歯科衛生士のレジン充填は違法?やっていいこと・ダメなこと

レジン充填は歯科の基本的な治療であり、経験とテクニックを必要とするものですが、歯科医院によっては歯科衛生士が担当するケースもあります。

しかし、時折耳にするのが「歯科衛生士が行うレジン充填は違法ではないのか?」という疑問や不安の声。

そこで今回は、歯科衛生士に任せられる業務の範囲について解説します。

歯科衛生士のレジン充填は違法なのか?

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(画像=pixta)

日本医師会による「歯科衛生士の業務範囲についての調査報告書」では、歯科衛生士が行うレジン充填は違法ではないとされているものの、その可否についての結論はやや曖昧です。

法的には、充填材の填塞は歯科衛生士法で定めるところの「絶対的歯科医行為」には当たらず、「診療補助」の範疇だと解釈できます。

しかし、レジン充填は精度によっては脱落やう蝕の再発などが起こる恐れもあります。

そのため、歯科衛生士の習熟度や状況を鑑みると不可だと言えることもある、という見解が記されているのです。

一方、歯科衛生士学校ではレジン充填の実習が十分に行われないケースもあります。

このことからも、歯科衛生士によるレジン充填は、歯科医師の十分な管理のもとで行うのが望ましいでしょう。

歯科衛生士ができる3つの業務

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(画像=pixta)

歯科衛生士の業務として挙げられるのは「予防処置」「診療補助」「歯科保健指導」の3つです。

これらは、「歯科衛生士法」と「保健師助産師看護師法」が根拠となっています。

予防処置

歯科衛生士の業務としてまず挙げられる予防処置は、歯の二大疾患であるう蝕(むし歯)と歯周病を防ぐのが主な目的です。

歯科衛生士法第ニ条には次のように記されています。

「第二条 この法律において「歯科衛生士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科医師(歯科医業をなすことのできる医師を含む。以下同じ。)の指導の下に、歯牙及び口腔の疾患の予防処置として次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

一 歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物及び沈着物を機械的操作によつて除去すること。

二 歯牙及び口腔に対して薬物を塗布すること。(以下省略)」

具体的には歯垢(プラーク)や歯石といった口腔内の汚れを除去する「機械的歯面清掃」や、主にう蝕の予防効果がある「フッ化物」などの薬物塗布などを行い、歯・口腔疾患を予防します。

診療補助(相対的歯科医行為)

診療補助(相対的歯科医行為)も、歯科衛生士の重要な業務の一つです。

歯科衛生士法第十三条の二には以下のような記載があります。

「歯科衛生士は、歯科診療の補助をなすに当つては、主治の歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、又は医薬品について指示をなし、その他歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない」

ここでの「診療補助」とは、歯科助手も行えるアシスタントワークよりも治療に深く関わる「相対的歯科医行為」を指します。予防処置に含まれない歯周初期治療などが代表例です。

しかし、歯科医師のみに許された「絶対的歯科医行為」は大まかには決まっているものの、厳密にボーダーラインが定められているわけではありません。

先ほどの引用に「主治の歯科医師の指示があつた場合を除く」という文言があるように、現場の歯科医師の裁量に任される部分が大きいのが実状です。

歯科保健指導

歯科衛生士が携わる3つ目の業務が歯科保健指導です。

これは、う蝕や歯周病といった生活習慣が一因となる歯・口腔疾患の予防を目的としています。

歯科保健指導では患者さまに現在の口腔内の状況や将来的な病気のリスクを説明し、正しい生活習慣やセルフケアの方法を専門的な立場から指導。

具体的な目標から行動計画を立て、段階的に評価するなど各人のライフスタイルに寄り添い、支援します。

また、歯科保健指導には近年重要性が増している食育支援や高齢者への摂食・嚥下機能訓練も含まれています。

歯科衛生士は、幅広い年齢の患者様を対象に歯と口の健康をトータルでサポートする重要な役割を担っているのです。

歯科衛生士がやってはならない業務(絶対的歯科医行為)

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(画像=pixta)

先ほども触れた日本歯科医師会による「歯科衛生士の業務範囲についての調査報告書」によると、歯科衛生士がやってはならない「絶対的歯科医行為」は以下の4つです。

  • 歯牙の切削に関連する事項
  • 切開や、抜歯などの観血的処置
  • 精密印象をとることや咬合採得をすること
  • 各種薬剤の皮下、皮内、歯肉などへの注射(歯石除去のときの除痛処置を除く)

ただし、先述の通り「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の具体的な区別はされていません。

現場の歯科医師の判断に委ねられているということは、裏を返せば、同じ業務でも習熟度の低い・知識が乏しい歯科衛生士に任せれば違法と判断される恐れもあると解釈できます。

歯科医師が注意すべき歯科衛生士業務

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(画像=pixta)

「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の具体的な区別は曖昧であるため、意図的でなくても知らずに歯科衛生士に違法行為をさせてしまっているケースも少なくありません。

問診・カルテ入力

まず注意したいのが問診・カルテ入力です。歯科衛生士が患者さまの主訴を聞き取り、カルテに入力することはできません。

診療報酬請求は診療録(カルテ)を根拠としており、カルテへの入力は歯科医師の重要業務の一つです。

これを歯科衛生士や看護師、歯科助手に代行させると、場合によっては当該スタッフの無資格診療を問われる恐れがあります。

ただし、歯科衛生士が歯科医師の横でカルテを口述筆記したり、予診の概要を記録したりすることは認められています。

ちなみに、歯科医師が診察しない、あるいは不在の状態で歯科衛生士が処置を行う「無診察治療」も違法なので注意しましょう。

レントゲン撮影

レントゲン撮影も歯科衛生士や歯科助手が行ってはいけない業務の一つです。

歯科診療に欠かせないレントゲン撮影ですが、放射線に関する正しい知識を持たないまま機材を扱うのは危険を伴うため、レントゲン撮影ができるのは医師・歯科医師・診療放射線技師のみと放射線技師法で定められています。

撮影準備までは歯科衛生士や歯科助手でも担当できますが、ボタンを押して撮影できるのは歯科医師だけです。

過去には診療放射線技師法違反容疑で歯科医師が書類送検された事例もあるので注意しましょう。

局所麻酔

歯科衛生士による麻酔行為は原則として禁止されています。

歯石除去の際の除痛処置のみ例外的に認められていますが、十分な知識と技能を有する歯科衛生士による処置が前提となっているため注意が必要です。

歯科衛生士に麻酔を任せている歯科医院は少ないと思いますが、歯科衛生士の重要性がますます高まる中で、業務範囲を見直す動きも見られます。

「歯科衛生士が局所麻酔をする上でどの程度のスキルが必要とされるか分からない」「局所麻酔の知識や技能を習得できる環境がない」という場合は、一般社団法人日本歯科医学振興機構が認定する「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士」の資格取得を目指すのもよいでしょう。

歯科衛生士に任せられる業務の判断基準

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(画像=pixta)

歯科衛生士に任せる業務の範囲に迷ったときに参考になるのが、日本ヘルスケア歯科学会が定める「歯科衛生士業務(診療補助)に関する業務ガイドライン」です。

う蝕や歯周病の治療だけでなく、予防歯科をはじめとするヘルスケアがより求められるようになった近年の風潮に合わせ、歯科医師と歯科衛生士などのスタッフたちが一つのチームとして円滑に業務にあたることを目的として設けられました。

また、歯科衛生士の業務に関する法律の偏った解釈を解消することも目的の一つです。

同ガイドラインでは、歯科衛生士の習熟度(A~D)を定め、各レベルに適する業務内容について、

  • 知覚過敏処置や歯肉縁上スケーリング:D(最も低い熟練度)
  • ICDAS検査や口腔粘膜診査、う蝕活動性検査:C(低い熟練度)
  • SRPやメインテナンスケアの実施、歯周基本治療:B(中等習熟度)~A(高い習熟度)

といったように詳しく記載されています。

歯科衛生士に与える指示の具体例や、実施にあたり歯科衛生士が留意すべき点などが示されており、歯科医師と歯科衛生士双方が参考にできるよう工夫されています。

歯科衛生士と歯科助手の業務範囲の違い

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(画像=pixta)

国家資格を有する歯科衛生士と無資格でも従事できる歯科助手は、業務範囲に明確な違いがあります。

歯科医院によっては歯科助手の業務を歯科衛生士が兼ねる場合もありますが、歯科助手は歯科衛生士業務を実施できません。

歯科助手の主な業務は、受付・患者の誘導、カルテの整理、器材の整理・消毒、セメントや印象材の練和、レントゲンの撮影準備などで、歯科医療行為は一切禁止されています。

アシスタントワークではバキュームを使った口腔内の吸引まではできるものの、自身の手や器具などを口の中に入れることはできないので注意しましょう。

次に、スタッフに違法行為をさせないために気を付けるべき点を紹介します。

職種ごとの業務基準を明文化する

「知らず知らずのうちにスタッフに違法行為をさせてしまっていた」ということを防ぐためには、職種ごとに業務基準を明文化することが重要です。

日本ヘルスケア歯科学会のガイドラインなどを参考に、歯科衛生士と歯科助手、受付専門スタッフなど、それぞれが受け持つ業務をきちんと明確にし、歯科医院の経営者だけでなくスタッフ全員が各々の受け持つ業務を自覚することで、業務の遂行や連携もスムーズになります。

業務基準の明確化は、院長と歯科衛生士双方が納得できる人事評価基準の設定にも役立ちます。

院長が管理者としての義務をきちんと果たす

歯科医院の管理者たる院長は、医療法に則って適正に歯科医院を運営するために、安全管理体制確保義務や従業者監督義務を負っています。

先述した事件のように万が一違法行為があれば、指示をした歯科医師本人はもちろん、指示に従ったスタッフも不利益を被る恐れもあります。

さらに、レントゲン撮影など専門知識がなければ危険が高まる業務もあるため、患者さまやスタッフの安全を守るためにも、院長がきちんとスタッフの業務を管理することが重要です。

まとめ

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(画像=ponsulak/stock.adobe.com)

十分な知識・技術があれば、歯科衛生士のレジン充填は違法にはなりません。

歯科衛生士の業務は大まかに決まっているものの、実際に「どこまでできるか」は現場の歯科医師の判断に任されるところがあります。

この記事で紹介したガイドラインなどを参考に、歯科衛生士の習熟度を鑑みながら適切な指示を与え、決して違法行為をさせることがないように留意することが大切です。

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