歯科医院開業の現実とは_売り上げや失敗しない条件_開業

これから歯科医院を開業しようとしている先生の中には「失敗したらどうしよう」と二の足をふんでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

歯科医院を開業する前に開業の現実を知ることで、失敗を防ぎやすくなります。

そのために開業歯科医院の売上・年収、将来性、失敗しないためのスキルや人材などの条件、開業するための具体的なステップを詳しく押さえることが大切です。

この記事では、これらのポイントを中心に「歯科医院の開業の現実」について詳しく解説していきます。これから歯科医院の開業をお考えの方はぜひ参考にしてください。

歯科医院の開業時に知っておきたい開業歯科医院の現実

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(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

歯科医院を開業する際に知っておきたいポイントとしては、以下のものがあるのではないでしょうか。

  • 開業歯科医院の収益
  • 開業歯科医師の年収事情
  • 歯科医院の将来性

信頼できるデータをもとに1つひとつ解説していきます。

開業歯科医院の収益

厚生労働省の「第22回医療経済実態調査」(2019年実施)によると、2018年度、個人経営の歯科医院の医業収益の平均は4,469万円でした。

また、税理士法人が発表している「歯科診療所経営実績分析」によると、2019年に決算を終えた個人立・医療法人を含む歯科医院332件のうち、売上1億円を超えた歯科医院の割合は10.5%となっています。

なお、売上区分ごとの割合は以下の通りです。

  • 5千万円未満:51.5%
  • 5千万円以上1億円未満:37.9%
  • 1億円以上:10.5%

このように歯科医院の医業収益は5千万円未満と5千万円以上の比率が同程度ということがわかります。

また5千万円未満の歯科医院でも、2018年度の平均は4,469万円なので、一般的に高い水準といえるでしょう。

全体の1割が医業収益1億円以上という点も、開業に期待を抱ける要素ではないでしょうか。

全体の約4割が5千万円以上1億円未満という点を踏まえても、歯科医院経営は収益力が高いと判断できます。

開業歯科医師の年収事情

同じく医療経済実態調査によると、個人開業の歯科医院の院長の2018年度の平均収入は1,269万円でした。

また、日本歯科総合研究機構「現在を読む」(2015年度版)によると、2007年から2014年にかけて同数値は1,000万円台から1,400万円台の間を推移しています。

このことから、個人開業の歯科医院院長の平均年収は1,000万円台前半と判断できるでしょう。

一方、勤務歯科医について、上記の医療経済実態調査によると、医療法人に勤務する歯科医師の2018年度の平均収入は564.2万円、個人立の歯科医院に勤務する歯科医師は632.3万円でした。

開業した歯科医師の平均年収1,000万円台前半に対して、勤務歯科医の平均年収は600万円(医療法人と個人率の平均)ですから、開業歯科医師の方が倍近く高いと考えられます。

これらのことから、少なくともデータ上は、「勤務歯科医よりも歯科医院を開業する方が高収入を見込める」といえるでしょう。

歯科医院の将来性

厚生労働白書(令和3年版)によると、歯科医院数はこの数十年で増加傾向にあり、2010年から2019年時点では6.8万件程度で推移しています。

その一方で、医師・歯科医師・薬剤師統計の概況によると、人口の横ばい・減少傾向が続いてきたため、「人口10万人対歯科医師数」は80.5人(2018年)で増えつつあります。

なお、マップソリューション株式会社が公開している資料によると、歯科医院の廃業数は2013年から2019年にかけて2,000件台で推移しています。

飽和状態が心配されるなか、必ずしも歯科医師免許があるから安心ということはなく、自院を存続させるための集客・マーケティングが大きな課題になるのではないでしょうか。

一方、先述した「歯科医師の年収事情」のように、特に開業歯科医師は収入が高い傾向にあり、また売上1億円超えの歯科医院もあることから、工夫次第で経営を軌道に乗せることは可能といえます。

歯科医院の開業で失敗しないための4条件

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(画像=pixta)

歯科医院の開業で失敗しないためには次の条件を押さえることが大切です。

  • スキル・資格
  • 立地
  • 人材
  • 資金・財務計画

上記4つは全て歯科医院の開業に必要な要素です。どれが欠けても失敗につながる恐れがあるので、それぞれ詳しく解説します。

スキル・資格

歯科医院を開業する歯科医師に必要なスキルは以下の通りです。

  • 治療技術
  • マネジメント能力
  • マーケティング能力
  • 経営能力
  • コミュニケーション能力

治療技術は日々の研鑽とともに、戦略的に得意な診療をつくることで、他の歯科医院との差別化につながるでしょう。

自院スタッフへのマネジメント能力も重要です。スタッフの患者対応が悪ければ自院の評判に響きますが、マネジメントによって自主的に行動するスタッフが増えれば、良質な口コミ効果を期待できます。

また、マーケティング能力に欠ければ患者を集めることに苦労しますし、経営能力に欠ければ歯科医院の経営自体が難しいでしょう。

ホームページのような集客方法への理解と、財務諸表を把握する経営能力が大切です。

コミュニケーション力は特に患者との関係で重要です。安心感と好印象を与えることでリピート効果を期待できます。

なお、歯科医師免許の他にも、専門医や認定医制度などの資格があれば有利でしょう。

立地

立地選びでは、自院の商圏内に相当の潜在患者数が見込め、かつ生活動線上にあることが重要です。

病気やケガと同じく、虫歯治療は不可欠なものですから、潜在患者数は人口に比例します。

そのため人口が多い地域に開業する方が有利ですが、同じ地域の歯科医院数も重要になります。あまりにも他の歯科医院が多すぎる場合は避ける方が無難です。

生活動線に関しては、どのように人が流れているかがポイントです。

「一等立地」(駅前や通行量の多い1階の立地や幹線道路のロードサイドなど)と「二等立地」(普段生活しているなかでは認知されにくい立地)の違いを意識しつつ、集客を見込める立地を確保できるかどうかを検討しましょう。

人材

歯科衛生士は「20の歯科医院が1人の歯科衛生士を奪い合う」という超売り手市場です。

歯科助手不足も続いており、人材の確保は歯科医院の開業・運営に不可欠といえます。

優秀な人材を採用するには、以下のような基本的な条件を整える必要があるでしょう。歯科医院に限らず、条件が良い職場には求職者が集まります。

  • 給与・福利厚生
  • 診療時間
  • 休日・休暇
  • 教育体制

他にも、やりがいを持てる人事、平等で明確な評価制度、労働基準法に準じた労働環境の整備、ワークライフバランスに配慮した勤務体系、院長とスタッフの適切な距離感など、長期的に働きやすい職場環境を目指し、働き手にとっての魅力を訴求するのが大切です。

資金・財務計画

歯科医院開業に必要な初期費用は立地やユニット数によってかなり異なりますが、仮に「テナント30坪程度、ユニット2台」の場合は6,000万円近くという想定ができます。

新規物件ではなく居抜き物件の場合は、内装・外装工事の費用を抑えることができますが、それでも最低5,000万円は必要になるでしょう。

それに加え、開業後はスタッフの給与、医薬品・歯科材料費、医療機器・設備のリース料、テナント料などさまざまな費用が発生します。

診療報酬を請求するためには、電子カルテ・オンラインレセプト請求などのシステム構築の費用も必要です。

その他にも新規開業を知らせる宣伝広告費や人件費もかかりますし、診療報酬が入るまでの期間の運転資金も必要です。

前掲「医療経済実態調査」によると、年間「医業収益」の平均4,469万円に対して、「医業・介護費用」の平均は3,206万円なので、ある程度の自己資金を用意するとともに、借り入れの目処や返済計画は慎重にシミュレーションしておきましょう。

歯科医院を開業するステップ

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(画像=pixta)

一般的に歯科医院の開業は次のステップで進みます。

  • 開業計画
  • 資金の調達
  • 立地・物件の調査・確保
  • 着工・内装工事
  • 各種手続き
  • 人材採用・備品準備
  • オペレーション準備
  • 開業

それぞれのステップを解説していきます。

歯科医院開業のステップ1.開業計画

まずは歯科医院の規模や立地、用意できる資金感をイメージしながら、開業計画を立てます。

そのために自身のキャリア・スキルを整理しつつ、以下のポイントをまとめて事業計画書を作成しましょう。

  • 売上
  • 初期費用
  • 運営費用
  • 資金繰り
  • スケジュール

金融機関から融資を受ける際にも必要になるため、現実的な数字を盛り込んで事業計画書を作成するのがポイントです。

具体的な注意点として以下があります。

  • 概算は保守的に見積もる
  • 与信枠を大きく設定する
  • 変更を前提にした内容にする

事業予測は最悪・通常・最良をイメージして見積もることが大切です。特に支出は多く見積もりましょう。

大きな与信枠があれば増額再審査を受けやすくなる可能性があります。予定外の事態に対応するためにも、変更を前提にした事業計画書が重要です。

歯科医院開業のステップ2.資金の調達

開業資金を調達する方法は、自己資金と金融機関からの借入れに大別されます。金融機関の場合の主な借入先は次の4種類です。

  • 公的融資
  • 制度融資
  • プロパー融資
  • ノンバンク融資

公的融資の代表例は「日本政策金融公庫」です。金利が固定で低く、返済期間も長いのが特徴なので、まず検討したい融資といえます。

次に検討したいのが制度融資です。金融機関が信用保証協会の保証を受けて融資する方法で、もとになる資金は地方自治体が金融機関に預けています。

連帯保証人の代わりに信用保証協会がつくので融資を受けやすい仕組みといえますが、保証料が上乗せされますし、無担保・無保証の場合は下限額と上限額が決まっています。

プロパー融資は民間銀行や信用金庫、ノンバンク融資はリース会社などによる貸付です。

歯科医院開業のステップ3.立地・物件の調査・確保

主な立地・物件の探し方に以下があります。

  • 自身の足で探す
  • Webで検索する
  • 不動産会社に依頼する
  • 歯科系経営コンサルタントに依頼する

どれか1つを利用するよりも、複数を組み合わせる方が良い物件に巡り合える可能性が高いでしょう。

例えば自分の足で探しながら不動産会社にも依頼する、Webで探しながら歯科系経営コンサルタントにも依頼する、といった組み合わせが考えられます。

どの方法を選択しても、自分で立地や価格、集客見込みなどの条件をある程度イメージしながら探すことが重要です。

歯科医院開業のステップ4.着工・内装工事

施工業者に相談し、新規物件を建設またはテナントの場合は内装工事を行います。

居抜き物件の場合も、内装が古い場合は工事が必要なことがあります。複数の施工業者から見積りを取って費用を比較するとよいでしょう。

歯科医院開業のステップ5.各種手続き

保健所や厚生局のような諸官庁に書類の届出と手続きを行います。具体的には次のような書類を提出する必要があります。

  • 診療所開設届(保健所)
  • 保険医療機関指定申請書(厚生局)
  • 生活保護法指定医療機関指定申請書(福祉事務所等)
  • 母体保護法指定医師指定申請書(地区医師会)
  • 結核予防法指定医療機関指定申請書(保健所)
  • 労災保険指定医療機関指定申請書(労働基準監督署)

なお、「診療所開設届」は開設後10日以内などのルールがありますが、期日までに確実に受理されるために、早い段階から相談・確認を行い、事前に漏れ・トラブルを防ぎましょう。

歯科医院開業のステップ6.人材採用・備品準備

自院で採用したいスタッフの募集要項を決めて募集をかけます。

開業に間に合うように、早めに求人広告、歯科衛生士・歯科助手向けの専門媒体などを利用して準備しましょう。

採用面接・研修などを考慮すると、最低1ヶ月前から準備を始める必要があります。

「開業が近い、もう時間がない」などの理由から妥協して人材採用を行うと、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

必ずしもすぐに優秀な人材が応募してくるとは限らないので注意してください。

なお、医療設備の設置や備品の調達・配置などの準備もこの段階で済ませます。

歯科医院開業のステップ7.オペレーション準備

スタッフへの事前説明や研修などオペレーションの準備を行います。

医療機器や受付端末、電子カルテ、精算機など各システム・設備の動作チェックも行いましょう。

集客に向けてチラシやインターネット広告などで広報活動を行うことも大切です。

現代はスマートフォンによるインターネット検索が一般的な時代ですから、開業までに自院のホームページを準備しておくとよいでしょう。

それとともにTwitterやInstagramのようなSNSを開設し、自院の存在を知ってもらう活動も重要になります。

公式YouTubeチャンネルの開設も効果的かもしれません。

歯科医院開業のステップ8.開業

開業後の各種手続きを実施します。「診療所開設届」など手続きによっては「実査」として、届出の内容に間違いがないか保健所の監視員による調査があるので対応しましょう。

まとめ

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(画像=pixta)

開業歯科医院は収入が高い傾向にありますが、飽和状態も心配されていますので、しっかりと事前計画を練ったうえでの開業が大切です。

開業で失敗しないために重要なのは、スキル・資格、立地、人材、資金・財務計画のそれぞれを複合的に考えて準備することでしょう。

また、歯科医院の開業の流れは、開業計画から始まり、資金を調達して物件の確保、工事、各種手続き、人材採用・備品準備、オペレーション準備となっています。

開業当初は集客・マーケティング活動も必要なので、早い段階から準備を進めることをおすすめします。