歯科医院の院長の多くは、きちんとした経営や会社の仕組みについて学ぶことなく経営者になります。そのため開業後に労務や経理、スタッフマネジメントなどに忙殺され、本職の治療に従事できず疲弊…。
スタッフとの関係にも温度差が生じ、気持ちだけが空回りするという悪循環に陥りがちです。
この悪循環を断ち切る手段として、連載第1弾では組織を最適化し生産性を上げる仕組みである「ミーティング」の重要性をお伝えしました。
第2弾となる本連載では、歯科医院の課題を解決するために、実際にどのような施策を行ったのか実践事例を紹介します。
より良い歯科医院、より良い人生にするには?
今回は課題として、より良い歯科医院づくりについて相談いただいた、B院長の事例をご紹介します。
B院長のプロフィールと医院の特徴
B院長は穏やかな性格である反面、自分語りできるような社交的な人ではありません。自らの主張を直接相手に伝えることが苦手なタイプです。
しかし、本人は自分の不得手な部分を理解しており、「できないことはできる人に任せればいい」という柔軟な考え方を持っています。
そのため、外部講師を迎えてのセミナーなどにも抵抗がなく、わたしのもとにSNSを通じて連絡をくださいました。
B院長が抱えていた課題は?
- B院長やスタッフの学びによる、自院の発展・成長
- B院長やスタッフの人生をより充実させたい
B院長がわたしに期待していたのは、マイナスからゼロにする課題というよりも、自院やスタッフの未来をより良いものにしたいというポジティブなものでした。
具体的には院長自身やスタッフの学びを医院の成長につなげることと、院長やスタッフの人生をより充実させるためには、何が必要なのか?ということです。
自院やスタッフに対しての想いが強い方なので、取り組みへの意欲は非常に高かったことを覚えています。
私が院長とスタッフに行った施策とその意図
まずはB院長との会話を重ねていくことからスタートしました。狙いは院長自らの目標や想いを明確化することです。恐らくこのフェーズはB院長自身も望んでおり、思いのほかスムーズに進みました。
これと並行して院内セミナーを何度も行いました。内容(テーマ)は、
- これからの世の中は楽しそうな医療従事者がキーパーソンである理由
- 院長の人生曲線や想いをスタッフに共有する
- 自分の腑に落ちるポイント
- 自分の強みを探るワーク
- 指摘ではなく解釈し合い褒め合うことの大切さ
- 学校と仕事は違っていて、仕事は長所を引き出すというゲームであるということを知る
- 「理想から現状を引いたものが課題である」と捉えて、院長の理想から現状を引いてやるべきことを3つ決めるワーク
- 3つのやるべきことを回して、新たな課題を見つけていくことで、生産性を上げるワーク
などです。フレームワークとしてすでにあるものから、B医院向けにカスタマイズしたものまでいろいろと用意しました。
これらのテーマにはそれぞれ意図がありますが、共通していえるのは、次の2点です。
- 現状を俯瞰して見ること
- 将来の展望を明確化することです。
現状の俯瞰と将来の展望というものは、院長とスタッフとの間で認識に齟齬があるケースがよく見受けられます。院長から共有されてもスタッフの腑に落ちないのです。
スタッフが納得感を持って働くためには、上記のようなワークが効果的です。また、わたしがいなくても再現できるよう、考え方や思考のフローをスタッフにも身に付けてもらうことを目的としました。
わたしの目から見た施策後の変化
セミナーは主にマイナス面を改善する取り組みではなく、スタッフ個々の長所にスポットをあてた内容にしました。本人や周りのスタッフが長所を知ると、最適な役割分担ができます。
適性のある仕事であれば成果が出て、自信にもつながります。また目標の明確化によってモチベーションが向上したように思いました。
実際、スタッフの仕事への姿勢や向き合い方など、社会人としてふさわしい態度に変化したのではないでしょうか。
それではB院長から頂いた感想を、ご紹介します。
【B院長からの感想】
事前に角先生から私にスタッフの変化をつぶさに観察するように依頼されていました。
そのうえでわたしが感じたことや見たことは次の通りです。
- セミナーのたびにスタッフが元気になっていく様子を感じられた
- わたし(院長)の人生曲線をスタッフに知ってもらうワークを通じて、クリニックやスタッフを大切にしているという想いが伝えられたことで、スタッフの意識や行動に変化があった
- スタッフが経営者視点を持って働くようになった
- 歯科診療が世の中のためになるという価値を知り、患者さんにも理解を深めてもらおうと行動している
角先生にご指導いただいたおかげで、わたしがやりたかったことが実現しました。
今回のまとめ
B院長をはじめスタッフみなさんの意欲の高さも手伝って、今回の施策は上手くいったと思います。
では、逆に上手くいかないのはどのようなケースなのでしょう?
1つ目は、院長の過剰な口出しです。方法や仕組みが決まったのならば、院長は基本口出しをしてはいけません。スタッフからすれば「結局信用されていないな…」という気持ちになってしまいます。
院長は管理者に徹し、現場はチーフクラスのスタッフに権限を委ねましょう。そのときに「責任はわたしが取るから」ぐらいのスタンスを見せることで、担当者も心置きなく取り組めます。
そしてもう1つが、課題に取り組んでいるスタッフをしっかりと観察し、以前と比べてどこがよくなったのか、成長を評価してあげることです。
目標に対しての着地点だけを評価していては、目標達成できなかったスタッフに負けグセがついてしまいます。さらに、目標達成するためのポイントを1%でも伸ばすアドバイスができれば完璧です。
何かご質問などあれば、どうぞお気軽にSNSで声をかけてください。この度は、私の記事をお読みいただき、ありがとうございました。
角 祥太郎先生のnote「歯科コンサルタント 角祥太郎が説く 歯科クリニック経営論」はこちら
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<角 祥太郎先生の書籍紹介>
「最強の歯科ミーティングバイブル」
角 祥太郎 著
(デンタルダイヤモンド社)
角流!(KADO STYLE!)ここにあり。
歯科医院のチーム力を高めるステップアップワーク集。
8医院の実践事例を紹介。
「なぜ」をまず考えることが最も大切だ。
「なぜ」がわかっていないと何をしても迷い、損をする。
まずは「なぜ」を考えよう。
「なぜ」を理解したら、
「何をどのようにするか」を最適化して決めれば、
ミーティングはゲームになる。
8つのパートナー歯科医院から届いた現場の率直な感想。
そのとき何が起こったのか。
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株式会社clapping hands 代表取締役
歯科医師
歯学博士
2009年、東京歯科大学解剖学講座で歯学博士取得後、千葉県の大手医療法人海星会に就職。3年で副理事長に就任。社内ベンチャーとして訪問歯科や歯科医院の海外展開を支援する会社の立ち上げをリードする。
2017年、株式会社clapping hands を設立し、診療の傍らメーカーへのアドバイザーも務め2021年は142回の講演をおこなった。
学生時代よりプロレスラー(キム・ヨッチャン)としても活躍し、週刊プロレスの表紙掲載や著名人との対戦経験もある異色の経歴の持ち主でもある。