年々、経営環境が厳しくなっているといわれる歯科医院。多額の初期投資によって開業したものの、さまざまな経営上の問題に直面して悩んでいる院長は多くいらっしゃいます。
この連載では、多くの歯科医院の経営コンサルティングを手掛けているユメオカの代表である丹羽 浩之が、歯科医院が事業拡大を目指す中で直面したお悩み相談を受け、これまでの経験を踏まえて課題解決のヒントを提示していきます。
今回は、「デジタル化を進めていきたいが、何から手をつければいいのか分からない」というご相談です。
デジタル化は現在「DX(デジタルトランスフォーメーション)」化と言われるようになりました。
歯科医院におけるDXとは、デジタル技術の活用によってビジネスモデルを変革し、競争力を高めていくことと言えます。
DX化における歯科院長の仕事とは?
DXを始める前には医院独自の定義が必要
デジタル化を進めていく中で、歯科医院長から「何から手をつければいいのか分からない」という相談を受けることが増えてきています。
その際には、「とりあえず何かに手をつける」のではなく、まず「DXとは、自身の医院では何であるか」という定義を考える必要があることをお伝えしています。
ユメオカでは、DXを「既存の業務を効率化し、新しい付加価値をつくりだすこと」ことと定義し、既存の業務を効率化するために、何ができるのかを考える必要があると考えています。
歯科院長の仕事はビジョンを示すこと
「DXとは、自院では何であるか」という定義ができたら、次に院長の思い描く「ビジョン」をしっかりとスタッフに伝えていくことが大切です。
何故なら、DX化は院長が一人でできることではなく、むしろ9割がスタッフの協力によって実現できることだからです。
したがって、DX化によって「どのようなメリットがあるのか」を、スタッフへ伝えていかなければ協力を得ることは難しいでしょう。
院長の仕事は「何を目指すのか」のビジョンを示し、スタッフを動かしていくことです。
ビジョンを明確化する方法
めざす歯科医院像を書き出す
ユメオカには、目指す歯科医院像と、そこに向かうためのステップを明確化するために、1年後・3年後・5年後のビジョンを記した「ビジョンシート」というものがあります。
項目には「経営方針」や「経営課題」などが含まれており、「どのような歯科医院にしていくのか」を書き出します。
このシートには、「DXのあり方」や「DXのテーマ」を書く項目もあり、「DXのあり方」として例えば、下記のようなビジョンを掲げます。
- 初年度はデジタルコミュニケーションをつくる
- 3年後はオンライン相談による情報提供
- 5年後は連携会社を増やして「健康ステーション』にする
そして段階的にDX化を進めるために、どのようなテーマに取り組めばよいのかを明確にします。例えば、
- 1年後は「診察券アプリ』や「キャッシュレス決済』を試験的に導入
- 3年後はキャッシュレス決済比率を60%に
- 5年後はキャッシュレス決済比率を90%に
ここで大切なのは現段階で「どこに向かうのか」を、しっかりと書き出しておくことです。
スタッフのメリットも書き出して共有
DX化はスタッフの協力なしには実現できませんので、DX化によるスタッフのメリットに関しても、下記のように明記しておきます。
- 有給休暇を気兼ねなく取ることができる
- 給与を3年後には1.5倍にする
- リフレッシュ休暇を導入
「このようなことが実現できれば、私たちは、こういった働き方ができる」というビジョンを書面にしてスタッフと共有し、院内に浸透させていくのです。
ビジョンを明確にすることで、例えば、「自宅でも受付ができるなら、子どもがいても柔軟に働きやすい」などのイメージがつきやすいといった利点もあります。
ビジョンが明確でないと、「便利だからこのツールを使っておこう」というレベルになってしまいますので、「書いて伝えていく」ということが極めて重要です。
アクションプランの作成
「Why」「What」「How」3つの観点が大切
「DXの定義は何か」を考えた上で、「自院としてのDXとは何か」「何のためにDXをやるのか」ビジョンを明確化した後に、アクションプランを作っていきます。
受付や会計などの業務は、効率化しやすいといえますので、この分野から始めるのがいいかもしれません。
例えば、予約時間を減らすためには、「どうすればいいのか」をシートに書き出す、などから始めると、分かりやすいのではないでしょうか。
同時に、従来の受付業務は、「予約管理をする人」と「会計をする人」という位置づけでしたが、今後形態は自ずと変わっていくと予想されます。
そこで「『受付』は、『患者と診療室を結ぶコミュニケーター』である」など、受付の再定義も必要になってきます。
そして、定義が変わった際には院内に浸透させなければなりません。
このような変化に対して「業務が私に合わない」というスタッフが出てくれば、医院のビジョンにふさわしい新たな人材を採用するのがよいと思います。
DXに関わらず、施策実施の際には「Why」(何故やるのか)「What」(何をやるのか)「How」(どのようにやるのか)という3つの観点で、スタッフへビジョンを指し示すことが重要です。
DX化には最低でも2~3年はかかりますので、この「Why」「What」「How」の順に行っていかなければ、うまく進まないと思います。
目標に向かうために「数字」で共有
業務効率化のためには「一人労働生産性の現状把握と目標」の把握も大切です。
「生産性が向上した医院収支の変化数値」や「スタッフ給料150%アップの医療収支」などのモデルを設定し、どうすれば達成できるのか、既存業務の効率化を模索していきます。
スタッフに数字で見せることで、具体的なビジョンが共有でき、目標に近づいていけるようになるのです。
実現可能な目標を立てる
例えば、月あたりの粗利を150万円上げようとした場合、クリアーするためには、単に患者数を増やすだけでは現実的に困難です。
そこで収支モデルを作成し、「自費診療が90万円ぐらいで保険・リコールが60万円ぐらいなら実現できそう」だと分解・推測することで、実現可能なイメージが湧きやすくなります。
実現できそうな目標をたてて、その目標を達成するために、「どのようなDXが必要か」という考えに繋げていくことが大切です。
効果や費用がひと目でわかる「ユメオカDX化シート」
ユメオカは2021年9月に「次元が変わる!これからの時代のDX予防型歯科医院」という教材を販売します。
この教材では「コミュニケーション」「マネジメント」「教育」など分野ごとにどのようなツールがあるのかを整理しています。
また、ツールの導入しやすさを「A」「B」「C」3段階でランク付けした「ユメオカDX化シート」が付録に付いています。
これを参考にすれば、どんな施策を行うと、どのような効果が出て、費用はどれぐらい必要なのかが、ひと目でわかります。
また、「こんな項目があって、こんな風に活用できる」と知ることができるのも、「ユメオカDX化シート」の強みであり、新たな気づきがあると思います。
活用いただければ、DX化について「何から始めればいいのか」が分かるはずです。
DX化のポイント
繰り返しとなりますが、DX化を始める際は、「とりあえず何かに手をつける」のではなく、「DXとは、自身の医院では何であるか」という定義を考える必要があります。
DX化はスタッフの協力がなければ実現できないので、「何を目指すのか」のビジョンを示し、スタッフを動かしていくのが院長の仕事となります。
「目指す歯科医院像」に向けて、1年後・3年後・5年後のビジョンを現段階で書面に記しておくことが大切で、スタッフの協力を得るために、DX化によるスタッフのメリットも書き出して共有しましょう。
またDXに限らず、施策実施の際には「Why」(何故やるのか)「What」(何をやるのか)「How」(どのようにやるのか)という3つの観点で、スタッフへビジョンを指し示すことも重要です。
目標に向かうためには、実現できそうな小目標を立て、数字で共有する、「ユメオカDX化シート」を活用すると、DX化について「何から始めればいいのか」が分かるようになります。
まとめ
スタッフの数を増やさず、粗利を上げていくことが「生産性の向上」に繋がり、これが給与アップの原資になります。
既存の業務を本当にやる必要があるのかどうかを見極め、効率化し、新しい付加価値を生み出していく。
これが実現できれば、生産性を今までの約2倍程度は上げられる歯科医院ができるでしょう。
【新教材】実際にDXに取り組んでいる歯科医院の事例を紹介
DXという言葉はよく聞くけどイメージがわかない、まずは知ることからはじめたいとお考えの院長は、こちらをご覧頂ければと思います。
ユメオカ人気教材の7本
予防型歯科医院で「昇給・カリキュラム作成・空き時間活用」に悩む院長はこちらをご確認頂ければと思います。
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会員制(月額5,500円)で「学び・交わり・相談できる」場となっていて、ユメオカ共通言語をもとに、他医院の事例を学び、zoomなどで交流し、個別相談も可能です。
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株式会社ユメオカ 代表
大学時代に統計工学を専攻後、コンサルティング営業の世界へ(2004年に独立)。2008年に株式会社ユメオカを設立。
医院の想いが伝わらず、自費率やリコール率が低く苦難する多くの歯科医院の存在を知る。「単なるノウハウ提供、他医院の事例提供」ではない「考え方と豊富な具体例」により、院長の経営力育成と医院ビジョン実現に貢献するコンサルティングスタイルを確立。
「院長の考えを整理すること」「分かりやすく数字で裏付けること」「患者心理に沿った診療システムをつくること」を得意とする。2016年からは予防管理型歯科医院経営を業界横断的に推進する活動をはじめ、歯科界に新たな価値提供をし続けている。