売上(患者数×単価)-経費(固定費+変動費)=利益
経営継続はキャッシュフローが重要となります。すでに歯科医院を経営していらっしゃる先生方はご存知かと思いますが、上記の図式が経営の基本です。日々の診察に追われてここまで確認していないかもしれませんが、一つ一つ見ていきましょう。
患者数とスタッフ数の関係
患者数はレセプト枚数が判断しやすいですね。単価が高いのは自費。単価が低くても継続来院して頂ける歯周管理、患者数が多くなればスタッフの確保は必須です。
レセプトを増やすよりもレセプトを減らさない方が操作しやすいですよね。そしてそこを丁寧に積み上げて、結果的にレセプトを増やしていくのが良いでしょう。
同じくスタッフも減らさないということになると思います。
歯科を取り巻く業界的には、どちらかというとレセプトを増やす事やスタッフを募集する方に力を入れていたのではないでしょうか。しかし広告宣伝費は相当コストがかかりますし、人材紹介も同様です。
それであれば「今いるスタッフが辞めない努力」をする事がお得ですよね。次に、スタッフが仕事を辞める理由を考えてみましょう。
スタッフが仕事を辞める理由
一番は人間関係
しかしこれはなかなか難しいです。個人的な感情に介入するのも難しく、経営者の立場では分からない、どうしようもないかもしれません。同居家族の引越しの転勤
これもまたどうしようもないですね。結婚や出産による離職
これはトップの考え方や医院のシステムによって改善することもあるでしょう。給与待遇への不満
これは、例えば同業の友人や他の求人など、何かを基準にして感じていることだと思います。給与情報は簡単に知ることができます。
それを見たり聞いたりして自分のことを比較して行くわけです。また院内でも自分が人と比べて給与が少ないなどと感じることがあると思います。給与が多いと思ってやめることはほぼないからですね。
給与が自分の仕事量や自分の能力に見合っていないと感じているのでしょう。
評価制度の導入は良い?悪い?
「適正給与を判断するため」に、評価制度は大切だと言われていますが、わたくしは曖昧な評価制度を導入しておりません。
それは自分が人を評価できないからです。評価は客観的に数値で表せるもので行っています。
例えば出勤日数とか勤続年数をはじめ、残業時間、主任、急なヘルプ、教育、夜間、紹介、矯正のスキャン、インプラントアシスト、アタッチメント装着etc
このような客観的な数値が表れるもので判断します。
ZOZOTOWNの前澤社長の会社には人事評価制度はないそうです。
人事評価されて嬉しい人と面白くない人が出てくるので、面白くない人は離職するか頑張るかどちらかですね。
給与に関して考えるべきこと
人件費率は50%以下が適正?
スタッフの不満が出やすい給与に関して、スタッフに人件費率の話をします。巷の歯科の人件費率は理事の収入を入れて50%以下であります。理事を外すと30%以下であります。
そのため「理事を10%以下にして従業員を37%以上」にすれば他医院よりも7%以上多く支払い、なおかつ3%の経費削減になるのです。
ちなみに当院は2億円の売り上げですので理事長、理事の給与は併せて2000万円以内にすれば良いわけです。
いわゆる成功者は3000万〜4000万円以上らしいですけど、僕は1000万円以下ですが、全く余裕のある生活ができます。またその分スタッフの給与を上げたり人員を増やすことができるのです。
また経費削減された3%を人材確保のための予備費としてプールでき、これが年間600万円になります。僕が売り上げを上げる理由は人材の数を確保したいからです。人が多いと緊急の休みにも育児や出産にも対応できます。
日報を書いてもらう意味
また当院ではスタッフに日報を書いて頂いてます。それに僕がほぼ毎日コメントを書いています。
スタッフが30名程いるので大変ですが、小学校や保育園の先生の連絡帳にくらべたら内容がとてもチープです。
あと、誕生日には支えて下さる家族の方へお礼のお花を送らせて頂いてます。効果を期待するのではなく単純に感謝をするだけです。
このようなことをすることで、皆で経営を考え参加できるようにガラス張りの経営を目指してます。他にも教育環境を整えることも大切です。が、当院は全くできてないため、ここでは発言を避けたいと思います。
ここまでお伝えしたことは、院長の心と情熱があれば誰でもできる事です。
患者さん離れを防ぐには
次に患者さん離れをいかに防止しているかです。
離脱者が多いメンテナンス
治療と比べるとメンテナンスの中断は多いため、対応策に試行錯誤しております。簡単なものとしては、初診時に苦情コールセンターの存在を伝えております。
メンテナンスとかは長い付き合いになりますのでどんなことが起こるかわかりません。患者さんとの良い関係を結ぶために必要なアイテムとして、コールセンターを設置し、「私自身はコミュニケーションが苦手である」と伝えてます。
「誤解を招きご迷惑かける事が多々あります。言いづらいことがあったらこちらの方にもご連絡ください」と伝えて、苦情コールセンターのご案内をさせて頂いてます。
電話番号を記載した診察券、抜歯等、観血措置した時に念のため院長や担当した歯科医の携帯番号も教えていて、いつも「あなたを大切にしている」を伝える事が大切だと考えてます。
とはいえ、当院でも中断の患者さんへの問題が山積みです。それでも自分達らしい解決の仕方を日々考え話し合いやっています。
「なぜそれをするのか」ということを、スタッフ同士で共通のベクトルを創り上げて行こうとすることが大切ではないかなと思います。
患者さん離れの問題をスタッフと共有することにより共に問題を解決して行くという力のある医院が出来上がっていくのではないでしょうか
手書きのお礼など心をこめること
患者さんを紹介して頂いたり何か頂き物をしたら、私が手書き(ここが大切)のお礼状を書くことにしてます。新患さんには来院してくれたことへの感謝の手紙、そしてコールセンターの紹介など。
このような積み重ねで、レセプトはうなぎ上りではないもののじんわりと増え続けています。「これなら大丈夫です!」というような魔法の手段は知りませんが、私の院のレセプトは、10年前の1月は547枚、今年の1月は953枚でした。
そしてまだ増え続けています。地道にやっていることが確実に実になっているのでしょう。有難いことです。
まとめ
患者さんに対しても、そしてスタッフに対して、「あなたを大切にしている」ということを思いやりと情熱を持って伝わりやすい言動で伝えて行きましょう。
そして、できそうもない約束はしないようにしましょう。こういった地道な積み重ねが着実にレセプトを増やしていくことでしょう。
やまさき歯科・矯正歯科理事長
歯科医師
借金8億円、医院の閉鎖、詐欺被害など、壮絶な過去を乗り越え、現在、年商2億円、スタッフ30人の歯科医院を経営する。月間の平均レセプト数は1000枚。シリコン義歯の症例数は九州トップクラスの実績を誇る。
患者さんと歯科医院のより良い関係性を得ることを目的とし歯科専用の苦情コールセンター(日本歯科医療相談センター)を立上げた。
患者さんからの言い出せなかった思い、苦情、クレーム等を365日受け付け内容報告や対応のアドバイスを行い患者さんの思いを受け止めて頂き会員歯科医院の経営の向上に役立ててもらっている。
ご意見をコールセンターでも受け付けている歯科医院であることを患者さんに紹介し他の歯科医院との差別化を図っている。
このサービスを全国へ広めるため“歯科ホットライン“(監修:日本歯科医療相談センター)の広報活動、サービスの説明、入会受付窓口対応を歯科サポへ一部移管、業務提携。