治療を左右する歯科用ルーペ ルーペの選び方とメリットは

歯科治療は繊細かつ精密な操作を求められるケースが多く、肉眼だけでは確認しづらい部分にまでアプローチすることも珍しくありません。

そこで活躍するのが歯科用ルーペ(拡大鏡)ですが、具体的なメリットや自院に合った製品が分からず、導入を迷っている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、そんな歯科用ルーペ(拡大鏡)のメリットや種類、選び方のポイントについて紹介します。

歯科治療でルーペ(拡大鏡)を使うメリット

治療の精度がアップする

歯科用ルーペを使えば、術野を大きく拡大して確認できます。

具体的には、以下のようにさまざまな治療の精度がアップするので、患者さまの満足度や信頼度も高められるでしょう。

  • う蝕の治療において歯を削る量を必要最小限に抑えられる
  • より精密で細かな切削や形成ができ、インレーやクラウンの適合精度を高められる
  • 隠れた根管(MB2)を発見できる
  • 肉眼だと見落としがちな初期う蝕やクラックを発見できる

また、歯科用ルーペは対象から300~500mmほど離して使用するため、無理な姿勢で口腔内をのぞき込む必要がなくなります。

診療における身体的負担を軽減できるので、歯科医師が腰痛や肩こりに悩まされることも減るでしょう。

患者さまに治療の質の高さをアピールできる

欧米の歯科医院では、歯科用ルーペが広く普及しています。

最近は日本でも導入する歯科医院を目にするようになりましたが、それでも普及率は10%程度であり、まだまだ導入が進んでいるとは言えない状況です。

もちろん、必ずしもルーペがなければ治療の質が保てないというわけではありませんが、なるべく削らない・抜かない質の高い治療のニーズが高まっている現在、ルーペによる精密治療の取り組みは、患者さまへの大きなアピールポイントとなるでしょう。

歯科医院はコンビニよりも多いと言われる中で、他院との差別化につながるという意味でも、ルーペを導入する価値は高いのです。

歯科衛生士のメインテナンスでも活躍する

歯科用ルーペはスケーリングをはじめとする歯科衛生士の業務でも有用です。歯科衛生士がメインテナンスでルーペを使用すると、以下のようなメリットを実感できるでしょう。

  • プラークや歯石をより細かく除去できる
  • 精密な作業ができるため、歯の表面を傷つけにくくなる
  • 口腔内のトラブルをより正確に把握できる
  • う蝕と着色汚れを見分けやすくなるので適切な処置ができる
  • 検診時にインレーやクラウンの問題を発見しやすくなる
  • 体にかかる負担を軽減できる

最近では歯科衛生士業務におけるルーペ使用の効果が評価されて、養成校でも取り入れる動きが出てきています。

マイクロスコープより手軽で扱いやすい

歯科用ルーペより拡大倍率が大きいマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の導入を検討している先生もいらっしゃるかもしれません。

しかし、マイクロスコープの価格は100万円~1,000万円と高価で扱いも難しく、専門的な操作技術が求められるため、導入のハードルは高いでしょう。

一方、歯科用ルーペは1万円台から導入可能であり、操作もシンプルかつ簡単なので、手軽で扱いやすいと言えます。

製品によっては、ルーペを常に着用したまま診療にあたることも可能なので、汎用性や利便性に優れていることもメリットです。

倍率はマイクロスコープが3~30倍、ルーペが2~10倍と差があるものの、高倍率のルーペなら精密根管治療以外は十分対応できるケースも多いでしょう。

スタッフのスキルやモチベーションが向上する

歯科用ルーペの導入で、より快適で精度の高い治療ができる環境を整えることは、スタッフのスキルアップや仕事へのモチベーション向上にもつながります。

また、ルーペの導入は、意欲の高い求職者に対して効果的なアピールポイントとなる可能性もあるでしょう。

最近では、求職者は必ずと言っていいほどインターネットで応募先の歯科医院についてリサーチするため、ルーペなどの設備の詳細はホームページや求人票などにきちんと掲載することをおすすめします。

歯科用ルーペ(拡大鏡)の種類

AdobeStock_274116188_Proxima Studio_600
(画像=Proxima Studio/stock.adobe.com)

レンズタイプ

歯科用ルーペのレンズタイプは、大きく分けると「ガリレアン式」と「ケプラー式(プリズマティック式)」の2種類があります。

ガリレアン式は一般的に2枚のレンズで構成されており、軽量かつコンパクトであることが特徴です。倍率は3倍程度が限度であり、高倍率が求められる治療には適さないケースもあります。

一方、ケプラー式(プリズマティック式)は複数枚のレンズとプリズムから構成されており、光の屈折を利用することでガリレアン式よりも高倍率を実現できます。幅広いシーンで活用できますが、構造的な問題で本体が重い、価格が高いといったデメリットもあります。

装着方式

歯科用ルーペの装着方式は「ゴーグル」と「ヘッドバンド」の2種類に分かれており、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。

ゴーグルタイプはメガネのように装着するもので、取り外しがしやすいこと、見た目がスッキリしていることがメリットです。また、装着感にも優れており、目周辺への異物の飛散や唾液・血液の飛沫も防げます。

ただし、重心が前に来るので、重量があるモデルだと長時間の装着は疲れやすいかもしれません。

一方、ヘッドバンドタイプは額から吊り下げる形で装着するもので、安定感に優れています。ルーペと目の距離が近いため、高解像度で拡大しながら確認できることがメリットです。メガネをかけたままでも装着できます。

ゴーグルタイプのレンズの固定方式

ゴーグルタイプのルーペに関しては、レンズの固定方式によって、さらに「TTLタイプ」と「フリップアップタイプ」の2種類に分類されます。

TTLタイプは“Through The Lens”の略で、アイグラスにレンズ(鏡筒)が直接埋め込まれているものです。レンズと目の距離がより近くなるので、さらに広い視野を確保できるようになります。

ただし、鏡筒がしっかりとゴーグルに固定されているため、瞳間距離の調整ができない点には注意が必要です。

一方、フリップアップタイプは、必要に応じてレンズを跳ね上げられるため、治療時以外もゴーグルを装着したまま過ごせます。レンズ部分を着脱して普通のゴーグルとして使えるものもあります。

アイグラス部分が外せるタイプなら、メガネをかけたまま装着可能です。その他、矯正レンズを入れて、普段メガネをかけている人がそのまま利用できるタイプもあります。

歯科用ルーペ(拡大鏡)の選び方

AdobeStock_416179007_直聖 安田_600_400
(画像=直聖 安田/stock.adobe.com)

歯科用ルーペ(拡大鏡)を選ぶにあたって、押さえるべきポイントを紹介します。

倍率

歯科用ルーペで最も重要なポイントは、やはり倍率です。

倍率が高ければ高いほど、より精密な治療ができるようになりますが、一方で焦点距離や作業距離が短くなる、視野も狭くなるといったデメリットも生じます。

4倍以上の倍率を求める場合、選択肢はほぼケプラー式に限られます。

  • 一般歯科治療・衛生士業務:2.5~3.5倍
  • インレー・クラウンの形成仕上げ、インプラント治療:3~4.5倍
  • 歯内療法:8~10倍

普段の治療では低倍率のガリレアン式を、精密な治療を行うときは高倍率のケプラー式を使用するなど、状況に応じて使い分けるのも一案です。

低倍率のほうが使いやすいというケースもありますが、拡大視野での治療に慣れてくると低倍率では物足りなくなり、全ての治療で6~10倍のルーペを使用する方も少なくありません。自院の治療メニューやスタッフの技量など考慮しながら選びましょう。

なお、同じ倍率でも製品によって視野や被写界深度は異なるため、できれば実機を試してみることをおすすめします。

作業距離

作業距離とは、ピントが合った状態での、ルーペのレンズから対象物(治療部位)までの距離のことです。作業距離が短すぎると腰を屈めなければならないために体に負担がかかり、治療もしづらくなります。

術者の体型や治療の種類によって差はありますが、歯科治療における適切とされる作業距離は以下の通りです。

  • 座位での治療:300~500mm
  • 立位での治療:400~550mm

倍率が高くなるほど作業距離は短くなりますが、各メーカーは同倍率で複数の作業距離のモデルをラインアップしているのが一般的です。快適な姿勢で治療をするため、デモ機などを使ってみながらご自身に適した作業距離を把握することが重要です。

明るさ(ライト)

ルーペ越しで見る像は、倍率が高くなるほど肉眼よりも暗くなります。レンズの透過率によっても明るさに差が生じますが、高倍率だとユニットの無影灯のみでは暗くて見えづらいケースも少なくありません。

明るさを確保するために最初からライトが付随した製品も販売されていますが、後付けで装着できるライトもあります。

光源はLEDが主流となっており、コードでバッテリーに接続して使用するタイプが一般的ですが、最近ではバッテリー内蔵のコードレスタイプも人気を集めています。

ライトの充電時間と連続使用時間は製品によって異なるので、用途や環境も踏まえながら適切なものを選択しましょう。

焦点深度

焦点深度とは、ルーペを通して術野を見たとき、ピントが合っている範囲(奥行き)のことを指します。つまり、焦点が合っている状態から少しずらしたとき、ぼやけが生じない領域のことです。

基本的に倍率が大きくなるほど、焦点深度は浅くなります(ピントを合わせにくい)。焦点深度は深いほうがピントを合わせやすい=扱いやすいため、必ずしも高倍率の製品のほうが優れているとは言えないのです。

また、焦点深度が深いと目も疲れにくくなるので、長時間の使用にも適しています。倍率を選ぶときは、焦点深度も忘れずに考慮しましょう。

瞳孔間距離(PD)

瞳孔間距離(PD)とは、右目の瞳孔(黒目の中心)から左目の瞳孔(黒目の中心)までを示す言葉です。当然ながら顔や骨格のつくりで変わるので、術者の瞳孔間距離に合ったルーペを選ぶ必要があります。

もし瞳孔間距離が合っていなかった場合、術野がはっきりと見えにくくなったり、目が疲れる原因になったりする可能性があるため、事前によく確認したいところです。

瞳孔間距離を可変させて調整できるタイプなら、スタッフ同士で共有して使用することも検討できます。

重量

重いルーペを装着していると、長時間の診療で疲れやすく、ストレスの原因にもなります。ルーペの重量はレンズのサイズや倍率、本体に使われている素材、ライトの有無などに左右されますが、基本的に高倍率・多機能の製品ほど重くなりやすいでしょう。

また、一般的にゴーグルタイプのほうが重く感じやすいため、重心や装着感も踏まえて選びたいところです。特に女性が多く1回の施術時間も長い歯科衛生士用には、軽量タイプを選んであげることをおすすめします。

耐久性・アフターサービス

歯科用ルーペはケプラー式やライト付きなど、高機能かつ高価なものほど故障しやすい傾向にあります。

マイクロスコープより手頃な価格とはいえ、機能面で頻繁に買い替えが必要なものではないため、耐久性も考慮することが大切です。もし診療中に故障すると、患者さまにも迷惑がかかってしまうかもしれません。

修理対応のスピードや代替品の貸出など、メーカーや代理店のアフターサービスが充実しているかも重要なポイントなので、事前にチェックしておきましょう。

【メーカー別】おすすめ歯科用ルーペ(拡大鏡)の比較

AdobeStock_7845859_Mihai Simonia_600_400
(画像=Mihai Simonia/stock.adobe.com)

ここまでの内容を踏まえつつ、おすすめの歯科用ルーペ(拡大鏡)をメーカー別に紹介します。

サージテル

「サージテル」は医療用ルーペで高いシェアを誇る、日本のみならず世界的に有名な拡大鏡メーカーです。歯科医師の眼や身体を守るとともに、5年後・10年後の成長もサポートできる、ベストコンディションの土台となるような歯科用ルーペを提供しています。

サージテルのルーペは、歪みや乱反射のない高品質なレンズを採用。スポーツブランドである「オークリー社」が提供するフレームの快適な装着感、オンライン相談に対応した充実のアフターサポートも大きな特徴です。

倍率は3~10倍まで幅広く用意されているほか、ワイヤレスライトも取り扱っています。

・サージテル
https://www.surgitel.jp/

カールツァイス

「カールツァイス」は歯科用ルーペに加えて、カメラ用レンズ・双眼鏡・顕微鏡などの開発にも携わっている、ドイツ発祥・創立175年目の光学機器メーカーです。長年培ってきたノウハウ・技術を活かした、妥協のない製品が高い評価を得ています。

特にレンズの品質には定評があり、高倍率でも広い視野や十分な被写界深度、明るさを確保できるので、歯科治療の質をさらに引き上げてくれるでしょう。

丈夫なチタン製の軽量フレームを採用するなど、快適性や扱いやすさへの配慮が行き届いていることも特徴です。オプションであるライトの性能も高く評価されています。

・カールツァイス(英文サイト)
https://www.zeiss.com/meditec/us/products/dentistry/loupes/eyemag-smart.html

ユニバット

「ユニバット」はイタリア北部に拠点を構える、アイウェア全般の製造に携わっているメーカーです。イタリアならではのスタイリッシュなデザインは歯科用ルーペでも顕在で、おしゃれで洗練された印象を与えられます。

さらに、装着感や利便性に優れた設計方式を採用したり、水洗い可能でいつでも清潔に使えたりするなど、機能面も高品質です。

フリップアップタイプは瞳孔間距離・作業角度などを柔軟に調整可能、TTLタイプはカスタムメイドで術者に合わせて細かく設計できるなど、フレームの自由度が高いため、自分にピッタリのルーペが見つかるでしょう。

・ユニバット(英文サイト)
https://www.univetoptics.com/product-category/surgical-loupes/

まとめ

AdobeStock_194026826_bedya_600_400
(画像=bedya/stock.adobe.com)

歯科用ルーペ(拡大鏡)は単に治療の精度を高めるだけではなく、患者さまや求職者へのアピールポイントになったり、歯科衛生士のメインテナンスでも活躍したりするなど、さまざまなシーンで役立ちます。マイクロスコープと比べると導入のハードルも低いため、この記事で紹介した種類や選び方を踏まえつつ、自院に合ったルーペを探してみてください。