今からできる 指示待ちスタッフを変えるコツ

スタッフの魅力ある「医療接遇」が歯科医院経営を成功させる

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(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

「スタッフが自分から動いてくれない」
「院長が先輩が指示をするまで待っている」

…そんな、指示待ちスタッフをどう教育すればいい?というのは、歯科医院経営でよくあるお悩みのひとつではないでしょうか。

患者さんがついてきてくれる歯科医院は、たしかにスタッフが自主的にテキパキと動き、常に活気にあふれた空気の中で仕事をしています。

「院長先生が的確な指示を下してスタッフが従う」という業務スタイルは、歯科医院がまだ小規模でアットホームな診療を行っている時代はよいでしょう。

しかし、患者さんが増えて診療ユニットを増やすようになると、院長先生が一人でスタッフ全員に指示を出し続けることに限界がでてきます。

医院の規模が大きくなると、これまで通りのやり方では業務が回らなくなるのです。

スタッフが自立して、積極的に医院の運営に関わるような動きが取れなければ、業務を滞りなく回すことさえ難しくなっていきます。

スタッフが自分から動けない「指示待ち」になる理由

開業して数年経てば、そろそろ院長先生の右腕となってスタッフを束ねてくれるようなリーダー的な存在が育ってほしい…という期待がでてきます。

それなのに、どのスタッフも指示を待っているだけ。

多忙なスタッフもいるのに、目の届かないところで暇そうにしているスタッフもいる。

院長先生は、毎日一人忙しく、てんてこ舞い。

そんなとき、「指示を待たないで、もっと自分から動いて!」とイライラしてしてスタッフに八つ当たりしたくなる気持ちは解ります。

でも、ちょっと待ってください。

これまでスタッフに指示を出して、自分の都合のいいように動かしてきたのは院長先生ご自身ではないでしょうか?

忙しくなってきたからといって突然スタッフの自主性に期待しても、急にスムーズにいくはずがないのです。

なぜ「指示待ちスタッフ」ばかりになってしまうのか、それは、これまで、院長先生の指示を受けるような教育をしてきたからです。

スタッフは何も、やる気がないとか協調性がないとかいうわけではなく、ただ、どうすればよいのかわからないだけ。

院長先生の指示を待つことが医院の暗黙のルールのようになってしまっているため、スタッフはその医院の雰囲気に従っているだけなのです。

けれども遅くはありません。これから、「指示待ちスタッフ」を「自主性のあるスタッフ」に変えることは可能です。

スタッフを変えたければ「院長先生が変わる」ことが効果的

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「指示待ちスタッフ」を自ら動ける「自立型スタッフ」に変えるということは、他人の価値観を変えることになりますから、簡単ではありません。

他人の価値観を変えるためには、まずは院長先生の考え方を変える取組みが必要になります。

「こうあるべき、こうじゃないとダメ」という本来持っていた考え方はいったん脇に降ろし、院長先生が率先して現状を変える取り組みを行います。

それは、お父さんやお母さんがずっと見守り続けていた子供を自立させるのと似ています。

とても勇気や覚悟がいることです。

スタッフを信用して、背中を押してあげてください。もちろん、最初から上手くはいきません。

その考え方に変えた瞬間は、今よりも医院全体の状況が悪くなったようにも見えるでしょう。

しかし、医院全体で変わるためには、院長先生がそれを覚悟した上で、率先して変えていかなければならないことなのです。

その取組みが上手く回りだし、指示待ちスタッフが自立して動けるようになると、医院の医療接遇が魅力的に変貌します。

院長がすぐに実践できる院内コミュニケーション術は「挨拶」

スタッフの自主性を引き出すために、まずは院内コミュニケーションをスムーズにしましょう。

院長先生がすぐに取り組めることは、スタッフ一人ひとりに声をかけることです。

朝、歯科医院へ出勤するのは、院長先生が一番最後であるケースがほとんどです。

出勤したら、スタッフに「おはよう」と挨拶しましょう。簡単なことですよね。

基本的にスタッフは、院長先生と話したいのです。意外に思われるでしょうか?

歯科衛生士や歯科助手を志す人で、やる気がない人はほぼいませんから、院長先生の元で学べたり認められたりする機会を誰もが潜在的に求めているのです。

「ここでは学び尽くした」という時に、新たな天地への転職を考えるスタッフが多い業界です。

院長先生と話す機会があれば「元気?顔色悪いんじゃない?」「先生の方が悪いですよー。忙しそうですけど、ちゃんと寝てます?」等と何気ない会話が始まるきっかけになります。

なにより日頃からコミュニケーションが取れていれば、スタッフが院長のもとで自主的に動きやすくなるのです。

こんな些細なやりとりが、自立型スタッフを育てるきっかけになります。

成功している医院は朝礼や申し送りでチームワーク力を高める

また、活気のある医院は、朝礼や申し送りの時間を設けていることが多いです。

始まりがしっかりしていると、「これから業務が始まる」と気持ちを切り替えられますし、全員で仕事の話をしっかりしてコミュニケーションをとるきっかけにもなって、チームワーク力が高まります。

院長先生だけでこうした取組みを始めるのが難しい場合は、ご依頼を受けて、私が院内セミナーを行っています。

そして、引き締まった気持ちが緩みを見せる2~3カ月後に再び訪問し、医療接遇ができているかチェックします。

院長先生とは定期的に面談をしますが、たびたび現場にも立って、スタッフの接遇の様子を実際に見て注意するようにしています。

コミュニケーションスキルが医院経営に与える影響は大きい

院長先生が「医院を変えたい!」という気持ちがスタッフに伝われば、医院の雰囲気は確実に変わっていきます。

たくさんの歯科医院の変貌を、セミナーを通じて実感しています。

そんな空気ができてきたら、次は患者さんとのコミュニケーションです。

みなさんは、「コミュニケーション」とは何だと思いますか?

私は、相手あってのコミュニケーションですから、まずは相手の感情にフォーカスして、それに自分がどう対応するのか、そこまでを「デザイン」していくことだと思っています。

仕事にも、患者さんにも、自分自身の人生にも、愛情を持って関わることが大切です。

目の前の患者さんを心から大切にしてください。

スタッフのコミュニケーションの質が高くなると、患者さんが間違いなくついてきてくれますので、医院経営にも間違いなく大きな影響を及ぼします。

どんな歯科医療人でありたい?「医療接遇意識チェック」

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患者さんに提供できる他院との医療の差は、「接遇」の差で決まります。

患者さんについてきてもらえる歯科医院になるために、「医療接遇」が身についているか、スタッフ全員で確認してみましょう。

そのためには、まずは自分自身が歯科医療人としてとしてどうありたいかを再確認することが大切です。

次の10項目をチェックしてみましょう。

「どんな医療人でありたいか?」10項目の医療接遇・意識チェック

  1. 接遇力やコミュニケーション力を高め、患者さんが満足してくれる対応ができる医療人になりたい
  2. ヒヤリハットやインシデントを未然に防ぎたい
  3. 医療はチーム連携が大事なので、スタッフ間でのコミュニケーションギャップはない
  4. 院長先生、または患者さんから、接遇やコミュニケーションについての指摘や注意を受けたことはない
  5. 継続的に現場で活かせる接遇・コミュニケーションのエッセンスを知りたい
  6. 正直なところ、自分では、接遇ができていないとは思わない
  7. 万が一、病気になったら、この病院で、自分も家族も治療を受ける
  8. 毎日イキイキとやりがいをもって、この病院で仕事がしたい
  9. 目指す接遇が100点なら、今の接遇は何点?
  10. 周りの人から見たら、あなたの接遇は何点だと思う?

いかがでしたか?

チェックがいくつあるかというよりも、1項目ごとに振り返ってみて、自分が「どうなりたいのか」を考える糧にしてみましょう。

また、文末が「ない」で締めくくられている3、4、6にチェックがついていると要注意です。

「ない、から大丈夫」ということを理由にする人は、いいわけを探す人になりがちです。

「ない、から大丈夫」ではなく、「できるようになるには、どうすればいいか」という思考に変えることで自分自身の成長を促せます。

ぜひ、日々の接遇に活かしてください。

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北原 文子

Kuriere 代表 / 歯科衛生士

日本大学歯学部付属歯科衛生士専門学校卒業。歯科医療コンサルタントとして全国の歯科医院を訪問。資格を持つ医療スタッフが将来にわたり職務経験や計画的な能力開発を行い、自分の人生(=キャリア)を形成していく「キャリア育て」としても活動。

1994年4月 国家資格歯科衛生士取得後、都内歯科医院勤務。
1996年 人材育成と企画サービスを行う有限会社エイチ・エムズコレクション入社。セミナー講師、企業マーケティング・啓発活動、テレビ、ネット、メディア、雑誌などにも出演・執筆多数。全国の歯科衛生士学校で講義も行う。
2018年 同社退社後にフリーランスとなり、2019年4月より「Kuriere」を創業。