歯科衛生士の評価制度・キャリアパスの正しい作り方をそれぞれのステップごとに解説

慢性的な人材不足が続いている歯科業界では「いかに優秀な人材を確保し、育成すれば良いか」が、多くの歯科医院の経営課題にもなっています。その解決方法として、自院に適した「評価制度」や「キャリアパス」を取り入れる動きが見られています。

この連載では、歯科人材育成事業や歯科コンサルティングで多くの実績を持つTomorrowLinkの濱田智恵子が「最適な歯科衛生士の評価制度・キャリアパスを導入するためのポイント」を解説していきます。今回は、評価制度・キャリアパスを作成する4つのステップについて解説します。

評価制度の正しい作り方、4つのステップ

もし「自分の医院には必要かな? あってもいいかも」、程度に思われたのであれば、評価制度の導入はお勧めしません。評価制度は、どの医院でも有効に活用できるものではないのです。

なぜなら、評価制度システムを作るよりも運営することの方がずっと大変だからです。評価制度はあくまでも歯科衛生士が定着するための1要素と捉えてください。導入される場合は新人に限らず、中途採用の歯科衛生士に対しても活用できることが望ましいです。

前回の記事でも解説したように、評価制度とキャリアパスを作成する最終的な目的は「評価を報酬に反映させ、歯科衛生士のモチベーションを上げることにある」と考えています。 評価制度の導入手順は、以下の4つのステップで構成されます。

(1)目的の明確化
「歯科衛生士にどのように仕事をしてほしいのか」という指針を示すことから始まります。また、歯科衛生士として長く勤務するためにも、自身が頑張ることが評価につながると理解してもらうことが大切です。

(2)評価制度の説明
歯科衛生士に対して評価制度を詳細までしっかりと説明します。特に「どのように評価して報酬へと反映させるのか」を分かりやすく説明することがポイントです。評価制度の内容は、医院によって異なります。そのため、自院に最適な評価制度を作成することが重要です。

(3)キャリアパスを共有できる環境の構築
評価制度に紐づくキャリアパスを作成して、歯科衛生士を育成していきます。キャリアパスと照らし合わせることで、歯科衛生士が前回の評価と比べて「できるようになったこと」が明確になります。これにより、主観的にも客観的にも成長していることがわかるようになります。また、キャリアパスを共有できる環境を構築することで、院内外問わず、人材を育成できる土壌をつくることが重要です。

(4)報酬に反映させるタイミング
評価の結果を給与や賞与などの報酬に反映させるのは、評価制度を浸透させた後にする方が望ましいでしょう。医院によって評価の頻度が異なることもあるのでタイミングは異なります。すぐに報酬に反映させると歯科衛生士が違和感を覚えることもあるので、評価の定着を確認する意味である程度の時間を置いたほうが良いと考えます。定着の確認期間としては、半年から1年程度を目安にお考えください。

キャリアパスの具体的な項目を解説

ここからは、キャリアパスの具体的な評価項目を解説していきます。キャリアパスでは、歯科衛生士のできる業務が増えることで、その歯科医院でやれることが増え歯科衛生士の仕事にやりがいを感じ勤務し続けられる理由になると意識できることが大切です。

歯科衛生士を評価するには、まず「何を評価するか?」が重要となります。その目安年数は、医院ごとに歯科衛生士と相談して決定することが前提です。筆者は以下の4つの評価項目で評価することを推奨しています。

(1)専門知識・技術を含む歯科衛生士業務「プレイヤー能力」への評価
歯科衛生士の業務内容を項目分けして、その業務のクオリティに応じたキャリアパスを作成していきます。例えば、予防歯科分野では「小児健診」や「成人健診」「歯周治療」「SPT」などが該当とします。また、歯科医院で行っているその他の歯科衛生士業務も対象評価として捉えてください。 さらに別途、半年や1年に1回の頻度で「実技テスト」「筆記テスト」「症例検討会」などを実施することで、歯科衛生士の成長や技術の維持などを確認することが望ましいです。

(2)後輩の指導や指示ができる「ガイド&コーチ能力」の評価
次に、積極的に後輩育成に努めたり、指導した歯科衛生士に対しては、その育成貢献(ガイド&コーチ)の部分を評価します。

プレイヤー能力とガイド&コーチ能力は、歯科衛生士としての実力を測るものであり、そのバランスは個人によって差があります。院内研修や勉強会などで学びの機会がない場合、これらの評価を含むキャリアパスを作成すると「教えてもらっていないのに、育成貢献が評価対象にされている」と不満が生じる可能性もあるので注意が必要です。

特に新人など若い歯科衛生士は「教えてもらって当たり前」と考える傾向にあります。院長は「勉強は自分でするもの」という考え方だけでなく、歯科衛生士が成長できる環境を作ってあげることも忘れないでください。

(3)院内での「通常業務&行動指針遂行能力」の評価
院内での行動指針に基づき「この医院では、何ができていてほしいのか」という項目作りを推奨しています。もし院内の行動指針がない場合は、これを機に作成したほうが良いでしょう。その理由については後述します。

(4)経営を含むチーフ・マネージャーとして「マネジメント能力」の評価
マネジメント能力は、医院の規模や体制によって異なりますので、必須というわけではありません。チーフに関しては通常は院長の判断となりますが、指名された人の中には「何をすればいいのかわからない」という方も少なくありません。チーフとしてのキャリアパスが用意されていれば、そうした不安を取り除いたり、どういう働きが求められているかが理解しやすくなるでしょう。

「歯科医院の常識=行動指針評価表の作成」をお勧めする理由

自院の歯科衛生士に対して「全てをこなせるような能力をもってほしい」と考えたことはありませんか? しかし、それを押し付けることは、歯科衛生士のモチベーションにも影響し、結果的に人材の定着を阻む要因にもなりうるので注意してください。

実際、過去に当社のセミナーを受講者された院長先生から「できる歯科衛生士がほしい」と言われることも多くありました。その際、「できる歯科衛生士とは、どのような歯科衛生士のことを指していますか?」と質問すると、先生方は回答に詰まってしまうこともよくあります。 理由は、院長自身の「できる歯科衛生士」のイメージが曖昧なためです。

「言わなくても常識でわかる」という意見もありますが、私は「自院の常識は、院長自身が作り、浸透させていくものだ」と発想を転換することをお勧めしています。 せっかちな気質の先生の中には、「そんなこともできないの?」と従業員にイライラする方もいらっしゃいます。しかし、イライラしたところで従業員ができるようにはなりません。ただ、歯科衛生士のモチベーションを下げてしまうだけです。

院長として「何に対してストレスを抱えているのか?」を明確にするためにも、「行動指針評価表を作成して「自院の常識」を打ち出してみてはいかがでしょうか。ただし、一般常識とかけ離れている自院の常識はNGです。

行動指針は、どんな歯科医院を目指しているかを「見える化」し、その目指す姿を従業員と共有できます。その中で語られる内容としては「積極性」「協調性」「責任」「規律」などを含めて考えるとよいでしょう。

これらを当たり前だと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、意外と理解されていないことも多いのが現実です。行動指針を理解して、遵守することを評価することも、歯科衛生士に長く勤務してもらう秘訣だと考えています。

経営者、歯科衛生士双方が納得できる評価制度・キャリアパスを目指す

評価制度やキャリアパスを策定する際には、院長とチーフクラスの歯科衛生士とのミーティングを通して、その医院に沿った内容を一緒に策定していきます。項目数や評価内容は、医院の裁量や歯科衛生士のスキルや経験などによって全く異なります。

TomorrowLinkでは、弊社の人材育成プログラムを受講された医院を対象に評価制度やキャリアパスの作成・運営をご支援しています。そのため、歯科衛生士の実情を踏まえた上で評価制度やキャリアパスの内容に落とし込んでいきます。まずはトライアルを実施し、そのフィードバックを基に改善していくお手伝いもしています。

経営者、歯科衛生士双方が納得できるような評価制度をお望みなら、ぜひ一度ご相談ください。

今回は、評価制度・キャリアパスの作成手順を紹介しました。次回は、評価制度・キャリアパスを導入する上での注意点を解説します。

「評価制度」や「キャリアパス」をお手伝い

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