(株)ビジブルのCEOの山上真司です。私は住宅・保険の営業経験を活かし、現在は資産管理や保険のコンサルタントとして活動しております。年間1,150件の新規相談、70回ほど開催しているセミナーでは、金融業界の裏話や営業マンの本音などをお伝えしてきました。
これまで中立的な立場からお客様の問題を解決してきた中で、多くの歯科医師の先生方からご相談もお受けしてきましたが、他の相談と比べても特に「もったいない」と感じることが多くありました。
そこで今回は、「資産形成で損をしないためのポイント」についてお伝えします。
【編集部からのポイント】そもそもなぜ資産形成をすべきなのか?
サラリーマンであれば年功序列で昇級していくケースが多いですが、歯科医師の場合開業する場合も多く、一時的に数千万円のお金が必要になったり、開業後も思うように集患できなかったり、と収入が見えづらい部分があります。
また、「歯科医院はコンビニよりも多い」と言われ続けているため、歯科医院によっては年々収益が下がるケースも考えられます。
そのため、歯科医院の収入一本に絞るのはリスクが大きく「退職後に資産運用を始めよう」では遅いのです。
また資産運用は短期で回収しようと思うと非常にリスクも高まるので、長期で運用することが資産を増やす上では大切です。
そのため、なるべく若いうちから資産形成を行うことをおすすめします。
歯科医師が資産形成で損をしないために
保障と運用がセットの保険商品は危険?
突然ですが、先生は生命保険で資産形成していませんか?もしかしたら、その方法は損をしているかもしれません。
誤解のないようにお伝えしますが、保険商品での資産形成が良くないと言っているのではありません。例えば「資産形成」が目的なのに、「保障」と「運用」がセットになっている保険商品で資産形成をすると、損をする可能性があるのです。
そこで、資産形成で損しないためのポイントを2つお伝えします。
歯科医師が資産形成で損をしないための2つのポイント
1)保障と運用は必ず分けて考える
保障と運用がセットになっている保険商品は、保障目的で考えると保険料に対して保険金額が小さかったり、運用目的で考えると保障のコストに引っ張られて運用性が低かったりすることがあります。しかし、一定の目的であれば非常に有効的な場合もあります。
要は、何のためにその商品に加入しているのか、「目的」を明確にすることが重要です。目的を明確にしてメンテナンスすることで、保険料を抑えながら大きな金額が保障されたり、資産形成としてもより多くのお金を残せたりする可能性があります。
2)いつ、いくら必要か
人生の四大支出は「生活資金」「住宅資金」「教育資金」「老後資金」といわれていますが、それぞれ「何年後にいくら必要かを正しく知ること」がとても大切です。
例えば、マイホームを購入した場合、
- 毎年いくらランニングコストがかかるのか
- メンテナンス費用はいくらかかるのか
- 建物の寿命は何年なのか
これらの条件によって準備すべき資金は1,000万円単位で変わることがあります。
仮に30年後にマイホームを建替えるとして、3,000万円かかるとします。年利6%で30年間コツコツ資産運用していれば、約1,116万円で3,000万円を用意できます(税金等は未考慮)。
一方、必要なお金を想定せず、何も準備していなかった場合、3,000万円を丸々用意しなければなりません。だからこそ「いつ、いくら必要かを正しく知ること」はロスコストを減らす第一歩なのです。
このお金の備え方はクリニックも同じです。「いつ、いくら必要」であるかを把握し、想定しておかなければ、経営に悪影響が出ることもあります。設備投資や退職金のタイミング、金額などから逆算して「今いくら必要なのか」を考えなければなりません。
今ではインターネット上に、生涯のお金の収支バランスが分かる「ライフプラン表」を高精度で作成できる無料ソフトなどもあります。それらを活用して自身で作成したり、都度修正して、必要な金額を把握することもできます。
しかし、一般的な家庭が前提になっており、お子さんの学費ひとつとっても「歯学部に行くとしたら」などの試算条件は加味されません。より精度を高く把握するためには専門性の高いFP(ファイナンシャルプランナー)に相談したほうが、実用的なプランを立てられる可能性があります。
【編集部からのポイント】資産形成を行う上での必要なマインド
資産形成を行う上で意識しておきたいことがあります。
それは「運用に絶対はない」ということです。
人に相談すると、不動産投資や株、投資信託など様々な情報が入ってきたり紹介されると思いますが、「絶対に上がる」「絶対に儲かる」といったうまい話はまず無いと思いましょう。
そして、上でも述べたように運用するのであれば長期運用がおすすめです。
短期で考えると、上がった下がったでつい一喜一憂してしまいますので、5年10年それ以上という長いスパンで考えるようにしましょう。
そして、「節税対策をして浮いた資産や資産運用で出た利益をさらに運用に回す」という方法が一番利益につながります。
なるべく長く、そして「すぐに使うお金」のためではなく数十年後の資産のためという意識を持って、まずは少額からでも始めてみましょう。
1社の保険会社でまとめて加入すべきか、複数社で加入すべきか
担当者に価値があるのなら1社にまとめる
私は先生方が加入している保険に対し、セカンドオピニオンとしてアドバイスすることもあります。その中で某外資系生命保険会社の保険商品で保障も運用もまとめて加入している先生も多くいらっしゃいます。
ご相談の中で「保険は1社で加入したほうがいいのか?複数社で加入したほうがいいのか?」と、よく質問されます。その際、私なりの第一段階の答えとして「現在の担当者に価値を感じていれば、1社でまとめて加入するのがいいのではないか」とお伝えしています。
現在、日本には生命保険会社だけでも40社以上あり、各社それぞれ得意な商品、不得意な商品があります。家電で例えるなら、電子レンジに強いメーカーもあれば、掃除機に強いメーカーもあるということです。
「1社でまとめて加入する」ということは、他社よりも保険料が高い可能性もあれば保障範囲として十分ではない可能性もあります。しかしそれ以上に、付加価値(知識や人脈の提供、新患の紹介など)を得ているのであれば、その担当者とつながっておく価値は大きい=1社にまとめる価値はあると思います。
理想は保障範囲の最適化
ただ、ここでひとつ考えて欲しいことがあります。保険料の「高い・安い」は担当者の価値でカバーできると思いますが、保障範囲の「狭い・広い」はカバーできるでしょうか。
仮に、1社でまとめて保険に加入したとします。例えば、働けない状態になった時に他社であれば保険金を数千万円受け取れたのに、加入している保険では1円も受け取れなかった場合、担当者はその差を埋める経済的なサポートをしてくれるでしょうか。
そう考えると、担当者とはうまくつながりを残しながら、保障範囲については最適化する必要があります。 また、「無駄な保険」かどうなのかは、
- 歯科医師国保・社会保険のどちらに加入しているのか
- 家族構成や資産状況
- クリニックの組織状況
などによって変化し、最適化の答えは人それぞれです。価値を感じている営業マンに相談すると良いでしょう。
金融商品に悩んだ際にはセカンドオピニオンを活用
保険や金融商品に悩んだ時に大切なのは、前回お伝えしたように正しいリスクを把握し、正しいリスクヘッジをすることです。正しいリスクヘッジのためには、セカンドオピニオンを立てるのも有効です。
私は以前、お客様から「医院継承するにあたり、退職金積立を生命保険営業マンから提案されました。このプランニングで良いでしょうか?」と相談されたことがあります。私はその営業マンと何のつながりもないので、「目的が〇〇ならこのプランがベストです」とセカンドオピニオンとして中立的な立場で意見しました。
もし販売をゴールにしている営業マンに相談したのであれば、理由をつけて自社製品を提案してくるかもしれません。
また「営業マンには騙されないぞ!」と自身でインターネットや書籍などで調べても、その多くは広告料によって操作された情報がほとんどです。それが悲しい現実です。
このような話をすると「山上さんはなぜそのような働き方をしているんですか?」と聞かれることがあります。その理由は、過去に私も販売をゴールにし、お客様を損させてしまっていたからです。
「このプランがベストです!」と商品を販売してきたお客様ひとりひとりに「すみません。私の知識不足で、ベストではありませんでした」と謝りの連絡を入れたときにすごく申し訳なかったんです。
その時に、今後お客様にそのような想いは絶対にさせないと決意しました。そこから私の使命感は来ています。
今回は「資産形成における目的の明確化」「担当者の付加価値と保障内容の最適化」について、ご説明いたしました。次回はクリニックで必ず加入している火災保険の損しない知識をお伝えします。
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株式会社visible 代表取締役|歯科てっぺん塾 主宰
1986年生まれ。中央大学商学部を卒業後、大手ハウスメーカー、外資系生命保険会社、乗合保険代理店にて営業に従事。住宅業界・金融業界ともに販売がゴールである「業界の在り方」に疑問を抱く。
顧客にとって目に見える(=visible)わかりやすい業界に変えたいという想いで、2019年株式会社visibleを設立。
「知らずに損する人をゼロに」をコンセプトで業界のウラガワを伝え、クライアントと最適な答えを繋いでいる。直近1年でセミナー参加・個別相談頂いた歯科医師は延べ300名を超える。