多様な働き方が認められる時代となり、副業を認める企業も増加傾向にあります。
歯科医院(歯科診療所)を経営している院長の中にも、副業を認めるべきかどうか悩んでいる人もいるでしょう。
歯科医師のスタッフの副業を認めることでどのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では、歯科医師の副業を認めるメリットやデメリット、注意点などについて解説します。
歯科医師の副業を認めるかべきか悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてください。
歯科医師の副業は禁止されていない
歯科医師の副業は法律によって禁止されていないため、基本的には副業が認められています。
ただし、以下の場合には副業は禁止となります。
- 就業規則で副業を禁止している場合
- 国立・公立の医院に勤務している場合(公務員扱いになるため)
公務員は法律で副業が禁止されているため、国立や公立の医院で働いている場合には副業は認められません。
また、民間の歯科医院であっても、就業規則において「副業は禁止」と定められている場合、副業はできません。
スタッフに副業をしてほしくない場合には、あらかじめ就業規則で副業禁止という旨を定めておくとよいでしょう。
歯科医師の代表的な副業の種類
歯科医師の中には、副業を行っている医師もいます。
歯科医師の場合、どのような副業を行っている人が多いのでしょうか。
歯科医師の副業としては、別の歯科医師や動物病院で働いたり、執筆活動や講演活動などを行ったりするケースが挙げられます。
歯科医師の代表的な副業を5つ紹介します。
1.非常勤で別の歯科医院で働く
本業の知識や経験、スキルなどをそのまま活かすことができる副業としては、別の歯科医院で非常勤として働く方法があります。
本業と同様の歯科医師という仕事ではありますが、非常勤となるため待遇は本業よりも劣るケースがほとんどです。
雇用形態もさまざまで、アルバイトやパートなどとして雇用契約を結ぶ場合もあります。
しかし、歯科医院によっては歩合制を取り入れているケースもあり、自由診療の金額に応じて収入がアップする場合もあるようです。
別の歯科医師で働くことでスキルを磨くことができるなど、本業によい影響が出ることもあるため、歯科医師の副業としては人気があります。
2.歯に関する相談業務
歯科医師の仕事というと、歯の治療を思い浮かべる人も多くいますが、歯の健康指導なども歯科医師が行える仕事です。
そのため、対面やオンラインなどで歯に関する相談に対応するといった副業もあります。
歯に関する相談業務は、対面やオンラインなど自分に合った方法を選べるため、無理なく続けやすい副業だといえるでしょう。
人脈を活用して知人から紹介を受ける、スポットコンサルなどのサービスを利用するなどの方法があります。
3.執筆業務
歯科医師としての経験や知識などを活用した執筆活動も、代表的な副業です。
たとえば、歯をテーマにした本の執筆や雑誌への寄稿、Web記事の執筆や監修、ブログなどの執筆などが挙げられます。
執筆業務は締め切りはありますが、セミナーなどのように人前に立つ必要がなく、自分の空き時間を有効活用できる副業です。
クラウドソーシングサイトなどを活用してWeb記事の案件を探すこともできるため、気軽に始められます。
4.講師として働く
相談業務や執筆活動を続けて、ある程度知名度や人気が高まってきた段階で講師として働くという歯科医師もいるようです。
例えば、対面やオンラインでのセミナー講師、専門学校の講師などが挙げられます。
講師として教えたり受講者からの質問に答えたりすることで、自分の知識の再確認や知識をより深めることにつながります。
また、講師として働くことでさまざまな人と関わることになるため、人脈が広がるという点もメリットです。
5.動物病院で働く
動物病院というと、獣医師がすべての治療にあたると思う人もいるでしょう。
しかし、ペットの場合も、人間同様に歯の治療が必要になるケースがあります。
しかし、獣医師のみでは十分な歯の治療が提供できない場合もあるため、歯科医師とタッグを組んでペットの歯の治療にあたる動物病院も増加傾向にあるようです。
ペットであっても基本的な治療方法は変わらないため、歯科医師としてのスキルや経験を活かせます。
歯科治療に力を入れている動物病院もあるなど、ペットへの歯科治療の需要が高まると同時に、副業として働きやすい環境が整ってきています。
歯科医院にとっての「副業を認める」メリットとデメリット
歯科医院を経営する上で、歯科医師の副業を認めるべきかどうかは迷うポイントでしょう。
歯科医院にとって、副業を認めるメリットとは何なのでしょうか。
ここでは、院長視点から見た副業を認めるメリットとデメリットを紹介します。
メリットとデメリットをしっかりと把握した上で、副業を認めるかどうか検討しましょう。
副業を認める「メリット」
副業を認めるメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- スタッフのスキルアップにつながる
- スタッフの自主性を促すことができる
- 優秀な人材の獲得
他の歯科医院で非常勤として働くことで、新たなスキルや経験を積むことができるためスキルアップが期待できるでしょう。
技能などが向上することは本業にも役立つため、自院の評判向上につながる可能性もあります。
歯科医師の自主性や自立性を促すことができるなど、人材育成という点でもメリットです。
また、副業を認めることで多様な働き方を認めているという印象になり、優秀な人材の獲得につながるケースもあるようです。
副業を認める「デメリット」
歯科医師の副業を認める場合には、以下の点に対応しなければいけません。
- 従業員の就業時間の把握
- 従業員の健康管理
- 秘密保持義務
- 競業避止義務
- 職務専念義務
副業を認める場合、従業員の就業時間の管理や健康管理などに気を配る必要があります。
また、秘密保持義務や競業避止義務、職務専念義務などをどう確保するかなど、多くのリスクがあるため注意が必要です。
副業を認める際に必要となる対応については、次項で詳しく解説します。
副業を認めた場合の対応と気を付けるべきこと
副業を認めた場合には、さまざまな対応を行う必要があります。
また、気を付けるべき点もあるため、副業を認める前にしっかりと確認しておくとよいでしょう。
ここでは、「就業規則などの整備」と「労働時間の管理」について詳しく解説します。
副業を認めようと検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
就業規則等を整備する
副業を認める場合には、就業規則などの見直しや整備をしっかりと行いましょう。
この際に規定しておきたいのが「職務専念義務」です。
職務専念義務とは、「仕事中は業務に集中する義務がある」というものです。
また、リスクを回避するために「秘密保持契約」や「競業避止義務契約」などの締結も検討するとよいでしょう。
秘密保持契約とは、自院が保有している顧客情報などの個人情報や営業秘密などを第三者に漏洩、または目的外に使用してはいけないという契約です。
競業避止義務契約とは、競業行為をしないという契約です。
競業行為とは、競業に対して自院の重要な顧客情報や機密事項を流出させたり、競業する企業に転職したりすることを指します。
情報漏洩や流出などのリスクを防ぐために、秘密保持契約や競業避止義務契約などを締結しておくと安心です。
副業も含めて労働時間を管理する
従業員が副業をしており、複数の歯科医院で勤務している場合などは、労働時間が通算されると労働基準法により定められています。
つまり、自院での勤務時間だけでなく、他の医院で働いた時間も把握し管理しなければいけません。
ただし、従業員と副業先が雇用関係でない場合、個人事業主として働いている場合などは、この限りではありません。
副業先と従業員とが雇用契約を無心でいる場合や就業実態が雇用だった場合には、残業時間も通算されます。
たとえば、従業員が自院で週5日、8時間働いている場合には週の労働時間は40時間です。
その上で、副業として週1日、8時間働いている場合は、法定労働時間の40時間を超え、残業代を支払わなければいけない可能性もあるため注意しましょう。
また、副業をすることで働きすぎてしまうケースもあるでしょう。
働きすぎが原因で労災が発生した際は、副業による過重労働が原因の場合でも、労災の損害賠償責任を負う可能性があります。
雇用主としては従業員の健康管理も重要な課題となります。
まとめ
歯科医師の副業は、民間の歯科医院であれば認められています。
そのため、院長として副業を禁止したい場合には、あらかじめ就業規則で定めておくとよいでしょう。
副業を認めることで、従業員のスキルアップや自主性、自立性を育むといったメリットもあります。
また、多様な働き方を認めることで、優秀な人材の獲得につながる可能性もあります。
しかし、副業を認めた場合には、就業規則などの見直しや整備、本業だけでなく副業も含めた労働時間の管理や健康管理が必要になります。
残業代を支払わなければいけなくなるケースもあるため、メリット・デメリットをよく考えて、副業を認めるかどうか決定するようにしましょう。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。