歯科医院経営において成功のひとつの目安となるのが「年商1億円」です。
それは利益だけではなく、メンタル面も含めて順調な経営を行っている開業医は「年商1億円」を達成しているというデータからも導き出されているからです。
そこで「年商1億円医院の設計図」(デンタルダイヤモンド社)などの著者であり、歯科医院専門税理士でもある山下剛史さんに歯科医院を年商1億円へと導く最短ルートについてお話を伺いました。
今回は、年商1億円達成のポイントとなる投資に対する歯科院長の姿勢を解説します。なかなか一歩が踏み出せないという方は必見です。
年商1億円達成のポイントは歯科院長自身が変わること
年商1億円をめざす際の注意点は?
例えば「よく通っていた美味いラーメン屋が突然廃業してしまった」というような経験はありませんか?
実はここに経営の大きなヒントがあります。
まず大事なことは、いくらうまい料理を作る能力があっても、お店が流行るかどうかは分からないということです。
これと同じく歯科医院も良い仕事をするからといって「経営は安泰だ」とはならないのです。
たとえば歯科医院を開業する理由で一番多いのが「腕に自信がある」ということではないでしょうか。
勤務医として数年も働けば技術も向上し自信もつきます。
そして勤務医でいるより開業したほうが年収も増えると判断してクリニックを開きます。
しかし、開業すると厳しい現実が待っています。まず、患者さんが来ないのです。
そしてどの職業でも成功するためには「ファン」を増やし続けるしかありません。
ファンが増えない限り、その事業はいずれ衰退してしまいます。
歯科医院も同様に年商1億円を達成するためにはファンを増やし続ける必要があります。
しかし単純に技術を上げればファンが増えるわけではありません。
歯科医師である限り、一定レベルの技術は全員が持っています。
となると、数ある歯科医院の中から選んでもらうための取り組みが必要になります。
では患者さんに「選んでもらう」ためには、なにから始めればよいですか?
まずは「選択肢の1つに入ること」です。つまり患者さんに認知してもらうことです。
その戦略として代表的なものが広告投資です。
ひとくちに広告投資と言っても種類はさまざまです。
駅前に看板を立てたり、HPを開設したりするほか、クリニックを構える場所も1つの広告投資と言えます。
当社のクライアントで年商1億円以上のクリニックは、83%が戸建もしくはテナントの1階で開業しています。
あるデータによると1階のテナントに比べ、2階は87%、3階は61%ほどの集客力しかないという数値が出ています。
家賃を抑えるために最近では小規模開業なども流行っていますが、小さな投資で大きな売上を上げることは非常に難しいのです。
このようにリスクを抑えることばかり考えていては年商1億円を達成することはできません。
歯科院長は投資すべきところに投資できるように、まず考え方を変えていかなければなりません。
考え方を変えられないと、どのようなリスクがありますか?
たとえば、国税庁が発表している平成28年の「民間給与実態統計調査」によると、日本のビジネスパーソンの平均年収は約422万円となっており、年収1,000万円を超える人は全体のわずか4.2%です。
そう考えるとわざわざ大変な思いをして年商1億円を目指さなくてもよいような気にもなります。
しかし、規模の小さな歯科医院には大きなリスクがあります。
現在、勤務医や歯科衛生士は社会保険完備の医療法人への就職を希望する人が多く、福利厚生の充実していない歯科医院の採用活動は困難な状況にあります。
この状況下で退職者が出れば、受け入れられる患者数が減り、収支は相当なダメージを受けます。
さらに近所に大規模な歯科医院がオープンすることなどで既存の患者数が減少するというリスクも考えられます。
リスクがあると分かっていても考え方を変えられないのはなぜでしょう?
人は価値観や思考レベルが合う人と一緒に居るほうが居心地の良さを感じます。
「コンフォータブルゾーン(快適領域)」と言いますが多くの人はここから抜け出せません。
現在、歯科医院の「コンフォータブルゾーン」は年商5,000万円以下であると言えます。
それは「措置法第26条」という医師と歯科医師にのみに認められる税制の存在があるからです。
いわゆる最強の節税方法の1つです。
厚労省調査によると、全体の歯科医院のうち年間の保険収入が5,000万円以下の医院は69.3%、その中で措置法を使っている医院の割合は38.9%といった数値が出ています。
いかにこのゾーンの歯科医院が多いのかがわかります。
さらに驚くべきことに措置法を使用している歯科医院の4割が「措置法が廃止されたら事業を継続できなくなる恐れがある」と不安を口にしているのです。
この措置法は税金の計算上は有利ですが、1つ大きなデメリットがあります。
それは投資に消極的になってしまうことです。
措置法に守られていれば、経費を使わなければ使わないだけ、措置法差額という税制上有利なお金が浮いてきます。
そのため、新たに設備投資をしたり、人を雇ったりすることに抵抗感が生まれてしまうのです。
お金を使うことに消極的な「節約脳」では、歯科医院を大きくすることはできません。
措置法を放棄するのは、なかなか勇気がいると思うのですが
あるクライアントの先生は、長い間この措置法を使って経営していました。
医院の評判は良く患者さまも増えていましたが、「措置法を適用するために年間の保険売上は5,000万円以内に抑えなければならない」というジレンマに悩まされていました。
しかし、患者さまの受け入れを優先した結果、年商は約6,500万円まで伸びています。
年商1億円を超える歯科医院のドクターには、このような「節約脳」を捨て、「投資脳」に切り替えた方が多いです。
経営者の一番の仕事は「どこにどのようなお金を使うのか」を決めることです。
わたしの実感として大規模医院のドクターの多くは、お金の使い方が良い意味で派手です。
必ず儲かるという投資は世の中にありませんが、「とりあえずやってみる」というチャレンジ精神を持つことが大切です。
投資脳への変換が年商1億円へのスタートラインと言っても過言ではありません。
節約脳から投資脳へ切り替えるというのは、ある意味一番難しいのでは?
その通りです。人はなかなか変われないし、変わるのが怖い生き物です。
特に農耕民族であり土着性が強い日本人は生存本能として変わるのが難しい人種ですしね。
なかなか変われないという方は、メンターなど第三者のサポートを利用するのが良いと思います。
私は売上を上げるのとダイエットは同じようなものだと思っています。
ダイエットのポイントは「食事制限」と「運動」です。
これは誰もが知っていますが続かない。ダイエットの成功には1か月に1kgずつといった成功体験を積み重ね、継続することが大切です。
1か月で70kgを50kgにするのが困難であるように、売上も一気に上げることは難しく、コツコツと積み上げなければなりません。
やるべきことを「わかっちゃいるけど」できないので、テレビCMでおなじみのダイエット企業のような第三者のサポートが必要なんです。
だから弊社のような会社が存在しているともいえます。
次の章では年商1億円をめざすために自分を変えるポイントを紹介します。
年商1億円を達成するために変えなければならない要素
考え方を変えるには、何からはじめればよいのでしょうか?
「“つるみ”の法則」をご存じでしょうか?自分の年収は身近な5人の年収の平均値になるという法則です。
このルールに則ると、年商1億円にするには年商1億円のドクターと同じコミュニティに入ればよいというわけです。
わたしのクライアントであるT先生は、開業前から当社主催の経営セミナーに参加していました。
参加者のほとんどはいわゆる成功者であり、その中で多くの先生の意見なども聞きながら一緒に学ぶことで成功マインドが刷り込まれ、開業後の成功イメージが確立されていきました。
その結果、開業2年目で年商1億円を達成しました。まさにこれが「“つるみ”の法則」です。
多くの人はコンフォータブルゾーンから抜け出せません。
しかし、自分の身の回りの人と交流しているだけでは、年商1億円の夢は難しいといえます。
年商1億円を目指すのであれば、まずは年商1億円の人たちの輪に飛び込むこと。
それが成功を手にするための最大の近道なのです。
“つるみ”の法則の他に、おすすめの習慣などはありますか?
元マッキンゼー日本支社長・大前研一氏は、人間が変わる方法は以下の3つのみと述べています。
- 時間配分を変える
- 付き合う人を変える
- 住む場所を変える
「住む場所を変える」はドクターには当てはまりにくい要素のため、わたしは「お金の使い方を変える」に代えて提案しています。
それぞれ3つを具体的に解説します。
1.時間配分を変える
よく成功者は朝が早いと言われますが、わたしはこの理由をCoCo壱番屋の創業者・宗次徳二氏のセミナーを通して学びました。
早起きとは始業3時間前、超早起きは始業4時間前に起きることを指します。
「毎日楽に過ごしたいと思っている人や自分に甘い人は、頑張って努力して困難に耐えてまで早起きをすることは絶対にない」と宗次氏は言います。
そして「心掛け1つで身に付く早起きは人生で最も価値がある」と言うのです。
わたしはこの話を聞くまでは夜遅くに帰りゆっくり食事をして、ゆったりテレビを見ていました。
しかし、早起きをしようとすると睡眠時間が削られるため、帰宅後にすることは食事と入浴くらいです。
仕事に割り当てられる時間が、強制的に長くなりました。
また、トップが朝早く出社することでスタッフも影響され、出社時間が早まります。
すると残業も減るというメリットも生まれます。
2.付き合う人を変える
先ほどご紹介した「“つるみ”の法則」です。
年商1億円に近い人たちと付き合うことで、自分も成功者のマインドを手に入れ上昇していこうという考えです。
3.お金の使い方を変える
実はお金の使い方にも「コンフォータブルゾーン」が存在します。そのため、お金の使い方を変えるのはすごく難しいです。
特に「節約脳」の方には勇気が必要ですよね。そんな方にはまず借入をうまく活用することをおすすめしています。
手元にお金がないというのは怖いものです。例えば歯科衛生士を採用する時、手元に30万円しかお金がないと雇うのはちょっと怖いですが、1億円あれば雇える勇気が出るものです。
だから借り入れをしてでもお金は用意すべきです。
しかし、「借金が多大なストレスになる」という方もいらっしゃいます。
そんな方には、何にお金を使っているか書き出してみることをおすすめします。
試算表などがあれば、どのようなものにどれぐらいのお金を使っているかが簡単に確認できます。
また年商1億円の歯科院長と交流があれば、お金の使い方について聞いてみるのがよいでしょう。
ユニット数やスタッフの数、器材の種類など実例を知れば、どこにどれだけ投資すればよいのかのヒントになります。
次回は、科医院において期待値の高い投資について解説します。どのようなものに投資をすれば良いのかも具体的に説明しますのでご期待ください。
【おすすめセミナー】
・【無料】たった4ヶ月で歯科衛生士276名の応募獲得! 歯科衛生士・歯科助手採用セミナー
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<山下 剛史先生の書籍紹介>
「歯科専門税理士が教える 年商1億円医院の設計図」
山下 剛史 著
(デンタルダイヤモンド社)
お金が残る歯科医院を作る法則、教えます。
歯科医院の未来は「広告」、「人材」、「器材」の投資で決まる!
年商1億円を達成している歯科医院は、全国に5%。
データベースから浮かび上がった成功歯科医院の「設計図」を公開!
年商1億円を達成した5歯科医院の院長にインタビュー
丸橋伸行先生/のぶ歯科クリニック(兵庫県)
白鳥智也先生/しらとり歯科・矯正歯科(千葉県)
島田賢二先生/しまだ歯科クリニック(大阪府)
伊藤尚史先生/伊藤歯科クリニック(兵庫県)
片平信弘先生/片平歯科医院(東京都)
税理士法人キャスダック 代表税理士
行政書士
ファイナンシャルプランナー(CFP)
顧問先が100%歯科医院の歯科専門税理士。「歯科医院のキャッシュ最大化」をモットーに節税/数値分析、CF改善など税務会計の枠を超えてサービス展開。
2021年現在、業界平均売上約4,000万円といわれる中、約45%のクライアントが年商1億円を達成。数多くの開業も手がけ、医院のパワーパートナーとして関西・関東を中心に活躍。
主な著書
「年商1億円医院の設計図」
「歯科医院開業バイブル」
(ともに、デンタルダイヤモンド社)
「利益を出す経営の極意」
「キャッシュ最大化計画」
「あなたの歯科医院を90日で成功させる」
「スタッフのヤル気が歯科医院を発展させる」
「歯科医院にお金を残す節税の極意」
(ともに、クインテッセンス出版)