歯科医院経営における、医療広告規制と付き合うための大原則

こんにちは。のぶ歯科クリニックを経営している丸橋伸行です。

当院は地域人口の少ない神戸市の下町にあり、開業1年目の患者数は1日10人程でした。

しかし、その4年後には年商1億円になり、現在は年間新患数2,000人、年商2億円の歯科医院へと成長することができました。

スタートでつまずいた当院が、短期間で一定規模の売上を上げられたのは広告を活用したからです。

本連載では、「歯科医院における広告の考え方や活用法」を私の経験を元にご紹介します。

3回目となる今回は広告制作の際に避けては通れない医療広告規制や代理店との付き合い方について解説します。

医療広告規制との付き合い方

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(画像=pixta)

医療広告ガイドラインの改正で歯科医師全員が規制対象に?

2018年に医療広告ガイドラインが改正されました。大きな変更点は、ホームページ・ブログ・SNSが広告として扱われるようになったことです。

つまり、何らかのWEBサイトを持っている先生方は、全員が広告規制対象となったのです。

さらにガイドラインの違反を取り締まるネットパトロールも始まったのですが、規制を実感している先生は現在も多くありません。

そもそも、あまり読まれていないうちは指摘もされないからです。

しかしサイトに人気が出てくると、知らないうちにネットパトロールに目を付けられていることがあります。

歯科診療の技術にこだわっている先生ほど、ついアピールをしたくなって医療機器名を出してしまうなど地雷を踏みやすい傾向にあるので注意が必要です。

医療広告規制と付き合うために大切なのは、国のスタンスを理解することです。

規制はどのような考えのもとに作られたのか? 何が虚偽誇大にあたるのか? 

その大枠を掴んでおくだけでも「この表現はやめておこう」と事前にリスクを避け、万が一指摘されたとしても「見解の相違」として議論できる余地を残せます。

医療は国の政策にもあり、免許制のため「どこも同じであること」が国の理想です。

国も広告を打ち出すことを容認していますが、理想が「どこも同じであること」のため表現が行き過ぎないように規制しているのです。

しかし、実際は医院ごとに特徴があり、資本は各医院が投じています。その点で歯科医院はいわば「半官半民」の状態と言えるのです。

では次にどのように対策していけばよいのか具体的に見ていきましょう。

医療広告規制への対策

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(画像=pixta)

1. ホームページ対策

医療広告ガイドラインには、絶対に使ってはいけない表現をピックアップした「ネガティブリスト」があります。

まずはこのネガティブリストに載っている表現を避けるようにしてください。

「見解の相違」で議論できる範疇のグレー表現は、しばらく様子見で良いでしょう。 

2. ネットパトロール対策

ガイドラインに抵触すると、特定記録郵便で通知書が送られてきます。発送元は、厚生労働省の委託でネットパトロールを行っている民間企業です。

通知書が届いた場合、1か月以内に適切な対応が求められます。

通知書の文面はなかなか怖いものなので驚かれると思いますが、内容はあくまでも注意喚起です。

逆に言えば、抵触の箇所を教えてもらえるので、焦らずに対応すればよいのです。

以前、当院にも通知書が届きましたが、あらかじめ想定し、対策していましたので問題なく対応できました。

通知が届いたらすぐに発送元に電話するなど、真摯な姿勢を意識することが大切です。

3. ローカル広告(看板やチラシ)対策

ローカル広告は保健所との付き合い方がポイントです。下記のように「保健所と一緒に広告を作っていく」という考え方が大切になります。

保健所にお伺いを立てる
ローカル広告は、保健所が管理しています。保健所から指摘を受けてしまうのは、容認できないような広告を勝手に出してしまうからです。

広告を出す前に、保健所の管理者にお伺いを立ててください。保健所の方々も、地域の人々を敵に回したいわけではありません。

きちんと筋を通せば真摯に対応をしてくれる人が保健所にはたくさんいます。

一緒に作る
いきなり広告の完成品を持ち込んで「この広告を出すので認めてください!」と詰め寄っても、保健所を困惑させてしまいます。

まず「〇〇な人に△△な治療を提供したいと考えています」というように、誰に何を伝えたいのかを明確にして表現のアドバイスを求めることをお勧めします。

たたき台を用意
保健所と一緒に広告を作る際には、たたき台があると保健所側もアドバイスしやすくなります。

本命のほかに、いかにもNGが出そうな案を2つ用意するのがコツです。NG案は、攻めた構成で指摘要素が多くなるものです。

しかし、アドバイスを求める姿勢で真摯に臨めば、保健所も親身に相談に乗ってくれます。本命案とともにNG案も検討してもらえるでしょう。

広告媒体独自の基準は分からない
保健所の許可が下りていても、広告媒体の規定により掲載が認められない場合があります。

広告媒体独自の基準は分からないので、NGとされた場合は潔く諦めましょう。規制は全員に等しくかかりますし、医療ニーズが消えることはありません。

ダメな時は素早く切り替え、諦めずに次の手を打ち続ける先生こそが最後に笑えるのだと私は思います。

広告代理店との付き合い方

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

広告は、その気になれば院長先生おひとりでも出せます。しかし、いざやろうとすると面倒なものです。

効率よく広告を成功させるには、広告代理店を頼りつつ上手に付き合うのがポイントです。

インターネット広告代理店とローカル広告代理店の違い

インターネット広告代理店は、インターネット上の広告枠を取り扱っています。

広告主のホームページを多くの人に見てもらうため、キーワード検索後の画面上位にある広告枠を取りに行ってくれます。

検索上位に表示させるための手法や広告予算、制作のアドバイスをしてくれるもうひとつはローカル広告代理店です。

ローカル広告とは全国的な規模ではなく、地域に発信する広告で、主に駅や電車、路面看板などが挙げられます。

ローカル広告代理店は人々が生活の中で目にする広告枠を販売しています。こちらは基本的に制作のアドバイスなどはありません。

1. 手数料
インターネット広告代理店の手数料は、広告費の20%前後です。ローカル広告代理店は数%なので、インターネット広告代理店の方が高くなります。

出稿時のチェックや修正が必要なためインターネット広告代理店は高めになるのですが、最近は各社の競争が盛んなため安くなってきた傾向にあります。

2. インターネット広告代理店の見つけ方
インターネット広告代理店はネット検索で見つけます。大きく分けると大規模総合系と小規模コンサル系の広告代理店があります。

どちらが良いのかは院長の性格に合わせて選ぶとよいでしょう。もしお金に余裕があれば大規模総合系に全てお任せするのも手です。

自分で色々とやりたいことがある場合は、担当者と密に連絡が取れる小規模コンサル系がお勧めです。

ローカル広告代理店は、駅や路面看板の空いた枠に記載されている広告代理店の電話番号に直接電話してください。また、飛び込み営業の話を聞くのも良いでしょう。

3. 付き合い方
覚えておいて損がないのは、広告代理店の立場です。広告代理店は手数料ビジネスのため、「お金を使ってくれる広告主」こそが正義です。

もちろん彼らの言いなりになる必要はありませんが、立場を理解したうえで上手く付き合えば、心強い味方になってくれます。

広告制作もしてもらうべき?

もし現在ホームページも看板もないのであれば、制作から始めなければなりません。

先に触れた通り、医療広告規制も考慮しなければなりませんので、実績とノウハウのある広告代理店に制作を依頼するのがお勧めです。

ここでひとつ制作時のポイントをお教えします。あなたにとって良い広告デザインは、「なぜか目につく」など、印象が強く残っているものだと思います。

そういった「良い広告だな」と感じた時には写真を撮っておくと、広告制作の相談時にイメージを伝えやすくなります。

ローカル広告を出す場合は、まず歯科コンサルタントに相談しましょう。歯科コンサルタントはNG表現を把握しています。

院長独自の判断ではなく、コンサルタントにリスクヘッジしてもらいましょう。

また、広告代理店が広告制作をしている場合もありますが、基本的に枠を売ることに注力しています。

広告代理店が制作に力を入れている雰囲気はありませんので、あまり多くを期待しない方が良いかもしれません。

今回は、医療広告規制と広告代理店との付き合い方についてお話しさせていただきました。次回は広告の掲載場所について詳しく解説します。

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丸橋 伸行

のぶ歯科クリニック 院長

1999年 広島大学卒、2006年 神戸市でのぶ歯科クリニックを開業。

立地と紹介に頼らない歯科医院作りをテーマに、広告を中心とした集客で歯科医院を運営。看板とホームページを活用してショボい立地で年間新規患者数2,000人となる。

その経験をもとに、チェアーが埋まらない院長に対してシークレットコンサルを行う。

一方でマネジメントで悩む院長に対しては『マネジメント熱心な院長が医院を破壊する』『スタッフとの距離を詰めるな』『マネジメント問題の8割はマーケティングに問題がある』と独自の切り口でアドバイスを行っている。