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2019年に世間を騒がせた話題と言えば、老後資金に関する「2,000万円不足」問題ではないでしょうか。

その騒動をきっかけに「2,000万円では全然足りない!」など、さまざまな情報が世の中に広まりました。

それら情報の多くが、一般的な会社員を対象としたものでした。

私は、開業されている歯科医師の中には、2,000万円を大きく超える資金不足に陥る可能性もあると考えています。

私は「歯科医師の方を専門とするファイナンシャルプランナー」として、これまで何百世帯という歯科医師の方の家計相談を受けてきました。

最近は「いくら稼いでおけば、いくら使っても大丈夫なのか」「将来のためにどれくらい資産を作れば安心できるのか」という資産運用に関するご相談が増えています。

この連載では、私に寄せられてきた歯科医師からの資産運用に関する、よくあるご相談を紹介いたします。

今回は「リタイアしたくてもできない」という歯科医師というお悩みを取り上げます。

今回のご相談:「宵越しの金は持たぬ」の精神、江戸っ子気質の歯科医師が後悔するリタイア後の資金準備

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(画像=Mihai Simonia/stock.adobe.com)

・相談者

借金返済のためにリタイアできない歯科医師 A先生(75歳)

・相談者のプロフィール

A先生は、郊外で歯科医院を経営されています。自宅兼クリニックの建て替えをしたこともあり、現在でも多くの借り入れ金が残っている状態でした。

私と初めて対面されたA先生の第一声は、「60歳になったらもっと悠々自適に過ごしているつもりだったけど、まだ多くの借金を抱えている有様だよ」というボヤキでした。

A先生は、なぜこんな状況になってしまったのでしょうか?

原因は「江戸っ子気質」と「何もしなくても患者が来た時代」

A先生は、下町の生まれで「宵越しの金は持たぬ」の精神を持つ江戸っ子です。

日本経済の超高度成長期に開業された世代の歯科医のお一人でもあります。

当時は現在のような「集患」を考えなくても、多くの患者さんが歯科医院を自然と訪れていた時代でした。

先生のお話を聞いていると、開業当初の思い出や過去の武勇伝の話題に……。

普段から羽振りが良かったA先生は、「一夜で何百万円も使った」と銀座界隈の夜のクラブで豪遊されたり、巧妙な手口を使った不動産投資の詐欺に騙されてしまったことなどを語り始めました。

「お金のことはつべこべ言うな」という雰囲気が感じられたのが印象的です。

稼いだお金を「見栄」で失う歯科医師は意外と多い

私は、歯科医師の先生方の懐事情を多く見てきた経験から「開業された歯科医師の中には、実際に稼いだお金を“見栄”によって失ってきた方が多い」と感じています。

特にA先生世代の多くの歯科医師の先生方は、お金に関して無頓着な方が多くいらっしゃいます。

50歳代以上の方がこれまでの自身のお金の使い方を振り返って「こんなはずではなかった」という嘆く傾向が多いようです。

それはなぜでしょうか?

一般的な職業と比べると生涯で獲得できる所得は多くなりますが、その分、出費が多くなるというのが「歯科医師」という職業の特徴の1つだと考えています。

実際に「過多な出費が原因で、リタイア後の老後資金が足りない」ことに気づき、ショックを受ける先生方を多く見てきました。

まずは「将来に向けた資産形成を意識する」こと

A先生のように後悔しないためには、どうすればいいのでしょうか。

資産形成のご相談に来られた方に対して、私は「『少し頑張ればすぐに取り戻せる』という安易な気持ちを持つのではなく、日ごろから資産形成をしっかりと意識することが大切です」とお伝えしています。

歯科医師の方が資金繰りに苦労される原因の1つに「ご自身のライフプランニングを十分に考えられてこなかった」点が挙げられます。ライフプランニングでは、将来の夢や目標を考えて「いつ、どのように、実現していくか」という綿密な計画を立てることが重要です。

そうお伝えすると「将来のことは分からないし、どうせ思った通りにはいかないでしょ」という返答をいただくこともあります。

それでも、リタイアするタイミングが訪れた時に後悔してほしくありません。

そのため少し怪訝な顔をされても、しっかりと伝えることを心掛けています。

今回のまとめ

歯科医院での打ち合わせ
(画像=Monet/stock.adobe.com)

国家資格職である歯科医師は、他の職業とは異なり生涯現役で活躍することが可能です。

一般的な職業では定年を迎える60歳代以降でも働き続けられます。

厚生労働省の「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2018年12月31日現在における全国の届出「歯科医師数」は10万4,908人。

年齢階級別にみると、「50~59歳」が2万4,599人(24.2%)と最も多く、次いで「60~69歳」が2万1,738人(21.4%)となっています。

70歳以上の歯科医師は全国で9,721人もいらっしゃいます。

だた、その中には「経済的な理由によって、働かざるを得ない」という歯科医師も含まれているのです。

正しく資産形成をすることは、その回避にもつながることでしょう。ぜひ日ごろから意識するようにしてください。

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本間 博史

プルデンシャル生命保険株式会社 東京第十支社 ライフプランナー

歯科医院の経営サポートの「攻め(マーケティング)」と「守り(お金の対策)」をバランス良く提供。歯科医院の院長先生の「夢」を設定し、将来を明確に思い描く。

キャッシュフローの試算を基に、まずは単年度予算を作成し、歯科医院経営を見える化。ここをスタートに目標と実績のギャップを示し、ギャップの改善をPlan-Do-Check-Actionサイクルを通じて実行。

これまで数々の支援を通じて「資産運用の悩みは、それぞれの家庭で違う」ことを強く実感したうえで、歯科医院の院長先生ごとのライフプランナーとして寄り添う。