はじめに「買わせる雰囲気」の快場をつくる
今まで「医療物販学の考え方」・「商品の紹介」などを解説してきましたが、今回お伝えするのは最も大切な「グッズのディスプレイ方法」です。
どんなに素晴らしい最新のアイテムを取り扱っていても、スタッフにしっかりとした商品知識があったとしても、患者様がまず自ら興味関心を持ってくれないことには、物販の最初の一歩を踏み出すことはできません。
ディスプレイは単にきれいに陳列していれば良いのではなく、「あれ? あの商品なんだろう?」「あそこのPOPに書かれている内容、まさに私のお悩みでは?」と一瞬で感じてもらうことが重要なのです。
そのためには、買わせる雰囲気の快場が必要です。
「買場」ではなく「快場」と書いたのは、医療物販学の目標でもある「患者様が快適に自分で自分に合った物を選べる楽しさ」をディスプレイで表現するためです。
ディスプレイで患者様の心をつかむには7つのポイントがあり、私はそれを「ディスプレイの7つの法則」と読んでいます。早速一つずつ紹介していきましょう。
ディスプレイの7つの法則
- 売りたいグッズのフェイスを増やそう!
- 重要アイテムはゴールデンラインに陳列しよう!
- 重さ・価格帯で上下配置を決定
- イチオシグッズは中央から右側に陳列しよう!
- サンドイッチテクニックの活用
- 集視ポイントをつくろう!
- 受付横には少額のグッズを!
法則1 売りたいグッズのフェイスを増やそう!
「フェイス」というのはグッズを置く棚などの陳列面のことで、商品を置く場所、置く範囲のことを指します。
スーパーやコンビニなどに入ると、季節の新商品は入ってすぐの、目線の高さに何列にも渡って陳列されているのを見たことがあるのではないでしょうか?
その商品に季節感を感じたり魅力的なキャッチがあると、つい手に取ってしまいますよね。
このように、売りたいグッズこそ「すぐに目に入る」「興味を惹かれるPOPがある」ことが重要です。
一般的には、よく売れる定番商品や話題の商品などを一番目立つ場所に陳列する場合が多いようです。陳列のポイントは以下の通りです。
- 単にその商品をいくつも並べるのではなく、関連商品や同ジャンルの他の商品を一緒に並べるとより興味を引く
- 「フェイスを増やす」と言っても、あまりに広範囲に同じ商品ばかり置いても逆効果。広くすればするほど視界には入るものの、「売り上げに貢献する広さ」は3〜4倍程度まで
- 陳列できる場所には限りがあるため、何かを増やしたら何かを減らす必要があります。必然的にあまり売れていない商品のフェイスが減り、その結果ますます売れない商品になるリスクもあるので、試行錯誤が必要
法則2 重要アイテムはゴールデンラインに陳列しよう!
ゴールデンラインとは、陳列棚を前にした際にすぐに視界に入り、しゃがんだり背伸びをすることなく「すぐに」手がとどく範囲のことを指します。
具体的には床下から85〜150センチほどの高さの範囲で、なんと物販活動の売り上げの9割がこのゴールデンラインから生み出されていると言われます。
「意識しなくてもパッと目に入る、そしてすぐに手に取れる」
これが患者様の心にすっと入り込む大きなポイントです。
重要なゴールデンラインだからこそ「この時期はどの商品をゴールデンラインに置くのか」「ゴールデンラインの中でどのように見せるのか」は重要な戦略です。
ゴールデンライン活用のポイントは以下となります。
- ゴールデンラインには売れ筋商品や新商品、CMで流れている話題の商品など、最もアピールしたい商品を置く
- 患者様のニーズに合わない商品を一番目立つ場所に陳列すると、医院自体のイメージが下がるので注意が必要
- 手が届きにくい上部には、手に取らなくても商品の特徴や魅力が分かるようにPOPを置く
- 下の段には子供向けの商品を置き、すぐ手に取れるようにする
- 男性向け・女性向けで高さの調節をする(男性向けは床上70-155センチ、女性向けは床上60-145センチ程度が目安)
- 午前中と午後で患者層が違うのであれば、午前中と午後でディスプレイを変えるのも一つポイントです。
法則3 重さ・価格帯で上下配置を決定
今まではマーケティング的な視点での配置方法をお伝えしましたが、陳列棚は急に変えられるものではないので「物理的に重たいものは上の方やゴールデンラインに置けない」という場合もあると思います。
そのような場合、軽いものは棚の上部に、重たいものは棚の下部に設置しましょう。
商品の手の取りやすさを意識するのはもちろん、高い場所は手が届きにくいのでPOPを置くこともお忘れなく。
また電動歯ブラシなどのように重たいものは、箱だけで置いても良いでしょう。
法則4 イチオシグッズは中央から右側に陳列しよう!
陳列棚を見るとき、私たちの目線は「Zの動き」、つまり
左上から右→左下→そのまま右へ
という流れをとると言われています。
この際に「より良い商品を買いたい」「もっと自分のニーズに合った商品はないか」という無意識の欲求から、視線は左から右側へと自然に流れていきます。
そのため、右側の商品の方が売り上げが高くなりやすいのです。
そこを意識して右側に売れ筋・売りたい商品・高価格でも付加価値の高い商品などを置くと良いでしょう。
法則5 サンドイッチテクニックの活用
物販における「サンドイッチ」とは、「イチオシ商品をあえて売れ筋商品に挟むこと」や、逆に「売れ筋商品をイチオシ商品で挟むこと」などを指します。
元々注目度の高い商品の間にイチオシ商品を挟ませることで、イチオシ商品にも自然と目が向く、認知度が上がる効果があります。
「注目度の高い商品を見てたまたま隣にあった商品(これがイチオシ商品)に目が行く」といくことを狙っているので、重要になるのはイチオシ商品に置くPOPや商品説明です。
せっかく目線が行ってもスルーされないよう、魅力的な見せ方を考えてみましょう。
法則6 集視ポイントをつくろう!
今まで伝えた内容通りにしっかり並べても、なかなかすぐには売り上げに結びつかないかもしれません。
その理由は、患者様がさらっと目を通して終わってしまっている可能性が高いから。
ここで重要になるのが「集視ポイント」と言って、確実に患者様の視線と心をとらえるポイントを作ること。
具体的には「一言で商品の特徴が分かるPOP」「パッと目を引くイラスト」などを設置することです。
これを陳列箇所のポイントに配置して、戦略的に患者様の視点を集めることを意識してください。
「どの商品に集視ポイントを置くか」は重要な販売戦略になります。
法則7 受付横には少額のグッズを!
これはスーパーやコンビニなどでもよく見られる手法で、コンビニはレジ横に10円のチョコや小さな駄菓子などがあり、「チョコなんて買う予定がなかったのに」と思いながら、つい手が伸びてしまったことがある人も多いのではないでしょうか。
これは「みんながチョコを好きだから」ということではなく、購入決定までの脳のプロセスをうまく利用した戦略です。
私たちは誰でも、購入する商品を検討している際には一瞬のうちに様々な比較をしたり過去の記憶をたぐりよせたりと、すごい速さで情報を集め、脳は一種の緊張状態にあります。
その過程を経て商品を決定すると一気に緊張状態がとけ、集中力も減少します。
これがレジで並んでいる時の状態です。
つまり財布の紐も決定するための集中力が緩んでいる状態なので、その直前まで厳しく吟味していたのが嘘のように、あまり何も考えずに目の前の商品を手に取ってしまいやすいのです。
ただし、これが高額だとそうはいきません。
そのため受付の横には、そこそこ多くの人が興味を持ちそうな「少額のグッズ」を配置することが重要です。
まとめ
今回は具体的な陳列の方法を、効果や目的を踏まえて説明しました。いかがでしたか?
「気づかないうちにそれやってる!」というケースもあれば、全く意識していないものもあったのではないでしょうか。
まずはすぐにできる部分から手を加えてみてください。
試行錯誤を繰り返すことで、「あなたの医院の売れる陳列パターン」が見えてきますよ。
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医療法人社団栄昂会(細田歯科医院・戸塚駅前トリコ歯科 )理事長
DECT株式会社 代表取締役社長
2016年に実家の細田歯科医院を継承。理想とする「全身から診る口腔咬合医療」を提供するために勤務。2016年10月にリニューアルオープン。
その後、2017年に医院経営の包括サービスを提供するDECT株式会社を設立。2018年には、戸塚駅前トリコ歯科を新規開業。
医院の待合室でセルフケアグッズを販売することがどのように医院経営を変えていくのかをテーマに「医療物販学」という待合室におけるマーケティング理論を提唱し、年間100回を超える講演で全国を飛び回る。