私たち歯科医院の院長の多くは、きちんとした経営や会社の仕組みについて学ぶことなく経営者になります。
そのため開業後に労務や経理、スタッフマネジメントなどに忙殺され、本職の治療に集中できず疲弊…。
スタッフとの関係にも温度差が生じ、気持ちだけが空回りするという悪循環に陥りがちです。
この悪循環を断ち切る手段として、連載第1弾では組織を最適化して生産性を上げる仕組みとしてミーティングの重要性をお伝えしました。
第2弾となる本連載では、歯科医院の課題を解決するために、実際にどのような施策を行ったのか実践事例を紹介します。
新人スタッフを歯科医院の中心メンバーへと育てるには?
今回は、スタッフの育成と新人教育に課題を抱えていたC院長の事例をご紹介します。
C院長のプロフィールと医院の特徴
C院長はウォーキングやランニング、登山などが趣味のアクティブな方です。
スタッフへの想いは強く、スタッフファーストのクリニック経営をしています。
実は、C院長はわたしのクリニックのすぐ隣のビルで歯科医院を構えており、本来であればライバルになるような存在です。
しかし、わたしたちはお互いをリスペクトし合っています。
ひと昔前とは違い、現在の歯科医院に求められる役割は多様化し、単に虫歯を直すだけの存在ではなくなっていますので、足りないところを補い合う、協力者としての関係のほうが断然望ましいのです。
C院長が抱えていた課題は?
- 自分(C院長)に足りない部分をスタッフに補ってもらいたい
- 業務配分を最適化したい
- 新人スタッフの伸び悩みに自身の責任を感じている
C院長はわたしの勉強会に参加してくださり、それをきっかけにスタッフマネジメントの研修を依頼いただきました。
一番の目的はスタッフの成長ですが、上記のような課題も抱えていました。
わたしが行った施策とその意図
実際に行った研修は、新人教育研修と新人歯科医師の診療支援、プロジェクトチームミーティングの3つです。具体的に解説します。
・新人教育研修
歯科衛生士5名、保育士1名、歯科医師1名の計7名に「自分がなにをすれば、より医院が良くなるのか」など社会人としてのマインドを学んでもらいました。
実はこの研修、開始直後は半分ぐらいのスタッフから低評価をもらいました。
アンケートに「もう研修を受けなくてもよい」とはっきり書かれたこともあります。
しかし、そのような結果はある程度織り込み済みです。いきなり100点など狙っていません。大切なのはその後のやり方です。
そしてアンケートなどをもとにC院長とミーティングを重ね、アジャストしていくと評価はかなり改善されました。
・新人歯科医師の診療支援
当プログラムではわたしが新人医師のアシストに入って、実際にサクションを手に行いました。
一般的に先生面した知らない歯科医師から「これやってみて」などと技術指導されるのは嫌なものですので、自然な指導ができるようにこのようなスタイルを取りました。
このやり方ですと、周りの新人スタッフの動きも何気なく見られるのでメリットばかりなのです。
・プロジェクトチームミーティング
「プロジェクトチームミーティング」とは目標達成を実現するためのトレーニングです。
このプログラムには、スタッフに目標達成の成功体験をしてもらうという目的の裏にもうひとつ、リーダーのスキルアップという狙いがありましたので下記の流れで行いました。
- まずはスタッフ全員が3ヶ月で達成可能な目標を決定
- その後、リーダーが週1回のミーティングを実施し、わたしに報告する
わたしの目から見た施策後の変化
今回はさまざまな施策を行いましたが、いずれにおいてもスタッフの自発性・継続力が養われ、能動的に実践できる組織になったのではないかと思っています。
「よく理解できない」など当初は誰も私の言うことを真に受けていませんでしたが、今では当たり前のように私を受け入れてくれています。
違和感を覚えながらも、わたしの研修についてきてくれたスタッフのやさしさと、C院長のスタッフへの想いの強さが成功の要因ではないでしょうか。
【C院長から見た変化と感想】
それではC院長から頂いた感想を、ご紹介します。
角先生に研修してもらい、得られた成果は複数あります。
技術面の向上はもちろん、仕事への向き合い方や社会人としての在り方などマインド面での成長も感じています。
研修を受けた新卒スタッフ7名は、1名も退職することなく前向きに仕事に取り組んでおり、今では医院の中心メンバーになっています。
また新人歯科医師は、角先生がアシストに入り、細やかな指導をしてくれたおかげで、治療技術のほかにトーク力もアップ。
患者さんとのトラブルもほぼなく新人の時期を卒業しました。
プロジェクトチームミーティングを経て、スタッフ全員が能動的になったのも大きな成果です。
どうすればより良い医院になるかを、チームメンバーを尊重しながら自発的に考え行動し、実践できる組織に成長しました。
またチームとしての結束が強くなったことで院内の雰囲気も良くなり、笑顔で和気あいあいと働ける職場になりました。
今回のまとめ
スタッフの育成に悩みを抱えている歯科医院は、お手本となるような先生が不在であることが多いように思います。
それが勤務医の採用ミスなのか、育成段階で尊敬されるような先生を育てられなかったのかはわかりませんが、どちらにせよ院長の想いが対象者に伝わっていないということです。
想いを伝えるためには、まず院長自身が自院に対する想いを明確にすることが必要です。
そしてその考えやイメージを言語化し、さらに誰もが理解できる言葉に再度変換します。
ここまで行ってからはじめて採用面接やスタッフ育成に臨んでください。
すると院長と勤務医との共通認識が生まれ、尊敬される先生が育ち、スタッフたちもその先生の姿を見て成長していくものです。
何かご質問などあれば、どうぞお気軽にSNSで声をかけてください。この度は、私の記事をお読みいただき、ありがとうございました。
角 祥太郎先生のnote「歯科コンサルタント 角祥太郎が説く 歯科クリニック経営論」はこちら
角 祥太郎先生のオンライン若手歯科医師ゼミ「Light Heart Dental College」説明会のYoutube動画はこちら
角 祥太郎先生のオンラインサロン「カド部屋」(月額980円)はこちら
<角 祥太郎先生の書籍紹介>
「最強の歯科ミーティングバイブル」
角 祥太郎 著
(デンタルダイヤモンド社)
角流!(KADO STYLE!)ここにあり。
歯科医院のチーム力を高めるステップアップワーク集。
8医院の実践事例を紹介。
「なぜ」をまず考えることが最も大切だ。
「なぜ」がわかっていないと何をしても迷い、損をする。
まずは「なぜ」を考えよう。
「なぜ」を理解したら、
「何をどのようにするか」を最適化して決めれば、
ミーティングはゲームになる。
8つのパートナー歯科医院から届いた現場の率直な感想。
そのとき何が起こったのか。
【おすすめセミナー】
・【無料】たった4ヶ月で歯科衛生士276名の応募獲得! 歯科衛生士・歯科助手採用セミナー
・【無料】矯正治療が得意な先生に贈る マウスピース矯正集患セミナー
株式会社clapping hands 代表取締役
歯科医師
歯学博士
2009年、東京歯科大学解剖学講座で歯学博士取得後、千葉県の大手医療法人海星会に就職。3年で副理事長に就任。社内ベンチャーとして訪問歯科や歯科医院の海外展開を支援する会社の立ち上げをリードする。
2017年、株式会社clapping hands を設立し、診療の傍らメーカーへのアドバイザーも務め2021年は142回の講演をおこなった。
学生時代よりプロレスラー(キム・ヨッチャン)としても活躍し、週刊プロレスの表紙掲載や著名人との対戦経験もある異色の経歴の持ち主でもある。