集客につなげる方法もある。

ただし、通常の投稿であっても、

  • 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
  • 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

の2つを満たせば広告と見なされ、医療広告ガイドラインの順守対象となるので注意が必要です。

SNSの利用に慣れている若いスタッフに運用を任せるケースも多いと思いますが、投稿する前に内容に問題がないかチェックするようにしましょう。

MEO(マップエンジン最適化)対策をする

Google検索結果画面の例(「調布市 歯科」)
(画像=Google検索結果画面の例(「調布市 歯科」))

WebマーケティングにおいてSEO対策と並んで集患のために重要なものとして、「MEO(Map Engine Optimization)対策」も挙げられます。

MEO対策とは、Googleマップをはじめとした地図アプリで「歯科医院」などと検索した場合に上位表示を目指す施策を指します。

地図アプリでは医院の住所や電話番号、診療時間、ホームページへのリンクなどと共に地図上で場所が表示されるため、特定のエリアを主なターゲットとする医療機関の集患には欠かせません。

MEO対策には、まずGoogleマイビジネスへの登録が必須ですが、特にMEOを意識せずとも、こうしたサービスで医院の写真や情報を充実させることは歯科医院の集患に大切です。

新規開業時の内覧会+チラシは今でも効果的

近年はWebマーケティングの重要性が高まりつつありますが、新規開業時や改装後に内覧会を開催するのは現在でも有効な手法の一つです。

歯科医院選びのポイントとして通院しやすい立地にある点を挙げる人が多いことから、院内の清潔さや設備の充実度、スタッフや歯科医師の人柄などは、内覧会を通じて近隣の方に直接アピールし、新規予約につなげます。

平日の休みはいつなのか、週末は診療をしているのかなどは条件によっては大きなアピールとなります。

内覧会の開催と併せて近隣にチラシを配布したり、内覧会期間中の予約特典や治療についての相談会などプラスアルファのサービスを付けたりすれば、さらに高い集患効果を期待できます。

内覧会開催の際には十分な人数のスタッフをそろえ、対応に不足が無いように注意しましょう。

オンライン予約システムを導入する

高齢者を含め全年代でスマホの普及率が高まっている現代では受診前にインターネットで情報収集をする人が多く、オンライン予約へのニーズも高まっています。

オンライン予約は、スタッフと会話しなければならない電話と比べて気軽に予約が取れる点もポイントです。

電話が面倒・苦手だと感じる方は意外と多く、受診のハードルとなっているケースもあります。

また、歯科医院を選ぶ理由として「待ち時間がない」ことも上位に挙がっているので、効率的な予約管理で患者さまをスムーズに診察室へご案内できるシステムは満足度アップにつながります。

まとめ

歯科医院における集患・増患の重要なポイントは、移り変わる患者さまのニーズを把握し、それに沿った施策を行うことです。

しかし、近年ますます重要性が高まっているホームページやWebマーケティングで成果を上げるためには専門的な知識が不可欠です。

これから集患に注力しようと考えているなら、実績豊富な外部の専門家に相談することをおすすめします。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。