歯科医院の広告投資 費用対効果の測り方を解説

こんにちは。のぶ歯科クリニックを経営している丸橋伸行です。当院は地域人口の少ない神戸市の下町にあり、開業1年目の患者数は1日10人程でした。

しかし、その4年後には年商1億円になり、現在は年間新患数2,000人、年商2億円の歯科医院へと成長することができました。

スタートでつまずいた当院が、短期間で一定規模の売り上げを上げられたのは広告を活用したからです。

本連載では、歯科医院における広告の考え方や活用法をご紹介します。

2回目となる今回は、歯科医院における広告投資の考え方やメリット・デメリットについてお伝えします。

広告投資に必要な考え方

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

広告とは患者さまを買う行為

歯科経営における3大投資(広告・人材・設備)のうち、最初に投資すべきは広告です。

なぜなら広告は売り上げに直結するからです。

そもそも、患者さまが来てくれなければ仕事は生まれませんし、人を雇うこともできません。

売り上げの少ない状況の中で、ポジティブに行動し続けられる人は、ごく少数です。人は求められるからこそ動くもの。

広告により患者さまが増えれば、キャッシュが増え、再度広告を出すこともできますし、人材や設備への投資も可能になります。

誤解を恐れずに言えば、広告とは「患者さまを買う行為」です。

感情を排し集患を考えると、そう表現せざるを得ません。例えば、広告費を100万円かけて新患を100人獲得できれば単価は1万円です。

家賃も同じです。家賃30万円で新患30人なら単価は1万円になります。

現状を把握するために、まずは貴院の広告費や家賃の単価がいくらなのか一度計算してみましょう。

導入期・停滞期・成長期3つのステージ

集患のために3大投資の中でも広告を優先するべきですが、「広告さえ使えば右肩上がりに売り上げが上がり続けるか」というと、そうではありません。

一喜一憂しないためにも、広告開始後の傾向を知っておく必要があります。

広告を打った後は導入期・停滞期・成長期の3つに分けることができます。

■導入期とは
導入期とは、広告の効果をテストする期間です。効果的な広告が打てていれば、すぐに反響があります。

この時期の広告費は月30万円程度を見込んでください。

広告費の捻出方法ですが、これは後から回収できるので院長の手取りから捻出すると良いでしょう。

■停滞期とは
停滞期は、新患数が伸び悩む段階です。

導入期に来ていた新患が「今すぐ歯科医院に行きたいのだが、どこの歯科医院に行けばいいか分からない人=あなたの医院を気に入ってきてくれた人」だったことが判明し、このタイプの患者さまが一巡することで数字が伸び悩みます。

停滞期は支出が多くなりますが、種まき期という認識で乗り切りましょう。

成長期は、まいた種が実り潜在患者が動き出す時期です。

苦しい時期にも広告を出し続けたことで「この広告、見たことがあるぞ」と潜在患者にはっきりと認知されるようになります。

この時期になると新患が数珠つなぎで来院してくれるようになりますが、その理由は3つあります。

次にはその理由を見てみましょう。

成長期に新患が数珠つなぎで来院する理由

1.人は行列に並ぶ
病院にしろ飲食店にしろ、人は選択ミスを避けるため行列に並びます。明確な基準がないからこそ、他人に追従するのです。

街に歯科医院が乱立したとき、流行っている歯科医院に患者さまが集まるのはこのためです。

2.信用が積みあがっている
長期にわたって広告を出していると、広告を見ている人の中に信用が生まれます。

広告に費用がかかることを、多くの人が知っているからです。「いい加減な歯科医院はこんなに広告を出せない。

これだけ長い間広告を出しているのなら、患者さんがコンスタントに来ているのだろう」と解釈してくれ、信用が上がっていくのです。

3.紹介が増える
成長期になると、紹介による患者も増えるようになります。

面白いことに「広告は見たことがあるけれど来院したことはない人」が、「医院の存在も知らず、広告も見たことが無い人」へ自院を紹介してくれるようになるのです。

では次に広告費はどれ位に設定すればよいのか?について解説します。

広告の費用対効果

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(画像=buritora/stock.adobe.com)

費用対効果の考え方

広告の費用対効果というと「いかに安い費用で結果を出すか」に意識が向きがちです。

しかし、「広告が患者さまを買う行為である」以上、安価ではなく「いかに適正価格で買えているか」が重要です。

広告費は逆算で決める

では、広告の適正価格とはいくらなのでしょう。

残念ながら歯科業界は積極的に広告を行わないという風潮がありますので、適正価格に明確な答えはありません。

そこで私は他業界の数字などを参考にしてきました。

現在は「家賃と売り上げの10%を広告費とする」と決めています。

仮に月の売り上げが400万円の医院であれば、家賃と広告費を合わせて月40万円使える計算です。

割合を決めると、目標の売り上げに到達するための広告費を逆算できるようになります。

具体的な計算式は次の通りです。

★月間売上400万円の医院が、800万円の売り上げを目標とする場合
家賃が30万円の場合、計算式は「800万円×10%-30万円=50万円」となり、かけるべき広告費は50万円です。

このように適正価格を知るためには、まず自院の目標を決めることが大切です。

広告投資の注意点

目標が決まったら、あとは広告を出すだけですが、その前に広告投資の注意点を知っておきましょう。

歯科医院の状況によっては、広告を出さない方が良いケースもあります。それは具体的にはどのような場合でしょうか。

・現状チェアー稼働率が70%で、100%を目指す場合
この数字だと実は広告を出すより、院内で対策する方が早く目標を達成できます。

院内対策はアポイント表を張り出しておくだけでも効果があります。

個人的には、チェアーの稼働率が70%未満の場合に広告を勧めています。

・広告を出す際に、自院にはどんな媒体が向いているのかよく分からない場合
広告投資の初心者にお勧めなのは、患者さま経路の記録です。

新患がどの広告を見て来院したのかを記録することで、広告の組み合わせを最適化できます。

その広告が上昇傾向なのか下降傾向かを分析するためにも、一定期間は継続してください。

・イニシャルコストを引きずらないように
看板広告であれば、1~2年で更新時期がきます。

その際、設置費用や打ち合わせに費やした時間がもったいないという理由で掲載を継続してしまうことがあります。

しかし、そのイニシャルコスト(経済学的にはサンクコスト)は既に支払い終えたものです。

掲載を続けてもやめても、戻ってはきません。更新時期は継続することで得られるメリットと、ランニングコストを天秤にかけて判断しましょう。

次の章では広告のメリットとデメリットについて整理します。

広告のメリットとデメリット

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(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

これから具体的な例を挙げていきますが、物事のメリットとデメリットは、同じ現象を表と裏から見ているに過ぎません。

以下は私の目線であり、読者の先生からは逆に見える可能性をご留意ください。

広告のメリット

1.立地の不利を逆転できる
立地条件以上の集患ができる。それが広告最大のメリットです。

地元住民に留まらず幅広いエリアからの集患が可能になります。

2.予備知識を与えられる
私は自費治療中心で年商1億円を達成したとき、「料金込みで説明5分」というルールを課していました。

単価は100万円前後となりましたので、高単価&時短戦略と言えるでしょう。

この戦略が可能だったのは、広告で患者さまに自院や自費治療に関する予備知識を与えていたからです。

3.効率的に診療できる
多種多様な患者さまに適応しようとした結果、オペレーションが崩れてしまったご経験はないでしょうか。

そのような場合は、患者数ではなく患者属性を絞ることをお勧めします。

広告で集患すると、口腔内状態や来院背景が似た方が増加します。

患者さまのパターンを分類することで、院内オペレーションもパターン化できるようになります。

広告のデメリット

1.歯科医院の色がついてしまう
認知度が高まるということは、広告を見た人の中でイメージが固まるということです。

現在当院は「歯がボロボロの方でも歓迎」という、治療メインのイメージが定着しています。

今後予防を打ち出したところで、治療のイメージのままでしょう。

しかし、医院の色がつくからこそ集患できるという意味では、メリットになります。

2.噂が広まる
いわゆる有名税が課せられます。一定の認知度を得た方なら、根も葉もない噂が広まったご経験もあるでしょう。

しかしこれは「認知度が上がった証拠だ」と思って聞き流してください。

今回は、広告についての考え方とメリット・デメリットについて解説しました。

次回は、広告を制作する際に避けては通れない「医療広告規制」や「広告代理店との付き合い方」について、お話しさせていただきます。

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丸橋 伸行

のぶ歯科クリニック 院長

1999年 広島大学卒、2006年 神戸市でのぶ歯科クリニックを開業。

立地と紹介に頼らない歯科医院作りをテーマに、広告を中心とした集客で歯科医院を運営。看板とホームページを活用してショボい立地で年間新規患者数2,000人となる。

その経験をもとに、チェアーが埋まらない院長に対してシークレットコンサルを行う。

一方でマネジメントで悩む院長に対しては『マネジメント熱心な院長が医院を破壊する』『スタッフとの距離を詰めるな』『マネジメント問題の8割はマーケティングに問題がある』と独自の切り口でアドバイスを行っている。