「歯科衛生士の態度に関して患者さまからクレームがあった」「態度の悪い歯科衛生士にどのような指導をすればいいのか分からない」とお悩みの先生も多いのではないでしょうか。
こうした問題は、本人の資質に原因があると思われがちです。
しかし、理由を探ると、労働環境やスタッフ間の軋轢など、意外なところに問題の本質があるケースも少なくありません。
今回は、歯科衛生士の態度が悪いことで発生する問題や原因、対処法を解説します。
歯科衛生士の態度の悪さが引き起こす深刻なデメリット
他のスタッフや医院全体に波及する
院内に態度が悪い歯科衛生士が一人いるだけで、他のスタッフのモチベーションが低下し、医院全体の雰囲気が悪くなってしまう恐れがあります。
また、先生ご自身も嫌な気持ちになったり相談を受けるなど、振り回されることになってしまいます。
歯科医院の業務は、スタッフ同士や歯科医師との連携がとても大切です。
しかし、不機嫌さを隠そうとしなかったり、相手への礼儀や配慮に欠けた言動を取っていたりする人がいると、うまく協力できず、仕事の質が落ちてしまうことがあります。
さらに、こうした不調和は熱意を持って仕事をしているスタッフを失望させ職場の雰囲気を悪くし、せっかく入職したスタッフを退職に追い込んでしまうことも。
負の連鎖を起こして優秀な人材を失わないためにも、早めに手を打たなければなりません。
患者満足度にも大きく影響する
ドクターが見ていないところで、歯科衛生士の態度の悪さが患者さまに不快感を与えてしまう場合もあります。
クリーニングやTBIなど、歯科衛生士と患者さまが接する時間が長いメインテナンスで発生しがちなトラブルです。
こうしたとき、クレームなど患者さまの心証がはっきりと分かる形で表れるケースは、実はあまり多くありません。
一度不満や不信感を抱けば、何も言わずに通う歯科医院を変えられてしまう可能性が高いからです。
近年ますます普及が進む予防歯科の根幹をなすメインテナンスは歯科衛生士が主役です。
歯科衛生士が接遇やマナーをきちんと心得ているかどうかは、医院経営を大きく左右する要素であるといえるでしょう。
歯科衛生士の態度が悪い原因
歯科衛生士の態度が悪い原因には、大きく環境要因と個人要因の2つがあります。
問題を改善するためには、原因の解明が不可欠です。
ここからは、歯科衛生士の勤務態度を悪化させる代表的な事例について解説します。
忙しすぎて余裕がない
歯科衛生士の態度を悪化させる環境要因の一つが、「仕事が忙しすぎる」ことです。
業務量が多すぎたり、勤務時間が長すぎたりすることでストレスや疲労が蓄積し、心の余裕を失ってしまいます。
また、こうした問題の背景には、
- スタッフが足りずに業務過多となってしまう
- 他のスタッフとの協力が上手くいかず診療がスムーズに回らない
- 無理なアポイントメントの取り方で診療時間が延びる といった原因があります。
心身の疲弊は、無意識に態度に表れるものです。
歯科衛生士の態度が気になるときは、本人に過重な負担がかかっていないかチェックする必要があるでしょう。
院長や他のスタッフの仕事ぶりや態度に問題がある
院長や一緒に働くスタッフが原因で歯科衛生士の態度が悪くなるケースもあります。
たとえば、
- 院長がいつも不機嫌で高圧的
- スタッフ同士の協調性が欠けている
- 先輩衛生士によるパワハラがある などの問題があると、本人のモチベーション低下を招き、無意識に嫌な態度を取っていてしまうでしょう。
院長や先輩スタッフの勤務態度は、後から入職した歯科衛生士の手本です。
日々問題のある態度を目の当たりにしていれば、当然悪い影響を及ぼします。
特に、個人医院では医師やスタッフ間での上下関係が強くなりがちです。スタッフが目上の人の仕事ぶりや態度に疑問を感じていても、「反感を買いたくない」と、つい同調してしまうこともあります。
給与や待遇など医院への不満
給与や待遇、勤務形態などの労働環境に対して不満があるというケースも少なくありません。
給与や待遇への不満は、歯科衛生士の離職理由のなかでも常に上位にあります。
たとえば「残業が多すぎてライフワークバランスが崩れてしまっている」「希望の日に休みが取りづらい」「給与が仕事内容に見合っていないと感じる」など、医院へのフラストレーションがたまると働くモチベーションが下がり、勤務態度に表れるようになります。
こうした不満は普段の診療に問題を引き起こすだけでなく、スタッフの離職にもつながりかねないので注意が必要です。
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患者さま目線で考えられていない
真面目で熱心な歯科衛生士は、ときに患者さまに高圧的な印象を与えてしまうことがあります。
メインテナンスでは、患者さまの生活習慣やセルフケア方法に言及するシーンも多々ありますが、口腔内の健康の改善を追求するあまり、コミュニケーションがおろそかになってしまうケースがあるのです。
どんなに正しいことを言っても、高圧的で厳しい態度では大切なことは伝わりづらく、患者さまに恐怖や不快感のみを残すという結果になりかねません。
医療にもサービス品質が求められているという意識と、治療の成功のためには患者さまとの信頼関係の重要性を理解させることが重要です。
技術や経験が足りていない
技術や経験が足りていない歯科衛生士の不手際が、「態度が悪い」と受け取られてしまっているケースも考えられます。
経験の浅い歯科衛生士は、基本的な患者対応や施術に慣れておらず、「患者さまがどう感じているか」まで考えが及ばないことがあります。
また、技術レベルが低いために意図せず雑な対応を取ってしまい、患者さまに不快感を与えてしまうことも少なくありません。
新人の歯科衛生士には、いきなり全ての仕事を任せず、先輩スタッフのサポートやフォローが行き届くよう配慮することが望ましいでしょう。
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歯科衛生士の態度が悪いときの対処法
患者さまに不快感を与えた際はすぐにフォローする
歯科衛生士の態度を不快に感じた患者さまは、医院側に何も伝えず二度と来院しない可能性もあります。
スタッフが患者さまに失礼な態度や不適切な対応を取ってしまった場合は、すぐにフォローすることが大切です。
ただし、態度の悪い歯科衛生士を見かけたからといって、他のスタッフや患者さまの目の前で頭ごなしに強く叱責するのはあまり良い方法とはいえません。
人前での叱責は本人に恥をかかせてしまうため、改善点に目が向かず反発のみを招く結果となってしまう恐れがあるからです。
また、患者さまにさらに不快感を与え、他のスタッフのモチベーションを下げる恐れもあります。
問題のあるスタッフとは1on1できちんと話をする
歯科衛生士の態度の悪さが気になったときは、さりげなく一旦バックヤードに下がるよう指示した後、マンツーマンで話をしましょう。
問題を見つけたら、本人の記憶が薄れないうちに、なるべく早く注意することが重要です。
また、スタッフを注意する際は本人の能力・性格に言及したり、他のスタッフと比べるような言い方は避け、問題となった行為にフォーカスして話をしましょう。
「雑な性格だからミスするんだよ」「バカだなぁ」といった人格を否定するような表現は、相手の心を傷つけ、仕事への意欲を大きく削いでしまいます。
場合によってはパワハラ問題に発展することもあるので注意が必要です。
また、頭ごなしに叱責することも良くありません。
「どうしてその行動を取ったの?」「どんな方法でやってた?」などと、本人の考えを聞き出して問題点を洗い出すことで、何が原因だったのかを自覚させて一緒に改善に向けて考える姿勢が求められます。
診療方針や理念を明確にして医院全体で共有する
個人の考えや前職での経験から、そもそも勤務中の態度や接遇を重要視していない歯科衛生士もいます。
本人と話すなかで医院の方針とのズレを感じたら、改めて診療方針や理念を共有しておきましょう。
「患者さまに気持ちよく通院していただき、長く歯を守れるようにサポートする」 「患者さまとはもちろん、スタッフ同士でもコミュニケーションを重視し、活気ある雰囲気を作る」
など、医院の在り方を具体的な言葉にすることで、スタッフにも浸透しやすくなります。
加えて、院長先生自身が医院の理念を体現することも大切です。
率先して患者さまへの接遇の手本を見せ、スタッフと円滑な関係を築くことで、自然とスタッフも同様の態度を心がけるようになるでしょう。
施術や接遇に関する研修を行う
歯科衛生士学校を卒業したてのスタッフには、まだまだ現場を任せられるだけの十分な能力が身に付いているとはいえません。
患者さまに快適さを感じてもらえる質の高い施術はもちろん、接遇やマナーもぜひ学んでもらいたい大切なスキルです。
しかし、歯科医院の多くは日々の業務に追われて忙しく、歯科衛生士のスキルを育てる時間がなかなか割けないのが現状です。
そんなときは、外部の専門セミナーの利用がおすすめ。
日本歯科衛生士会をはじめ、さまざまな機関が歯科衛生士の研修や認定制度を設けています。
こうしたスキルアップの機会は積極的にバックアップしたいところです。
スキルを身に付けることで仕事への自信が高まり、余裕のある態度にもつながります。
また、歯科衛生士のセミナー受講や資格取得は、自院のアピールポイントにもなります。
勤務環境に問題がないか見直す
「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉があるように、高いパフォーマンスを発揮するためには、働きやすく生き生きと仕事ができる勤務環境が不可欠です。
勤務時間や給与、福利厚生などを見直すことで、スタッフのモチベーション向上が狙えます。
充実した勤務環境は心の余裕となり、患者さまや他のスタッフへの態度にも良い影響を与えます。
さらに、勤務中の態度や接遇の質を評価し、給与に反映できる仕組みも必要です。
仕事ぶりがきちんと認められると分かれば、スタッフも勤務先に積極的に貢献しようと努力してくれるようになるでしょう。
スタッフとは定期的に面談をする
「どんなに頑張っても給与が上がらない」「自分の頑張りが評価されていないと感じる」など、医院への不満が勤務態度に表れてしまっている場合には、スタッフの面談が効果的です。
普段の業務のなかで不満を抱えることがあっても、スタッフ自らが医院側に訴えることはあまりありません。
また、勤務先への不満をぎりぎりまで我慢して、突然離職してしまうというケースもあり得ます。
このため、勤務態度の良し悪しにかかわらず、スタッフとは定期的に面談の機会を設け、職場への要望やストレスを吸い上げる仕組みを作っておきましょう。
また、面談の際に、働いてくれることへの感謝やねぎらいの言葉をかけるのも効果的です。
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まとめ
歯科衛生士の態度が悪い理由には、勤務環境や待遇への不満や医院との接遇に対する認識の相違、スキルや経験の不足などさまざまなものがあります。
本人の態度についてただ責めるのではなく、理由を突き止めて問題点を洗い出すことが大切です。
マネジメント向上のためのステップと捉え、今回解説したポイントを参考に、前向きに対処しましょう。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。