キャビネットは、歯科医院の業務を陰ながら支えるアイテムの一つ。
業務をストレスなく行うためにも、使いやすく便利なキャビネットを選びたいところですね。
昨今の歯科キャビネットには、収納力や性能・デザインなど、幅広いタイプの製品がそろっており、なかには好みに合わせてカスタマイズできるものもあります。
今回は、歯科用キャビネットの種類や選ぶ際のポイントについて解説します。
歯科医院におけるキャビネットの役割
診療の効率化
歯科用キャビネットには、歯科材料や治療器具、カルテなどを収納できます。
所定の場所に保管しておくことで、治療中に慌てて探したり、バックヤードに取りに戻ったりする必要がなく、時間のロスを防げるのがメリットです。
また、キャスター付きの腰高キャビネットは診察台近くまで動かせるため、歯科材料の練和や義歯調整などの際に作業台としても活躍。
スムーズで効率的な診療をサポートする存在として、多くの歯科医院で重宝されています。
整頓された清潔な診療環境の確保
歯科用キャビネットは、院内の清潔感を保つのにも一役買っています。
たとえば、受付や診療スペースなど目に付く場所にカルテや治療器具が散乱していたり、歯科材料が段ボールに入ったまま積まれていたりすると、不衛生なだけでなく患者さまに悪い印象を与えることも。
また、雑然とした職場環境はスタッフの衛生管理への意識を低下させてしまう恐れがあります。
“割れ窓理論”で指摘されるように、散らかった空間では整理整頓が進みにくく、反対に、清潔に管理された空間は汚されにくい傾向にあるためです。
きちんと収納できるキャビネットを置き、清潔感のある見た目を保つことは、医院経営において重要なポイントです。
適正な在庫管理
歯科用キャビネットは、在庫管理を適正に行うためにも不可欠です。
歯科材料や治療器具の数・種類が一目で把握できなければ、気付かないうちに在庫が足りなくなっていたり、余分に注文してしまったりと、管理ミスにつながります。
使う頻度が低く使用期限が短い歯科材料は、余剰分が無駄になってしまうこともあるので注意が必要です。
キャビネットを活用し、歯科材料や器具の定位置を確保することで、在庫管理を効率化・適正化できます。
歯科用キャビネットの種類
壁付けのシステムキャビネット
主に消毒・準備スペースに設置されるのが壁付けのシステムキャビネットです。
上下左右に大小さまざまな収納場所が設けられており、シンクや作業台、滅菌機の設置場所などの役割も兼ねています。
代表的な製品として挙げられるのはMana(ヨシダ)やVarie(モリタ)など。広いスペースに対応しているため、統一感のあるインテリアが実現できます。
また、カラー・デザイン展開が豊富でカスタマイズ可能なものも多いため、内装に合わせてアレンジしたり、使いやすさを追及したりと、ある程度まで各々のこだわりが反映できるのもメリットです。
「さらに自由度が欲しい」「複雑な間取りでサイズの合う既製品が見つからない」などの場合には、オリジナルの壁付けキャビネットをオーダーすることも選択肢に入れてみましょう。
コストや設計・デザインについての希望を業者に細かく伝えられ、より納得できるキャビネットの完成が期待できます。
モービルキャビネット
各ユニットサイドに設置するなら、キャスター付きのモービルキャビネットがおすすめです。
- 紙練板
- スパチュラ
- う蝕の修復処置に使用するコンポレットレジン
- 滅菌バッグに入ったタービンやハンドピース
など診療で特によく使うものを収納しておきます。天板を作業スペースとして使うケースも多いため、天板の素材や高さもチェックポイント。
患者さまにクリーニングや処置の仕上がりを確認してもらうための手鏡や、タービンや超音波スケーラーの飛沫から顔を守るタオルなどが掛けられると、さらに便利です。
モービルキャビネットは、衛生面や使い勝手を考慮した引き出し式が一般的ですが、オープンラックタイプや回転式トレイタイプを使うケースもあります。
また、下段の引き出しは開閉の際に足が当たって邪魔になったり、汚れやすかったりと、使いにくさを感じる場合も。
そんなときは、下段の引き出しがないスッキリしたタイプも選択肢に入れてみましょう。
紫外線殺菌灯付きキャビネット
印象用トレーや外科用器具、滅菌バッグに入れずに滅菌した器具など、保管時の再汚染を避けたい治療器具は、紫外線殺菌灯付きキャビネットへの収納がおすすめ。
扉を閉めることで紫外線が点灯し、消毒・滅菌した器具を衛生的に保管できます。
ミラーやピンセットなどのインスツルメントを置くステンレスバット専用の製品や、外科用器具が効率的に収納できる製品など、用途に応じたさまざまなタイプがあります。
なかには、複数の収納タイプを選んで組み合わせられるキャビネットもあるので、配置するスペースや使いやすさ、器具の数などをふまえて選びましょう。
歯科用キャビネットを選ぶポイント
歯科用キャビネットを選ぶ主なポイントは以下の通りです。
使いやすさ
まず注目したいのが引き出しの深さや幅。治療器具や歯科材料がすっきりと並べられ、収納したものが一望できるかどうかがポイントです。
引き出しの開きやすさやキャスターの滑り具合、ストッパーの有無などにも着目しましょう。
衛生面・清掃性
汚れに強い素材であるかどうかも重要なポイントです。
タービンの飛沫や器具洗浄の飛沫、薬剤などの汚れが付いてしまった際、水分が染み込まず、清拭しやすい素材が好ましいでしょう。
消毒用アルコールで変質しにくい素材であるかどうかも確認する必要があります。
耐久性
キャスター部や扉・引き出しは損耗・破損しやすいため、しっかりとした作りのものを選ぶことも大切です。
万が一、診療中に破損してしまうと思わぬ事故につながる恐れがあるので、ネジのゆるみやキャスターの滑りなどは定期的に点検しておきましょう。
価格
歯科医療機器メーカーのなかには、歯科医院用キャビネットを製造しているところもあります。
しかし、同様の素材や機能を備えた一般・オフィス用製品のほうが、コストがおさえられることも。
安価でハイスペックなキャビネットを入手したい場合は、中古やオークションなどを利用するという選択肢もあります。
歯科医院のキャビネット収納のコツ
歯科用キャビネットは、収納方法にもコツがあります。
整理・整頓できずに散らかっているものを、手あたり次第にキャビネットに詰め込んでしまえば、さらに取り出しにくくなってしまったり、在庫の残量が分からなかったりと、本末転倒な結果になりかねません。
また、治療時の導線や作業内容をふまえて収納場所を工夫することで、業務がよりスムーズに運びます。
たとえば、ユニット脇に設置するモービルキャビネットなら、使用頻度が高いものを取り出しやすい上段に収納します。
反対に、歯科材料や切削バーのストックなど、すぐに取り出す必要がないものは、バックヤードの壁付けキャビネットに分類して入れておきましょう。
よりきちんと整理整頓したいなら、プラスチックトレーなどに分けて収納し、ラベリングしておくのもおすすめです。
電子カルテ化・ペーパーレス化もおすすめ
収納・管理の手間を減らすためには、できる限り余分なものを置かないことも大切です。
しかし、どうしても保管が必要な上に、スペースを取るものもあります。
その一つが紙カルテです。
歯科医師法ではカルテの保存期間は5年と定められているため、治療が終了した患者さまのカルテはしばらく保管しなければなりません。
しかし、紙カルテは、患者数が多く・診療年数が長くなるにつれて、受付やバックヤードのキャビネットを大きく占領してしまいがちなのがデメリット。
そこでおすすめなのが電子カルテの導入です。カルテをペーパーレス化することで、収納スペースを削減できます。
急に来院したり、前回の来院から年数が経ったりした患者さまのカルテを探す手間が省けるのも、電子カルテのメリットです。
まとめ
歯科用キャビネットは、治療器具や歯科材料、カルテなどを適切に保管・管理するために有用な存在です。
大きさや機能、デザインなども幅広く、院内のインテリアを美しく清潔に整えられます。
また、収納場所や分類方法を工夫すれば、さらなる業務の効率化が期待できることも。
今回紹介した内容を参考に、自院の治療スタイルに適した歯科用キャビネットを導入してみてはいかがでしょうか。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。