歯科医院を継承すべきかどうか判断する基準と条件・継承者選びのポイント_あきばれ歯科経営online編集部

歯科医院を経営していくなかで、いずれ課題となるのが継承問題です。

「自分の代で廃業するか」あるいは「誰かに事業を継承するか」を悩む歯科医院を経営する院長も多いのではないでしょうか。

この記事では歯科医院継承時の判断基準や条件、さらには継承者選びと手続きについて解説しています。

歯科医院の継承を検討する際の参考にしてください。

歯科医院の継承を検討する2つの場面

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(画像=pixta)

歯科医院の継承にはさまざまなケースが考えられます。

例えば、次のような背景です。

  • 後継者不在
  • 経営者の高齢化
  • 新型コロナ対策費用の増大
  • 競争激化による業績悪化
  • 人材確保が困難

帝国データバンクの「医療機関の休廃業・解散動向調査」によると、診療所と歯科医院は現在の経営者が事業を立ち上げているケースが多く、歯科医院の経営者は60歳以上の代表者が58.6%と半数を超え、高齢化の傾向です。

また、歯科医院件数は6.8万件程度と「コンビニエンスストアよりも多い状態」が続いており、競争激化による業績の悪化も懸念されるなか、コロナ対策費用の増大や人材不足なども大きな問題となっています。

ここでは、以下の2つの場面に分けて解説していきます。

  • 経営に問題はないが、年齢などその他の理由で引退する場合
  • 業績悪化や借金増加の解決策として継承する場合

引退・後継者への継承

歯科医院の継承を検討する場面として、1つは代表者の引退が考えられます。

経営状態に問題はありませんが、高齢化などの理由により運営が難しく、実子や親族・従業員・第三者などに自院を引き継ぐケースです。

ただし第三者の場合、継承者がすぐにみつかるとは限りません。

実子や親族・従業員でも継承の意思や適性がないことも考えられます。

引き継ぎの際には、代表者と継承者がともに勤務する期間も必要になるため、早い時期から検討するのが望ましいといえるでしょう。

なお、歯科医院の継承の手続き方法は後述します。

業績悪化の解決策としての継承

業績悪化や借金増加による「廃業」「破産」はよく耳にしますが、業績悪化の解決策として「他の人に歯科医院を売却する」という選択肢があります。 これはM&Aとも呼ばれており、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略です。

M&Aと聞くと、新聞やテレビで見聞きするような大企業の話を思い浮かべるかもしれませんが、近年は中小企業や中小医療機関のM&Aも増えています。

M&A仲介会社を利用するため専門家に交渉や手続きを依頼でき、幅広い地域から継承者を探せる点がメリットです。

歯科医院を継承すべきどうかを判断する基準

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(画像=pixta)

歯科医院を継承すべきか判断に悩む院長もいるでしょう。ここでは、歯科医院の継承における判断基準をお伝えします。

地域にとってニーズはあるか

院長自身が引退を考えている場合、自院はこれから先も地域にとってニーズがあるかどうかという点を考慮し、閉院か引き継ぐかを検討しましょう。

一定の来院数があれば現在の患者を引き継ぐことができるため、安定した経営を継続できる可能性が高いといえます。

継承者は収益が確保できるうえに、低コストで開業が可能です。スタッフの継続雇用も実現できれば、採用や研修におけるコストも抑えられます。

もし、近隣に競合医院があって集患が難しい、あるいは経営状態が悪化しているなどの懸念点があれば、引退後は廃業し現在の患者には他の医院を紹介するというのも1つの方法でしょう。

自力継続できる可能性は残っていないか

歯科医院を自力継続できるかどうかも改めて検討したい点です。

引退したいという気持ちが一時的ではないか再考してみましょう。

業績悪化の場合は、工夫次第で経営を立て直せる余地はないか分析が必要です。

歯科医院では、院長の経営能力不足が原因で赤字を招くケースが多くみられます。

キャッシュフロー改善など経営の合理化を図ることで、営業利益を増やせるかもしれません。

また、赤字で負債が大きい場合でも、黒字にできる見込みがあれば民事再生で再スタートするという手もあります。

継承後に後悔しないよう、じっくり検討することが大切です。

歯科医院を継承するための3つの条件

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(画像=pixta)

歯科医院の継承では、次の3つがポイントになります。

  • 継承者の確保
  • 負債の整理
  • 権利関係の精算

ここではそれぞれの条件について解説します。

継承者の確保

1つ目は継承者の確保です。

そもそも継承者になってくれる人がいるかどうかが大きなポイントになりますが、継承者の候補には「親族」「従業員」「第三者」の3パターンが考えられます。

親族・従業員への継承は、治療方針や経営、既存患者などの引き継ぎがスムーズに行われるため、患者の不安や院長の負担が少なくて済むでしょう。

ただし、親族間の継承では旧院長が口を出しすぎることで意見の対立が起こりやすく、関係悪化や考え方の違いが原因で継承を諦めるケースも少なくありません。

いずれにしても継承者としてふさわしい人を選ぶことが大切です。

たとえ継承を希望する人がいたとしても、歯科医師としての実績はもちろん、経営スキルなどの資質が十分でなければ、継承しても成功は難しいといえるでしょう。

継承者の探し方・選び方については、別項で詳しくお伝えします。

負債の整理

2つ目の条件は負債の整理です。

負債があるとうまく継承できないケースがあるため注意しましょう。

特に法人の場合は、歯科医院を継承すると同時に負債も引き継がれるのが普通です。

連帯保証人になっている場合も同じく、継承者はその責任を引き継がなければなりません。

一方、個人の歯科医院の場合は、院長の廃業手続きにより事業主が変更になることから、負債も院長個人のものとなるため引き継ぎは必須ではなく、選択が可能になります。

ただし、負債を引き継がないということはつまり、銀行からの融資を旧院長個人が引退後まで持ち出してしまうということです。

借入金に頼らずに運営できれば問題はありませんが、実際は院長が引退して事業継承した際に、負債も引き継がざるを得ないケースが多くみられます。

また、歯科医院の継承とともに負債も引き継いだ後には、金融機関の審査をもう一度受ける形になることも覚えておきましょう。

場合によっては一括返済を求められる可能性もあるため、継承者にとっては大きなリスク要因といえます。

歯科医院継承の際は銀行と交渉したり、返済計画を練り直したりなど、負債の解決方法について十分に検討しなければなりません。

権利関係の精算

3つ目の条件は、権利関係の精算です。

歯科医院の土地・建物・設備などが共同名義になっている場合も、継承の妨げになることがあります。

共同名義とは、1つの不動産などを複数人が所有している状態です。

持ち分の割合に関係なく所有者の1人として権利が与えられます。

例えば共同でローンを組んだ場合や、不動産などを相続した際に共同名義になることが考えられますが、所有者全員の同意なしに継承者へ譲渡・売却することはできません。

共同名義人の協力が得られないと事業継承は難しいといえるでしょう。

歯科医院の継承者選びのポイント

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(画像=pixta)

前述の通り、歯科医院の継承には後継者の存在が不可欠です。

親子間の継承が望まれがちですが、「継承者は子ども」という固定観念にとらわれる必要はなく、外部人材の登用も検討したい方法の1つといえるでしょう。

ここでは継承者を選ぶ際のポイントについて解説します。

経営のスキルやビジョンはあるか

継承者が、経営スキルやビジョンを持っているかどうかを確認しましょう。 院長は歯科医師として治療するだけでなく、経営者としての役割もこなさなければなりません。

歯科医師としては優秀な人材だとしても、経営スキルがなければ継承後の成功は難しくなります。

今後の経営について明確なビジョンを持ち、歯科医院のブランディングやスタッフに対するマネジメント能力、現状で赤字ならばそれを立て直す具体的な計画などが必要です。

歯科医師としてのスキルは十分か

基本的には歯科医師に継承することになるため、歯科医師としての十分なスキルが必要です。

スキルが弱ければ、患者から「院長が変わって質が下がった」といわれかねません。

患者が離れたり、収益が減少したりなどの事態につながるため、スキルが高い人への継承が望ましいでしょう。

親族や従業員に継承者候補がいるとしても、その人のスキルが高く、適性があるとは限りません。

その場合はM&Aなど第三者への継承も検討しましょう。

従業員からの信頼は得られるか

継承者が、現在雇用している従業員の信頼を得られるかどうかも重要なポイントです。

従業員は歯科医院の運営を支える存在であり、経営や歯科医師としてのスキルが十分でも従業員と良好な関係を構築できなければ、歯科医院の継続的な運営は難しくなります。

「前の院長とは働きやすかったけど、今の院長にはついていく気持ちになれない」など、従業員との関係性が悪化したり、退職者が増えたりなどの結果にならないよう、信頼を得られる人物に継承することが大切です。

また、引き継ぎ期間にしっかりと関係性を築き、新しいチームとしてのスタートを意識してもらえるように心がけましょう。

歯科医院の継承に必要な手続き

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(画像=pixta)

歯科医院の継承時に必要な手続きを確認しておきましょう。個人の場合は、次のような流れになります。

  • 現医院の廃止手続きを行う
  • 継承者が新たに開業届を提出する

継承者が誰であろうと手続きの流れは変わりません。

廃止の手続きは歯科医院を閉院する手続きと同じで、保健所や税務署などに届け出を行います。廃業について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:歯科医院の閉院数・3つの理由と閉院する手順や注意点

開業の手続きも、新たに歯科医院を開業する時と同様です。

各官庁に申請書などを提出しますが、期限が決まっているため手続き漏れがないように注意しましょう。

開業について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:歯科医院の開業の現実とは?売上・年収や失敗しない条件と開業手順

法人の場合は個人の手続きとは異なり、法人が一時的に消滅することなく手続きが完了します。

「医療法人役員変更届」など法人に関する変更や異動の申請書を提出することで、現在の法人をそのまま継承可能です。

まとめ

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(画像=pixta)

経営者の高齢化や経営悪化などによる歯科医院の継承では、「親族」「従業員」「第三者」が後継者候補として考えられます。

歯科医師としてのスキルはもちろん、経営やマネジメント能力なども鑑みながら、信頼できる継承者を選ぶことが重要です。

子どもや親族への継承にとらわれがちですが、個人の歯科医院では後継者を置いていないケースも多くみられるため、M&Aなどを活用した第三者への継承も検討してみましょう。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。