歯科医院が生き残るため、開業歯科医に必要なスキルとは?

名古屋に開業し、2021年で10年を迎える『つゆくさ歯科医院』の小塚義夫です。

新患月間平均80人以上、自費率約35%以上という安定経営を維持し続けてきた経験から、歯科医院の経営を成功させる秘訣をお話しいたします。

全5回のシリーズの最終回を迎えた今回のテーマは、「マーケティング編」。

少子高齢化の時代、歯科マーケットは今後、縮小の一途をたどります。

こうした厳しい時代を生き抜くためには優れた人材の採用が欠かせません。

とはいえ、優秀な人材の採用が難しい今、どうやって開業を成功させればよいのでしょうか?

歯科医院の開業は簡単?安定経営が難しい時代、院長が身につけるべきスキルとは?

pixta_38554270_M_歯科衛生士_歯科医師_歯科助手
(画像=pixta)

歯科医院の開業は、他の業種の起業に比べると簡単にできるといえます。

保険制度の後押しがあるからです。

けれども、本当に大変なのは開業した後。

「コンビニより数が多い」と言われる中で安定経営を長く続けることが難しいのです。

小塚塾を1回目~4回目まで読破された方なら、既にお気づきのことでしょう。

自院の強みを知ることの重要性

少子高齢化が進む現代、歯科医院の経営は、年々難しくなっています。

かつての成長著しい日本では、歯科医院も自動的に発展していくことができました。

しかしこれからの日本は、歯科マーケットが縮小していく一方です。

今の時代、患者さんがスマホで検索するだけで医療技術や医院情報を簡単に知ることができて、医院を比較検討しやすくなっています。

この厳しい時代を勝ち抜くためには、歯科医としての治療技術や知識の研鑽はもちろん、患者さんに、『この医院を選ぶメリットが何であるか』を解りやすく伝えられる力が求められます。

そのためにも、他の医院と比較した時の『自分の医院の特徴や強み』が何であるのかを知り、『どんな患者さんに来てほしいのか』というターゲットを決めて、その層へのアピールを常に続けていく必要があります。

歯科医もやる気があれば、様々な技術の習得が可能になっていますから、今後は治療技術だけでは差別化を図れなくなっていくかもしれません。

その場合は、患者さんにとって「親身になって相談にのってくれる歯医者さん」といった親密度や信頼感が、これまで以上に重要視されるようになってくると考えられます。

優秀なスタッフを雇うことの重要性

このようにしてなんとか集患できたとしても、対応できるスタッフがいなければ始まりません。

働き方改革や多様性の重視などによって、従業員の権利意識が高まり、雇用が非常に難しくなっている時代、歯科医院も若い優秀な戦力を集められるかどうかが経営力に直結します。

つまり、これからの歯科業界で勝ち残るために院長は、

  • 知識
  • 技術
  • 伝える力
  • 他の歯科医院の施策をウォッチするリサーチ力
  • ポジショニング
  • マーケティング
  • マネージメント
  • ホスピタリティー
  • 誠実さ

など、多岐にわたるスキルを身につけなければならないといえます。

第一段階:勤務医1~3年目はマーケティングの初めの一歩!

pixta_39510113_M_歯科医師と歯科衛生士で治療
(画像=pixta)

歯科医師の勤務医時代の最初の3年間は、マーケティング力を身につけるための基礎を習得する時期です。

そのためには、コスト意識をもちながら勤務するのがおすすめです。

すべての行動を将来の開業のためのシミュレーションと捉え、「この治療でどれくらいの利益が出せるのか」という仕組みを理解し、確実に利益を残せる診療を心がけるのです。

具体的な目標は、「自分の給与の5倍以上の売上をあげられているか?」ということ。

自分の給料の4倍の粗利を稼ぐことを意識します。

また、

  • 患者さんが末永く医院に通い続けるよう意識しているか?
  • 「キャンセル率は、患者の不満度と同じ」と理解しているか?
  • 材料代や技工代、人件費を引いた後の利益を意識しているか?

といった考え方を、習慣づけること。

経営者の一員になったつもりで、医院の存続に貢献できる行動をとれる歯科医になるのです。

第二段階:利益を上げ続ける仕組みを身につける

考える様子の歯科医師_AdobeStock_233103597_ponta1414_600_400
(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

これらの習慣が身についてきたら、「マーケティング」力を身につけるための第2段階として、『利益を上げ続ける仕組み』をつくります。

実際に勤務している医院でリーダー等の役職について、医院の経営に関わっていけるとより実践的で良いのですが、役職がなくてもマーケティングの知識があれば、医院がやっていることが見えてきます。

そういった視点を身につけるにはまずは、経営についての本をたくさん読むことです。

そして、できるだけ積極的に、医院の取組みに参加するようにしましょう。

最終的には、院長に言われて動くだけでなく、ミーティングで自分の企画を「やりましょう」と提案できるといいですね。

開業医時代にホップ・ステップ・ジャンプと、マーケティングの基礎から実践まで行えます。

そうすると、医院が上手く回っていく仕組みが身につくようになります。

サバイバルな歯科業界で「生き残る歯科医院のタイプ」とは?

pixta_48022079_M_歯科治療_ハンドピース
(画像=pixta)

私が考える『生き残る歯科医院のタイプ』とは、患者から見て、他の医院ではなく『そこに行く理由が明確』な歯科医院です。

「その医院を選ぶ理由が明らか」とは、どういうことでしょうか?

例えば、

  • 治療内容に強みがある。(歯周病、予防、矯正、口腔外科などの分野で、認定医・専門医といった解りやすい資格がある)
  • 話を聞いてくれる、わかってくれる(スタッフのコミュニケーション能力が高い)
  • 医院の雰囲気がよい(スタッフがいつも笑顔、待たせない、医院が清潔など) といった、理由が挙げられます。

歯科医院は地域ビジネスなので、周囲の歯科医院と比べられた時、勝てる魅力を持っているかどうかが生き残りのポイントになります。

長く安定経営を維持していくためには、周りの環境をリサーチし、自分がその地域でポジションが取れるかどうかを考える必要があるのです。

生き残る歯科医院づくりのため 「将来ビジョンの立て方」とは?

AdobeStock_224654331_polkadot_600
(画像=polkadot/stock.adobe.com)

開業に当たって将来ビジョンはどのように立てれば良いでしょうか。

まず、「3年後に開業する」と決めることが大事。決心しないと、ずっとダラダラしてしまいますからね。

うちの優秀なドクターには辞めないで欲しいので、ダラダラしてほしいくらいですが(笑)。

それは冗談として、開業に適した年齢は、一般的に33歳前後といわれています。

将来ビジョンは、開業してすぐだけでなく、開業1年後、開業3年後、開業5年後と、段階的に立てておきましょう。

そして、毎年、将来ビジョンを更新します。

段階を踏んだ将来ビジョンを立てておくことで、学ばないといけないことや、習慣づけなければいけないことが目に見えてくるので、意識して動くことができます。

まずは、段階的に将来ビジョンを立てて、一つひとつクリアにしていくこと。

そして、 環境・機会・自分という、3つの魅力を明確にしておくことが大事です。

まわりの環境や時代の流れを読んで、ベストな開業の機会を探すためには、自分自身の魅力や持ち味は何であるのか?ということを把握できている必要があります。

実際のところ、勤務医時代はやることが多くて、治療技術を磨くだけでも大変でしょう。

けれども、いずれ開業を目指すなら、同時に経営についても学んでいかなければなりません。

決して楽なことではありませんが、開業医時代に苦労しなければ、開業してから苦労することになります。

開業してからその苦労を背負うと、全責任は院長にあるため乗り越えられない場合は医院がつぶれてしまいます。

まとめ

pixta_2464419_M_歯科_ハンドピース_2本_1
(画像=pixta)

実際には「開業してみないと見えない景色がある」と私自身感じることもあります。

結局、開業してみないとわからない、開業前には想像はできない部分も多いです。

けれども、準備としてやれることは変わっていません。

勤務医の皆さんには、開業医として成功するために学ばなければいけないことを理解し、将来ビジョンを立てるきっかけにしてほしいと思っています。

★最短で開業を目指す先生方に大人気!
※2021年7月29日10:30〜本放送・8月1日9:00〜再放送予定(本セミナーは盛況のうちに終了いたしました)

【おすすめセミナー】
・【無料】たった4カ月で歯科衛生士276名の応募獲得!歯科衛生士・歯科助手採用セミナー

小塚 義夫

医療法人つゆくさ歯科医院 院長 / 歯科医師

平成23年5月に名古屋にて、つゆくさ歯科医院を開業。専門は歯周病・入れ歯全般。歯周病治療に力を入れており、ターゲットを具体化した歯科医院経営の成功事例として多数の講演実績あり。

元々は教職志望だったこともあり、後輩歯科医師の育成にも注力。開業を志す若き歯科医師のよき相談相手としても活動中であり、開業にまつわるエピソードや知見を基に、あきばれ歯科経営 onlineにも寄稿頂く。