昇給や賞与はいつまで続く?歯科医院で「使える」評価制度

歯科医院の院長は専門的に経営を学んでいることは少なく、収支や人材採用、教育やマネジメントなどに頭を悩ませている方が多くいらっしゃいます。

わたくし丹羽浩之はこれまで多くの歯科医院の経営コンサルティングを手掛け、歯科医院のさまざまな経営課題に接してきました。

そこで本連載では、わたしの経験を踏まえ、特に相談の多い課題をテーマとして、解決へのヒントを提示していこうと思います。

今回は昇給や賞与など歯科医院で「使える」評価制度についてお話しします。公平感を保ちつつ、現状に即した評価制度のつくり方をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

評価制度を作ったが上手く運用できない スタッフの昇給や賞与制度はどうすればよい?

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(画像=pixta)

スタッフの昇給や賞与について多い相談内容

  • 「スタッフは昇給や賞与は毎年あって当たり前と思っているが…」
  • 「頑張ったスタッフを正しく評価してあげたいが、どうすればよいか」
  • 「小規模の歯科医院でも評価制度の基準をつくるべきか」

このような人事評価に関する相談をクライアントから受けることはよくあります。結論から言えば、評価制度は整備すべきです。その理由を次に説明します。

評価制度はシンプルが吉

先のクライアントからの相談にもあったように、「昇給は毎年あって当たり前」と思っているスタッフは少なくありません。

わたしはこの考え方には賛同できず、昇給は努力した人や成長した人に対して行うべきであって、成長していない人の給与は上がっていくべきではないと思っています。

しかし、このような考えを持つスタッフが在籍する歯科医院は、院長が昇給や賞与を感覚で決めているような印象があります。

感覚で決めてしまわないためには評価制度は必要ですが、大層なものを作る必要はありません。

人事コンサルタントに100万円以上払って評価制度を作ってもらったという、あるクライアントは何十ページにもわたる分厚いファイルが本棚に飾ってあるだけで、ほぼ活用・運用はできていないそうです。

歯科院長は人事以外の仕事で多忙なため、ファイルの中身を読み込んだり、面談などのタスクを詳細までこなしたりすることは、困難といえます。

ファイルの中身がどれだけ優れていてもこれでは無意味です。

スタッフ20名以下の事務長不在の歯科医院であれば、いかにシンプルな評価制度にするかが有効な運用のポイントです。

「使える」評価制度の作り方

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(画像=pixta)

評価項目のポイント

それでは具体的に、どのように評価項目を設定するか見てみましょう。

  • 役割に応じた昇給の幅を設定
  • 1人20分程度で面談できる評価(20分×10人でも200分かかる)
    →評価項目は10個以内(紙1枚に収まる程度) シンプルと言っても人により受け取り方は異なりますが、大きなルールは以下2つのみです。
  • 役職(チーフやマネージャーなど)に応じた給与の幅を設定する
  • 職種(歯科衛生士や歯科助手など)ごとの評価項目を10個設ける


例 <歯科衛生士の場合>
■一般
給与幅:18-22万 評価項目:治療内容を患者さまに説明できるetc…
■チーフ
給与幅:21-25万 評価項目:新人教育ができるetc.…
■マネージャー
給与幅:23-30万 評価項目:数字の管理、スタッフ教育ができるetc.…

まず給与幅の設定については役職ごとに上限を決めておくことが狙いです。

理由は「役職が上がらない限り給与は頭打ちになる」ことをスタッフに知ってもらうためです。

役職ごとの上限を設けておけば、勤続年数と給与が比例すると思っている人や、昇格を希望しない人にも理屈で説明ができます。

そして、ポイントは給与幅にダブりを設けておくことです。同じ役職でも人によってスキルに差があるので、幅を持たせておくと運用しやすくなります。

例えば入社2年目で経験が少ないスタッフが優秀で、チーフに上げたいと考えた場合、一般の給与のままで昇格することができます。

役割ごとの評価項目を10個と制限したのは、審査内容が多すぎて評価が煩雑になるのを防ぐためです。また評価は下記の配分にするとよいでしょう。

  • 取り組み姿勢などの「あり方」が3割
  • 業務の質などを測る「やり方」が7割

「あり方」はどうしても漠然としてしまい、評価をする人の印象に委ねる部分も多いため、不公平にならないためにも「やり方」の配分を大きくするのが一般的です。

評価項目を決める際は、自院のビジョンを「あり方」に含めるとよいでしょう。医院のクレド(信条)などがあれば、それに沿って作成すると納得感のある評価項目がつくれます。

このようにシンプルな評価制度であれば、1人20分程度で評価内容をフィードバックできるため、スタッフが10人いたとしても面談時間は200分ほどで済みます。

この程度の時間であれば歯科院長の業務に大きな負担はかからないのではないでしょうか。

次回は「歯科医院で機能するスタッフミーティングの実施方法」について解説します。それではまたお会いしましょう。

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丹羽 浩之

株式会社ユメオカ 代表

大学時代に統計工学を専攻後、コンサルティング営業の世界へ(2004年に独立)。2008年に株式会社ユメオカを設立。

医院の想いが伝わらず、自費率やリコール率が低く苦難する多くの歯科医院の存在を知る。「単なるノウハウ提供、他医院の事例提供」ではない「考え方と豊富な具体例」により、院長の経営力育成と医院ビジョン実現に貢献するコンサルティングスタイルを確立。

「院長の考えを整理すること」「分かりやすく数字で裏付けること」「患者心理に沿った診療システムをつくること」を得意とする。2016年からは予防管理型歯科医院経営を業界横断的に推進する活動をはじめ、歯科界に新たな価値提供をし続けている。