本間さん_2

歯科医師の中には、地域に密着した歯科医院を代々経営している方も多くいらっしゃいます。先代の院長先生が勇退される際、古くからの患者さんから「医院を継続してほしい」とお願いされることもあります。そこで閉院ではなく、同じ歯科医師となった若先生に医院を継続してもらう「事業継承」を選ぶ方もいらっしゃいます。

しかし、実際には医院の事業継承が上手くいかないケースもあります。その理由とは一体何でしょうか?

この連載では、「歯科医師の方を専門とするファイナンシャルプランナー」に寄せられてきた歯科医師からの資産運用に関する、よくあるご相談を紹介いたします。今回は、歯科医院の事業継承を阻む「思わぬ落とし穴」を取り上げます。

今回のご相談:「どんぶり勘定」が原因で自院を継承できない、ある歯科医師の苦悩

・相談者

「借金返済のために歯科医院の事業継承ができずに悩む」歯科医師 B先生(68歳)

・相談者のプロフィール

都内で歯科医師であるお子さんと一緒に歯科医院を経営しているB先生。地域に密着した歯科医院として長年事業を続けています。「そろそろ引退を」と考えてはいるものの、お子さんが勤め始めた際の増築費用の返済が残っている状態でした。次の世代に事業を継承したいと思いながら、すぐにはリタイヤできない日々が続いています。

なぜ、B先生はそういう状況に陥ってしまったのでしょうか?

原因は「どんぶり勘定」、将来を見越した計画性が足りなかったこと

私は、多くの歯科医師の先生方の懐事情を見てきた経験から「開業された歯科医師の中には、お金に関して無頓着な方が多くいらっしゃる」と感じています。

一般的な職業と比べると生涯で獲得できる所得は多くなりますが、その分、出費も多くなるというのが「歯科医師」という職業の特徴だと思います。出費の内訳はさまざまなものがありますが、「今現在、いくらの収入があって、どのくらいの支出があるのか」ということを把握せずに「どんぶり勘定」で生活している方も少なくありません。

また、将来にわたる収入・支出といった家計の状況を考えずに「使える時に使えばいい」という計画性がない場合もあり、B先生のように「事業継承ができない」と分かった途端にひどく後悔される先生を多く見てきました。

収入・支出の把握には「キャッシュフロー表」の作成がお勧め

B先生のように後悔しないためには、どうすればいいのでしょうか。

まずは「実際に毎月の収入と支出がどれくらいあるのか」というお金の流れ(キャッシュフロー)を把握することが大切です。その上で、毎年の支出と収入、資産の推移を記入した予定表である「キャッシュフロー表」の作成をお勧めしています。

キャッシュフロー表は「現在から将来にわたる収支がどれくらいになるか」という見通しを立てることに役立ちます。例えば、出産や住宅購入、子どもの教育費、退職後の老後資金などの家族全体のライフイベントと紐づけることで、「いつ、どのくらいの資金が必要になるか」、また「どのくらいの資金が足りなくなるか」を予測することも可能です。

漠然とした不安から「貯金しなくては」と考えても、実際に行動できない人もいらっしゃいます。キャッシュフロー表を活用すると、将来的に必要な資金がある程度予測できるため、より具体的な目標を設定した資産形成が可能になります。

医院経営の観点でも「キャッシュフローの把握」は非常に重要です。現在の資産は今後、将来的な「設備投資」の費用になることも考えられます。また、借入金がある場合は、経営にかかるコストと毎月の返済額を算出し、それに見合う売り上げがどれくらい必要になるかを逆算することも可能です。

B先生は「開業から引退までの間に必要な資金を把握して、しっかりと貯める仕組みが必要だった」と反省されていました。B先生ができなかったことを教訓として、若先生の代で実践することで「B家の家訓」として根付かせることを提案し、次世代にバトンを受け継いでもらうようにご支援しました。

今回のまとめ

キャッシュフロー表を作ることで、将来のお金の流れを予測できます。定期的に見直すことで、ご自身のライフプランに合った家計のプランニングが実現できるでしょう。

キャッシュフロー表は「人生の航海図」と言い換えられると思います。「何とかなるだろう」と行き当たりばったりの航海は、ちょっとしたスリルや刺激を味われるでしょう。しかし、「お金に不自由なく人生を過ごしたい」のであれば、将来に対する漠然とした不安を減らすためにも、キャッシュフロー表という航海図を作成することをお勧めします。

キャッシュフロー表はご自身で手書きで作成可能です。ただ、手間や時間がかかることもあります。また、より詳細で正確な情報を基にキャッシュフロー表を作成すると、ライフステージに応じたシミュレーションが可能になり、将来の問題点を早めに発見したり、着実な対策を打つことにも活用できます。

より正確な将来の見通しを立てたいなら、ファイナンシャルプランナーなど“資産運用のプロ”にご相談されるのも良いと思います。興味を持たれた方は、ぜひ一度お問合せいください。