治療状況を院内や患者さまと視覚的に共有し、インフォームドコンセントを実現する上で、口腔内カメラは有用な治療設備です。
最近では活用する歯科医院も増えてきましたが、どの種類やメーカーを選ぶべきかわからない、導入コストが気にかかるといった先生も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、歯科用口腔内カメラの概要やメリットを踏まえつつ、種類・選び方・代表的なメーカーなどについて解説します。
歯科治療で活用できる口腔内カメラとは?
口腔内カメラ(口腔内モニター)とは、患者さまの口腔内を接写撮影できる小型カメラのことを指します。
撮影した画像を診療ユニットのモニターに投影したり、静止画のデータを記録したりすることで、治療内容・経過を患者さまと共有できるという点が特徴です。
静止画に加えて、動画を撮影できる製品もあります。
白色LEDで口腔内の鮮明な画像を取得できるタイプが一般的ですが、最近では、歯垢・歯石やレジンなどを判別できる、根管内部まで観察できるなど、治療計画の検討に役立つ多彩な機能を有する製品も登場しています。
口腔内カメラを活用すれば、口腔内が今どのような状態になっているかを患者さまと視覚的に共有しつつ、治療の必要性や治療内容、治療後の状態などを分かりやすく伝えられるので、説明に説得力を持たせることができます。
そのため、歯科治療への信頼感・安心感を高められることがメリットです。
なお、価格は性能によって2万~50万円とピンキリなので、導入前にしっかり比較・検討しましょう。
マイクロスコープを活用するケースも
最近だと口腔内カメラの代わりに、カメラ機能付きのマイクロスコープを使って治療部位を撮影しているケースも増えています。
マイクロスコープとは、口腔内を最大30倍程度まで拡大観察できる「歯科用顕微鏡」のことです。
適宜ミラーを使用する必要があるものの、治療しながら経過の静止画・動画を撮影できるため、プレゼンテーション用の症例の記録としても有用です。
ただし、口腔内カメラと比べると導入コストが高く、高性能な製品だと1,000万円を超えることもあります。
導入前に、必要性や費用対効果をよく検討することが大切です。
参考記事:歯科用マイクロスコープの導入メリットや選び方、活用方法、代表的な製品を紹介
口腔内写真の撮影は?
「ペンタイプ」の口腔内カメラは利便性に優れていますが、歯牙や歯列をピンポイントで撮影することを目的としているため、高解像度で規格性のある口腔内写真の撮影には不向きです。
きれいな口腔内写真を撮影するためには、デジタルカメラ(一眼レフが理想)が必要となります。
マクロ撮影用のレンズ、口腔内を照らすストロボ・フラッシュなども揃えなければなりません。
取り回しのしやすさを考えて、女性が片手持ちで使えるくらい軽量な製品を選ぶこともポイントです。
デジタルカメラは一般的な市販製品でも十分ですが、歯科用口腔内撮影に特化した製品もあるので、目的や予算を踏まえて検討しましょう。
口腔内カメラの種類・選び方
口腔内カメラの主な種類や選び方のポイントをまとめました。
接続方式
口腔内カメラの接続方式は、USBケーブルなどでパソコンと接続して使用する有線タイプが一般的です。
一方、最近ではスマートフォンやタブレットとワイヤレス接続する無線タイプも増えているので、往診などで活用しやすくなっています。
有線タイプはケーブル接続なので動作が安定している、無線タイプは取り回しに優れていることがメリットです。
既存の患者管理システムや画像管理ソフトとの相性も確認しつつ、自院の診療スタイルに応じて使いやすいほうを選択しましょう。
画質
口腔内カメラでは、撮影する画像の鮮明さも重要なポイントです。
一般的に「画素数が多い=高画質」と思われがちですが、画素数を増やすことでノイズが発生して、逆に画質を低下させてしまうケースもあります。
また、搭載しているイメージセンサーの種類やセンサーサイズ、LEDライトの照度によっても画質は変わるので、カタログスペックだけで判断しないほうが賢明です。
歯科用口腔内カメラの代表的なメーカー
歯科用口腔内カメラの代表的なメーカーと製品をピックアップしたので、参考にしてみてください。
口腔内カメラ20K(アールエフ)
アールエフの「口腔内カメラ20K」は、2万円という非常にリーズナブルな価格設定でありながら、専用受信機によるワイヤレス接続を実現しています。
指一本で操作しながら、パソコン用モニターやテレビに投影できるため、取り回しや持ち運びが楽です。
また、セルフでのバッテリー交換が可能なので、手軽に導入しやすい口腔内カメラと言えるでしょう。
ペンビュアー(モリタ)
モリタの「ペンビュアー」は、口腔内を鮮明に撮影できるホワイトモード、根管内部まで明るく照らす同軸証明モード、歯牙・歯石・レジンなども判別できるブルーモードの3種類を使い分けられるのが特徴です。
USBケーブルをパソコンに接続するだけで使用できるほか、撮影や画像再生の操作もシンプルなので、誰でも簡単に使いこなせます。
また、モリタ統合画像処理ソフトとの連携により、患者さまの情報を一元管理できる点もメリットです。
BONIDA DUAL Alpha(朝日レントゲン工業)
朝日レントゲン工業の「BONIDA DUAL Alpha」は、世界で初めてデュアルカメラシステム(口腔内カメラ+顔面カメラ)を導入した製品です。
高解像度で明るく鮮明なHD画像を取得できるうえ、静止画に加えて動画も撮影できます。
さらに、歯牙や顎サイズを計測できる機能、カリエス部分を判別して参考表示できる機能なども搭載しているため、幅広い診療シーンに対応可能です。
また、主要なレセコンと連携できるようになっています。
パットカムワイヤレス(名南歯科貿易)
名南歯科貿易の「パットカムワイヤレス」は、その名の通りワイヤレスで使えることが特徴です。
スマートフォンやタブレットと直接Wi-Fi接続ができるので、インターネット環境がない場所でも問題なく使えます。
また、本体は50gという軽量・コンパクトボディであり、なおかつヘッド部分が小ぶりなので、診療スタッフにも患者さまにも負担がかかりません。
価格も39,800円とリーズナブルです。
WAVE PICT SDu(ヨシダ)
ヨシダの「WAVE PICT SDu」は、高画質・軽量・コンパクトの3拍子が揃った口腔内カメラです。
画像取得やデータ管理も簡単なので、患者さまとのコミュニケーション促進やインフォームドコンセントに役立ちます。
また、オートフォーカス機能を搭載した「WAVE PICT プラス」や根管治療用の「ナノピクト」もラインアップしているため、目的に応じて選択可能です。
口腔内写真の撮影に必要なカメラ・機材
口腔内写真の撮影では市販のデジタルカメラを使用することも多くありますが、歯科用の口腔内写真の撮影に特化した製品もあります。
ソニックテクノ
医科歯科画像システムを取り扱うソニックテクノでは、口腔内写真の撮影に最適化した仕様・設定のデジタルカメラ(カメラ本体はNikon製またはCanon製)を販売しています。
スタンダードで使いやすいと評判の「リングフラッシュシステム」と、細部の描写能力に優れている「サイドwフラッシュシステム」という2種類のシステムをラインアップ。
また、すべてのデジタルカメラにおいて初期設定を登録しているので、撮影にあたって難しい操作が不要なのがメリットです。
アイスペシャルC-Ⅳ(松風)
松風の「アイスペシャルC-Ⅳ」は、口腔内写真の撮影に特化して開発された、軽量・コンパクトな歯科用デジタルカメラです。
診療シーンに合わせた8種類の静止画撮影モードに加えて、動画モードも用意されているので、さまざまな用途で使えます。
また、規格撮影に役立つオートトリミング機能、ピントのずれや手振れを防ぐ設計が盛り込まれているため、初心者でも高品質な写真を撮影できるでしょう。
さらに、画像管理・加工に役立つ専用ソフトウェアも提供されています。
まとめ
口腔内カメラを導入すれば、治療部位を静止画もしくは動画で撮影した上で、チェアサイドのモニターやスマートフォン・タブレットの画面を通して、患者さまに口腔内の状態をわかりやすく共有できます。
一方、規格性のある口腔内写真を撮影したいなら、相応の画質で撮影できるデジタルカメラが必要です。
自院のコンセプトや診療の進め方に応じて、必要なカメラ・機材を導入しましょう。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。