歯科医院の治療費の踏み倒しを防止しよう!医療費の時効と回収する方法_あきばれ歯科経営 online編集部

歯科医院(歯科診療所)の治療は、健康保険が適用されるものから保険適用外のものまでさまざまです。

自費治療などの高額になる治療を行った際、患者に治療費を支払ってもらえないなど未払いの悩みを抱えている歯科医院の院長も少なくありません。

未払いは犯罪である上、経営を圧迫するため、未払いの回収や未払いにならないための対策が必要です。

この記事では、治療費の未払いに悩んでいる歯科医院の院長に向けて、医療費の時効や回収する方法などを解説します。

未払いの治療費を回収するための5つの方法

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(画像=pixta)

未払いの治療費を回収するためには、どうすればよいのでしょうか。

未払いの治療費を回収するためには、5つの方法があります。

まずは、電話やメールなどで支払いの催促を行って、支払いがない場合には徐々に強い対応を行っていきましょう。

ここでは、治療費を回収するための5つの方法を解説します。

電話やメールなどで支払いの催促を行う

まずは、電話やメールなどを用いて支払いの催促を行いましょう。

未払いを回収する方法としてはもっとも手軽であり、コストもあまりかかりません。

未払いにもさまざまなケースがあり、意図的ではなく患者側が治療費の未払いを忘れているケースもあります。

そのため、初めから強い態度で催促や請求を行うことは控えた方がよいでしょう。

まずは電話やメールなどで、未払いがあることを伝えるようにします。

電話やメールで支払いの催促を行う場合、言った・言わないの水掛け論になってしまう場合もあります。

トラブルを防ぐためにも、電話を録音しておく、日時や内容を控えておく、送信したメールを保存しておくなどあらかじめ対応しておきましょう。

内容証明郵便で催促状を出す

電話やメールなどで支払いの催促を行っても効果がない、支払う意思が見られないという場合には、記録が残る方法で催促状を出しましょう。

催促状を送る際には、「内容証明郵便」が適しています。

内容証明郵便とは、「誰が」「いつ」「どのような内容」の手紙を送付したのか、郵便局が公的に証明してくれるものです。

公的な証明にもなるため、電話やメールなどよりも強制力が高くなります。

最初は「医療費のお知らせ」などといった穏便な内容で送付し、支払いの意思が見られないようであれば金額や支払期日を明記するなど、強めの対応に切り替えて複数回送るのがおすすめです。

債権回収業者や弁護士に依頼する

督促状を送っても支払いがなされない、明らかに支払う意思がないという場合には、債権回収業者や弁護士に依頼して、債権回収を代理で行ってもらう方法もあります。

弁護士を代理人として交渉することで、未払いを回収するという強い意志を見せることができます。

債権回収会社を利用する場合には、法務大臣の許可を受けている民間業者でなければいけません。

そのため、無許可の債権回収会社ではないかしっかり確認しましょう。

弁護士であれば制限なく、すべての債権回収業務にあたれるため、不安があれば弁護士に依頼するのもよい方法です。

保険者徴収制度を利用する

健康保険の強制徴収制度を利用する方法もあります。

保険が適用される治療の場合には、保険診療となり「保険者徴収制度(国民健康保険法42条2項等)」が利用できます。

保険者徴収制度とは、保険診療の未回収の場合、保険者から未収金を徴収できる制度です。

税金と同じように滞納処分手続きが行われ、一部負担金が徴収されるといった仕組みです。

ただし、保険者徴収制度には複数の条件があります。

条件としては、「徴収の対象となる一部負担金の額が60万円を超えること」「電話や内容証明郵便、自宅訪問などで支払いの催促を行っていること」などが挙げられます。

一般的に、歯科医院で一部負担金が60万円を超えることはごく稀であり、条件を満たすケースはほとんどありません。

そのため、保険者徴収制度が利用される事例は、現実的にはほとんどないと言えるでしょう。

法的手続きを取る

上記で紹介した方法を行っても未払いが回収できない場合には、訴訟などの法的手続きによって強制執行を行い未払いを回収することも検討しましょう。

法的手続きにはいくつかの方法があります。たとえば、少額訴訟や支払督促、民事裁判などです。

少額訴訟や支払督促は迅速で簡単に手続きできるという利点がありますが、どちらの方法も患者に支払い能力があることが前提となります。

そのため、法的手続きを行う前に、患者の財産状況や支払い能力を有しているかなどの調査も必要です。

手続きには時間や費用がかかるため、患者の支払い能力なども考慮した上で、法的手続きを行うべきかどうか慎重に検討しましょう。

医療費には時効がある

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(画像=pixta)

治療費の未払いを回収する際に注意したいポイントが、時効です。

医療費には時効があり、旧民法では3年、新民法では5年となっています。

旧民法では、債権の種類や職業などにより細かく時効が分けられていました。

しかし、改正民放によって統一されることになったため、以前よりもわかりやすくなっています。

新民法が適用されるのは、改正民放が施行された2020年4月1日以降に生じた債権のみです。

2020年3月31日以前に発生した債権の場合には、旧民法が適用され時効は3年となるため注意が必要です。

また、新民法では「債権者が権利を行使できると知った時から5年」「権利の行使が可能な時から10年」のうち、早く来た方が消滅時効と定められています。

一般的に支払期限の把握ができない状況はあまりないため、実質時効は5年と言えるでしょう。

医療費の時効を「中断」させるための方法

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(画像=pixta)

前述したとおり、医療費には時効があり定められた期間が過ぎてしまうと支払いを求める権利が消滅してしまいます。

医療費がなかなか支払われないという場合には、時効を中断させるための対応を行いましょう。

医療費の時効を中断させるための方法は大きく分けて2つです。

以下では、時効を中断させる2つの方法を詳しく解説します。

患者に債務承認をしてもらう

まずは、患者に債務承認をしてもらう方法です。

債務者に債務を承認してもらうことによって、時効の完成が猶予できるため時効を中断したい場合には、債務承認を検討するのもよい方法です。

あとからトラブルになることを防ぐために、債務を承認したことを証明できる文書を残しておくことも重要です。

未払いの治療費があることの念書などを取っておくとよいでしょう。

未払いの医療費のうち、一部を支払った場合でも債務承認とみなされます。

そのため、分割払いに対応して、少額ずつでも治療費を支払ってもらうようにするとよいでしょう。

内容証明郵便による督促を行う

内容証明郵便による督促を行うことで、時効が猶予されます。

内容証明郵便による督促などは、支払いを求める行為である「催告」にあたります。

催告を行うことで、6か月間時効の完成を猶予させる効果があるため、治療費の支払いがなかなかされない場合には、内容証明郵便による督促を積極的に利用しましょう。

ただし、催告行為から6か月以内に裁判手続きが取られない場合、時刻中断の効力は消滅してしまいます。

弁護士に依頼して弁護士の名前で内容証明郵便を送付するなど、未払いの回収に対する本気度を伝えることも効果的です。

治療費の踏み倒しを減らすための対策

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治療費の未払いが発生すると、回収するまでには手間と時間がかかってしまいます。

そのため、治療費の未払いが発生しないように対策することが重要です。

治療費の踏み倒しを減らすための対策としては、3つ挙げられます。治療費の未払いを減らすための対策を詳しく解説するので、参考にしてください。

患者と信頼関係を築く

できる限り、治療前の段階から患者とコミュニケーションを取って、信頼関係を構築しておくことが重要です。

事前に治療の必要性や費用負担、自費診療か保険診療かなど、しっかりと患者に説明して理解してもらうようにしましょう。

患者が納得できる治療を行うことで、後々トラブルになる可能性を減らすことができます。

費用については書面として資料を渡しておくなど、わかりやすい対応を心がけましょう。

また、窓口の担当者も患者に声がけしてコミュニケーションをとり、患者との接触があるうちに治療費を支払ってもらうようにすることも効果的です。

前払い制度を導入する

前払い制度を導入することで、未払いを防ぐことができます。

あらかじめ治療内容や治療方法が決まっている、入院や手術などの必要があり医療費が高額になることが見込まれる場合などは、前払いで支払ってもらうのもよい方法です。

この場合には、窓口で診療前などに、「治療内容があらかじめ決まっている場合は、前払いをお願いしています」などと伝える、もしくは掲示をして事前に知らせておくとよいでしょう。

治療費が高額になる場合には、一部分のみを前払いにして治療後に残りの治療費を支払ってもらうなどの対応も効果的です。

連帯保証人制度を導入する

連帯保証人制度を導入するという方法もあります。

連帯保証人をつけることで、患者自身が支払いをしない場合でも連帯保証人に請求できるため、治療費が回収できないという事態を防げます。

また、連帯保証人に迷惑がかかるという心理的な効力もあるため、治療費が支払われる可能性も高いでしょう。

ただし、書面による連帯保証人契約が必要です。

連帯保証人となる方との間で連帯保証人契約を締結しなければ、効力が発揮されません。

そのため、導入のハードルは高くなりますが、高額な治療の場合には導入を検討しておくと安心です。

治療費を踏み倒した患者の治療を拒否できる?

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医療費を踏み倒している方が治療に訪れた場合、できれば治療したくないと考える歯科医師や院長もいるでしょう。

医療費を支払う意思がない方の治療をした場合、回収まで手間や時間がかかり、最悪の場合回収できずに赤字になってしまうケースもあります。

しかし、医師・歯科医師には「応召義務」というものがあります。

応召義務とは、正当な理由なく診療を拒んではいけないという義務です。

診療拒否は、患者の健康や命にかかわるケースもあるため、未払いというだけですぐに診療を拒否できるわけではありません。

治療費の未払いのみで、診療拒否が正当化されるわけではないため注意しましょう。

支払い能力があるのに、理由なく支払いをしないなど悪意ある場合は診療拒否が正当化されるケースもあるようです。

まとめ

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(画像=pixta)

歯科医院を経営していると、治療費の未払いが発生してしまうケースもあるでしょう。

治療費が支払われない場合には、電話やメールなどで支払いを催促し、効果がないようであれば内容証明郵便での督促や弁護士・債権回収会社への依頼、法的対応など、対応を強めていくことがポイントです。

未払いが増えてしまうと経営を圧迫してしまうため、未払いが発生しないような対策を取ることも大切です。

治療費が高額になる場合には、前払い制度や保証人制度を導入する、患者とのコミュニケーションを取り信頼関係を築くなど、院長として必要な対策を取り、未払いを防げる環境を整えましょう。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。