歯科医院_補助金・助成金_あきばれ歯科経営online編集部

歯科医院を開業・経営するにあたって、補助金・助成金制度はぜひ押さえておきたいポイントです。

治療設備やITツールなどの導入、あるいは人材確保やスタッフの教育に対する金銭的なサポートを受けることができます。

そこで今回は、補助金・助成金制度の概要を踏まえつつ、歯科医院で使える補助金・助成金をカテゴリ別にまとめました。

歯科医院でも活用できる!補助金・助成金制度とは?

pixta_65127648_M_給付金_助成金_申請書
(画像=pixta)

補助金・助成金制度とは、一定の要件を満たすことで「原則“返済不要の給付金”がもらえる」というものです。

開業・設備投資・人材採用・育成など、歯科医院でも活用できる制度が多数あります。

補助金と助成金はよく似ていますが、厳密に言えば別物です。

補助金は国税または地方税が財源となっており、最大で数億円もの給付金を受け取ることができます。

ただし、要件を満たしたうえで、審査も通らなければならないため、受給までのハードルは高めです。

また、申請期間が短いことにも注意しなければなりません。

一方、助成金は雇用保険料が財源となっています。こちらは数百万円程度が上限ですが、要件さえ満たせば原則受給できるうえ、通年で募集が行なわれているため、ハードルは比較的低めです。

新型コロナウイルス対策に使える制度は?

2022年現在、新型コロナウイルス感染症に対する補助金・助成金の多くは、すでに募集が締め切られています。

下記はその一例です。

  • 新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金
  • 持続化給付金
  • 事業復活支援金

一方、2022年現在も使える制度として「雇用調整助成金」があります。

これは労働者の雇用維持をサポートするものであり、2022年9月30日までの特例措置です。

要件の詳細などは、厚生労働省のホームページでご確認ください。

歯科医院の開業・設備投資に使える補助金・助成金

歯科医院の開業、または設備投資に使える制度を補助金・助成金を紹介します。

ものづくり補助金

pixta_34169648_M_歯科用スキャナ
(画像=pixta)

「ものづくり補助金」とは、革新的なサービス開発や生産性の向上に関する取り組みを促進するための制度です。

歯科医院の場合、以下のような治療設備の導入で活用されています。

  • 歯科用CT
  • 口腔内スキャナー
  • マイクロスコープ
  • CAD/CAMシステム
  • ミリングマシン
  • 歯科用診療ユニット

歯科医院は基本的に「一般型」で申請しますが、こちらは最大1,000万円の給付金を受け取ることが可能です。

補助率は原則1/2ですが、新型コロナウイルス対策として設けられた「低感染リスク型ビジネス枠」で申請すれば補助率が2/3となるので、より多く受給できるようになります。

なお、申請できる歯科医院は個人事業主に限られており、医療法人は対象外なので注意しましょう。

IT導入補助金

pixta_86616691_M_歯科医師_パソコン
(画像=pixta)

「IT導入補助金」とは、業務効率化や議題解決に役立つITツール・ソフトウェアなどの導入費用の一部を補助する制度です。

個人事業主・医療法人を問わず、歯科医院も活用することができます。

対象となるITツールの例は以下の通りです。

  • 電子カルテシステム
  • 医療デジタル画像管理ソフト
  • 予約管理ツールうレセコン
  • 会計ソフト

上記以外にも、自院のホームページ作成にかかる費用、クラウド型サービスの利用料なども補助対象となります。

また、IT導入補助金は「通常型」「デジタル化基盤導入枠」の2種類に分かれることも特徴です。

それぞれ受給要件や給付金の上限金額、補助率の割合が異なるので、ホームページなどで詳細を確認しましょう。

事業再構築補助金

「事業再構築補助金」とは、ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応するための事業再構築を支援する制度です。

歯科医院の売上が減少したときに活用できますが、単に設備やソフトウェアの導入費用を補助するというものではありません。

あくまで新分野展開や事業再編といった事業再構築が目的なので、歯科医院なら「導入する設備やソフトウェアを使った新しい歯科治療・サービスの提供に寄与する費用」が対象です。

実際の事例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 近年ニーズの高まっているアライナー矯正治療を新しく展開するために口腔内スキャナーやシミュレーションソフトを導入
  • 非接触のオンライン診療に用いる各種システムを導入

当該施策による売上増加や他院との差別化を実現できるかどうかが、審査の分かれ目となります。

事業承継・引継ぎ補助金

pixta_46184290_M_歯科_電卓_お金
(画像=pixta)

「事業承継・引継ぎ補助金」とは、歯科医院の承継(親族・第三者どちらでもOK)やM&Aにかかる費用の一部を補助する制度です。

事業承継にあたって行う設備投資や集患施策の費用、廃業時に発生する費用なども対象となります。

補助対象となる主な費用例は以下の通りです。

【事業費用】

  • 人件費
  • 設備費
  • 外注費
  • マーケティング調査費
  • 委託費

【廃業費用】

  • 廃業登記費
  • 在庫処分費
  • 原状回復費
  • 移転・移設費(M&Aのみ)

歯科医院の場合、事業承継にともなう新たな人材の採用や診療ユニットの入れ替え、ホームページの製作に対して支給されています。

なお、事業承継・引継ぎ補助金は個人歯科医院のみが対象なので、医療法人は申請できません。

創業者向け補助金

都道府県や市区町村では、新たな企業・医院などの設立や第二創業を行なう創業者に向けて、さまざまな補助金制度を用意しています。

歯科医院が活用できる制度も多いので、これから開業を考えている方はもちろん、すでに開業済みで新たな分野への進出を検討している方も見逃せません。

補助金制度の名称や要件、上限金額などは自治体ごとに異なっているため、あらかじめホームページなどで確認しておくことが大切です。

歯科医院の場合、開業にあたって200万円程度の補助金が支給されるといったケースがあります。

また、創業者向け補助金は原則として返済不要ですが、受給後に一定の利益を得ることで返済義務が生じるケースもあるので、その辺りもチェックしたうえで活用しましょう。

オンライン資格確認関係補助金

pixta_82933725_M_PC操作
(画像=pixta)

マイナンバーカードや保険証の番号から患者さまの資格履歴を一元管理し、迅速に内容を確認できるシステム「オンライン資格確認」の運用が2021年10月から本格スタートしています。

「オンライン資格確認関係補助金」は、システムの導入・改修にかかる費用の一部を補助する制度です。

オンライン資格確認を利用する場合、顔認証付きカードリーダーやそれに関連するアプリケーションを導入しなければなりません。

また、歯科医院ならレセコンや電子カルテシステムなど、既存システムの改修が必要となるケースもあります。

なお、補助金を申請するタイミングは、オンライン資格確認の導入やシステムベンダーへの精算などがすべて完了してからなので、順序に注意しましょう。

人材確保や人材開発に使える補助金・助成金

pixta_40541439_M_歯科医師_歯科助手_パソコン
(画像=pixta)

新たな人材の確保、スタッフの教育などに役立つ補助金・助成金も紹介します。

トライアル雇用助成金

「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」とは、就職が難しい求職者をトライアル雇用(原則3ヶ月間の試用期間)で採用する企業や医院に対し、助成金を支給する制度です。

早期就職のサポート、および雇用創出の実現を目的としています。

歯科医院側は一定期間、トライアル雇用の労働者に現場で働いてもらい、能力や適性を見極めてから本採用するかどうか決めることが可能です。

そのため、助成金を受け取れるだけではなく、雇用のミスマッチを未然に防げるというメリットもあります。

特に下記のような求職者の採用を検討している場合、トライアル雇用助成金を活用すべきでしょう。

  • 長期間のブランクがあって戦力になるかどうかわからない
  • 資格は取得しているが実務経験が不足している
  • 短いスパンで転職を繰り返していて不安

特に歯科衛生士や歯科助手はほとんどが女性なので、出産や育児のために退職するケースも少なくありません。

そのような方の復帰をサポートできるという点でも、有用な制度と言えるでしょう。

キャリアアップ助成金

「キャリアアップ助成金」とは、パート・アルバイト・派遣社員など、非正規雇用で働いている方のキャリアアップ促進や処遇改善を図る場合、助成金が支払われる制度です。

全部で7種類のコースに分かれており、それぞれ目的や要件が異なっています。

【正社員化支援】

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース

【処遇改善支援】

  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 諸手当等制度等共通化コース
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

例えば「正社員化コース」は、非正規雇用労働者の正社員登用もしくは無期雇用を促すコースです。

単に雇用形態を変えるだけではなく、転換後の賃金を転換前の賃金から3%以上増額させることが要件となっています。

近年、歯科業界では人手不足が続いており、歯科衛生士に至っては有効求人倍率が20倍以上という深刻な状況です。

離職・転職する方が増えている理由として、給与や労働環境への不満がよく見受けられるので、業界全体で雇用条件の改善が強く求められています。

雇用条件を改善すれば、既存スタッフのモチベーション向上や離職率低下、採用力強化などにつながるという観点からも、キャリアアップ助成金を活用したいところです。

人材開発支援助成金

pixta_12583789_M_歯科助手_パソコン
(画像=pixta)

「人材開発支援助成金」とは、スタッフにスキルアップのための教育・研修を行うにあたって、その費用を助成する制度です。

こちらもいくつかのコースに分かれていますが、歯科医院だと下記の4種類のコースを活用でき、それぞれ細かい要件などが異なっています。

  • 特定訓練コース
  • 一般訓練コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 特別育成訓練コース

例えば「特定訓練コース」「一般訓練コース」なら、所定労働時間内に外部講師を招聘して院内で勉強会を行う際、依頼費用などを助成してもらうことができます。

また「教育訓練休暇等付与コース」の場合、スタッフに休暇を取らせてセミナーなどに参加させる費用などが助成対象です。

スキルアップが実現すれば、生産性の向上や売上増加はもちろん、スタッフ自身のモチベーション向上にもつながります。

歯科医院の場合、転職理由として「もっとスキルアップしたい」「別の治療分野にも関心がある」といった内容も挙げられるため、人材確保の観点から考えても要チェックです。

人材確保等支援助成金

「人材確保等支援助成金」とは、既存スタッフが魅力を感じる職場づくりのため、労働環境の改善や人事評価制度の見直しを図っている事業主を助成する制度です。

こちらも複数のコースに分かれていますが、歯科医院が活用できるコースは下記の2種類となります。

  • 雇用管理制度助成コース
  • 人事評価改善等助成コース

「雇用管理制度助成コース」では、諸手当の支給・研修制度・時短正社員制度など、離職率を低下させる取り組みに対して助成金が下ります。

上限金額は57万円ですが、生産性要件を満たせば最大72万円を受け取ることも特徴です。

もう一つの「人事評価改善等助成コース」では、生産性向上および賃金増加につながる人事評価制度の整備に対して助成が行われます。

目標を達成した場合、最大80万円の助成金を受給可能です。

先述したように歯科業界は人手不足なので、既存スタッフの存在価値はますます高まっています。

優秀な人材を手放さないためにも、ぜひ活用すべき制度といえるでしょう。

働き方改革推進支援助成金

「働き方改革推進支援助成金」とは、その名の通り働き方改革に関連する助成金制度です。

目的や要件の違いからコースが分かれていますが、歯科医院では下記の2種類のコースを活用できます。

  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務時間インターバルコース

「労働時間短縮・年休促進支援コース」は、時間外労働の削減および年次有給休暇・特別休暇の取得促進に向けた取り組みに対して助成するものです。

予約システムや勤怠管理システム、自動精算機といった当該目的達成に寄与する設備の導入費用も対象となります。

一方「勤務時間インターバルコース」は、現在の勤務が終わってから次の勤務が始まるまで、一定時間以上の休息時間を設けている事業者への助成です。

おもに労働者の健康保持を目的としていますが、こちらもインターバル設定に寄与する設備の導入費用が対象に含まれています。

働き方改革への取り組みは既存スタッフのみならず、求職者もチェックするポイントなので、積極的に遂行したいところです。

両立支援等助成金

「両立支援等助成金」とは、労働者が仕事と家庭生活をきちんと両立できるよう、環境整備や新制度の導入などに取り組む事業主を助成する制度です。

育児や介護などの目的に応じて、下記の4種類のコースに分かれています。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 不妊治療両立支援コース

特に「育児休業等支援コース」「不妊治療両立支援コース」は、多くの女性が働いている歯科業界にとって見逃せない制度です。

「育児休業等支援コース」では、スタッフが育児休業を円滑に取得し、なおかつ職場復帰もしやすくなるような取り組みを行った場合、助成金が支給されます。

一方「不妊治療両立支援コース」では、仕事と不妊治療を両立させる制度など設けて、それをスタッフが利用した場合、助成金を受け取ることが可能です。

他の2種類のコースも含めて、いずれも女性が長く働ける職場を作るために、歯科医院では積極的に活用すべき制度といえるでしょう。

まとめ

pixta_86519062_M_歯科器具
(画像=pixta)

歯科医院を経営している、あるいはこれから開業する場合、多くの補助金・助成金制度を活用できます。

設備投資・事業承継・人材開発・人材確保など、目的ごとに制度が用意されているため、ホームページなどで一通り確認したうえで、申請することが大切です。

制度活用にあたって不明点があれば、歯科医院の補助金・助成金申請に詳しい税理士や社労士といった専門家に相談するといいでしょう。

【おすすめセミナー】
・【無料】たった4カ月で歯科衛生士276名の応募獲得! 歯科衛生士・歯科助手採用セミナー
・【無料】月15人の義歯の新患が来院! 義歯集患セミナー
・【無料】矯正治療が得意な先生に贈る マウスピース矯正集患セミナー

あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。