歯科用マイクロスコープはなぜ必要か?メリットや活用方法、代表的な製品を紹介

歯科用マイクロスコープを使用すると、より高度な精密治療にも対応できます。しかし、費用や扱いの難しさが気になって、本当に導入すべきか迷われている先生も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、歯科用マイクロスコープのメリットや活用方法、選び方のポイントなど解説します。すべての歯科医院に導入メリットがあるわけではないので、自分の歯科医院にとってプラスか否かの判断材料にしてください。

歯科医院でマイクロスコープを導入するメリット

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(画像=PIXTA)

歯科医院でマイクロスコープを導入すると、以下のようなメリットが得られます。

他院と差別化できる

歯科用マイクロスコープの普及率は、国内では5~10%と推定されます。導入していても十分に活用できていない歯科医院が多いので、実際に活用している事例はもっと少ないと考えられます。

そのため、マイクロスコープを活用した治療を取り入れることは、歯科医院にとっては差別化戦略となるのです。

歯科医院の数は平成31年(令和元年)時点で68,500軒ですが、厚生労働省の「令和2年度診療報酬改定の概要(歯科)」によると、手術用顕微鏡加算に関する施設基準の届出を行っている歯科医療機関は、平成30年7月1日時点で3,388件となっています。

また、平成30年度社会医療診療行為別統計によれば、手術用顕微鏡を用いた加圧根管充填処置の算定回数は1,511件です。

治療精度が高まる

マイクロスコープは術野を3~30倍に拡大できるだけではなく、患部をライトで明るく照らせるため、肉眼より精密な治療が可能となります。

う蝕治療や根管治療を行うとき、肉眼だと見逃してしまうような小さな病変も捉えて的確に取り除けるようになるため、治療精度が大きくアップするのです。

また、精密治療によってインレーやクラウンの適合精度も高められるため、審美性の向上や再治療のリスク低減にもつながります。歯を削る量も必要最小限に抑えられ、できるだけ削らずに天然歯を残すという現代のニーズに沿った歯科治療を実現できるでしょう。

質の高い治療の提供は患者さまの満足度向上に寄与し、経営面でのメリットも見込めるようになります。

治療中の動画像を撮影・記録できる

マイクロスコープにカメラを搭載すると、治療している様子をモニターに映し出すことが可能です。術者はもちろん、他のスタッフや患者さまご自身も含めて口腔内を視覚的に分かりやすくチェックできるので、治療に関する情報も共有しやすくなります。

患者さまは自分が今どのような治療を受けているのか、疑問や不安を感じているケースも多いため、モニターでの情報共有は治療に対する合意形成やインフォームドコンセントという点でも有用です。

また、治療中の動画や静画をデータとして記録できることもメリットです。患者さまに治療プランを説明するときの資料として使ったり、院内での症例検討や教育研修のテーマにしたりするなど、さまざまなシーンで活用できます。

マイクロスコープによる歯科治療は保険適用になるのか?

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

マイクロスコープを使った歯科治療で保険算定するためには、厚生労働省が定めている施設基準を満たした上で「手術用顕微鏡加算の届出」を行わなければなりません。

また、保険が適用される治療内容もあらかじめ定められているため、正確に把握する必要があります。

歯科用CT+マイクロスコープによる歯科治療で400点加算されるケースは、今まで第四根管もしくは樋状根に対する根管治療を行ったときのみと規定されていました。

しかし、令和2年度の診療報酬改定によって適用範囲が拡大され、「3根管以上の加圧根管充填処置、もしくは根管内異物除去」で保険算定ができるようなっています。

さらに、歯根端切除手術で歯科用CTとマイクロスコープを用いる場合は、2,000点を加算できます。このように保険診療でも評価が見直されており、今後はさらにマイクロスコープの普及率が高まると期待されています。

マイクロスコープを活用できる治療

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

マイクロスコープはどのような治療で活用できるのか、いくつか事例を紹介します。

根管治療

根管治療(歯内療法)はマイクロスコープが最も真価を発揮するシーンと言っても過言ではなく、そのメリットには一定のエビデンスもあります。

例えば、マイクロスコープを使用しない歯根端切除術(12歯)と、マイクロスコープを使用した歯根端切除術(9歯)の成功率を比較した結果、前者が59%、後者が94%というデータが出ているのです。

根管治療は保険診療だと十分な処置ができない上、丁寧に治療しようとすればするほど赤字になってしまうリスクもあります。

しかし、マイクロスコープによる自費の精密根管治療に対応すれば、質の高い治療を提供しつつ、収益確保も見込めます。

コンポジットレジン修復

近年では歯科業界全体でMI治療の重要性が共有され、患者さまも「なるべく歯を削らず・抜かずに天然歯を残す治療」を求めているため、コンポジットレジン(CR)修復のニーズも高まっている傾向にあります。

CR修復は治療精度によって結果に大きな差が生じるため、術野を拡大できるマイクロスコープの使用は有用です。特に臼歯部隣接面のう蝕や隔壁の適合性は肉眼では確認が難しく、マイクロスコープが活躍します。

切削量を最小限にとどめることができれば、麻酔の使用も抑えられるため、患者さまの負担も軽減できるでしょう。

クラウン形成

マイクロスコープを使えば、支台歯の形成やクラウン辺縁部の設定が0.1ミリ単位で正確にできるようになり、歯肉との境目がより精密かつ綺麗に仕上がるため、予後の安定性や審美性が向上します。

肉眼では見えなかったクラウン装着後のわずかな隙間や不具合も、マイクロスコープで細かく確認可能です。より精度の高い治療を実現できるため、患者さまの満足度向上につながります。

歯周治療・メインテナンス

国民病の一つに数えられる歯周病に対しても、マイクロスコープは有効性を発揮します。歯肉縁下や歯周ポケット内を目視で確認しながら確実に歯石を取り除いたり、より精密なルートプレーニングを実施したりすることができます。

さらに、肉眼では見えない歯周組織の病変も発見できる可能性があります。

またマイクロスコープは歯科衛生士にとっても有用です。

メインテナンス時に活用すれば、スケーリングの精度を高めたり、患者さまへの説明やTBIについても、患者さまにより分かりやすく伝えたりすることが可能です。

施術の質や快適性を高められるため、歯科衛生士のモチベーションアップにもつながるでしょう。

マイクロスコープの活用における課題

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

マイクロスコープを活用したいと考えているなら、以下の課題についても検討しましょう。

導入費用

マイクロスコープを導入するにあたって、最もネックとなりやすいのが費用です。歯科用マイクロスコープの本体価格は安価なものでも100万円、高性能な製品なら1,000万円を超えます。

さらに、外部カメラアクセサリーや延長アームなどのオプションを付ける場合はプラスの費用がかかります。また、マイクロスコープは高価なわりに死蔵率が高いと言われているため、ただの浪費に終わらないよう注意しなければなりません。

十分に治療で活用できるか、患者さまにより質の高い治療を提供して収益アップにつなげられるかなど、費用対効果をよく検討することが大切です。

術者の技術・経験

マイクロスコープは優れた治療機器ですが、臨床で使いこなすには相応の技術と経験が求められます。

特にマイクロスコープで重要となる「ミラーテクニック」や「ポジショニング」については、ある程度臨床経験を積み重ねる必要があります。院内で練習会など開いてトレーニングしたり、外部のセミナーや研修で操作技術を学んだりすることが大切です。

また、保険適用における手術顕微鏡加算を申請する場合、3年以上の経験が必要という点も覚えておきましょう。

治療時間

マイクロスコープを使った精密治療は時間がかかりやすく、どうしてもチェアタイムが長くなりがちです。そのため、費やした時間に見合うだけの収益をきちんと確保できるよう、治療の価格設定もよく検討しなければなりません。

国内の歯科医院を見てみると、自費診療のときだけ使ったり、使用料を別途請求したりするケースが多く見受けられます。また、普段はルーペ(拡大鏡)を使って、形成の仕上げや確認時だけマイクロスコープを使うといった方法も考えられます。

なお、保険診療でもマイクロスコープを使用する場合、使用料の請求は混合診療の扱いになるので注意しましょう。

歯科用マイクロスコープの選び方

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(画像=PIXTA)

歯科用マイクロスコープは大きく分けると、接眼レンズをのぞき込んで確認する「光学式」と、拡大画像を液晶画面に映し出す「デジタル式」の2種類があります。

近年はテクノロジーの発展もあり、デジタル式も増えていますが、歯科用では光学式が主流です。設置タイプは、主に以下の3種類があります。

  • キャスター付きの可搬型
  • 床に固定するフロアマウント型
  • 歯科用ユニットに固定するユニットマウント型

可搬型なら必要に応じて移動できる、マウント型なら安定感に優れているなど、それぞれ特徴やメリットが異なるため、診療室の設計や動線に合わせて選択したいところです。

また、製品によって倍率や映像の精度、可動域に差があるので、可能なら実機で使い勝手を試しましょう。

マイクロスコープとルーペ(拡大鏡)の比較

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(画像=taka/stock.adobe.com)

拡大視野での精密治療をするなら、歯科用ルーペ(拡大鏡)という選択肢もあります。ルーペの拡大倍率は2~10倍(基本的に固定)とマイクロスコープに劣りますが、価格は10万~80万円とリーズナブルで、扱いも比較的容易です。

マイクロスコープを全ユニットに導入し、その性能を最大限発揮するためのスキルをスタッフ全員に習得させるには多大なコストがかかりますが、ルーペなら術者ごとに最適な倍率・機能の製品を支給することも検討できるでしょう。

普段の一般歯科診療ならルーペで十分という意見もありますが、マイクロスコープの高倍率での治療を経験すると、低倍率では物足りなくなるケースもあるようです。

歯科用マイクロスコープのメーカー比較

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

歯科用マイクロスコープの代表的な製品をメーカー別にまとめました。

カールツァイス OPMI Pico

OPMI Picoはアポクロマートレンズや手動5倍変倍機構、ファインフォーカシング機構などを採用した光学式マイクロスコープです。軽量かつ人間工学に基づくボディ設計により、抜群の操作性を実現しています。

また、オプションとして内蔵型ビデオカメラも搭載可能です。性能・扱いやすさともに優れていることから、歯科用マイクロスコープのスタンダードモデルとして広く使われています。

カールツァイス OPMI Proergo(プロエルゴ)

OPMI Proergo(プロエルゴ)は価格が1,000万円を超える、カールツァイス製光学式マイクロスコープのハイエンドモデルです。

コンパクトな本体にはアポクロマートレンズや電動式ズームシステム、電動バリアブルフォーカスなど優れた機能が多数搭載。

ハンドグリップのボタン操作で本体の固定・解除ができるフリーフロートマグネティックシステムにより、取り回しのしやすさも向上しています。

ライカ M320F12

最高級の光学品質と人間工学に基づく快適設計、優れた剛性を発揮する太いアームなど、あらゆる面がハイスペックなライカ製光学式マイクロスコープのハイエンドモデルです。

光源として明るく寿命も長いLEDライトを2つ搭載しているので、長期に渡って質の高い治療をサポートしてくれます。

また、ハイビジョンで動画・静止画を撮影できるフルHDカメラを内蔵。SDカードを通じて撮影データを記録・転送できるので、患者さまとの情報共有に役立つでしょう。

グローバルマイクロスコープ

世界中で使われている定番の光学式マイクロスコープであり、特にアメリカでは大学教育で採用されるほど人気を集めています。200万円程度で購入できるため、他の海外メーカー製マイクロスコープと比べるとリーズナブルです。

価格はリーズナブルでも性能は高く、直感的な操作を実現するAXISコントロールシステム、視野の明るさをしっかり確保する高照度LED光源など、優れた機能がたくさん搭載されています。

カスタマイズ性も高く、術者や環境に合わせて調整可能です。

ペントロン ブライトビジョン

ドイツ製のコストパフォーマンスに優れる光学式マイクロスコープです。高い精度と視認性を実現するアポクロマティックマルチコートレンズをはじめ、充実した機能を標準装備しています。

また、ビームスプリッターやエクスエンションアームなど、オプションが豊富にそろっていることも特徴です。

使い勝手や治療内容を踏まえながら自由にカスタマイズ可能なので、どのようなシーンにも対応できるコストパフォーマンスの高いモデルです。

ヨシダ ネクストビジョン

口腔内カメラと顕微鏡の機能を兼ねそろえた、日本製のデジタル式マイクロスコープです。最大80倍まで術野を拡大できるうえ、その画像を4K画質でモニターに映し出せるので、非常に細やかな操作が求められる高度な精密治療にも対応できます。

さらに、レジン充填部などを確認しやすくなるブルーライト、患者さんが見やすい映像を提供できる上下・左右反転表示など、治療をサポートする機能も充実しています。アームやスイッチも快適性を重視して設計されているため、術者に負担がかかりません。

まとめ

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

歯科用マイクロスコープは術野を3~30倍、デジタル式ならそれ以上の倍率で拡大できるため、肉眼やルーペ(拡大鏡)では見えない部分もはっきりと確認することが可能です。

導入のハードルは高く感じるかもしれませんが、質の高い治療を実現したいなら一考の余地はあります。一方、診療スタイルによってはルーペで十分対応可能というケースもあるでしょう。

高い費用をかけて導入したマイクロスコープがお蔵入りになってしまうことのないよう、自院の治療メニューや経営方針も踏まえつつ、検討してみてください。

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