歯科医院が居抜きで開業するメリット・デメリットや手順と物件の選び方

歯科医院(歯科診療所)を開業するにあたって、居抜き開業をお考えの歯科医師の方も多いのではないでしょうか。

新規物件ではなく、居抜きで開業するには、以下のポイントを押さえる必要があります。

  • 物件の選び方
  • 居抜き開業のメリット・デメリット
  • 開業するまでの手順

この記事では、これらのポイントを中心に「歯科医院の居抜き開業」について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

歯科医院の居抜き開業とは

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(画像=Paylessimages/stock.adobe.com

歯科医院の居抜き開業とは、それまで歯科医院として利用されていた物件を、内装や設備を含めそのまま譲り受ける、あるいは一部を譲り受けて開業する方法です。

居抜き以外の開業方法としてはテナント物件・新築物件がありますが、新規改装や新築費用が発生することに加えて、開業までの手間もかかります。しかし居抜き開業なら、事業開始時の資金と手間を抑えやすいという魅力があります。

他にも居抜きに関連して、物件や設備だけでなく、看板やスタッフなども含めた事業そのものを継承するM&Aという方法があります。居抜き物件は主に設備代などが交渉されますが、M&Aでは「事業価値があるかどうか」がポイントになります。

歯科医院を居抜きで開業する4つのメリット

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(画像=AdobeStock_105344353_fotofabrika_600_400)

歯科医院を居抜きで開業する主なメリットは以下の4つです。

  • 開業費用を抑えられる
  • 事業の立ち上げがスムーズ
  • 過去の経営データを参考にできる
  • 売却時の資産価値減少額が小さい

それぞれ具体的に見てみましょう。

歯科医院の居抜き開業のメリット1.開業費用を抑えられる

居抜き開業は、それまでの物件の内装や設備などを継承できるので、初期費用を大幅に抑えることができます。

一般的に新規物件やテナントの場合、ゼロから内装を揃えると坪単価50万円以上が目安です。材料によってはさらに高額になりますし、レントゲンやユニットといった設備費用もかかります。

しかし居抜き開業は内装を引き継ぐことで費用を抑えられるうえに、レントゲンやユニットなどの器材を譲渡されるケースが多いので設備投資コストもカットできます。

歯科医院の居抜き開業のメリット2.事業の立ち上げがスムーズ 居抜き開業は前歯科医院の認知をそのまま活用できるので、事業の立ち上げがスムーズだというメリットがあります。

特に前歯科医院が広く近隣地域に認知されていれば、宣伝への労力・費用を節約しながら集客しやすいでしょう。

また、事業譲渡という形なら、患者データやスタッフも引き継ぐことができるので、新患獲得・情報管理や採用・教育の労力を削減しながら、前歯科医院の事業基盤をもとに経営を軌道に乗せやすいというメリットがあります。

歯科医院の居抜き開業のメリット3.過去の経営データを参考にできる

居抜き開業は過去の経営データを参考にできます。

前歯科医院の集客数・季節傾向・方針・診療時間・スタッフ体制・売上データ・治療内容などを分析することで、事業計画・事業方針を立てやすくなるでしょう。

さらに前歯科医院の改善点を見つけ出し、自院の経営に反映させることで、今後の売上成長率も予測できるかもしれません。

歯科医院の居抜き開業のメリット4.売却時の資産価値減少額が小さい

居抜き開業には資産価値の減少額が小さいというメリットがあります。

将来的に自院を移転・廃業・売却する際に、新規であれば資産取得額が大きいので資産の目減り分が大きくなります。しかし居抜きはもともとの資産取得額をかなり抑えられるため、相対的に少ない減少額で済みます。

例えば5,000万円で開業して廃業する場合、資産売却額を20%とすれば1,000万円、つまり目減りする金額は4,000万円ですが、居抜きで800万円なら160万円、目減り額は640万円なので、資産価値の減少額を抑えられるでしょう。

歯科医院を居抜きで開業する3つのデメリット

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(画像=fotofabrika/stock.adobe.com)

歯科医院の居抜き開業にはメリットがある一方、デメリットもあります。

  • 物件・設備の自由度が低い
  • 追加投資・メンテナンスが必要になる
  • 前歯科医院のイメージが残る

物件・設備の自由度が低い

居抜き物件は、新規テナント物件よりも出回っている数が少ないというデメリットがあります。

居抜き物件を探すタイミングと、該当の居抜き物件が出回っているタイミングが必ずしも合致するとは限らず、また希望通りのものを見つけ出すことも難しいでしょう。

他にも居抜き物件は、前歯科医院の内装・設備をある程度用いるのが基本なので、好みの内装や最新設備を自由に選べないというデメリットがあります。

追加投資・メンテナンスが必要になる

居抜き物件は、追加投資・メンテナンスが必要になるかもしれません。特に内装や設備が古い場合、修理や買い替えなどのリスクがあります。

最初から気に入った内装を整えたり、新しい設備にカスタマイズしたりして開業するという手段もありますが、それでは費用や手間もかかり、居抜きのメリットを生かせません。

また、リース契約の設備を引き継ぐ場合も注意が必要です。契約期間が切れると、追加投資が必要なので事前に確認しましょう。

前歯科医院のイメージが残る

居抜き開業では、良くも悪くも前歯科医院のイメージが残ります。

前歯科医院の評判が良ければそのブランドを生かしやすいですが、逆に評判が悪ければ、たとえ改装して歯科医院名が変更したことを訴求しても、前のイメージに引きずられるというリスクがあります。

他にも前の歯科医院と勘違いした患者から、「電話が繋がらなくて予約が取れなかった」などのクレームに発展する可能性があるので注意が必要です。

歯科医院を居抜きで開業する際の物件の選び方

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(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

歯科医院を居抜きで開業する際の物件選びのポイントは以下の通りです。

  • 内装・設備のメンテナンスが必要か
  • 利便性が高く集客は見込める立地か
  • 以前の歯科医院の評判は良いか

それぞれ詳しく解説していきます。

内装・設備のメンテナンスが必要か

前歯科医院の内装・設備はしっかり確認しましょう。

築年数が長いビルなど、居抜き契約の時点で内装の状態が悪いことがありますし、設備も中古品なので老朽化が進んでいるかもしれません。

そのため内装の状況を細かく確認し、全設備をチェックしたうえで、「どのくらい利用できそうか」を判断することが大切です。設備を撤去する場合は費用もかかるので慎重に行いましょう。

大幅な買い替えではなく、軽微なメンテナンスで済むなら、新規物件よりもコスト的なメリットはあるので、どこまで妥協できるかもポイントといえます。

利便性が高く集客は見込める立地か

歯科医院の物件選びでは立地条件も大切です。

虫歯治療などは人口数に比例するので、自院に通院できる範囲内に相当の潜在患者数が見込めて、かつ路地裏のような分かりにくい場所ではなく、駅前や住宅地といった生活動線上にあることがポイントです。

ただし人口が多いエリアは、自院以外にも歯科医院が多いと予測できるので、人口比で歯科医院が少ない地域がベストです。

なお、前歯科医院の集客数などのデータが残っていれば確認し、集客が見込める立地かどうかを判断しておきたいところです。

以前の歯科医院の評判は良いか

居抜き物件は前歯科医院の評判が残るケースがあります。特に悪い口コミ・評判には注意が必要です。

今は検索エンジンやSNSなどで、ある程度まで前歯科医院の口コミ・評判を調べられるので、積極的に情報収集を行いましょう。

悪い口コミが散見される場合、前歯科医院との差別化のために看板・ロゴ・イメージカラーを大きく変えて、新たな印象付けを行うことも大切になります。

また、頻繁に歯科医院が変わる居抜き物件にも注意が必要です。「次もすぐに廃業するのでは?」というイメージが近隣住民にあると敬遠されがちなので、前歯科医院だけでなく、それ以前の状況まで調べる方が無難です。

歯科医院を居抜きで開業する4つの手順

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(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

歯科医院の居抜き開業は次のステップで進むことが多いです。

  • 物件探し
  • 資金調達
  • 内装・デザイン
  • スタッフ・備品確保
  • 開業準備・開業

物件探しから始まり、融資を受けて内装・デザインを整え、人事・備品の確保、その後に開業という流れです。

歯科医院の居抜き開業の手順1.物件探し

まずは物件探しですが、主に自身の足で探す、Webで検索する、不動産会社に依頼する、歯科系経営コンサルタントに依頼するなどの方法があります。

居抜き物件はテナント型と比べて物件数が限られますが、仲介サイトによっては居抜き物件を扱っているので相談するのがおすすめです。

ポイントはさまざまな手段を幅広く活用することです。自分の足で探しながらWebで検索する、不動産会社と歯科系経営コンサルタントを併用するなど、いくつか組み合わせることで、希望に近い物件が見つかる可能性が高くなるでしょう。

歯科医院の居抜き開業の手順2.資金調達

歯科医院が資金を調達する方法は、自己資金と金融機関からの借り入れに大別されます。主な金融機関からの借り入れには以下の4種類があります。

  • 公的融資
  • 制度融資
  • プロパー融資
  • ノンバンク融資

公的融資には「日本政策金融公庫」があり、金利が固定で低く、返済期間も長いのが特徴です。

制度融資は地方自治体が金融機関に預けた資金をもとに、金融機関が信用保証協会の保証を受けて融資する方法です。

また、プロパー融資は銀行や信用金庫の信用貸付、ノンバンク融資はリース会社などによる貸付となります。

歯科医院の居抜き開業の手順3.内装・デザイン

居抜き物件は内装費用を抑えられるという魅力がありますが、内装の状態が悪い場合などは、必要に応じてメンテナンスを行います。

他にも看板や外観、ホームページなどのデザインを自院のコンセプトに合わせてカスタマイズします。

ホームページに関しては自作や業者に依頼する方法がありますが、Web集客まで考えるなら、患者がGoogleやYahoo!といった検索エンジンで歯科情報を検索した時に、自院を検索結果の上位に表示させる「SEO」(検索エンジン最適化)に強い業者への依頼を検討しましょう。

歯科医院を探している患者にとってのファーストコンタクトがホームページという可能性も高いので、自院のホームページは必須といえます。

歯科医院の居抜き開業の手順4.スタッフ・備品確保

次は自院で働く歯科衛生士や歯科助手などのスタッフ採用や、医薬品・歯科材料、その他備品の用意です。

一般的に優秀なスタッフを採用するには時間がかかるので、早い段階から募集を行って準備を進めるとよいでしょう。

また、医薬品・歯科材料・備品の仕入先選定も大切です。仕入先によってコストが変わることもあるので、時間をかけて慎重に進めるのがベストです。

歯科医院の居抜き開業の手順5.開業準備・開業

歯科医院の開業にあたっては、役所への届出や、商圏への告知、オペレーションの確認など開業前準備を行う必要があります。

保健所への届出が必要な書類は以下です。

  • 診療所開設届(保健所)
  • 診療所使用許可申請書 ※有床の場合(保健所)
  • 診療用X線装置備付届(保健所)
  • 麻薬管理者・施用者免許申請書(保健所)
  • 結核予防法指定医療機関指定申請書(保健所)
  • その他の役所への届出書類は以下です。
  • 保険医療機関指定申請書(厚生局)
  • 生活保護法指定医療機関指定申請書(福祉事務所等)
  • 母体保護法指定医師指定申請書(地区医師会)
  • 労災保険指定医療機関指定申請書(労働基準監督署)

他にもフリーペーパーなどで商圏に告知したり、採用したスタッフとともにオペレーションの確認を行ったりするなどの開業準備を行います。

まとめ

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

歯科医院の居抜き開業には、事業開始時の資金と手間を抑えやすいというメリットがあります。

一方のデメリットには物件・設備の自由度の低さや追加投資の必要性、前歯科医院のイメージの問題があります。

物件選びのポイントとしては、内装・設備の状態や利便性、前歯科医院の口コミ・評判を確認するとよいでしょう。

開業までのステップは物件探しから始まり、資金調達を行って内装・デザインを整え、スタッフと備品を確保して開業という流れが一般的です。

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